『不死之薬(不死の薬)』書き下し文・現代語訳・解説|韓非子・テスト予想問題付き

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. 中射の士が薬を食べる
  3. 王が怒る
  4. 中射の士の弁明
  5. テスト予想問題

『不死之薬(ふしのくすり)』(不死の薬)の書き下し文・現代語訳・句法を解説します。出典は、戦国時代末期の韓非(かんぴ)の著とされる法家の思想書『韓非子』(説林上)です。

書き下し文・現代語訳・解説

中射の士が薬を食べる

本文(訓読文)

白文有献不死之薬於荊王者。

書き下し不死の薬を荊王(けいわう)に献ずる者有り。

現代語訳不死の薬を荊王に献上する者がいた。

不死之薬
飲めば死ななくなるという仙薬。
荊王
楚の王。「荊」は楚の国のこと。
献
「けんズ」。献上する。
於
置き字。「荊王に」と、動作の相手を表す。
有~者
「~者有り」。~する者がいた。

白文謁者操之以入。

書き下し謁者(えつしや)之を操(と)りて以つて入る。

現代語訳取り次ぎ役がその薬を手に持って(宮中の奥へ)入っていった。

謁者
取り次ぎの役人。
操
「とル」。手に持つ。
之
不死の薬。
以
ここは「そうして」と軽く下につなぐ。

白文中射之士問曰、「可食乎。」

書き下し中射(ちゆうしや)の士問ひて曰はく、「食らふべきか。」と。

現代語訳中射の士が尋ねて言うことには、「(それは)食べられるのか。」と。

中射之士
宮中の警護をする役人。
可
「べシ」。ここは「~できる」(可能)、または「~してよい」(許可)。
乎
「か」。疑問。

白文曰、「可。」

書き下し曰はく、「可なり。」と。

現代語訳(取り次ぎ役が)答えて言うことには、「食べられる。」と。

曰
言ったのは謁者(取り次ぎ役)。
可
「かナリ」。「可食(食らふべし)」を短く言ったもの。

白文因奪而食之。

書き下し因(よ)りて奪ひて之を食らふ。

現代語訳そこで(中射の士は)薬を奪って食べてしまった。

因
「よリテ」。そこで。
而
置き字。「~て」と下につなぐ。

王が怒る

本文(訓読文)

白文王大怒、使人殺中射之士。

書き下し王大いに怒り、人をして中射の士を殺さしめんとす。

現代語訳王はひどく怒り、人に命じて中射の士を殺させようとした。

大怒
ひどく怒る。献上された不死の薬を、自分より先に家臣に食べられてしまったから。
使
「しム」。使役。
しめんとす
「~させようとした」。まだ殺してはいない。

中射の士の弁明

本文(訓読文)

白文中射之士、使人説王曰、

書き下し中射の士、人をして王に説(と)かしめて曰はく、

現代語訳中射の士は、人を介して王に説明させて言うことには、

説
「とク」。説明する。言い聞かせる。

白文「臣問謁者。

書き下し「臣謁者に問ふ。

現代語訳「私は取り次ぎ役に尋ねました。

臣
わたくし。臣下が主君に対して自分を指していう語。

白文謁者曰、『可食。』

書き下し謁者曰はく、『食らふべし。』と。

現代語訳(すると)取り次ぎ役は、『食べてもよい。』と言いました。

可食
ここでは、中射の士は「食べてもよい」(許可)の意味として王に伝えている。

白文臣故食之。

書き下し臣故(ゆゑ)に之を食らふ。

現代語訳だから私はそれを食べたのです。

故
「ゆゑニ」。だから。

白文是臣無罪而罪在謁者也。

書き下し是れ臣に罪無くして罪は謁者に在るなり。

現代語訳つまり、私には罪はなく、罪は取り次ぎ役にあるのです。

是
これ。ここまでに述べたこと。
而
置き字。「~して」と下につなぐ。
在
「あリ」。存在する場所を表す。
本文(訓読文)

白文且客献不死之薬、臣食之而王殺臣、是死薬也。

書き下し且(か)つ客(かく)不死の薬を献じ、臣之を食らひて王臣を殺さば、是れ死薬なり。

現代語訳そのうえ、客が不死の薬を献上し、私がそれを食べたのに、王様が私を殺したならば、これは死の薬だということになります。

且
「かツ」。そのうえ。さらに。
客
よそから来た人。不死の薬を献上した者を指す。
殺さば
殺したならば。仮定を表す。
死薬
(食べると)死ぬ薬。不死の薬を食べた者が死ぬのだから、「不死」ではなく「死」の薬になる、という理屈。

白文是客欺王也。

書き下し是れ客王を欺くなり。

現代語訳(そうなると)客が王様をだましたということになります。

欺
「あざむク」。だます。

白文夫殺無罪之臣而明人之欺王也。

書き下し夫(そ)れ罪無きの臣を殺して人の王を欺くを明らかにするなり。

現代語訳そもそも(私を殺すことは)、罪のない臣下を殺して、人が王様をだましたことを世間に明らかにすることになるのです。

夫
「そレ」。文頭に置いて「そもそも」の意味を表す。
無罪之臣
罪のない臣下。中射の士自身のこと。
人
不死の薬を献上した客を指す。

白文不如釈臣。」

書き下し臣を釈(ゆる)すに如(し)かず。」と。

現代語訳私をお許しになるのがいちばんよいでしょう。」と。

釈
「ゆるス」。許す。釈放する。
不如A
「Aに如かず」。Aに及ばない。Aするのがいちばんよい。

白文王乃不殺。

書き下し王乃(すなは)ち殺さず。

現代語訳王はそこで(中射の士を)殺さなかった。

乃
「すなはチ」。そこで。

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)を答えよ。
    ①操(りて)
    ②因(りて)
    ③故(に)
    ④且(つ)
    ⑤夫(れ)
    ⑥乃(ち)

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    ①とりて
    ②よりて
    ③ゆえに
    ④かつ
    ⑤それ
    ⑥すなわち

  2. 「謁者」「中射之士」「臣」は、それぞれどのような人を表すか。

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    謁者=取り次ぎの役人
    中射之士=宮中の警護をする役人
    臣=わたくし(臣下が主君に対して自分をいう語。ここでは中射の士自身)

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「王大怒、使人殺中射之士」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:王大いに怒り、人をして中射の士を殺さしめんとす。
    現代語訳:王はひどく怒り、人に命じて中射の士を殺させようとした。

  2. 「夫殺無罪之臣而明人之欺王也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:夫れ罪無きの臣を殺して人の王を欺くを明らかにするなり。
    現代語訳:そもそも(私を殺せば)、罪のない家来を殺したうえに、客が王をあざむいたことを世に示す結果になる。

  3. 「不如釈臣」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:臣を釈すに如かず。
    現代語訳:私を許すのがいちばんよい。

C 内容の読み取り

  1. 謁者は「可」をどのような意味で答えたと考えられるか。また、中射の士は王への弁明の中で、謁者の言葉をどのような意味だったことにしたか。

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    謁者=食べることができる(可能)
    中射の士=食べてもよい(許可)

  2. 王が大いに怒ったのはなぜか。

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    自分に献上された不死の薬を、中射の士が奪って食べてしまったから。

  3. 「客」とは、だれのことか。本文中から抜き出して答えよ。

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    献不死之薬於荊王者(不死の薬を荊王に献上した者)

  4. 「是死薬也」とあるが、中射の士はなぜ「死薬」になると言っているのか。

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    不死の薬を食べた自分が王に殺されれば、その薬は人を死なせない薬ではなかった、つまり死の薬だったことになるから。

  5. 王が中射の士を殺さなかったのはなぜだと考えられるか。

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    中射の士を殺すと、不死の薬は偽物で、自分が客にあざむかれていたと人々に知れわたってしまうから。