『孟母断機』書き下し文・現代語訳・意味・解説|列女伝・テスト予想問題付き

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. 途中で帰ってきた孟子
  3. 母の戒め
  4. 名儒となる
  5. テスト予想問題

『孟母断機(もうぼだんき)』の書き下し文・現代語訳・句法・故事成語の意味を解説します。出典は、前漢の劉向(りゅうきょう)が編んだ『列女伝(れつじょでん)』(母儀篇)です。すぐれた女性たちの伝記を集めた書物で、孟子の母の話はその中に収められています。

書き下し文・現代語訳・解説

途中で帰ってきた孟子

本文(訓読文)

白文孟子之少也、既学而帰。

書き下し孟子の少(わか)きとき、既に学びて帰る。

現代語訳孟子が若かったころ、学問をしに出ていたのに、(途中で)家に帰ってきた。

少
「わかシ」。年が若い。「少きとき」で、幼いころ・若いころ。
既学而帰
学問をしていたが、途中で帰ってきたということ。
而
置き字。「~て」と読む順接。

白文孟母方織。

書き下し孟母方(まさ)に織る。

現代語訳孟子の母は、ちょうど機を織っているところだった。

方
「まさニ」。ちょうど(その時)。
織
ここは動詞で、機を織る。

白文問曰、「学何所至矣。」

書き下し問ひて曰はく、「学何(いづ)れに至る所ぞ。」と。

現代語訳(母が)尋ねて言うことには、「学問はどこまで進みましたか。」と。

何所至
「何れに至る所ぞ」。どこまで進んだのか。疑問の形。
矣
置き字。

白文孟子曰、「自若也。」

書き下し孟子曰はく、「自若(じじやく)たり。」と。

現代語訳孟子が言うことには、「前と変わりません。」と。

自若
もとのままで、変わらないさま。学問が少しも進んでいないことを表す。
也
置き字。

白文孟母以刀断其織。

書き下し孟母刀を以て其の織を断つ。

現代語訳(すると)孟子の母は、刀で織りかけの布を断ち切った。

以刀
「刀を以て」。刀で。「以」は手段を表す。
其織
母が織っていた、織りかけの布。前の文の「織」(動詞)と違い、ここは名詞。

母の戒め

本文(訓読文)

白文孟子懼而問其故。

書き下し孟子懼(おそ)れて其の故を問ふ。

現代語訳孟子は驚き恐れて、その(布を断ち切った)わけを尋ねた。

懼
「おそル」。驚き恐れる。
故
「ゆゑ」。理由。母が突然布を断ち切った理由。

白文孟母曰、「子之廃学、若吾断斯織也。

書き下し孟母曰はく、「子の学を廃するは、吾の斯(こ)の織を断つがごときなり。

現代語訳母が言うことには、「あなたが学問を途中でやめるのは、私が今この布を織りかけのまま切ってしまうのと変わりません。

子
あなた。二人称で、ここは孟子を指す。
廃学
学問をやめる。「廃」は、やめる。
若
「ごとシ」。~のようだ(比況)。
斯
「こノ」。この。

白文夫君子学以立名、問則広知。

書き下し夫(そ)れ君子は学びて以て名を立て、問ひて則ち知を広む。

現代語訳そもそも君子というものは、学問をして名をあげ、(わからないことを)人に尋ねて知識を広めるものです。

夫
「そレ」。そもそも。文の初めに置いて、話を説き起こす。
君子
学問・徳を身につけた立派な人。
立名
名をあげる。名声を得る。

白文是以居則安寧、動則遠害。

書き下し是を以て居れば則ち安寧(あんねい)にして、動けば則ち害に遠ざかる。

現代語訳こうして、(仕官せずに)家にいるときは心安らかに暮らせ、(仕官して)世に出て働くときには災いを遠ざけることができるのです。

是以
「ここヲもつテ」。こういうわけで。それで。
居
仕官せずに家にいる。
安寧
安らかで穏やかなこと。
動
仕官して世の中で活動する。
遠害
災難から遠ざかる。

白文今而廃之、是不免於廝役、而無以離於禍患也。

書き下し今にして之を廃するは、是れ廝役(しえき)を免れずして、以て禍患(くわくわん)より離るる無きなり。

現代語訳今ここで学問をやめてしまったら、それは人に使われる下働きの身になることを避けられず、災難から逃れることもできないということです。

之
学問を指す。
廝役
人に使われる下働きの者。召使い。
免
まぬかれる。避ける。
禍患
わざわい。災難。「禍」も「患」もわざわいの意味。
於
置き字。
本文(訓読文)

白文何以異於織績而食、中道廃而不為。

書き下し何を以て織績(しよくせき)して食するに、中道(ちゆうだう)にして廃して為さざるに異ならんや。

現代語訳(学問をやめることは)機を織り糸を紡いで暮らしを立てている者が、途中で仕事をやめてしまうのと、どこが違うでしょうか、いや、同じことです。

何以
「何を以て~ん(や)」。どうして~だろうか、いや~ない。ここは反語。
織績
機を織ることと、糸を紡ぐこと。
食
生活する。暮らしを立てる。
中道
途中。
不為
仕事をしない。

白文寧能衣其夫子、而長不乏糧食哉。

書き下し寧(いづ)くんぞ能く其の夫子(ふし)に衣(き)せて、長く糧食(りやうしよく)に乏しからざらしめんや。

現代語訳(仕事を途中でやめては)どうして夫や子どもに着物を着せ、いつまでも食べ物に困らない暮らしをさせられるでしょうか、いや、無理です。

寧
「いづクンゾ」。どうして。文末の「哉」と呼応して反語を表す。
夫子
夫と子ども。
衣
ここは動詞で「きス」。着物を着せる。
糧食
食料。
乏
「とぼシ」。足りない。不自由する。

白文女則廃其所食、男則堕於修徳、不為窃盗、則為虜役矣。」

書き下し女は則ち其の食する所を廃し、男は則ち徳を修(をさ)むるを堕(おこた)らば、窃盗(せつたう)と為らずんば、則ち虜役(りよえき)と為らん。」と。

現代語訳女が暮らしを立てるための仕事をやめ、男が徳を身につけることを怠ったならば、盗人にならないとしても、人に使われる下働きの身になるでしょう。」と。

所食
暮らしを立てる手段。女性にとっては機織りや糸紡ぎの仕事。
堕
「おこたル」。怠る。
修徳
徳を修める。学問をして人格を高めること。
窃盗
盗み。盗人。
虜役
人に使われる者。召使い。

名儒となる

本文(訓読文)

白文孟子懼、旦夕勤学不息。

書き下し孟子懼れ、旦夕(たんせき)学に勤めて息(や)まず。

現代語訳孟子は(母の言葉を聞いて)恐れ、朝から晩まで休むことなく学問に励んだ。

懼
ここでは、学問をやめたときの自分の将来を恐れた。
旦夕
朝と夕方。朝から晩まで。いつも。
息
「やム」。やめる。休む。「不息」で、休むことなく。

白文師事子思、遂成天下之名儒。

書き下し子思(しし)に師事(しじ)し、遂に天下の名儒(めいじゆ)と成れり。

現代語訳子思を師として学び、とうとう天下に名の知られた儒学者となった。

師事
先生として仕え、教えを受ける。
子思
孔子の孫。
遂
「つひニ」。とうとう。
名儒
名高い儒学者。

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)を答えよ。
    ①少(少きとき)
    ②方
    ③夫
    ④寧
    ⑤息(息まず)

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    ①わかき
    ②まさに
    ③それ
    ④いずくんぞ
    ⑤やまず

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①自若
    ②廝役
    ③旦夕

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    ①もとのままで変わらないこと
    ②人に使われる下働きの者(召使い)
    ③朝から晩まで(いつも)

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「学何所至矣」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:学何れに至る所ぞ。
    現代語訳:学問はどこまで進みましたか。

  2. 「子之廃学、若吾断斯織也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:子の学を廃するは、吾の斯の織を断つがごときなり。
    現代語訳:あなたが学問を途中でやめるのは、私が織りかけのこの布を切ってしまうのと同じだ。

  3. 「寧能衣其夫子、而長不乏糧食哉」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:寧くんぞ能く其の夫子に衣せて、長く糧食に乏しからざらしめんや。
    現代語訳:どうして夫や子どもに着物を着せ、長く食べ物に困らない暮らしをさせられようか、いや、させられない。

  4. 「不為窃盗、則為虜役矣」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:窃盗と為らずんば、則ち虜役と為らん。
    現代語訳:盗人にならなければ、人に使われる身になるだろう。

C 内容の読み取り

  1. 「孟母以刀断其織」とあるが、母が織りかけの布を断ち切ったのは何のためか。

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    途中で学問をやめて帰ってきた孟子に、学問をやめることは、織っている最中の布を切ってしまうのと変わらないと示して、学問を怠ってはならないと戒めるため。

  2. 「今而廃之」の「之」は何を指すか。また、それをやめるとどうなると母は言っているか。

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    「之」=学問。
    やめると、人に使われる下働きの身になることを避けられず、災難からも逃れられなくなる。

  3. 本文に二回出てくる「孟子懼」について、孟子はそれぞれ何を恐れたのか。

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    一回目=母が突然織りかけの布を断ち切ったこと(そのわけがわからなかったこと)。
    二回目=母の話を聞き、学問をやめたら召使いや盗人になるしかないという自分の将来。

  4. 故事成語「孟母断機」は、どのようなことを戒めた言葉か。

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    学問を途中でやめてはいけないということ。