陶淵明『桃花源記』①書き下し文・現代語訳・解説|桃の林の奥の村・テスト予想問題付き

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. 桃の林に迷いこむ
  3. 洞穴の向こうの村
  4. テスト予想問題
  5. 続き(後半)

陶淵明(陶潜)『桃花源記(とうかげんき)』の前半、「晋太元中〜並怡然自楽」の書き下し文・現代語訳・解説です。出典は『陶淵明集』。陶淵明は東晋の詩人です。

題の「記」は、できごとをありのままに書き記す文章の形のことです。作り話でありながら、年号や地名を示して、本当にあったことの記録のように書かれています。

書き下し文・現代語訳・解説

桃の林に迷いこむ

本文(訓読文)

白文晋太元中、武陵人捕魚為業。

書き下し晋(しん)の太元(たいげん)中、武陵(ぶりよう)の人魚を捕らふるを業と為す。

現代語訳晋の太元年間のこと、武陵に、魚をとって暮らしを立てている人がいた。

晋太元中
東晋の孝武帝のときの年号「太元」の年間(三七六〜三九六年)。
武陵
地名。今の湖南省常徳市のあたり。
業
生業。暮らしを立てるための仕事。
為業
「業と為す」。仕事としている。

白文縁渓行、忘路之遠近。

書き下し渓に縁(よ)りて行き、路の遠近(ゑんきん)を忘る。

現代語訳谷川に沿って(舟で)進んでいくうちに、どれほどの道のりを来たのかわからなくなった。

縁
「よル」。沿う。
渓
谷川。
忘路之遠近
どれくらいの距離を来たのかわからなくなる。つまり、道に迷ったということ。
○ここで道がわからなくなることが、現実の世界から不思議な世界へ入っていく入り口になっている。

白文忽逢桃花林。

書き下し忽(たちま)ち桃花(たうくわ)の林に逢ふ。

現代語訳すると突然、桃の花の咲く林に行き当たった。

忽
「たちまチ」。突然。思いがけず。
逢
出会う。行き当たる。

白文夾岸数百歩、中無雑樹。

書き下し岸を夾(はさ)むこと数百歩(すうひやつぽ)、中に雑樹(ざつじゆ)無し。

現代語訳(その林は)川の両岸に数百歩にわたって続き、林の中にはほかの木が一本もまじっていない。

夾岸
川の両岸をはさむ。「夾」は「さしはさむ」と読むこともある。
雑樹
(桃以外の)ほかの木。
○無雑樹
林は桃の木ばかりだということ。

白文芳草鮮美、落英繽紛。

書き下し芳草(はうさう)鮮美(せんび)、落英(らくえい)繽紛(ひんぷん)たり。

現代語訳香りのよい草があざやかに美しく茂り、散った花びらがひらひらと舞い乱れている。

芳草
香りのよい草。
鮮美
あざやかで美しい。
落英
散る花びら。「英」は花の意味。
繽紛
花びらなどが乱れ散るさま。

白文漁人甚異之。

書き下し漁人(ぎよじん)甚(はなは)だ之を異(あや)しむ。

現代語訳漁師はこのありさまをとても不思議に思った。

甚
「はなはダ」。とても。
異
「あやシム」。不思議に思う。「之を異とす」と読むこともある。
○之
桃の木ばかりの林が両岸に続き、香りのよい草が茂り、花びらが舞い散っている光景。

白文復前行、欲窮其林。

書き下し復た前行(ぜんかう)して、其の林を窮(きは)めんと欲す。

現代語訳さらに先へ進んで、その林がどこまで続くのか見きわめようとした。

復
「まタ」。さらに。
窮
行き着くところまで見きわめる。
欲A
「Aせんと欲す」。Aしようとする。

白文林尽水源、便得一山。

書き下し林水源(すいげん)に尽き、便(すなは)ち一山(いちざん)を得たり。

現代語訳林は川の水源のあたりで尽き、そこで山が一つ目の前に現れた。

尽
尽きる。終わる。
便
「すなはチ」。すぐに。そこで。
得一山
一つの山を見つける。

洞穴の向こうの村

本文(訓読文)

白文山有小口、髣髴若有光。

書き下し山に小口(せうこう)有り、髣髴(はうふつ)として光有るがごとし。

現代語訳山には小さな洞穴の入り口があって、ぼんやりと光がさしているように見えた。

小口
小さな洞穴の入り口。
髣髴
ぼんやりとしているさま。
若
「ごとシ」。~のようだ。書き下し文では平仮名にする。

白文便捨船、従口入。

書き下し便ち船を捨て、口より入る。

現代語訳そこで舟を降りて、その入り口から中へ入っていった。

従
「よリ」。~から。
口
先の「小口」(洞穴の入り口)。

白文初極狭、纔通人。

書き下し初めは極めて狭く、纔(わづ)かに人を通ずるのみ。

現代語訳はじめはとても狭く、人ひとりがやっと通り抜けられるほどだった。

極
きわめて。とても。
纔
「わづカニ」。やっと。かろうじて。送り仮名の「のみ」と呼応して、「やっと~だけ」という限定を表す。

白文復行数十歩、豁然開朗。

書き下し復た行くこと数十歩(すうじつぽ)、豁然(くわつぜん)として開朗(かいらう)なり。

現代語訳さらに数十歩進むと、急に目の前がからりと開け、明るく広々としていた。

豁然
からりと開けるさま。
開朗
広々と開けて明るい。

白文土地平曠、屋舎儼然。

書き下し土地平曠(へいくわう)、屋舎(をくしや)儼然(げんぜん)たり。

現代語訳土地は平らで広々としており、家々はきちんと立ち並んでいる。

平曠
平らで広い。
屋舎
家。建物。
儼然
きちんと整っているさま。

白文有良田美池、桑竹之属。

書き下し良田(りやうでん)美池(びち)、桑竹(さうちく)の属(ぞく)有り。

現代語訳よく肥えた田、美しい池があり、桑や竹のたぐいも生えている。

良田
よく手入れされた、肥えた田。
属
たぐい。仲間。

白文阡陌交通、鶏犬相聞。

書き下し阡陌(せんぱく)交(こもごも)通じ、鶏犬(けいけん)相(あひ)聞こゆ。

現代語訳田畑のあぜ道は縦横に通じていて、鶏の声や犬の声がそこかしこから聞こえてくる。

阡陌
田畑のあぜ道。
交
「こもごも」。互いに。
鶏犬相聞
村のあちこちで鶏が鳴き、犬がほえる。のどかな村の様子。

白文其中往来種作男女衣著、悉如外人。

書き下し其の中に往来し種作(しゆさく)する男女の衣著(いちやく)は、悉(ことごと)く外人(ぐわいじん)のごとし。

現代語訳その中を行き来して、種をまいたり耕したりしている男女の服装は、すべて(この村の)外の世界の人と同じようであった。

種作
種をまいたり耕したりする。農作業。
衣著
衣服。服装。
悉
「ことごとク」。すべて。
外人
桃花源の外の世界の人。ここを「異国の人のようだった」と読む説もある。

白文黄髪垂髫、並怡然自楽。

書き下し黄髪(くわうはつ)垂髫(すいてう)、並(なら)びに怡然(いぜん)として自(みづか)ら楽しむ。

現代語訳老人も幼い子どもも、みなにこやかで、それぞれに楽しんでいる。

黄髪
老人。ひどく年をとると髪が白から黄色に変わるといわれたことから。
垂髫
幼い子ども。髪を束ねて垂らした子どもの髪形から。
並
みな。そろって。
怡然
なごやかで楽しそうなさま。

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)と意味を答えよ。
    ①忽
    ②甚
    ③便
    ④纔
    ⑤悉

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    ①たちまち/突然
    ②はなはだ/とても
    ③すなわち/すぐに・そこで
    ④わずかに/やっと
    ⑤ことごとく/すべて

  2. 次の語の意味を答えよ。
    ①落英
    ②儼然
    ③阡陌
    ④怡然

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    ①散る花びら
    ②きちんと整っているさま
    ③田畑のあぜ道
    ④なごやかで楽しそうなさま

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「復前行、欲窮其林」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:復た前行して、其の林を窮めんと欲す。
    現代語訳:さらに先へ進んで、その林がどこまで続くのか見きわめようとした。

  2. 「山有小口、髣髴若有光」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:山に小口有り、髣髴として光有るがごとし。
    現代語訳:山には小さな洞穴の入り口があって、ぼんやりと光がさしているように見えた。

  3. 「初極狭、纔通人」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:初めは極めて狭く、纔かに人を通ずるのみ。
    現代語訳:はじめはとても狭く、人ひとりがやっと通り抜けられるほどだった。

C 内容の読み取り

  1. 「忘路之遠近」とは、漁師がどのような状態になったことをいうか。

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    どれだけの距離を来たのかわからなくなり、道に迷ってしまった状態。

  2. 「漁人甚異之」の「之」は、どのような光景を指しているか。

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    川の両岸に桃の木ばかりの林が続き、香りのよい草があざやかに茂り、花びらがひらひらと舞い散っている光景。

  3. 漁師が村にたどり着くまでの道筋を、順に答えよ。

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    谷川をさかのぼる→桃の花の林→林が尽きる水源→山→小さな洞穴の入り口→(狭い穴を抜けて)開けた土地(村)

  4. 「土地平曠〜並怡然自楽」から、村はどのような所だとわかるか。「黄髪垂髫」が指す人々にもふれて説明せよ。

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    田畑や家がよく整い、人々が農作業にはげむ、豊かでのどかな村。老人(黄髪)や幼い子ども(垂髫)までが楽しそうに暮らしており、村全体が平和であることがわかる。

  5. 「鶏犬相聞」は、ある思想書の一節をふまえた表現とされる。その書名と、そこで理想とされた社会の姿を答えよ。

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    『老子』。国が小さく民が少ない(小国寡民の)村で、人々が素朴に満ち足りて暮らす社会。

続き(後半)

村人は突然現れた漁師に驚き、家に招いてもてなします。村人たちの先祖の話、そして漁師が村を出たあとのできごとは後半で読めます。