『笈の小文』造化にしたがひ 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 風羅坊と俳諧
  4. 芸術を貫くもの
  5. 旅立ちの句
  6. テスト予想問題

『笈の小文(おいのこぶみ)』冒頭の「造化にしたがひ造化にかへれ」の現代語訳・品詞分解・解説です。教科書によっては「笈の小文」という題だけで載っています。

芭蕉は自分を「風羅坊」と呼び、俳諧をやめようと思ったり、人に勝とうとしたりと迷いながらも、結局は俳諧一筋に生きてきたと語ります。そして、西行・宗祇・雪舟・利休の芸術に共通する根本は「造化にしたがひ、造化にかへれ」だと述べ、旅立ちの句「旅人と我が名よばれん初しぐれ」を詠みます。対句の多い引きしまった文章なので、対応する部分に注意して読みましょう。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。下のボタンで、用言・助動詞・助詞を別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

風羅坊と俳諧

原文
百骸九竅ひやくがいきうけうの格助体修中に格助場所ものありラ変終止。かりに副名なづけカ下二連用て接助単純接続風羅坊ふうらばうと格助引用いふハ四終止。

現代語訳多くの骨と九つの穴からなるこの体の中に、ある「もの」がある。それを仮に名づけて風羅坊という。

百骸九竅(ひやくがいきうけう)
多くの骨と九つの穴。人間の体のこと。
解説

「百骸九竅の中にものあり」は、人間の体の中に、心(精神)があるということ。

「かりに名づけて」名づけたのは、その体の中にある「もの」。風羅坊は芭蕉自身のこと。

原文
まことに副うすものの格助主格風に格助原因破やぶれやすからク未然ん婉曲連体ことを格助対象いふハ四連体に断定連用や係助疑問あら補・ラ変未然ん推量連体。

現代語訳本当に、薄い布が風に破れやすいような(はかない)ものであることを言うのであろうか。

うすもの
薄い絹織物。
解説

風羅坊と名づけた理由が書かれている部分。風に破れやすい薄い織物のように、はかないものだということ。

「や」の結びは「ん」(連体形)。

原文
かれ代名狂句きやうくを格助対象好このむマ四連体こと久ひさしシク終止。つひに副生涯しやうがいの格助体修はかりごとと格助結果なすサ四終止。

現代語訳彼(風羅坊)は、俳諧を好むようになって久しい。とうとう(俳諧を)一生の仕事としている。

狂句(きやうく)
俳諧。
はかりごと
生活のための仕事。
解説

「かれ」は風羅坊(芭蕉自身)。俳諧を、ついに一生をかける仕事にした、ということ。

原文
ある連体時は係助区別倦うみマ四連用て接助単純接続放擲はうてきせサ変未然ん意志連体ことを格助対象思ひハ四連用、ある連体時は係助区別進んマ四連用・音で接助単純接続人に格助対象勝かたタ四未然ん意志連体ことを格助対象誇ほこりラ四連用、

現代語訳ある時は(俳諧に)飽きて投げ出してしまおうと思い、またある時は進んで打ち込み、人に勝とうと得意になり、

倦む(うむ)
飽きる。いやになる。
放擲す(はうてきす)
投げ出す。
誇る
得意になる。
解説

「ある時は倦みて…思ひ」と「ある時は進んで…誇り」は対句。放り出そうと思ったのは俳諧。

原文
是非ぜひ胸中きようちゆうに格助場所たたかうハ四連用・音て接助単純接続、これ代名が格助体修ために格助原因身安やすからク未然ず打消終止。

現代語訳(やめるか続けるか、)どちらがよいかが胸の中で争い合って、そのために心身が落ち着かない。

是非
よいことと悪いこと。
安し
心が穏やかだ。
解説

「是非」は、俳諧をやめてしまうか、進んで打ち込むかということ。どちらとも決めかねて胸の中で思い悩み、心が落ち着かない。

「これ」は狂句(俳諧)。

原文
しばらく副身を格助対象立てタ下二未然ん意志連体ことを格助対象願ねがへハ四已然ども接助逆接確定、これ代名が格助体修ために格助原因障さへハ下二未然られ受身連用、

現代語訳ある時期には(官に仕えて)身を立てたいと望んだが、俳諧のせいで妨げられ、

身を立つ
出世する。
障ふ(さふ)
さまたげる。
解説

「これ」は前と同じく俳諧。

原文
しばらく副学まなんバ四連用・音で接助単純接続愚ぐを格助対象さとらラ四未然ん意志連体ことを格助対象思へハ四已然ども接助逆接確定、これ代名が格助体修ために格助原因破やぶらラ四未然れ受身連用、

現代語訳またある時期には仏道を修めて己の愚かさを悟ろうと考えたが、これも俳諧のせいで(その志を)くじかれ、

解説

「学んで」は、仏道を学んでということ。

出世しようとしても、仏道を学ぼうとしても、俳諧のために果たせなかった、ということ。「しばらく…願へども、…障へられ」と「しばらく…思へども、…破られ」も対句。

原文
つひに副無能無芸むのうむげいに断定連用して接助単純接続、ただ副こ代名の格助体修一筋ひとすぢに格助対象つながるラ四終止。

現代語訳結局、才能も芸もないまま、ただこの(俳諧の)一筋につながっている。

無能無芸
才能も芸もないこと。
解説

「この一筋」は、俳諧(狂句)の道。

「つひに」の「に」は副詞の一部、「無能無芸にして」の「に」は断定の助動詞「なり」の連用形。

芸術を貫くもの

原文
西行さいぎやうの格助主格和歌に格助対象おけカ四已然る完了連体、宗祇そうぎの格助主格連歌れんがに格助対象おけカ四已然る完了連体、雪舟せつしうの格助主格絵ゑに格助対象おけカ四已然る完了連体、利休りきうが格助主格茶に格助対象おけカ四已然る完了連体、

現代語訳和歌での西行、連歌での宗祇、絵での雪舟、茶での利休(それぞれが追い求めたもの)、

西行
歌人。
宗祇
連歌師。『新撰菟玖波集』を編んだ。
雪舟
画僧。
利休
千利休。茶人。
原文
そ代名の格助体修貫道くわんだうするサ変連体ものは係助区別一なり断定終止。

現代語訳その(道の)根本を貫いているものは、同じ一つである。

貫道す(くわんだうす)
道の根本を貫く。
解説

「その貫道するもの」は、あとの「造化にしたがひ、造化にかへれ」。和歌・連歌・絵・茶と道は違っても、根本にあるものは同じだ、ということ。

原文
しかも接風雅ふうがに格助対象おけカ四已然る完了連体もの、造化ざうくわに格助対象したがひハ四連用て接助単純接続四時しいじを格助対象友と格助結果すサ変終止。

現代語訳しかも風雅(俳諧)に携わる者は、天地自然に従って、四季(の移り変わり)を友とするのである。

風雅
詩歌などの芸術。ここでは俳諧。
造化(ざうくわ)
天地自然。
四時(しいじ)
四季。
解説

「四時を友とす」は、四季の移り変わりを友として親しむということ。

原文
見るマ上一連体ところ、花に断定連用あら補・ラ変未然ず打消終止と格助引用いふハ四連体ことなしク終止。思ふハ四連体ところ、月に断定連用あら補・ラ変未然ず打消終止と格助引用いふハ四連体ことなしク終止。

現代語訳(そうすれば)目に映るもので花でないものはなく、心に思うもので月でないものはない。

解説

「見るところ…ことなし」と「思ふところ…ことなし」は対句。

「花」「月」は、自然の美しさの代表。造化に従えば、目に見るもの、心に思うもののすべてが花や月になる、ということ。

「花にあらず」の「に」は断定の助動詞「なり」の連用形。

原文
像かたち、花に断定連用あら補・ラ変未然ざる打消連体時は係助区別、夷狄いてきに格助比較ひとしシク終止。心、花に断定連用あら補・ラ変未然ざる打消連体時は係助区別、鳥獣てうじうに格助比較類るいすサ変終止。

現代語訳目に映る姿が花でないならば、野蛮な人と同じである。心に思うことが花でないならば、鳥やけものと同類である。

像(かたち)
目に見える姿。
夷狄(いてき)
野蛮な人。
類す
同類である。
解説

「像、花に…ひとし」と「心、花に…類す」も対句。見るもの、思うことを花として感じ取れないなら、野蛮な人や鳥獣と変わらない、ということ。

原文
夷狄を格助対象出いでダ下二連用、鳥獣を格助対象離はなれラ下二連用て接助単純接続、造化に格助対象したがひハ四連用、造化に格助対象かへれラ四命令と格助引用なり断定終止。

現代語訳野蛮な人の境地を抜け出し、鳥やけもののありさまを離れて、天地自然に従い、天地自然に立ち返れというのである。

解説

「造化にしたがひ、造化にかへれ」は、天地自然に従って四季の移り変わりを友とし、天地自然そのものに立ち返って一つになれということ。これが、芸術に共通する根本の心がまえである。

旅立ちの句

原文
神無月かんなづきの格助体修初はじめ、空定さだめなきク連体けしき、身は係助区別風葉ふうえふの格助比喩行く末ゆくすゑなきク連体心地ここちしサ変連用て接助単純接続、

現代語訳十月の初め、空はいつ時雨が来るとも定まらないようすで、我が身は風に吹かれる木の葉のように行方の知れない心地がして、

神無月
陰暦十月。
風葉
風に散る木の葉。
解説

「風葉の行く末なき」の「の」は比喩(「〜のように」)。風に散る木の葉のように、行方の定まらない心細い気持ち。

原文
旅人たびびとと格助引用我わ代名が格助体修名よばバ四未然れ受身未然ん意志終止 初はつしぐれ

現代語訳(これからは)「旅人」と私の名を呼ばれることにしよう。初しぐれの降るこの季節に。

解説

季語は「初しぐれ」で、季節は冬。

「ん」は意志。俗世を離れ、「旅人」と呼ばれる身となって、自然とともに俳諧の道を生きていこうという決意がこめられている。

原文
また接山茶花さざんくわを格助対象宿々やどやどに格助結果しサ変連用て接助単純接続

現代語訳さらに、山茶花の咲く宿々に泊まりを重ねて。

脇
脇句。発句(五七五)に付ける七七の句。
解説

これが、長太郎が芭蕉の句に付けた脇句。

原文
磐城いはきの格助体修住ぢゆう、長太郎ちやうたらうと格助引用いふハ四連体もの、こ代名の格助体修脇わきを格助対象付けカ下二連用て接助単純接続、其角亭きかくていに格助場所おいカ四連用・音て接助単純接続関送せきおくりせサ変未然ん意志終止と格助引用もてなすサ四終止。

現代語訳磐城に住む長太郎という人が、この脇の句を付け、其角の住まいで見送りの宴を開こうと(私を)もてなしてくれた。

磐城(いはき)の住
磐城の国の住人。
其角亭
芭蕉の門人、宝井其角の家。
関送り
旅立つ人を見送ること。

芭蕉のほかの文章:『おくのほそ道』旅立ち・『去来抄』行く春を・『三冊子』師の風雅

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①風羅坊
    ②百骸九竅
    ③放擲
    ④障へられ
    ⑤宗祇
    ⑥雪舟
    ⑦四時
    ⑧像
    ⑨夷狄
    ⑩神無月

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    ①ふうらぼう
    ②ひゃくがいきゅうきょう
    ③ほうてき
    ④さえられ
    ⑤そうぎ
    ⑥せっしゅう
    ⑦しいじ
    ⑧かたち
    ⑨いてき
    ⑩かんなづき

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①百骸九竅
    ②狂句
    ③はかりごと
    ④倦み
    ⑤是非
    ⑥障へ
    ⑦風雅
    ⑧造化
    ⑨四時
    ⑩風葉

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    ①人間の体
    ②俳諧
    ③生活のための仕事
    ④飽きて・いやになって
    ⑤よいことと悪いこと(よしあし)
    ⑥さまたげ
    ⑦芸術(ここでは俳諧)
    ⑧天地自然
    ⑨四季
    ⑩風に散る木の葉

B 文法

  1. 次の「ん」の意味を答えよ。
    ①うすものの風に破れやすからんこと
    ②いふにやあらん
    ③放擲せんことを思ひ
    ④身を立てんことを願へども
    ⑤旅人と我が名よばれん

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    ①婉曲
    ②推量
    ③意志
    ④意志
    ⑤意志

  2. 次の「に」を文法的に説明せよ。
    ①百骸九竅の中に
    ②いふにやあらん
    ③つひに生涯の
    ④花にあらず

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    ①格助詞
    ②断定の助動詞「なり」の連用形
    ③副詞「つひに」の一部
    ④断定の助動詞「なり」の連用形

  3. 次の助動詞の意味と活用形を答えよ。
    ①西行の和歌におけるの「る」
    ②これがために破られの「れ」
    ③花にあらざる時の「ざる」
    ④我が名よばれんの「れ」

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    ①完了・連体形
    ②受身・連用形
    ③打消・連体形
    ④受身・未然形

C 現代語訳・内容

  1. 「百骸九竅の中にものあり、かりに名づけて風羅坊といふ」について、①どういうことか、説明せよ。②「風羅坊」という名の由来を述べた部分の、最初と最後の三字を書け。

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    ①人間の体の中に心(精神)があり、それを仮に風羅坊と名づけたということ。
    ②まこと〜をいふ(「まことにうすものの風に破れやすからんことをいふ」)

  2. 「かれ狂句を好むこと久し。つひに生涯のはかりごととなす」を、「かれ」がだれか、「狂句」が何かを明らかにして現代語訳せよ。

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    風羅坊(芭蕉自身)は、俳諧を好むようになって久しい。ついに(俳諧を)一生の仕事とした。

  3. 「是非胸中にたたかうて、これがために身安からず」について、①「是非」とはどういうことか。②「これ」が指すものを本文中から一語で抜き出せ。

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    ①俳諧に飽きて投げ出してしまうか、進んで打ち込んで人に勝とうとするか、ということ。
    ②狂句

  4. 「つひに無能無芸にして、ただこの一筋につながる」について、①芭蕉が試みたが果たせなかったことを二つ答えよ。②「この一筋」とは何か。

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    ①出世すること(身を立てること)・仏道を学んで自分の愚かさを悟ること
    ②俳諧(狂句)の道

  5. 「その貫道するものは一なり」について、①「貫道するもの」にあたる部分を本文中から十四字で抜き出せ。②それはどういうことか、説明せよ。

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    ①造化にしたがひ、造化にかへれ
    ②天地自然に従って四季の移り変わりを友とし、天地自然そのものに立ち返って一つになれ、ということ。

  6. 「像、花にあらざる時は、夷狄にひとし」を現代語訳せよ。また、これと対になる表現を本文から抜き出せ。

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    訳=目に見える姿が花でないならば、野蛮な人と同じである。 対句=心、花にあらざる時は、鳥獣に類す

  7. 「旅人と我が名よばれん初しぐれ」の句について、①季語と季節を答えよ。②現代語訳せよ。③この句にこめられた芭蕉の心情を説明せよ。

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    ①季語=初しぐれ 季節=冬
    ②(これからは)「旅人」と私の名を呼ばれることにしよう。初しぐれの降るこの季節に。
    ③俗世を離れ、旅人と呼ばれる身となって、自然とともに俳諧の道を生きていこうという決意。