『守株(しゅしゅ)』(株を守る)の書き下し文・現代語訳・句法・故事成語の意味を解説します。出典は、戦国時代末期の法家の思想家・韓非の著作『韓非子(かんぴし)』(五蠹篇)です。
書き下し文・現代語訳・解説
うさぎが切り株にぶつかる
白文宋人有耕田者。
書き下し宋人に田を耕す者有り。
現代語訳宋の国の人に、畑を耕している者がいた。
- 宋
- 春秋・戦国時代の国の名。宋の人は、昔の中国の笑い話で、愚か者の役としてよく登場するといわれる(「助長」の話も宋の人)。
- 宋人
- 「そうひと」と読む。国名の下の「人」は「ひと」と訓読みするのがならわし。
- 田
- 耕作地。畑。
白文田中有株。
書き下し田中に株有り。
現代語訳畑の中に、木の切り株があった。
- 株
- 木の切り株。「くいぜ」と読むこともある。
白文兎走触株、折頸而死。
書き下し兎走りて株に触れ、頸を折りて死す。
現代語訳うさぎが駆けてきて切り株に体当たりし、首の骨を折って死んでしまった。
- 触
- 「ふル」。ぶつかる。
- 頸
- くび。
- 而
- 置き字。読まない。
株を守る
白文因釈其耒而守株、冀復得兎。
書き下し因りて其の耒を釈てて株を守り、復た兎を得んことを冀ふ。
現代語訳そこで(その人は)すきを放り出して切り株を見張り、もう一度うさぎを手に入れたいと願った。
- 因
- 「よリテ」。そこで。それで。
- 耒
- 「すき」。田畑を耕す農具。
- 釈
- 「すツ」。手から放す。捨てる。
- 守
- じっと見守る。番をする。
- 冀
- 「こひねがフ」。強く願う。
- 復
- 「まタ」。もう一度。再び。
白文兎不可復得、而身為宋国笑。
書き下し兎復た得べからずして、身は宋国の笑ひと為れり。
現代語訳うさぎは二度と手に入れることはできず、その人自身は宋の国じゅうの笑い者になってしまった。
- 不可復得
- 「復た得べからず」。二度とは手に入れることができない。
- 得
- ここでは「う」と読む下二段活用の動詞。「得べからず」の「得」は終止形で「う」。
- 身
- 自分自身。ここでは、その宋の人。
- 為宋国笑
- 宋の国の人々に笑われる。受身の意味。
韓非の主張
白文今欲以先王之政、治当世之民、皆守株之類也。
書き下し今先王の政を以て、当世の民を治めんと欲するは、皆株を守るの類なり。
現代語訳いま、いにしえの聖王が行った政治で現代の民を治めようとするのは、どれも切り株を見張っていた宋の人と同類である。
- 先王
- 昔の聖天子たち。前の段で挙げられている尭・舜・禹・湯・武などを指す。
- 先王之政
- 昔の聖王が行った政治のやり方。
- 以
- 「もつテ」。~で。手段を表す。
- 当世
- 今の世の中。
- 類
- たぐい。同類。
テスト予想問題
A 語句
次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)を答えよ。
①宋人
②耒
③因
④冀解答を見る
①そうひと
②すき
③よりて
④こいねがう次の語の、本文での意味を答えよ。
①株
②釈
③当世解答を見る
①木の切り株
②手から放して捨てる
③今の世の中
B 書き下し文・現代語訳
「兎不可復得」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:兎復た得べからず。
現代語訳:うさぎは二度と手に入れることはできなかった。「身為宋国笑」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:身は宋国の笑ひと為れり。
現代語訳:その人は宋の国じゅうの笑い者になった。「今欲以先王之政、治当世之民、皆守株之類也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:今先王の政を以て、当世の民を治めんと欲するは、皆株を守るの類なり。
現代語訳:いま、いにしえの聖王が行った政治で現代の民を治めようとするのは、どれも切り株を見張っていた宋の人と同類である。「為宋国笑」は、受身の形から一字が省かれたものである。省かれている字を答え、その字を補ったときの書き下し文を書け。
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省かれている字:所
書き下し文:宋国の笑ふ所と為る。
C 内容の読み取り
「釈其耒而守株」とあるが、宋の人は何をやめて、何を期待したのか。説明せよ。
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畑を耕す仕事をやめて、また切り株にうさぎがぶつかって死に、それを手に入れられることを期待した。
「先王之政」とは、具体的にどのようなものか。
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昔の聖王たち(尭・舜・禹・湯・武など)が行った政治のやり方。
韓非は、「先王之政」で「当世之民」を治めようとすることを、宋の人のどのような点と同じだと考えているか。
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以前うまくいったやり方を、時代が変わった今もそのまま使えば、また同じよい結果が得られると思いこんでいる点。
この話から生まれた故事成語「守株(株を守る)」の意味を答えよ。
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古いやり方にこだわって、融通がきかないこと。