『詩経(しきょう)』の『桃夭(とうよう)』の書き下し文・現代語訳・解説です。
若々しい桃の木が、花を咲かせ、実をつけ、葉を茂らせる。その桃の木のように若く美しい娘が、いま嫁いでいく。嫁ぎ先でもきっとうまくやっていくだろう――と、結婚を祝って歌われた詩です。同じ形の句を三回くり返し、少しずつ言葉を変えて歌っています。
書き下し文・現代語訳・解説
第一章 花
白文桃之夭夭
書き下し桃の夭夭たる
現代語訳桃の若木は、みずみずしく若々しい。
- 夭夭
- 若々しいさま。「夭」は、若いという意味。嫁いでいく娘の若々しさを、それとなくたとえている。
- 之
- ここでは「の」と読む。
白文灼灼其華
書き下し灼灼たり其の華
現代語訳その花は、燃え立つように明るく咲いている。
- 灼灼
- 花が明るく盛んに咲いているさま。「灼」は、火が赤々と燃えること。
- 華
- 花。嫁いでいく娘の美しさをたとえる。
白文之子于帰
書き下し之の子于き帰ぐ
現代語訳(その桃のように若く美しい)この娘が、いま嫁いでいく。
- 之子
- この娘。嫁いでいく娘をさす。「之」は「こノ」と読む。
- 于帰
- 嫁いでいく。「于」は「ゆク」(行く)、「帰」は「とつグ」(嫁ぐ)。
白文宜其室家
書き下し其の室家に宜しからん
現代語訳きっと嫁ぎ先の家庭と、うまくやっていくことだろう。
- 宜
- 「よろシ」。(嫁ぎ先に)ふさわしい。うまく調和する。ここは「よろしからん」と読む形容詞で、再読文字「宜」(よろしく〜べし)の用法ではない。
- 室家
- 嫁ぎ先の家庭。
- 宜しからん
- 「ん」は推量。「きっと〜だろう」と、娘の幸せを願う気持ちがこもる。
第二章 実
白文桃之夭夭
書き下し桃の夭夭たる
現代語訳桃の若木は、みずみずしく若々しい。
白文有蕡其実
書き下し蕡たる有り其の実
現代語訳その実は、ふっくらとたくさん実っている。
- 蕡
- 実が大きく、たくさんなっているさま。
- 実
- 桃の実。嫁いだ娘が子宝に恵まれることをたとえる。
白文之子于帰
書き下し之の子于き帰ぐ
現代語訳この娘が、いま嫁いでいく。
白文宜其家室
書き下し其の家室に宜しからん
現代語訳きっと嫁ぎ先の家庭と、うまくやっていくことだろう。
- 家室
- 「室家」と同じ意味。第二章では「実」と韻をそろえるために、「室」を後ろに置いて「家室」としている。
第三章 葉
白文桃之夭夭
書き下し桃の夭夭たる
現代語訳桃の若木は、みずみずしく若々しい。
白文其葉蓁蓁
書き下し其の葉蓁蓁たり
現代語訳その葉は、青々と盛んに茂っている。
- 蓁蓁
- 葉が盛んに茂っているさま。
- 葉
- 葉が茂ることで、嫁ぎ先の家が栄えることをたとえる。
白文之子于帰
書き下し之の子于き帰ぐ
現代語訳この娘が、いま嫁いでいく。
白文宜其家人
書き下し其の家人に宜しからん
現代語訳きっと嫁ぎ先の家の人々と、仲よくやっていくことだろう。
- 家人
- 嫁ぎ先の家の人々。
テスト予想問題
A 詩の形式・語句
この詩が収められている、中国最古の詩集の名を答えよ。また、この詩の形式を答えよ。
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詩集:『詩経』 形式:四言古詩
この詩の押韻している字を、章ごとにすべて抜き出せ。
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第一章:華・家 第二章:実・室 第三章:蓁・人
次の語は何と読むか。送り仮名も含め、現代仮名遣いのひらがなで書け。
①夭夭
②灼灼
③之子
④于帰解答を見る
①ようよう
②しゃくしゃく
③このこ
④ゆきとつぐ次の語の意味を答えよ。
①夭夭
②灼灼
③蓁蓁
④室家解答を見る
①若々しいさま
②花が明るく盛んに咲いているさま
③葉が盛んに茂っているさま
④嫁ぎ先の家庭
B 書き下し文・現代語訳
「之子于帰 宜其室家」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:之の子于き帰ぐ 其の室家に宜しからん
現代語訳:この娘が嫁いでいく。きっと嫁ぎ先の家庭と、うまくやっていくことだろう。「有蕡其実」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:蕡たる有り其の実
現代語訳:その実は、ふっくらとたくさん実っている。
C 内容の読み取り
各章の第一句「桃之夭夭」は、何の、どのような様子をたとえているか。
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嫁いでいく娘の、若々しく美しい様子。
「華」「実」「葉」は、それぞれ何をたとえているか。
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華:嫁いでいく娘の美しさ 実:娘が子宝に恵まれること 葉:嫁ぎ先の家が栄えること
第一章の「室家」と第二章の「家室」は同じ意味だが、第二章で語順を入れかえているのはなぜか。
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第二章の「実」と韻をそろえる(押韻する)ため。
この詩は、どのようなときに歌われ、どのような願いがこめられているか。
解答を見る
嫁入り(結婚)を祝うときに歌われた。嫁いでいく娘の嫁ぎ先での幸せと、子孫や一家の繁栄への願いがこめられている。