広瀬淡窓(ひろせたんそう)の『桂林荘雑詠示諸生(けいりんそうざつえい、しょせいにしめす)』の書き下し文・現代語訳・解説です。
作者の広瀬淡窓は、江戸時代後期の日本の儒学者・教育者です。故郷の豊後(今の大分県)日田に「桂林荘」という塾を開き、各地から集まった若者たちに学問を教えました。この詩は、故郷を離れて塾で学ぶ塾生たちに向けて作られた漢詩です。日本人が作った漢詩(日本漢詩)ですが、中国の詩と同じ決まりで作られています。
書き下し文・現代語訳・解説
白文桂林荘雑詠示諸生
書き下し桂林荘雑詠諸生に示す
現代語訳桂林荘で思いのままに詠んだ詩を、塾生たちに示す。
- 桂林荘
- 広瀬淡窓が開いた塾の名。
- 雑詠
- 感じたことを思いのままに詠んだ詩。
- 諸生
- 塾生たち。
白文休道他郷多苦辛
書き下し道ふを休めよ他郷苦辛多しと
現代語訳(諸君は)「故郷を離れた土地で学ぶのは、苦しくつらいことが多い」などと言ってはいけない。
- 休道
- 言うのはやめなさい。言ってはいけない。
- 道
- ここでは「いフ」。「言」と同じ意味。
- 他郷
- 故郷を離れた土地。ここでは、塾生たちが学んでいる桂林荘のある土地。
- 苦辛
- 苦しくつらいこと。
白文同袍有友自相親
書き下し同袍友有り自ら相親しむ
現代語訳ここには、一枚の綿入れを貸し借りして着るほどの仲間がいて、自然とたがいに親しくなっていくのだから。
- 同袍
- 一枚の袍(綿入れの着物・どてら)を分け合って着るような、親しい仲間。『詩経』の詩の「子と袍を同じくせん」による言葉。
- 自
- 「おのづかラ」。自然と。
- 相
- たがいに。
- 親
- 親しくする。仲よくする。
白文柴扉暁出霜如雪
書き下し柴扉暁に出づれば霜雪のごとし
現代語訳粗末な柴の戸を開けて明け方に外へ出てみると、霜が一面に降りていて、まるで雪のように真っ白だ。
- 柴扉
- 柴(雑木の小枝)を編んで作った戸。粗末な戸。塾生たちの質素な暮らしを表す。
- 暁
- 明け方。
- 如
- 「ごとシ」。〜のようだ。書き下し文では平仮名で書く。
- 霜如雪
- 霜が雪のように一面に降りて、真っ白になっている様子。明け方の寒さの厳しさを表す。
白文君汲川流我拾薪
書き下し君は川流を汲め我は薪を拾はん
現代語訳「さあ、君は川の水を汲んできてくれ。ぼくは薪を拾ってこよう。」
- 川流
- 川の流れ。ここでは川の水。
- 薪
- 燃料にする木。たきぎ。
- 汲川流・拾薪
- 水を汲み、薪を拾うのは、朝食の支度(炊事)のため。
- 君・我
- ここでは、塾生どうしが呼びかけ合う言葉と考えられる。
テスト予想問題
A 詩の形式・語句
この詩の作者はどの国の、いつの時代の人か。また、詩の形式を答え、押韻している字をすべて抜き出せ。
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作者:広瀬淡窓(江戸時代後期の日本の儒学者)
詩の形式:七言絶句 押韻:辛・親・薪次の語は何と読むか。現代仮名遣いのひらがなで書け。
①諸生
②同袍
③柴扉
④暁解答を見る
①しょせい
②どうほう
③さいひ
④あかつき次の語の意味を答えよ。
①他郷
②同袍
③柴扉
④自(自相親)解答を見る
①故郷を離れた土地
②一枚の綿入れを分け合って着るほどの親しい仲間
③柴で作った粗末な戸
④自然と
B 書き下し文・現代語訳
「休道他郷多苦辛」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:道ふを休めよ他郷苦辛多しと
現代語訳:故郷を離れた土地で学ぶのは苦しくつらいことが多い、などと口に出してはならない。「柴扉暁出霜如雪」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:柴扉暁に出づれば霜雪のごとし
現代語訳:粗末な柴の戸から明け方に外へ出てみると、霜が雪のように一面に降りている。「君汲川流我拾薪」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:君は川流を汲め我は薪を拾はん
現代語訳:君は川の水を汲んできてくれ。ぼくは薪を拾ってこよう。
C 内容の読み取り
起句の「他郷」とは、具体的にはどこのことか。また、塾生たちは何のためにそこへ来ているのか。
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桂林荘(塾生たちが学んでいる塾のある土地)。学問をするために、故郷を離れて来ている。
承句「同袍有友自相親」とあるが、塾生たちが自然と親しくなるのはなぜか。
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一枚の綿入れを貸し借りするほど、苦労を分け合って共同生活をしているから。
結句で、「君」と「我」が水を汲んだり薪を拾ったりするのは、何をするためか。
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朝食の支度(炊事)をするため。
この詩で作者が塾生たちに言いたいことは何か。説明せよ。
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故郷を離れて学ぶのは苦労もあるが、仲間と寝食を共にし、励まし合いながら学ぶ生活の中にこそ楽しみがある、ということ。