『論語』「長沮・桀溺」書き下し文・現代語訳・解説|鳥獣は与に群を同じくすべからず・テスト予想問題付き

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. 渡し場を尋ねる
  3. 長沮との問答
  4. 桀溺との問答
  5. 桀溺のことば
  6. 孔子のことば
  7. テスト予想問題

『論語(ろんご)』微子篇の「長沮・桀溺(ちょうそ・けつでき)」の書き下し文・現代語訳・句法を解説します。『論語』の学問・仁・政治についての章は「論語①学び」「論語②仁・政治」で解説しています。

書き下し文・現代語訳・解説

渡し場を尋ねる

本文(訓読文)

白文長沮・桀溺耦而耕。

書き下し長沮(ちやうそ)・桀溺(けつでき)耦(ぐう)して耕す。

現代語訳長沮と桀溺が、二人並んで畑を耕していた。

長沮・桀溺
二人の隠者の名。
耦
「ぐうス」。二人並ぶ。「耦而耕」で、二人並んで耕す。
而
置き字。

白文孔子過之、使子路問津焉。

書き下し孔子之を過ぎ、子路をして津(しん)を問はしむ。

現代語訳孔子がそのそばを通りかかり、子路に渡し場(のありか)を尋ねさせた。

之
長沮と桀溺が耕している所を指す。
子路
孔子の弟子。
津
「しん」。渡し場。
焉
置き字。
使AB
「AをしてBしむ」。使役。

長沮との問答

本文(訓読文)

白文長沮曰、「夫執輿者為誰。」

書き下し長沮曰はく、「夫(か)の輿(よ)を執る者は誰(たれ)と為す。」と。

現代語訳長沮が言うには、「あの、車の手綱を取っている人は誰か。」と。

夫
「かノ」。あの。
執輿者
車の手綱を取っている人。孔子のこと。
為誰
「誰と為す」。誰か。

白文子路曰、「為孔丘。」

書き下し子路曰はく、「孔丘(こうきう)と為す。」と。

現代語訳子路が言うには、「孔丘です。」と。

孔丘
孔子のこと。「丘」は孔子の名。

白文曰、「是魯孔丘与。」

書き下し曰はく、「是れ魯の孔丘か。」と。

現代語訳(長沮が)言うには、「それは魯の国の孔丘か。」と。

是
「こレ」。それ。
魯
孔子の生まれた国。
与
「か」。疑問を表す。

白文対曰、「是也。」

書き下し対(こた)へて曰はく、「是れなり。」と。

現代語訳(子路が)答えて言うには、「そうです。」と。

対
「こたフ」。目上の人に答える。
是也
そうです。

白文曰、「是知津矣。」

書き下し曰はく、「是れなれば津を知らん。」と。

現代語訳(長沮が)言うには、「それなら(孔子は)渡し場くらい知っているだろう。」と。

是知津矣
孔子のような人なら、渡し場のありかは当然知っているはずだ、という意味。
矣
置き字。

桀溺との問答

本文(訓読文)

白文問於桀溺。

書き下し桀溺に問ふ。

現代語訳(子路は、今度は)桀溺に尋ねた。

於
置き字。

白文桀溺曰、「子為誰。」

書き下し桀溺曰はく、「子は誰と為す。」と。

現代語訳桀溺が言うには、「あなたは誰か。」と。

子
二人称。あなた。ここでは子路を指す。

白文曰、「為仲由。」

書き下し曰はく、「仲由(ちゆういう)と為す。」と。

現代語訳(子路が)言うには、「仲由です。」と。

仲由
子路の姓名。

白文曰、「是魯孔丘之徒与。」

書き下し曰はく、「是れ魯の孔丘の徒(と)か。」と。

現代語訳(桀溺が)言うには、「では、魯の孔丘の弟子か。」と。

徒
仲間。門人。弟子。

白文対曰、「然。」

書き下し対へて曰はく、「然(しか)り。」と。

現代語訳(子路が)答えて言うには、「そうです。」と。

然
「しかリ」。そのとおりだ。

桀溺のことば

本文(訓読文)

白文曰、「滔滔者、天下皆是也。

書き下し曰はく、「滔滔(たうたう)たる者、天下皆是れなり。

現代語訳(桀溺が)言うには、「水が勢いよく流れて戻らないように、世の中が乱れて正しい道から離れていくのは、天下どこでも同じだ。

滔滔
水が盛んに流れて、戻らないさま。ここでは、世の中が乱れて、道から離れていくことをたとえる。
是
滔滔とした状態を指す。

白文而誰以易之。

書き下し而(しか)るに誰と以(とも)にか之を易(か)へん。

現代語訳それなのに、(孔子は)いったい誰と一緒にこれを変えようというのか。

而
「しかルニ」。それなのに。逆接。「しかシテ」と読む読み方もある。
以
「ともニ」。「与」と同じ。
易之
乱れた世の中を変える。
誰以易之
誰と一緒に変えようというのか、誰とも変えることはできない、という気持ち。

白文且而与其従辟人之士也、豈若従辟世之士哉。」

書き下し且つ而(なんぢ)其の人を辟(さ)くるの士に従はんよりは、豈(あ)に世を辟くるの士に従ふに若(し)かんや。」と。

現代語訳そのうえ、あなたも、人を選り好みして避けている人(孔子)に従うよりは、世の中そのものを避けている者(我々)に従ったほうがよいではないか。」と。

且
「かツ」。そのうえ。
而
「なんぢ」。あなた。子路を指す。
辟
「さク」。避ける。「避」と同じ。
辟人之士
人を避ける人。仕える相手を選び、意に合わない人を避けている者。孔子を指す。
辟世之士
乱れた世の中そのものを避けて暮らす人。長沮・桀溺のような隠者を指す。

白文耰而不輟。

書き下し耰(いう)して輟(や)めず。

現代語訳(そう言うと桀溺は)まいた種に土をかぶせる作業を続けて、手を止めなかった。

耰
「いうス」。まいた種に土をかぶせる。
輟
「やム」。やめる。中止する。

孔子のことば

本文(訓読文)

白文子路行以告。

書き下し子路行きて以つて告ぐ。

現代語訳子路は(孔子のところへ)行って、(二人の言ったことを)報告した。

以
「もつテ」。そうして。

白文夫子憮然曰、「鳥獣不可与同群。

書き下し夫子(ふうし)憮然(ぶぜん)として曰はく、「鳥獣は与(とも)に群を同じくすべからず。

現代語訳先生(孔子)ががっかりした様子で言われるには、「鳥や獣とは、群れを同じくして一緒に暮らすことはできない。

夫子
先生。孔子を指す。
憮然
がっかりするさま。失望するさま。
鳥獣
世を避けて山野に暮らす隠者の生き方を、鳥や獣と暮らすことにたとえている。
与
「ともニ」。一緒に。
不可
「べからず」。~できない。

白文吾非斯人之徒与而誰与。

書き下し吾斯(こ)の人の徒と与にするに非ずして誰と与にせん。

現代語訳私は、この世の人々と一緒に生きるのでなくて、いったい誰と一緒に生きようか(世の人々とともに生きるほかはない)。

斯人之徒
この世の人々。世間の人々。
与
「ともニス」。一緒にする。ともに生きる。
誰与
「誰と与にせん」。誰と一緒に生きようか。反語。

白文天下有道、丘不与易也。」

書き下し天下道有らば、丘(きう)与に易へざるなり。」と。

現代語訳もし天下に正しい道が行われているならば、私は人々とともに世の中を変えようとはしない(道が行われていないから、変えようとしているのだ)。」と。

有道
正しい道が行われている。世の中の秩序が保たれている。
丘
孔子が自分を名で呼んだもの。
与易
人々と一緒に(世の中を)変える。

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)を答えよ。
    ①耦して
    ②津
    ③夫の
    ④与(是魯孔丘与)
    ⑤而(且而)
    ⑥憮然として

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    ①ぐうして
    ②しん
    ③かの
    ④か
    ⑤なんじ
    ⑥ぶぜんとして

  2. 次の語の、本文中での意味を答えよ。
    ①執輿者
    ②滔滔
    ③耰
    ④輟

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    ①車の手綱を取っている人(孔子)
    ②水が盛んに流れて戻らないさま(世の中が乱れて道から離れていくことのたとえ)
    ③まいた種に土をかぶせる
    ④やめる

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「使子路問津焉」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:子路をして津を問はしむ。
    現代語訳:子路に渡し場のありかを尋ねさせた。

  2. 「滔滔者、天下皆是也。而誰以易之」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:滔滔たる者、天下皆是れなり。而るに誰と以にか之を易へん。
    現代語訳:水が勢いよく流れて戻らないように、世の中が乱れていくのは天下どこでも同じだ。それなのに、誰と一緒にこれを変えようというのか。

  3. 「且而与其従辟人之士也、豈若従辟世之士哉」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:且つ而其の人を辟くるの士に従はんよりは、豈に世を辟くるの士に従ふに若かんや。
    現代語訳:そのうえ、あなたも、人を避ける人に従うよりは、世の中を避ける者に従ったほうがよいではないか。

  4. 「鳥獣不可与同群。吾非斯人之徒与而誰与」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:鳥獣は与に群を同じくすべからず。吾斯の人の徒と与にするに非ずして誰と与にせん。
    現代語訳:鳥や獣とは一緒に群れをなして暮らすことはできない。私はこの世の人々と一緒に生きるのでなくて、いったい誰と一緒に生きようか。

C 内容の読み取り

  1. 長沮が「是知津矣」と言ったのは、孔子をどのような人だと見ていたからか。

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    世の中に道を説いて回っている物知りの人なのだから、渡し場のありかくらい当然知っているはずだと見ていたから(皮肉を込めている)。

  2. 「辟人之士」「辟世之士」は、それぞれ誰を指すか。

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    辟人之士=孔子 辟世之士=長沮・桀溺(世を避けて暮らす隠者)

  3. 「耰而不輟」から、桀溺のどのような態度が読み取れるか。

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    孔子の一行と出会ったことなど、仕事を中断するほどの大事ではないとして、相手にしない態度(と読み取れる)。

  4. 孔子が「憮然」としたのはなぜか。

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    世の人々とともに世の中を正そうとする自分の考えが、隠者たちに理解されなかったからだと考えられる。

  5. 「天下有道、丘不与易也」には、孔子のどのような考えが表れているか。

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    今の天下には正しい道が行われていないので、世を避けるのではなく、人々とともに世の中を変えていかなければならないという考え。