韓愈『師説』②書き下し文・現代語訳・解説|師につくことを恥じる人々・テスト予想問題付き

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. わが子には師をつける親
  3. 職人たちと士大夫
  4. テスト予想問題
  5. 続き(③)
  6. 前を読む

韓愈(かんゆ)『師説(しせつ)』の第三段落、「愛其子〜其可怪也歟」の書き下し文・現代語訳・解説です。出典は『唐宋八家文読本』。

①では、師とは「道を伝へ業を受け惑ひを解く」人であり、年齢や身分に関係なく道のある所に師がいること、今の人々は師に学ぶことを恥じていることが述べられました。

書き下し文・現代語訳・解説

わが子には師をつける親

本文(訓読文)

白文愛其子、択師而教之。

書き下し其の子を愛しては、師を択(えら)びて之に教へしむ。

現代語訳(人々は)自分の子をかわいがっては、よい師を選んで子どもを教えさせる。

愛
かわいがる。
択
「えらブ」。選ぶ。
之
わが子を指す。
教
「教へしむ」。(師に)教えさせる。

白文於其身也、則恥師焉。

書き下し其の身に於(お)いてや、則(すなは)ち師とするを恥づ。

現代語訳それなのに、親自身が学ぶ段になると、師について学ぶのを恥ずかしがる。

其身
親自身。
於其身也
「其の身に於いてや」。自分自身のこととなると。
則
「すなはチ」。ここでは前の部分と区別して、「〜の場合は」という意味を表す。
恥師
師とすることを恥じる。師について学ぶことを恥とする。

白文惑矣。

書き下し惑へり。

現代語訳考え違いをしている。

惑
ここでは、心得違い。道理に外れた考え。
○わが子には師をつけて学ばせるのに、親自身は師につくことを恥じている、という矛盾を「惑」と言っている。

白文彼童子之師、授之書而習其句読者也。

書き下し彼(か)の童子の師は、之に書を授けて其の句読(くとう)を習はしむる者なり。

現代語訳あの子どもの師というのは、子どもに書物を与えて、その読み方を習わせる者である。

彼
「かノ」。あの。
童子
子ども。
之
子どもを指す。
句読
文章の読み方。昔の文章には句読点がなかったので、まず句読点をつけて区切ることが読解のはじめだった。

白文非吾所謂伝其道、解其惑者也。

書き下し吾が所謂(いはゆる)其の道を伝へ、其の惑ひを解く者に非ざるなり。

現代語訳私の言うところの、道を伝え、迷いを解いてくれる師ではないのだ。

所謂
「いはゆる」。ここでは、(前に)私が言ったところの。
○「伝其道、解其惑」は、第一段落の「師者、所以伝道受業解惑也」を受けている。上下点の間にある二つの句が、どちらも「者」にかかる。

白文句読之不知、惑之不解、或師焉、或不焉。

書き下し句読を之(こ)れ知らざる、惑ひを之れ解かざる、或(ある)いは師とし、或いは不(しか)せず。

現代語訳書物の読み方がわからないことと、心の迷いが解けないこととについて、一方では師について学び、一方では師につかない。

之
ここでは、上の語を強める字。「句読之不知」は「句読を知らない」の意味で、語順を入れかえた形。
或〜、或〜
「或いは〜、或いは〜」。一方は〜、一方は〜。
不
ここでは「しかせず」と読む。「不師焉」の「師」を省いた形で、師につかないこと。

白文小学而大遺。

書き下し小を学びて大を遺(わす)る。

現代語訳(これでは)小さなことは学んで、大きなことを忘れていることになる。

遺
「わすル」。忘れる。
小
句読(書物の読み方)。
大
迷いを解くこと。道を学ぶこと。
○「小学而大遺」も、「学小而遺大」の語順を入れかえた形。

白文吾未見其明也。

書き下し吾未(いま)だ其の明(めい)なるを見ざるなり。

現代語訳私は、それが賢明なことだとは、まだ見たことがない。

未
「いまダ〜ず」と二度読む再読文字。まだ〜ない。
明
賢明であること。物事の道理がわかっていること。
○そのような態度を賢明だとは思えない、ということ。

職人たちと士大夫

本文(訓読文)

白文巫医・楽師・百工之人、不恥相師。

書き下し巫医(ふい)・楽師(がくし)・百工(ひやくこう)の人は、相(あひ)師とするを恥ぢず。

現代語訳祈禱師や医者、音楽家、さまざまな職人たちは、互いに師として学び合うことを恥じない。

巫医
祈禱師と医者。
楽師
音楽家。音楽の演奏家。
百工
さまざまな職人。
相
「あひ」。互いに。

白文士大夫之族、曰師、曰弟子云者、則群聚而笑之。

書き下し士大夫(したいふ)の族は、曰はく師、曰はく弟子と云ふ者をば、則ち群聚(ぐんしゆう)して之を笑ふ。

現代語訳(ところが)士大夫の人々は、師だ、弟子だと言う者がいると、寄り集まってその人を笑う。

士大夫
官職についている知識人。
族
仲間。人々。
曰師、曰弟子云者
師だとか弟子だとか言う者。「云」は上の二つの「曰」を受けてまとめる。
群聚
群がり集まる。

白文問之則曰、「彼与彼、年相若也、道相似也。」

書き下し之を問へば則ち曰はく、「彼と彼とは、年相若(あひし)けり、道相似たり。」と。

現代語訳そのわけを尋ねると、「あの人とあの人とは、年齢も同じくらいだし、身につけた道も似たようなものだ。」と言う。

彼与彼
「彼と彼とは」。あの人とあの人とは。師と弟子だと言い合っている者どうしを指す。「与」は「と」と読み、「AとBと」の形をつくる。
相若
「あひしク」。同じくらいである。
相似
似かよっている。

白文位卑則足羞、官盛則近諛。

書き下し位卑(ひく)ければ則ち羞(は)づるに足り、官盛んなれば則ち諛(へつら)ふに近しとす。

現代語訳(師とする人の)地位が低ければ(その人を師とするのは)恥ずかしいことだし、官職が高ければ(その人を師とするのは)へつらうのに近い、と考えている。

位卑・官盛
師とする人の地位・官職をいう。
足羞
恥じるのに十分である。とても恥ずかしい。
諛
「へつらフ」。こびる。
A則B
「Aなれば則ちB」。AならばBである。

白文嗚呼、師道之不復、可知矣。

書き下し嗚呼(ああ)、師道の復(ふく)せざること、知るべし。

現代語訳ああ、(これでは)師の正しいあり方が昔の姿にもどらないのも、よくわかる。

嗚呼
「ああ」。嘆きを表す。
復
もとにもどる。回復する。
可知
知ることができる。よくわかる。

白文巫医・楽師・百工之人、君子不歯。

書き下し巫医・楽師・百工の人は、君子歯(よはひ)せず。

現代語訳祈禱師や医者、音楽家、職人たちを、君子(である士大夫)は同列に扱わず、見下している。

君子
ここでは士大夫のこと。もとは才徳のすぐれた立派な人物をいう。
歯
並ぶ。同列に扱う。「歯せず」で、同列に考えない、見下す。「君子之を鄙しむ」(見下す)とする本文もある。

白文今其智、乃反不能及。

書き下し今其の智(ち)は、乃(すなは)ち反(かへ)つて及ぶ能(あた)はず。

現代語訳ところが今、士大夫の知恵は、なんと逆に(巫医・楽師・百工の人々に)及ばないのである。

其
士大夫(君子)を指す。
乃
「すなはチ」。なんと。
反
「かへつテ」。逆に。
不能A
「A(する)能はず」。Aできない。

白文其可怪也歟。

書き下し其れ怪しむべきかな。

現代語訳なんとも不思議なことであるよ。

其
「それ」。語調を強める。
怪
「あやシム」。不思議に思う。
也歟
二字で「かな」と読み、詠嘆を表す。

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)を答えよ。
    ①彼(彼童子)
    ②所謂
    ③或
    ④不(或不焉)
    ⑤乃

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    ①かの
    ②いわゆる
    ③あるいは
    ④しかせず
    ⑤すなわち

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①句読
    ②百工
    ③士大夫
    ④相若
    ⑤不歯

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    ①書物(文章)の読み方
    ②さまざまな職人
    ③官職についている知識人
    ④同じくらいである
    ⑤同列に扱わない・見下す

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「非吾所謂伝其道、解其惑者也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:吾が所謂其の道を伝へ、其の惑ひを解く者に非ざるなり。
    現代語訳:私の言うところの、道を伝え、迷いを解いてくれる師ではないのだ。

  2. 「吾未見其明也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:吾未だ其の明なるを見ざるなり。
    現代語訳:私は、それが賢明なことだとは、まだ見たことがない。

  3. 「嗚呼、師道之不復、可知矣」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:嗚呼、師道の復せざること、知るべし。
    現代語訳:ああ、師の正しいあり方が昔の姿にもどらないのも、よくわかる。

  4. 「其可怪也歟」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:其れ怪しむべきかな。
    現代語訳:なんとも不思議なことであるよ。

C 内容の読み取り

  1. 「惑矣」とあるが、筆者はどのようなことを「惑」だと言っているか。

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    わが子には師を選んで教えさせるのに、親である自分自身は師につくことを恥じていること。

  2. 「小学而大遺」の「小」「大」はそれぞれ何を指すか。また、全体でどのようなことを言っているか。

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    小=句読(書物の読み方) 大=迷いを解くこと
    書物の読み方のような小さなことは師について学ぶのに、迷いを解くという大事なことについては師につこうとしない、ということ。

  3. 「位卑則足羞、官盛則近諛」の「位」「官」は、だれの位・官のことか。また、この部分はどのような考えを表しているか。

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    師とする人の位・官。
    師とする人の地位が低ければ恥ずかしく、官職が高ければこびへつらうのに近くなる、という士大夫の考え。

  4. 「今其智、乃反不能及」とあるが、何が何に及ばないのか。また、そうなるのはなぜか。

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    士大夫(君子)の知恵が、巫医・楽師・百工の人々の知恵に及ばない。巫医・楽師・百工の人々は互いに師として学び合うのに、士大夫は師について学ぶことを恥じて笑うから。

続き(③)

聖人には決まった師がいないこと、孔子の「三人行へば、則ち必ず我が師有り」という言葉、そして李蟠にこの文章を贈った理由は③で読めます。

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