王昌齢(おうしょうれい)の『芙蓉楼送辛漸(ふようろうにてしんぜんをおくる)』の書き下し文・現代語訳・解説です。
冷たい雨が夜のうちに呉の地に降りこみ、明け方、雨のあがった空の下で、作者は洛陽へ旅立つ友人の辛漸を見送ります。前半は見送りの場面、後半は「洛陽の人たちに、私の心は玉の壺の中の氷のように澄んでいると伝えてほしい」という、作者自身の心境です。結句「一片の氷心玉壺に在り」がよく知られています。
書き下し文・現代語訳・解説
白文芙蓉楼送辛漸
書き下し芙蓉楼にて辛漸を送る
現代語訳芙蓉楼で、辛漸を見送る。
- 芙蓉楼
- 今の江蘇省鎮江市にあった高い建物。長江に面していた。
- 辛漸
- 作者の友人。洛陽へ向かって旅立つ。
白文寒雨連江夜入呉
書き下し寒雨江に連なりて夜呉に入る
現代語訳冷たい雨が、川面と一つにつながるように激しく降って、夜、この呉の地に降りこんできた。
- 寒雨
- 冷たい雨。秋の終わりから冬の初めにかけて降る雨。
- 連江
- 霧のように細かい雨が激しく降り、雨と長江の川面との境目がわからないようす。「江」は長江のこと。
- 入呉
- (寒雨が)呉の地方に降り出す。「入」の主語は「寒雨」。「呉」は、作者たちのいる地方(今の江蘇省のあたり)。
白文平明送客楚山孤
書き下し平明客を送れば楚山孤なり
現代語訳夜明けに旅立つ君を見送ると、(雨のあがった空の下に)楚の山がぽつんと一つそびえている。
- 平明
- 夜明け。明け方。
- 客
- 旅人。ここでは、旅立つ辛漸のこと。
- 楚山
- 楚の地方の山。第一句の「呉」と対応している。
- 孤
- ぽつんと一つだけあるようす。見送ったあとに一人残される作者のさびしさも感じさせる。
白文洛陽親友如相問
書き下し洛陽の親友如し相問はば
現代語訳(君が帰る)洛陽の親しい人たちが、もし(私のようすを)君にたずねたならば、
- 洛陽
- 唐の副都。辛漸が向かう先。
- 親友
- 洛陽にいる作者の親しい人たち。ここは親類と友人の意味ととる説もある。
- 如
- 「もシ」。仮定を表す。
- 相問
- (私の消息を)君にたずねる。「相」は「互いに」の意味ではなく、動作に相手(対象)があることを示す。
白文一片氷心在玉壺
書き下し一片の氷心玉壺に在り
現代語訳(私の心は)一片の氷が玉の壺の中にあるように、清く澄みきっている(と答えてくれたまえ)。
- 一片
- ひとかけらの。
- 氷心
- 氷のように澄みきった心。雑念や濁りのない、清らかな心境。冷たい心という意味ではない。
- 玉壺
- 白玉(美しい宝石)で作られた壺。
- ○ 「氷」と「玉壺」はどちらも清らかさのたとえ。清らかな氷が、清らかな玉の壺に入っていると言うことで、心の清らかさをいっそう強めている。
テスト予想問題
A 詩の形式・語句
この詩の作者と詩の形式を答えよ。また、押韻している字をすべて抜き出せ。
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作者:王昌齢 詩の形式:七言絶句 押韻:呉・孤・壺
次の語の意味を答えよ。
①平明
②客
③氷心
④玉壺解答を見る
①夜明け。明け方
②旅人(辛漸)
③氷のように澄みきった心
④白玉で作られた壺「如」「相」の読みを、送り仮名も含めて現代仮名遣いのひらがなで答えよ。
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如:もし 相:あい
B 書き下し文・現代語訳
「洛陽親友如相問」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:洛陽の親友如し相問はば
現代語訳:洛陽の親しい人たちが、もし私のようすを君にたずねたならば、「一片氷心在玉壺」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:一片の氷心玉壺に在り
現代語訳:(私の心は)一片の氷が玉の壺の中にあるように、清く澄みきっている。
C 内容の読み取り
「寒雨連江」とは、どのようなようすか。
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霧のように細かい冷たい雨が激しく降り、雨と長江の川面との境目がわからないようす。
辛漸はどこへ向かって旅立つのか。また、作者はどこで見送っているのか。それぞれ詩の中の語で答えよ。
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向かう先:洛陽 見送る場所:芙蓉楼
「相問」とあるが、洛陽の親友は、誰に何をたずねるのか。
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辛漸に、作者の消息(ようす)をたずねる。
「一片氷心在玉壺」には、作者のどのような心境が表れているか。
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左遷されて不遇の身にあっても、雑念がなく、清らかに澄みきった心を保っているという心境。
見送ったあとに一人残される作者のさびしさを感じさせる字を、第二句から一字で抜き出せ。
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孤