『狐借虎威(こしゃくいこ)』(虎の威を借る狐)の書き下し文・現代語訳・句法・故事成語の意味を解説します。出典は、戦国時代の遊説家の策略を集めた『戦国策』(楚策)です。
書き下し文・現代語訳・解説
虎が狐をつかまえる
白文虎求百獣而食之、得狐。
書き下し虎、百獣を求めて之を食らひ、狐を得たり。
現代語訳虎は獣たちを探し求めて食べていたが、(あるとき)狐をつかまえた。
- 百獣
- すべての獣。
- 求
- 探し求める。
- 而
- 置き字。「~て」と読む順接を表す。
- 之
- 百獣を指す。
- 得
- つかまえる。
狐の言い分
白文狐曰、「子無敢食我也。
書き下し狐曰はく、「子、敢へて我を食らふこと無かれ。
現代語訳狐は言った。「あなたは決して、私を食べようとしてはいけません。
- 子
- あなた。相手に対する敬意をこめた呼び方。
- 敢
- 「あヘテ」。決して、進んで。
- 無~
- 「~(する)こと無かれ」。禁止。
- 也
- ここでは置き字。
白文天帝使我長百獣。
書き下し天帝、我をして百獣に長たらしむ。
現代語訳天の神は、私を百獣の王にさせているのです。
- 天帝
- 天の神。
- 使A~
- 「Aをして~しむ」。使役。
- 長
- ここは「長たり」。長(かしら)となる。
白文今子食我、是逆天帝命也。
書き下し今子我を食らはば、是れ天帝の命に逆らふなり。
現代語訳今あなたが私を食べるなら、それは天の神の命令に逆らうことになります。
- 食らはば
- 「食らふ」の未然形+「ば」。仮定(もし~ならば)を表す。
- 是
- これ。狐を食べること。
- 命
- 命令。
- 也
- 断定を表す。
狐の提案
白文子以我為不信、吾為子先行。
書き下し子、我を以つて信ならずと為さば、吾、子の為に先づ行かん。
現代語訳あなたが、私の言うことをうそ(信じられない)だと思うなら、私があなたのために先に歩いて行きましょう。
- 以A為B
- 「Aを以つてBと為す」。AをBと思う。
- 不信
- うそである。信じられない。
- 為
- ここは「ために」と読み、「~のために」の意味。
- 先
- 「まヅ」。先に。
白文子随我後観。
書き下し子、我が後に随ひて観よ。
現代語訳あなたは私の後ろについてきて、ご覧なさい。
- 随
- したがう。ついていく。
- 観
- 見る。
白文百獣之見我、而敢不走乎。」
書き下し百獣の我を見て、敢へて走げざらんや。」と。
現代語訳獣たちは私を見て、どうして逃げないことがありましょうか、いや、きっと逃げます。」と。
- 之
- 「の」。主語を示す。
- 走
- ここは「にグ」と読み、逃げる。「はしル」と読む教科書もある。
- 敢不~乎
- 「敢へて~ざらんや」。反語。
その結果
白文虎以為然。
書き下し虎、以つて然りと為す。
現代語訳虎は、狐の言うとおりだと思った。
- 然
- その通り。狐の「子以我為不信~観」という提案を指す。
- 以為然
- 「以つて然りと為す」。そうだと思う。
白文故遂与之行。
書き下し故に遂に之と行く。
現代語訳そこでそのまま、狐と連れ立って歩いて行った。
- 故
- 「ゆゑニ」。そこで、だから。
- 遂
- 「つひニ」。そのまま。とうとう。
- 与之行
- 「之と行く」。「之」は狐を指す。「与」は「と」と読み、一緒に。
白文獣見之皆走。
書き下し獣、之を見て皆走ぐ。
現代語訳獣たちは、これを見てみな逃げた。
- 之
- 虎を指す。(見たのは虎と狐の二つだが、獣たちが逃げた原因は虎)
- 皆
- みな。
白文虎不知獣畏己而走也。
書き下し虎、獣の己を畏れて走ぐるを知らざるなり。
現代語訳虎は、獣たちが自分をおそれて逃げたのだとは気づかなかった。
- 畏
- おそれる。
- 己
- 虎自身を指す。
- 不知~
- 「~を知らず」。気づかない。
白文以為畏狐也。
書き下し以つて狐を畏ると為すなり。
現代語訳(虎は)狐をおそれているのだと思ったのである。
- 以為~
- 「以つて~と為す」。~と思う。
- 畏狐
- 狐をおそれる。
テストで問われるポイント
- 出典=『戦国策』(楚策)。江乙が楚の宣王に語ったたとえ話。
- 「子」=あなた。「敢」=あへて(決して)。「無敢食我」=決して私を食べてはいけない。
- 「天帝使我長百獣」=天の神が私を百獣の王にした(使役)。
- 「天帝命」=天帝が狐を百獣の王に任命したこと。
- 「以我為不信」=私をうそだと思うなら。
- 「敢不走乎」=どうして逃げないことがあろうか、いや、逃げる(反語)。
- 「然」=狐が示した、後ろについて来て見よという提案。
- 「獣見之」の「之」=虎。獣が逃げたのは、虎をおそれたから。
- 虎=宣王、狐=昭奚恤、百獣=北方の国々。
- 「虎の威を借る狐」=弱い者が強い者の威光をかさに着ていばること。
テスト予想問題
A 語句
次の語の本文での意味を答えよ。
①子
②走
③遂解答を見る
①あなた
②逃げる
③そのまま(とうとう)「獣見之皆走」の「之」は何を指すか。
解答を見る
虎
B 書き下し文・現代語訳
「子無敢食我也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:子、敢へて我を食らふこと無かれ。
現代語訳:あなたは、決して私を食べてはいけない。「天帝使我長百獣」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:天帝、我をして百獣に長たらしむ。
現代語訳:天の神は、私を百獣の王にさせている。「百獣之見我、而敢不走乎」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:百獣の我を見て、敢へて走げざらんや。
現代語訳:獣たちは私を見て、どうして逃げないことがあろうか、いや、きっと逃げる。
C 内容の読み取り
「是逆天帝命也」とあるが、「天帝命」とはどのようなことか。
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天帝が狐を百獣の王に任命したこと。
虎が「以為然」とした「然」は、何の内容を指すか。
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狐の「私の後について来て見なさい。獣たちは私を見ればきっと逃げる」という提案。
獣たちが逃げたのは、本当は何をおそれたからか。また、虎はそれをどう思い込んだか。
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本当は虎をおそれたから。虎は、狐をおそれているのだと思い込んだ。
本文の「虎」「狐」「百獣」は、それぞれ何をたとえたものか。
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虎=楚の宣王 狐=昭奚恤 百獣=北方の国々
故事成語「虎の威を借る狐」の意味を説明せよ。
解答を見る
弱い者が、強い者の権力や威光をかさに着ていばること。