孟浩然(もうこうねん)の『宿建徳江(けんとくこうにやどる)』の書き下し文・現代語訳・解説です。
旅の途中の作者は、日暮れ時、夕もやの立ちこめる岸辺に舟を泊めます。暗くなるにつれて、旅のさびしさがあらためてこみ上げてきます。舟の中から見えるのは、どこまでも広がる野と、低くたれこめた空、そして澄んだ川の水に映る月。わずか二十字で、旅の夜の景色と心情を描いた詩です。
書き下し文・現代語訳・解説
白文宿建徳江
書き下し建徳江に宿る
現代語訳建徳江に(舟を泊めて)宿る。
- 宿
- 泊まる。ここでは、舟を岸につないで、舟の中で夜を過ごすこと。
- 建徳江
- 川の名。今の浙江省建徳市のあたりを流れる川(新安江)を、このあたりでこう呼ぶ。
白文移舟泊煙渚
書き下し舟を移して煙渚に泊す
現代語訳舟を漕いで移り、夕もやに包まれた岸辺に泊める。
- 移舟
- 舟を動かす。舟を漕いで(岸のほうへ)移る。
- 煙渚
- 夕もやに包まれた岸辺。「煙」は、もや・霧のこと。物を燃やして出るけむりではない。「渚」は、水ぎわ・岸辺。
- 泊
- 舟を岸につないで泊まる。停泊する。
白文日暮客愁新
書き下し日暮客愁新たなり
現代語訳日が暮れてくると、旅のさびしさが新たにわいてくる。
- 日暮
- 日が暮れること。夕暮れ。
- 客愁
- 旅先で感じるさびしさ。旅愁。「客」は旅人の意。作者の心情がいちばんはっきり出ている語である。
- 新
- 前からあった思いが、あらためてわき上がってくる。
白文野曠天低樹
書き下し野曠くして天は樹に低れ
現代語訳野は見わたすかぎり広々としていて、空は木々の上に低くたれこめ、
- 野
- 川沿いに広がる平野。
- 曠
- さえぎるものがなく、広々としている。
- 天低樹
- 空が、木々に接するほど低くたれこめている。「天は樹より低く」(空が木々よりも低く見える)と読む読み方もある。
- ○ 作者は舟の中、つまり水面に近い低いところから見ている。広い野にさえぎるものがないので、日が暮れて空が低くたれこめ、まるで木々が空を支えているかのように見えるのである。
白文江清月近人
書き下し江清くして月は人に近し
現代語訳川の水は清く澄んでいて、(川面に映る)月は、(舟の中の)私のすぐ近くにある。
- 江
- 川。ここでは建徳江のこと。
- 月
- ここでは、澄んだ川の水面に映っている月。
- 人
- 作者自身のこと。
- ○ 天の月は遠いが、水面に映った月は、舟の中の作者のすぐそばにある。
テスト予想問題
A 詩の形式・語句
この詩の作者と詩の形式を答えよ。また、押韻している字をすべて抜き出せ。
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作者:孟浩然 詩の形式:五言絶句 押韻:新・人
この詩の中で、対句をなしている二つの句を答えよ。
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第三句(転句)と第四句(結句)
次の語の読みを、現代仮名遣いのひらがなで答えよ。
①泊(す)
②客愁
③曠(くして)解答を見る
①はく(す)
②かくしゅう
③ひろ(くして)次の語の意味を答えよ。
①煙渚
②客愁
③日暮解答を見る
①夕もやに包まれた岸辺
②旅のさびしさ(旅愁)
③日が暮れること。夕暮れ
B 書き下し文・現代語訳
「移舟泊煙渚」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:舟を移して煙渚に泊す
現代語訳:舟を漕いで移り、夕もやに包まれた岸辺に泊める。「江清月近人」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:江清くして月は人に近し
現代語訳:川の水は清く澄んでいて、(川面に映る)月は私のすぐ近くにある。
C 内容の読み取り
作者は、どこでこの詩をよんでいるか。
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建徳江の、夕もやに包まれた岸辺に泊めた舟の中。
この詩の中で、作者の気持ちが最もよく表れている語を、二字で抜き出せ。
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客愁
「野曠天低樹」は、どのような景色を表しているか。
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さえぎるもののない野が広々と続き、日が暮れて、空が木々に接するほど低くたれこめて見える景色。
「月近人」の「月」とはどのような月か。また、「人」とは誰をさすか。
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月:澄んだ川の水面に映っている月。
人:作者自身。この詩の主題を答えよ。
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旅の途中、建徳江に舟を泊めた夜に感じる、旅のさびしさ(旅愁)。