『臥薪嘗胆』書き下し文・現代語訳・意味・解説|呉越の争い・テスト予想問題付き

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. 呉王闔廬と伍員(子胥)
  3. 夫差の復讐の誓い
  4. 越王句践の降伏
  5. 句践の復讐の誓い
  6. 子胥の最期
  7. 越が呉を滅ぼす
  8. テストで問われるポイント
  9. テスト予想問題

『臥薪嘗胆(がしんしょうたん)』の書き下し文・現代語訳・句法・故事成語の意味を解説します。出典は、元の曾先之が編んだ中国の歴史読み物『十八史略』です。春秋時代の呉と越の争いを描いています。

書き下し文・現代語訳・解説

呉王闔廬と伍員(子胥)

本文(訓読文)

白文呉王闔廬挙伍員謀国事。

書き下し呉王闔廬(かふりよ)、伍員(ごうん)を挙げて国事を謀らしむ。

現代語訳呉王の闔廬は、伍員を取り立てて、国の政治を取り仕切らせた。

挙
「あグ」。取り立てる、登用する。
謀国事
「国事を謀らしむ」。国の政治を取り仕切らせる。「しむ」は使役。

白文員、字子胥、楚人伍奢之子。

書き下し員、字(あざな)は子胥(ししよ)、楚人伍奢(ごしや)の子なり。

現代語訳員は、字を子胥といい、楚の人である伍奢の子である。

字
実名のほかに、成人してからつける名。
子胥
伍員のこと。以下は「子胥」で登場する。

白文奢誅而奔呉、以呉兵入郢。

書き下し奢誅(ちゆう)せられて呉に奔(はし)り、呉の兵を以(ひき)ゐて郢(えい)に入る。

現代語訳(父の)奢が楚に殺されたため、子胥は呉に逃げ込み、のちに呉の兵を連れて、楚の都の郢に攻め入った。

誅
罪によって殺す。「誅せられ」と受け身で読み、「殺された」と訳す。
奔
「はしル」。逃げ込む。
以
「ひきゐル」。率いる。「以」を「もつて」と読む場合と区別する。
郢
楚の都。

夫差の復讐の誓い

本文(訓読文)

白文呉伐越、闔廬傷而死。

書き下し呉越を伐ち、闔廬傷つきて死す。

現代語訳呉が越を攻めたが、闔廬は傷を負って死んだ。

伐
「うツ」。攻める。
而
置き字。順接を表す。

白文子夫差立。

書き下し子の夫差立つ。

現代語訳子の夫差が王位についた。

夫差
闔廬の子。

白文子胥復事之。

書き下し子胥復(ま)た之に事(つか)ふ。

現代語訳子胥はまた(夫差に)仕えた。

復
「まタ」。
事
「つかフ」。仕える。
之
夫差を指す。

白文夫差志復讎、朝夕臥薪中、出入使人呼曰、

書き下し夫差、讎(あだ)を復(ふく)せんと志し、朝夕(てうせき)薪中(しんちゆう)に臥(ふ)し、出入するに人をして呼ばしめて曰はく、

現代語訳夫差は仇を討とうと志し、朝も夕も薪の中に寝て、出入りのたびに人に呼ばせて言わせた。

復讎
仇を討つ。
臥薪中
薪の中に寝る。薪の上で寝て、体の痛みで復讐の心を忘れないようにするため。
使人呼
「人をして呼ばしむ」。人に呼ばせる。使役。
曰
「いはク」。(言わせた)。

白文「夫差、而忘越人之殺而父邪。」

書き下し「夫差、而(なんぢ)、越人の而(なんぢ)の父を殺せるを忘れたるか。」と。

現代語訳「夫差よ、おまえは、越の者がおまえの父を殺したことを忘れたのか。」と。

而
ここでは「なんぢ」。おまえ。置き字の「而」と区別する。
越人之殺而父
越の人がおまえの父を殺したこと。
邪
「か」。疑問を表す。

越王句践の降伏

本文(訓読文)

白文周敬王二十六年、夫差敗越于夫椒。

書き下し周の敬王の二十六年、夫差、越を夫椒(ふせう)に敗る。

現代語訳周の敬王の二十六年、夫差が夫椒で越を破った。

敗
「やぶル」。打ち負かす。
于
「に」。置き字。場所を示す。

白文越王句践、以余兵棲会稽山、請為臣妻為妾。

書き下し越王句践(こうせん)、余兵(よへい)を以ゐて会稽山(くわいけいざん)に棲(す)み、臣と為り、妻は妾(せふ)と為らんと請ふ。

現代語訳越王の句践は、残った兵を連れて会稽山にたてこもり、自分は臣下に、妻は召し使いになるから、と許しを願い出た。

余兵
残った兵。
棲
立てこもる。
請
「こフ」。願う。
為臣
臣下となる。
為妾
召し使いとなる。降伏して許しを求める言葉。

白文子胥言、「不可。」

書き下し子胥言ふ、「不可なり。」と。

現代語訳子胥は、「いけません。」と言った。

不可
よくない。いけない。句践を許してはならないという意味。

白文太宰伯嚭受越賂、説夫差赦越。

書き下し太宰伯嚭(はくひ)、越の賂(まひなひ)を受け、夫差に説きて越を赦さしむ。

現代語訳太宰の伯嚭は、越の贈り物(賄賂)を受け取ると、夫差を説いて、越を許すようにさせた。

太宰
宰相。
賂
「まひなひ」。賄賂。
説夫差赦越
「夫差に説きて越を赦さしむ」。夫差を説得して、越を許させた。使役。

句践の復讐の誓い

本文(訓読文)

白文句践反国、懸胆於坐臥、即仰胆嘗之曰、

書き下し句践、国に反(かへ)り、胆(きも)を坐臥(ざぐわ)に懸(か)け、即(すなは)ち胆を仰(あふ)ぎ之を嘗(な)めて曰はく、

現代語訳句践は国に戻り、獣の胆を座ったり寝たりする場所につるし、そのたびに胆を見上げてなめては、こう言った。

反
「かへル」。帰る。
胆
きも。苦いものとされる。
坐臥
座ることと寝ること。ふだん過ごす場所。
即
「すなはチ」。そのたびに。
仰
「あふグ」。見上げる。
嘗
「なム」。なめる。
仰胆嘗之
苦い胆をなめて、会稽での恥を忘れないようにするため。

白文「女忘会稽之恥邪。」

書き下し「女(なんぢ)、会稽の恥を忘れたるか。」と。

現代語訳「おまえは、会稽での恥を忘れたのか。」と。

女
「なんぢ」。おまえ。自分に言い聞かせている。
会稽之恥
会稽山で夫差に降伏した恥辱。

白文挙国政属大夫種、而与范蠡治兵、事謀呉。

書き下し国政を挙げて大夫(たいふ)種(しよう)に属し、而(しか)して范蠡(はんれい)と兵を治め、呉を謀るを事とす。

現代語訳国の政治のすべてを大夫の種に任せ、そして范蠡と軍隊を整え、呉に報復する計略を立てることに専念した。

挙国政
国政のすべて。
属
「しよくス」。任せる。
治兵
軍隊を整え、鍛える。
事
「こと」。仕事、専念すること。「呉を謀るを事とす」で、呉を討つ計略を立てることを仕事とした。

子胥の最期

本文(訓読文)

白文太宰嚭譖子胥恥謀不用怨望。

書き下し太宰嚭、子胥、謀(はかりごと)の用ゐられざるを恥ぢて怨望(ゑんばう)すと譖(しん)す。

現代語訳太宰の嚭は、子胥が自分の計略を用いてもらえなかったのを恥として、恨んでいると夫差に中傷した。

譖
「しんス」。人をおとしいれるために悪く言う。中傷する。
怨望
恨む。

白文夫差乃賜子胥属鏤之剣。

書き下し夫差、乃(すなは)ち子胥に属鏤(しよくる)の剣を賜(たま)ふ。

現代語訳夫差はそこで、子胥に属鏤という剣を与えた。

乃
「すなはチ」。そこで。
賜属鏤之剣
この剣で自殺せよという意味。

白文子胥告其家人曰、「必樹吾墓檟。

書き下し子胥、其の家人(かじん)に告げて曰はく、「必ず吾が墓に檟(か)を樹(う)ゑよ。

現代語訳子胥は、家の者に告げて言った。「必ず私の墓に檟の木を植えよ。

家人
家の者。
檟
木の名。棺おけの材料になる木。
樹
「うう」。植える。

白文檟可材也。

書き下し檟は材とすべきなり。

現代語訳檟の木は、(呉王の)棺おけの材料にできるからだ。

材
材料。ここは棺おけの材料。
子胥の考え
夫差は自分の忠告を聞かずに呉を滅ぼされ、棺おけが必要になるだろう、という皮肉。

白文抉吾目懸東門。

書き下し吾が目を抉(ゑぐ)りて東門に懸けよ。

現代語訳私の目をくりぬいて、(都の)東門に掛けよ。

抉
「ゑぐル」。くりぬく。
懸
「かク」。掛ける。
東門
呉の都の東門。越の兵が攻め入ってくるのを見届けたいという気持ち。

白文以観越兵之滅呉。」

書き下し以つて越兵の呉を滅ぼすを観ん。」と。

現代語訳そうして、越の兵が呉を滅ぼすのを見届けよう。」と。

以
「もつテ」。そうして。それによって。
観
見る。見届ける。
本文(訓読文)

白文乃自剄。

書き下し乃(すなは)ち自(みづか)ら剄(けい)す。

現代語訳そこで、(子胥は)自ら首をはねて死んだ。

自剄
自分で首をはねて死ぬ。

白文夫差取其尸、盛以鴟夷、投之江。

書き下し夫差、其の尸(しかばね)を取り、盛るに鴟夷(しい)を以つてし、之を江に投ず。

現代語訳夫差は、その屍を取り、鴟夷(革の袋)に詰め込んで、長江に投げ込んだ。

尸
「しかばね」。死体。
鴟夷
革でできた袋。
江
長江。

白文呉人憐之、立祠江上、命曰胥山。

書き下し呉人之を憐れみ、祠(ほこら)を江上に立て、命けて胥山(しよざん)と曰ふ。

現代語訳呉の人々は子胥を気の毒に思い、長江のほとりに祠を建て、胥山と名づけた。

憐
「あはれブ」。かわいそうに思う。
祠
ほこら。霊をまつる小さな社。
命曰~
「命けて~と曰ふ」。~と名づける。

越が呉を滅ぼす

本文(訓読文)

白文越十年生聚、十年教訓。

書き下し越、十年生聚(せいしゆう)し、十年教訓(けうくん)す。

現代語訳越は、十年間は国民を増やして物資を蓄え、さらに十年間は国民を教育・訓練した。

生聚
人口を増やし、財物を集める。
教訓
教え、鍛える。軍事の訓練。

白文周元王四年、越伐呉。

書き下し周の元王の四年、越呉を伐つ。

現代語訳周の元王の四年、越は呉を攻めた。

白文呉三戦三北。

書き下し呉、三たび戦ひ三たび北ぐ。

現代語訳呉は、三度戦って三度とも負けた。

北
「にグ」。敗れて逃げる。敗北する。「三戦三北」で連戦連敗。

白文夫差上姑蘇、亦請成於越。

書き下し夫差、姑蘇(こそ)に上り、亦た成(たひらぎ)を越に請ふ。

現代語訳夫差は姑蘇台に立てこもり、(かつての句践と同じように)やはり越に和睦を願い出た。

上
「のぼル」。
亦
「まタ」。夫差も、かつて句践が願い出たのと同じように。
成
「たひらぎ」。和睦、講和。

白文范蠡不可。

書き下し范蠡(はんれい)可(き)かず。

現代語訳范蠡は聞き入れなかった。

可
ここでは「きク」。聞き入れる。
不可
聞き入れない。

白文夫差曰、「吾無以見子胥。」

書き下し夫差曰はく、「吾、以つて子胥を見る無し。」と。

現代語訳夫差は言った。「私は、子胥に合わせる顔がない。」と。

無以~
「以つて~する無し」。~する方法・手段がない。ここでは、子胥に会う(合わせる)顔がない。
見
会う。

白文為幎冒乃死。

書き下し幎冒(べきばう)を為りて乃ち死す。

現代語訳(夫差は)幎冒(死者の顔をおおう布)を作って、そして自殺した。

為
「つくル」。作る。
幎冒
死者の顔をおおう布。子胥に顔を見せられないので、顔を覆って死んだ。

テストで問われるポイント

  • 出典=『十八史略』。呉と越の争い。
  • 「挙」=取り立てる。「属」=任せる。「誅」=罪によって殺す。
  • 「以」=ひきゐる。「事」=つかふ。「反」=かへる。「北」=にぐ。「成」=たひらぎ(和睦)。
  • 「使人呼」=人をして呼ばしむ(使役)。「説夫差赦越」=夫差に説きて越を赦さしむ。
  • 「臥薪中」=薪の上に寝て復讐の心を忘れないため。「嘗胆」=胆をなめて会稽の恥を忘れないため。
  • 「賜属鏤之剣」=この剣で自殺せよという意味。
  • 子胥の言葉=墓に檟を植えさせたのは夫差の棺おけにするため。目を東門に掛けさせたのは越の兵が呉を滅ぼすのを見るため。
  • 「吾無以見子胥」=子胥に合わせる顔がない。子胥の忠告を聞かなかった後悔。
  • 「臥薪嘗胆」=仇を討つために長い間苦労に耐えること。

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語の本文での意味を答えよ。
    ①挙(挙伍員)
    ②属(属大夫種)
    ③誅(奢誅)

    解答を見る

    ①取り立てる(登用する)
    ②任せる
    ③罪によって殺す

  2. 次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)を答えよ。
    ①以(以余兵)
    ②事(復事之)
    ③反(反国)
    ④北(三北)

    解答を見る

    ①ひきいて
    ②つかう
    ③かえり
    ④にぐ

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「出入使人呼曰」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:出入するに人をして呼ばしめて曰はく、
    現代語訳:出入りのたびに人に呼ばせて、こう言わせた。

  2. 「説夫差赦越」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:夫差に説きて越を赦さしむ。
    現代語訳:夫差を説得して、越を許させた。

  3. 「吾無以見子胥」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:吾、以つて子胥を見る無し。
    現代語訳:私は、子胥に合わせる顔がない。

C 内容の読み取り

  1. 夫差が「朝夕臥薪中」とし、句践が「仰胆嘗之」としたのは、それぞれなぜか。

    解答を見る

    夫差=父が越との戦いで死んだことを忘れず、復讐心をかきたてるため。
    句践=会稽山で降伏を願った恥を忘れず、復讐心をかきたてるため。

  2. 子胥が「不可」と言ったのはなぜか。

    解答を見る

    句践を許せば、のちに越が呉に復讐すると考えたから。

  3. 「賜子胥属鏤之剣」とは、どういう意味か。

    解答を見る

    その剣で自殺せよということ。

  4. 子胥は、墓に檟を植えよ、また自分の目を東門に掛けよと言ったが、それぞれの目的を答えよ。

    解答を見る

    檟=呉が滅んだとき、夫差の棺おけの材料にするため。
    目=越の兵が呉を滅ぼすのを見届けるため。

  5. 夫差が「吾無以見子胥」と言ったときの心情を答えよ。

    解答を見る

    子胥の忠告を聞き入れずに敗れたことを後悔し、子胥に合わせる顔がないと思う気持ち。

  6. 「越十年生聚、十年教訓」を現代語訳せよ。

    解答を見る

    越は、十年間は人口を増やして財物を集め、さらに十年間は国民を教育・訓練した。

  7. 故事成語「臥薪嘗胆」の意味を答えよ。

    解答を見る

    仇を討つために、長い間苦労に耐えること。また、目的を果たすために苦心して努力を重ねること。