『出藍之誉(しゅつらんのほまれ)』(出藍の誉れ)の書き下し文・現代語訳・句法・故事成語の意味を解説します。出典は、戦国時代の儒家・荀子(荀況)の思想書『荀子』(勧学篇)です。
書き下し文・現代語訳・解説
学問はやめてはならない
白文君子曰、「学不可以已。
書き下し君子曰はく、「学は以つて已むべからず。
現代語訳君子は言う、「学ぶことを途中でやめてはいけない。
- 君子
- 徳のある立派な人。ここでは、学問に志す人も含めていう。
- 学
- 学問。学ぶこと。
- 已
- 「やム」。やめる。
- 不可
- 「~べからず」。ここは「~してはならない」(禁止)。
白文青取之於藍、而青於藍、
書き下し青は之を藍より取りて、藍よりも青く、
現代語訳青色の染料は藍草から取るが、もとの藍草よりも青く、
- 青
- はじめの「青」は名詞で、青色(の染料)。あとの「青」は形容詞で、「青い」。
- 藍
- タデ科の草。青色の染料の原料になる。
- 於藍
- はじめの「於」は「藍より」(~から)と起点を表し、あとの「於」は「藍よりも」と比較を表す。どちらも読まない置き字。
- 而
- 置き字。ここは逆接で、「~が」と訳すとよい。
白文氷水為之、而寒於水。」
書き下し氷は水之を為りて、水よりも寒し。」と。
現代語訳氷は水がもとになってできるが、もとの水より冷たい。」と。
- 為之
- 「之を為りて」。(水が)氷を作って。氷は水からできる、ということ。
- 寒
- 冷たい。「つめたし」と読むこともある。
- 寒於水
- 水よりも冷たい。「於」は比較。
木と金のたとえ
白文木直中縄、輮以為輪、其曲中規。
書き下し木の直きこと縄に中たるも、輮めて以つて輪と為せば、其の曲がること規に中たる。
現代語訳墨縄にぴったり合うほどまっすぐな木でも、曲げて車輪にすると、その曲がり具合はコンパス(で描いた円)にぴったり合う。
- 縄
- 墨縄。大工が木にまっすぐな線を引くのに使う道具。
- 中
- 「あタル」。ぴったり合う。「的中」の「中」。
- 輮
- 「たわム」。たわめて曲げる。
- 輪
- 車輪。
- 規
- 円を描く道具。コンパス。
白文雖有槁暴、不復挺者、輮使之然也。
書き下し槁暴有りと雖も、復た挺びざるは、輮むること之をして然らしむるなり。
現代語訳(その木が)枯れて乾いても、二度とまっすぐに伸びないのは、曲げたことが木をそのようにさせたのである。
- 槁暴
- 枯れて乾くこと。
- 雖
- 「いへどモ」。~しても。
- 挺
- 「のブ」。まっすぐに伸びる。
- 者
- ここは「は」と読み、書き下し文ではひらがなにする。
- 之
- まっすぐだった木を指す。
- 然
- 「しかリ」。そのようである。ここは、曲がって規(コンパス)に合うようになったことを指す。
白文故木受縄則直、金就礪則利。
書き下し故に木縄を受くれば則ち直く、金礪に就けば則ち利し。
現代語訳だから、木は墨縄を当てて削ればまっすぐになり、金属は砥石にかけて磨けば鋭くなる。
- 故
- 「ゆゑニ」。だから。
- 受縄
- 墨縄を当てられる。墨縄で引いた線に沿って削られる。
- 則
- 「すなはチ」。「~ば則ち…」で、~すれば…となる。
- 金
- 金属。刃物。
- 礪
- 砥石。
- 就
- 「つク」。ここは、砥石にかけること。
- 利
- 「するどシ」。鋭い。「鋭利」の「利」。
君子の学び
白文君子博学、而日参省乎己、則智明而行無過矣。
書き下し君子博く学びて、日に己を参省すれば、則ち智明らかにして行ひに過ち無し。
現代語訳君子が広く学び、毎日何度も自分自身をふり返れば、知恵は明らかになり、行いに過ちがなくなる。
- 博学
- 広く学ぶ。
- 日
- 毎日。
- 参省
- 何度も反省する。「参」は「三」と同じで、回数の多いことを表す(三回に限らない)。
- 乎
- 置き字。動作の対象を表す。
- 己
- 自分自身。
- 智
- 知恵。知識。
- 過
- 「あやまチ」。過失。
- 矣
- 置き字。断定を表す。
テスト予想問題
A 語句
次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)を答えよ。
①已(む)
②中(たるも)
③輮(めて)
④礪
⑤参省解答を見る
①やむ
②あたるも
③たわめて
④といし
⑤さんせい「縄」「規」「利」は、本文ではそれぞれどのような意味か。
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縄=墨縄(まっすぐな線を引く道具)
規=コンパス(円を描く道具)
利=鋭い
B 書き下し文・現代語訳
「学不可以已」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:学は以つて已むべからず。
現代語訳:学問は途中でやめてはならない。「青取之於藍、而青於藍」を書き下し文にし、現代語訳せよ。また、二つの「於」はそれぞれどのような意味を表しているか。
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書き下し文:青は之を藍より取りて、藍よりも青し。
現代語訳:青色は藍草から取るが、藍草よりも青い。
はじめの「於」=起点(~から) あとの「於」=比較(~よりも)「雖有槁暴、不復挺者、輮使之然也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:槁暴有りと雖も、復た挺びざるは、輮むること之をして然らしむるなり。
現代語訳:枯れて乾いても、二度とまっすぐに伸びないのは、曲げたことが(木を)そのようにさせたからである。「君子博学、而日参省乎己、則智明而行無過矣」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:君子博く学びて、日に己を参省すれば、則ち智明らかにして行ひに過ち無し。
現代語訳:君子が広く学んで、毎日何度も自分自身を反省すれば、知恵は明らかになり、行いに過ちがなくなる。
C 内容の読み取り
「青」と「氷」の例は、どのようなことをたとえているか。
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もとになったものから生まれたものが、もとのものよりすぐれたものになるということ。(人も学問を続ければ、もとの自分よりすぐれた者になれるということ。)
「輮使之然也」の「之」と「然」は、それぞれ何を指すか。
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之=(もとはまっすぐだった)木
然=曲がって規(コンパス)に合うようになり、二度とまっすぐに戻らない状態「木受縄則直、金就礪則利」は、どのようなことをたとえているか。
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外から手を加えることで、ものの性質を変えることができるということ。(人も学問によって、生まれつきの性質を正しく変えられるということ。)
学問をやめずに続けた結果、君子はどうなると筆者は言っているか。本文の語句を使って答えよ。
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智明らかにして行ひに過ち無し。(知恵が明らかになり、行いに過ちがなくなる。)
この文章から生まれた故事成語を答え、その意味を説明せよ。
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出藍の誉れ。弟子が師よりもすぐれた人物になること。