岑参(しんじん)の『磧中作(せきちゅうのさく)』の書き下し文・現代語訳・解説です。
馬に乗って西へ進み続けると、平らな砂漠がどこまでも広がり、まるで天にまで届いてしまいそうです。家を出てから、もう満月を二度見ました。今夜はどこに泊まることになるのかもわからず、見わたしても人家の煙一つ見えません。果てしない砂漠を旅する心細さを、距離と時間の両方から描いた詩です。
書き下し文・現代語訳・解説
白文走馬西来欲到天
書き下し馬を走らせて西来天に到らんと欲す
現代語訳馬を走らせて西へ西へと進んでいくと、このまま天にまで行き着いてしまいそうだ。
- 磧中
- 砂漠の中。ここでは、西域のタクラマカン砂漠をさす。
- 西来
- 西に向かって進む。「来」は、動作の方向を表す助字で、「西から来る」という意味ではない。
- 欲
- 「ほつス」。ここでは「~しそうだ」の意味。「~したい」ではない。
- 欲到天
- 天にまで届きそうだ。砂漠が地平線までずっと続き、その先が天につながっているように見える。
白文辞家見月両回円
書き下し家を辞してより月の両回円かなるを見る
現代語訳家に別れを告げて旅立ってから、月がまるくなる(満月になる)のを二度見た。
- 辞家
- 家に別れを告げて出る。「辞」は「辞去」の「辞」と同じ意味。
- 両回
- 二回。
- 円
- 「まどカナリ」。まるい。ここは月が満月になること。
- 月両回円
- 満月を二度見た。つまり、家を出てから二か月がたったということ。
白文今夜不知何処宿
書き下し今夜は知らず何れの処にか宿せん
現代語訳今夜は、いったいどこに泊まることになるのか、わからない。
- 何処
- 「いづレノところニカ」。どこに。
- 宿
- 泊まる。宿をとる。
- 不知何処宿
- 「知らず」を先に読み、そのあとに「何れの処にか宿せん」と、わからない内容を続けている(倒置)。
- 第三句は、心細く不安な作者の気持ちが表れた句。
白文平沙万里絶人煙
書き下し平沙万里人煙絶ゆ
現代語訳平らな砂漠が見わたす限り万里も続いて、人家の煙はまったく見えない。
- 平沙
- 平らな砂漠。題の「磧」と同じものをさす。
- 万里
- 非常に遠いこと。
- 人煙
- 人家から立ちのぼる、炊事などの煙。人が暮らしている気配。
- 絶
- まったくない。
テスト予想問題
A 詩の形式・語句
この詩の作者と詩の形式を答えよ。また、押韻している字をすべて抜き出せ。
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作者:岑参 詩の形式:七言絶句 押韻:天・円・煙
次の語の意味を答えよ。
①磧中
②西来
③平沙
④人煙解答を見る
①砂漠の中
②西に向かって進む
③平らな砂漠
④人家から立ちのぼる(炊事の)煙「欲到天」の「欲」の読みと、ここでの意味を答えよ。
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読み:ほっす 意味:~しそうだ。(今にも~しようとする。)
B 書き下し文・現代語訳
「今夜不知何処宿」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:今夜は知らず何れの処にか宿せん
現代語訳:今夜は、いったいどこに泊まることになるのかわからない。「辞家見月両回円」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:家を辞してより月の両回円かなるを見る
現代語訳:家に別れを告げて旅立ってから、月が満月になるのを二度見た。第三句は倒置の形で読まれている。「知らず」の内容にあたる部分を、句の中から三字で抜き出せ。
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何処宿
C 内容の読み取り
「欲到天」とは、どのような様子を表しているか。
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平らな砂漠が地平線までずっと続き、このまま進めば天にまで行き着いてしまいそうに見える様子。
「月両回円」から、どのようなことがわかるか。
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満月を二度見たことから、家を出てから二か月がたったこと。
都からの遠さを、空間的に表している句と、時間的に表している句は、それぞれ第何句か。
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空間的:第一句 時間的:第二句
「絶人煙」とは、どのようなことか。
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人家の煙がまったく見えず、人の住んでいる気配がないということ。
この詩に表れた作者の心情を答えよ。
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故郷を遠く離れ、人の気配のない広い砂漠を旅する孤独と不安(心細さ)。