陶淵明『桃花源記』②書き下し文・現代語訳・解説|外人の為に道ふに足らざるなり・テスト予想問題付き

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. 村人のもてなし
  3. 村人たちの身の上
  4. 二度と見つからない村
  5. 劉子驥と、その後
  6. テスト予想問題
  7. 前半を読む

陶淵明(陶潜)『桃花源記(とうかげんき)』の後半、「見漁人〜後遂無問津者」の書き下し文・現代語訳・解説です。出典は『陶淵明集』。

前半では、道に迷った武陵の漁師が、桃の林の奥の洞穴を抜けて、平和な村にたどり着きました。

書き下し文・現代語訳・解説

村人のもてなし

本文(訓読文)

白文見漁人、乃大驚、問所従来。

書き下し漁人を見て、乃(すなは)ち大いに驚き、従(よ)りて来たる所を問ふ。

現代語訳(村人は)漁師を見ると、たいそう驚いて、どこから来たのかとたずねた。

乃
「すなはチ」。そこで。
所従来
どこから来たのか。来た道筋。
○大驚
村の中は顔見知りばかりで、外から来た見知らぬ人に会ったことがなかったから、大いに驚いたのである。

白文具答之。

書き下し具(つぶさ)に之に答ふ。

現代語訳(漁師は)そのことにくわしく答えた。

具
「つぶさニ」。くわしく。こまごまと。
○答之の主語は漁人。「之」は、どこから来たのかという問い。

白文便要還家、設酒殺鶏作食。

書き下し便ち要(えう)して家に還(かへ)り、酒を設け鶏を殺して食を作る。

現代語訳(村人は)すぐに漁師をぜひにと迎えて家に連れ帰り、酒を用意し、鶏をしめて料理をこしらえた。

要
ぜひにと迎える。招く。
設酒
酒の用意をする。
作食
食事を作る。

白文村中聞有此人、咸来問訊。

書き下し村中(そんちゆう)此の人有るを聞き、咸(みな)来たりて問訊(もんじん)す。

現代語訳村じゅうの人が、この人が来ていると聞いて、みなやって来てあいさつをした。

此人
漁人のこと。
咸
「みな」。全員。
問訊
あいさつをする。
○咸来問訊
外から来た漁師を歓迎し、外の世界の様子を知りたいという村人の思いが表れていると考えられる。

村人たちの身の上

本文(訓読文)

白文自云、「先世避秦時乱、率妻子邑人、来此絶境、不復出焉。遂与外人間隔。」

書き下し自ら云ふ、「先世(せんせい)秦時(しんじ)の乱を避け、妻子(さいし)邑人(いふじん)を率(ひき)ゐて、此の絶境(ぜつきやう)に来たり、復た出でず。遂に外人(ぐわいじん)と間隔(かんかく)す。」と。

現代語訳(村人たちが)自分から言うには、「私たちの先祖が秦の時代の戦乱を避けて、妻子や村の人々を引き連れ、この世間から隔たった土地にやって来て、それきり二度と外へは出ませんでした。そうしてそのまま、外の世界の人とは隔たってしまったのです。」と。

自云
主語は村人。
先世
先祖。
秦時乱
秦の時代の末の戦乱。始皇帝の死後、天下が乱れたこと。
邑人
村人。
絶境
世間から遠く離れた土地。
焉
置き字。読まない。
遂
そのまま。こうして。
外人
村の外の世界の人。
間隔
へだたる。行き来がなくなる。

白文問、「今是何世。」

書き下し問ふ、「今は是れ何の世ぞ。」と。

現代語訳そして、「今はいったい何という時代ですか。」とたずねた。

問
主語は村人。
何世
どういう時代か。
是
語調を強める字。

白文乃不知有漢、無論魏・晋。

書き下し乃ち漢有るを知らず、魏(ぎ)・晋(しん)に論(ろん)無し。

現代語訳なんと、(村人たちは)漢という時代があったことさえ知らず、まして魏や晋のことを知らないのは言うまでもない。

乃
ここは「なんと」。意外だという気持ちを表す。
無論
「論無し」。言うまでもない。
○秦の後には、漢・魏・晋と王朝が続いた。秦の末から晋の太元年間までは、六百年近くたっている。

白文此人一一為具言所聞。

書き下し此の人一一(いちいち)為(ため)に具(つぶさ)に聞く所を言ふ。

現代語訳この漁師は、一つ一つ村人のためにくわしく、自分が聞き知っていることを話してやった。

此人
漁人。
為
(村人の)ために。
所聞
聞き知っていること。秦の後の世の移り変わり。

白文皆歎惋。

書き下し皆歎惋(たんわん)す。

現代語訳(村人は)みな驚き、ため息をついて感じ入った。

歎惋
驚き嘆く。ため息をついて感じ入る。
○まったく知らなかった世の中の移り変わりの激しさに、心を動かされたのだと考えられる。

白文余人各復延至其家、皆出酒食。

書き下し余人(よじん)各(おのおの)復た延(ひ)きて其の家に至り、皆酒食(しゆしよく)を出だす。

現代語訳ほかの村人たちもそれぞれまた漁師を自分の家に招き、みな酒や食事を出してもてなした。

余人
ほかの人々。最初に漁師を家に招いた人以外の村人。
各
「おのおの」。それぞれ。
延
招く。案内する。

白文停数日辞去。

書き下し停まること数日にして辞去(じきよ)す。

現代語訳(漁師は)数日とどまったのち、別れを告げて村を去った。

停
とどまる。
辞去
いとまごいをして去る。

白文此中人語云、「不足為外人道也。」

書き下し此の中の人語(つ)げて云ふ、「外人の為に道(い)ふに足らざるなり。」と。

現代語訳(そのとき)村の人が漁師に告げて言うには、「外の世界の人に(この村のことを)お話しになるほどのことではありませんよ。」と。

此中人
この村の人。
為外人
外の世界の人に対して。
道
「いフ」。言う。
○遠回しに、「この村のことは外の人に話さないでほしい」と頼んでいる。

二度と見つからない村

本文(訓読文)

白文既出、得其船、便扶向路、処処誌之。

書き下し既に出でて、其の船を得、便ち向(さき)の路に扶(よ)り、処処(しよしよ)に之を誌(しる)す。

現代語訳やがて村を出ると、自分の舟を見つけ、すぐにもと来た道をたどりながら、あちこちに目印をつけておいた。

既
やがて。場面が変わったことを示す。
其船
漁師の舟。
向
「さきノ」。以前の。
扶
「よル」。沿う。たどる。
誌
目印をつける。
○処処誌之
もう一度この村を訪ねるため、道を見失わないように目印をつけた。

白文及郡下、詣太守、説如此。

書き下し郡下(ぐんか)に及び、太守(たいしゆ)に詣(いた)り、説くこと此くのごとし。

現代語訳郡の役所のある町に着くと、長官のもとに参上して、これまでのことをこのように話した。

郡下
郡の役所のある町。
太守
郡の長官。
詣
目上の人のところへ行く。参上する。
如此
「此くのごとし」。このようである。
○如此
漁師が村へ行き、もてなしを受けて帰ってくるまでのできごと。

白文太守即遣人随其往。

書き下し太守即(すなは)ち人をして其れに随(したが)ひて往(ゆ)かしむ。

現代語訳長官はすぐさま人をやって、漁師について行かせた。

即
「すなはチ」。すぐさま。
遣
人を差し向ける。ここでは使役を表し、「しむ」と読む。「人を遣はして其の往くに随ひ」のように読むこともある。
其
漁人。

白文尋向所誌、遂迷不復得路。

書き下し向に誌(しる)しし所を尋(たづ)ぬるに、遂に迷ひて復た路を得ず。

現代語訳(その者たちが)以前目印をつけておいた所を探したが、結局迷ってしまい、二度と村への道を探し当てられなかった。

向
「さきニ」。以前に。
所誌
目印をつけた所。
遂
結局。
不復得路
二度とは道を見つけられなかった(部分否定)。
○漁師が村人の願いにそむいて村のことを話してしまったために、道が見つからなくなったと読み取れる。

劉子驥と、その後

本文(訓読文)

白文南陽劉子驥、高尚士也。

書き下し南陽(なんやう)の劉子驥(りうしき)は、高尚(かうしやう)の士なり。

現代語訳南陽の劉子驥は、志の高い、けだかい人物であった。

南陽
地名。
劉子驥
実在の人物の名。
高尚士
世の中の名誉や利益を求めず、けだかく生きる人物。

白文聞之、欣然規往。

書き下し之を聞き、欣然(きんぜん)として往かんことを規(はか)る。

現代語訳この話を聞いて、喜んで(その村へ)行こうと計画した。

之
漁師が桃花源の村へ行った話。
欣然
喜ぶさま。
規
計画する。くわだてる。

白文未果。尋病終。

書き下し未だ果たさず。尋(つ)いで病みて終はる。

現代語訳しかし、まだ実現しないうちに、まもなく病気になって亡くなってしまった。

果
(計画を)実現する。
尋
「ついデ」。まもなく。
終
死ぬ。

白文後遂無問津者。

書き下し後遂に津(しん)を問ふ者無し。

現代語訳その後は、とうとう(この村への)渡し場をたずねる者はいなくなった。

遂
そのまま。とうとう。
津
渡し場。
問津
渡し場をたずねる。ここでは、桃花源の村への道を求めること。

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)を答えよ。
    ①具(具答之)
    ②咸
    ③各
    ④尋(尋病終)
    ⑤津

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    ①つぶさに
    ②みな
    ③おのおの
    ④ついで
    ⑤しん

  2. 次の語の意味を答えよ。
    ①要(便要還家)
    ②歎惋
    ③延(復延至其家)
    ④誌(処処誌之)
    ⑤高尚士

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    ①ぜひにと迎える
    ②驚き嘆く・ため息をついて感じ入る
    ③招く
    ④目印をつける
    ⑤世の名誉や利益を求めない、心のけだかい人物

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「乃不知有漢、無論魏・晋」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:乃ち漢有るを知らず、魏・晋に論無し。
    現代語訳:なんと、漢という時代があったことさえ知らず、まして魏や晋を知らないのは言うまでもない。

  2. 「不足為外人道也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:外人の為に道ふに足らざるなり。
    現代語訳:外の世界の人に(この村のことを)お話しになるほどのことではありません。

  3. 「太守即遣人随其往」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:太守即ち人をして其れに随ひて往かしむ。
    現代語訳:長官はすぐさま人をやって、漁師について行かせた。

  4. 「遂迷不復得路」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:遂に迷ひて復た路を得ず。
    現代語訳:結局迷ってしまい、二度と村への道を探し当てられなかった。

C 内容の読み取り

  1. 村人が漁師を見て「大驚」したのはなぜか。

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    村の中は顔見知りの者ばかりで、外の世界から来た見知らぬ人に会ったことがなかったから。

  2. 村人が「歎惋」したのはなぜか。「所聞」の内容にもふれて説明せよ。

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    漁師から、秦の後に漢・魏・晋と王朝が移り変わってきたことを聞き、まったく知らなかった世の中の変化の大きさに驚き、心を動かされたから。

  3. 村人が「不足為外人道也」と言ったのは、どのような思いからだと考えられるか。

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    外の人がこの村に来ると、村の平和な暮らしが乱されてしまうので、村のことを外で話さないでほしいという気持ち。

  4. 漁師が「処処誌之」したのは何のためか。また、その後、村への道が見つからなかったのはなぜだと読み取れるか。

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    もう一度この村を訪ねるため。村人の願いにそむいて、村のことを太守に話してしまったから。

  5. 最後の段落で劉子驥を登場させたことには、どのようなねらいがあると考えられるか。

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    実在の人物を出して話を本当にあったことのように感じさせるとともに、欲を出した漁師や太守と対比させ、理想の世界を純粋に求める人さえいなくなったことを印象づけるため。

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