李白(りはく)の『子夜呉歌(しやごか)』の書き下し文・現代語訳・解説です。
秋の夜の長安。空にはぽつんと月が一つ、町のあちこちの家からは、冬着にする布を砧で打つ音が聞こえ、秋風が絶えず吹いています。そのすべてが、遠い玉門関のかなたに出征した夫を思う気持ちをかきたてます。「いつになったら戦が終わって、夫は帰ってくるのだろう」と、妻の立場でうたった詩です。
書き下し文・現代語訳・解説
白文長安一片月
書き下し長安一片の月
現代語訳長安の夜空に、ぽつんと一つの月がかかり、
- 長安
- 唐の都。今の陝西省西安市。
- 一片月
- 一つの月。空にぽつんと出ている月。遠い地にいる夫も、今ごろ同じ月をながめているだろう、と妻に思わせる。
白文万戸擣衣声
書き下し万戸衣を擣つの声
現代語訳あちこちの家々から、布を砧で打つ音が聞こえてくる。
- 万戸
- 多くの家々。「万」は数が多いことを表す。
- 擣衣
- 布を砧(きぬた)にのせて、槌で打つこと。布をやわらかくし、つやを出すために打つ。冬の衣を仕立てるための仕事である。「衣を擣つ声」と「の」を入れずに読む読み方もある。
- 声
- 音。
- ○ 冬の寒さの中で遠征を続ける夫のために、冬着を作って送ろうとしているのである。多くの家から音が聞こえるのは、それだけ多くの男たちが出征していることを表している。
白文秋風吹不尽
書き下し秋風吹いて尽きず
現代語訳秋風は絶え間なく吹きつづけて、やむことがない。
- 秋風
- 秋の風。夫のいる西の方から吹いてくる風でもある。
- 吹不尽
- 吹きやむことがない。「吹き尽くさず」と読む読み方もある。
白文総是玉関情
書き下し総て是れ玉関の情
現代語訳(月も、砧の音も、秋風も)すべてが、玉門関のかなたにいる夫を思う気持ちをかきたてるものばかりだ。
- 総
- すべて。第一句から第三句までの「一片月」「擣衣声」「秋風」をさす。
- 玉関
- 玉門関のこと。今の甘粛省の、敦煌の西に置かれた関所。西域との交通の要所で、異民族の侵入を防ぐ最前線でもあった。
- 玉関情
- 玉門関の方面に出征している夫を、恋しく思う気持ち。
白文何日平胡虜
書き下し何れの日か胡虜を平らげて
現代語訳いったいいつになったら、異民族の敵を平定して、
- 何日
- いつ。「何れの日か」と読み、時をたずねる疑問を表す。第六句の「罷めん」までかかる。
- 平
- (敵を)平定する。うち負かしておさめる。
- 胡虜
- 中国の北方・西方に住んでいた異民族。「虜」は敵をののしっていう語。
白文良人罷遠征
書き下し良人遠征を罷めん
現代語訳夫は遠征をやめて(私のもとに)帰ってくるのだろうか。
- 良人
- 夫。妻から夫を呼ぶことば。
- 罷
- やめる。終わりにする。
- 遠征
- 遠くへ戦いに出かけること。
テスト予想問題
A 詩の形式・語句
この詩の作者と詩の形式を答えよ。また、押韻している字をすべて抜き出せ。
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作者:李白 詩の形式:五言古詩(楽府) 押韻:声・情・征
次の語を、現代仮名遣いのひらがなで読め(送り仮名があるものはそれも書くこと)。
①万戸
②総て
③胡虜
④良人解答を見る
①ばんこ
②すべて
③こりょ
④りょうじん次の語の意味を答えよ。
①擣衣
②玉関
③良人
④罷(む)解答を見る
①布を砧で打つこと
②玉門関(西域との境にあった関所)
③夫
④やめる。終わりにする
B 書き下し文・現代語訳
「秋風吹不尽」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:秋風吹いて尽きず
現代語訳:秋風は絶え間なく吹きつづけて、やむことがない。「何日平胡虜 良人罷遠征」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:何れの日か胡虜を平らげて良人遠征を罷めん
現代語訳:いったいいつになったら異民族の敵を平定して、夫は遠征をやめて帰ってくるのだろうか。
C 内容の読み取り
この詩は、誰の立場でうたわれたものか。また、そのことがわかる語を詩の中から抜き出せ。
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出征した兵士の妻の立場。 語:良人
「総」とは何をさすか。詩の中から三つ抜き出せ。
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一片月・擣衣声・秋風
「玉関情」とは、どのような気持ちか。
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玉門関の方面に出征している夫を、恋しく思う気持ち。
家々で衣を擣つのは、何のためか。
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遠征している夫に送る冬着を仕立てるため。
この詩の主題を答えよ。
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遠く出征した夫の無事を願い、帰りを待ちわびる妻の、夫を恋い慕う思い。