『論語(ろんご)』のうち、学問について述べた六つの章(「学び」)の書き下し文・現代語訳・語句・句法を解説します。見出しの( )は、その章が収められている『論語』の篇名です。「仁」と「政治」について述べた章は「論語②仁・政治」で解説しています。
書き下し文・現代語訳・解説
一 学びて時に之を習ふ(学而篇)
白文子曰、「学而時習之。不亦説乎。
書き下し子曰はく、「学びて時に之を習ふ。亦説ばしからずや。
現代語訳先生が言われた、「(古典を)学び、折にふれてそれをおさらいして身につける。なんとうれしいことではないか。
- 学
- 『詩経』『書経』などの古典を読み、先人の教えを学ぶこと。
- 時
- しかるべき時に。折にふれて。
- 習
- くり返しおさらいして、自分のものにすること。
- 之
- 学んだことを指す。
- 説
- 「よろこバシ」。うれしい。喜ばしい。「悦」と同じ。
白文有朋自遠方来。不亦楽乎。
書き下し朋有り遠方より来たる。亦楽しからずや。
現代語訳同じ学問を志す友が、遠方からやって来る。なんと楽しいことではないか。
- 朋
- 同じ先生について学ぶ仲間。同じ学問を志す友人。
- 自
- 「より」。起点を表す。~から。
- 「朋の遠方より来たる有り」と読む読み方もある。
白文人不知而不慍。不亦君子乎。」
書き下し人知らざるも慍みず。亦君子ならずや。」と。
現代語訳世間の人が(自分の学問や能力を)認めてくれなくても、心の中で不満に思わない。なんと徳のある立派な人ではないか。」と。
- 人不知
- 世間の人が自分(の学徳・能力)を認めない。「知」は、人の値打ちを認めること。
- 慍
- 「うらム」。心の中に不満を抱いて、むっとする。
- 君子
- 学問と人格を磨いた、徳のある立派な人。反対の意味の語は「小人」。
二 故きを温ねて新しきを知る(為政篇)
白文子曰、「温故而知新、可以為師矣。」
書き下し子曰はく、「故きを温ねて新しきを知れば、以つて師と為るべし。」と。
現代語訳先生が言われた、「昔のことや古典をじっくり学び、そこから新しい意味や道理を見つけ出すことができれば、人の師となることができる。」と。
- 温
- 「たづヌ」。スープを煮つめるように、くり返し学んで習熟する。
- 故
- 古いこと。過去の事柄や古典。
- 知新
- 古人の知恵をふまえて、今の問題に通じる新しい意味や道理を知る。
- 可以~
- 「以つて~べし」。~することができる。
- 矣
- 置き字。断定の意を添える。
三 学びて思はざれば則ち罔し(為政篇)
白文子曰、「学而不思則罔。思而不学則殆。」
書き下し子曰はく、「学びて思はざれば、則ち罔し。思ひて学ばざれば、則ち殆ふし。」と。
現代語訳先生が言われた、「(書物や先生から)学んでも自分で考えなければ、ぼんやりとして物事の道理がはっきりしない。考えるだけで学ばなければ、ひとりよがりになって危うい。」と。
- 学
- 書物を読んだり、先生から教えを受けたりすること。
- 思
- 自分で考えること。思索。
- 而
- 置き字。「~て」とつなぐ。
- 罔
- 「くらシ」。学んだことの本当の意味がわかっていない状態。
- 殆
- 「あやフシ」。ひとりよがりな考えに陥って危険である。
四 古の学ぶ者は己の為にす(憲問篇)
白文子曰、「古之学者為己、今之学者為人。」
書き下し子曰はく、「古の学ぶ者は己の為にし、今の学ぶ者は人の為にす。」と。
現代語訳先生が言われた、「昔の学問をする人は自分を高めるために学んだが、今の学問をする人は人に認められるために学んでいる。」と。
- 古之学者
- 昔の学問をする人。
- 為己
- 自分を高める(修養する)ために学ぶ。もうけや得のため、という意味ではない。
- 為人
- 人に知られ、名声を得るために学問をする。人の役に立つため、という意味ではない。
五 学は及ばざるがごとくす(泰伯篇)
白文子曰、「学如不及、猶恐失之。」
書き下し子曰はく、「学は及ばざるがごとくするも、猶ほ之を失はんことを恐る。」と。
現代語訳先生が言われた、「学問は、どこまでやっても追いつけないかのように(まだ足りないという気持ちで)努めるものだが、それでもなお、学問の目標を見失ってしまうのではないかと恐れるものだ。」と。
- 学如不及
- 学ぶときには、まだ自分は足りていないと思って努める。
- 猶
- 「なホ」。それでもやはり。ここは再読文字ではない。
- 之
- 学問(の目標)を指す。
- 恐
- ~ではないかと心配する。
六 之を知るを之を知ると為す(為政篇)
白文子曰、「由、誨女知之乎。知之為知之、不知為不知。是知也。」
書き下し子曰はく、「由よ、女に之を知るを誨へんか。之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずと為す。是れ知るなり。」と。
現代語訳先生が言われた、「由よ、『知る』とはどういうことか、おまえに教えようか。知っていることは知っていることとし、知らないことは知らないこととして、きちんと分ける。それこそが知るということなのだ。」と。
- 由
- 孔子の弟子、子路(仲由)の名。
- 女
- 「なんぢ」。おまえ。二人称の代名詞。「汝」と同じ。
- 誨
- 「をしフ」。教える。
- 乎
- 疑問の助字。「~しようか」と相手に語りかける気持ち。
- 為
- 「なス」。~とする。
- 是
- 「これ」。前の内容を指す。
テスト予想問題
A 語句
次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)と、ここでの意味を答えよ。
①説ばしからず
②朋
③慍みず
④温ねて
⑤女に解答を見る
①よろこばしからず/喜ばしい
②とも/同じ学問を志す仲間
③うらみず/不満に思わない
④たずねて/くり返し学んで習熟する
⑤なんじに/おまえ「君子」とはどのような人か。また、反対の意味で使われる語を漢字二字で答えよ。
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学問と人格を磨いた、徳のある立派な人。反対の語=小人
B 書き下し文・現代語訳
「学而時習之。不亦説乎」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:学びて時に之を習ふ。亦説ばしからずや。
現代語訳:学び、折にふれてそれをおさらいして身につける。なんとうれしいことではないか。「温故而知新、可以為師矣」を書き下し文にし、現代語訳せよ。また、この章から生まれた四字熟語を答えよ。
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書き下し文:故きを温ねて新しきを知れば、以つて師と為るべし。
現代語訳:昔のことをよく学び、そこから新しい意味や道理を見いだせれば、人の師となることができる。
四字熟語:温故知新「学而不思則罔。思而不学則殆」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:学びて思はざれば、則ち罔し。思ひて学ばざれば、則ち殆ふし。
現代語訳:学んでも自分で考えなければ、物事の道理がはっきりしない。考えるだけで学ばなければ、ひとりよがりになって危うい。「知之為知之、不知為不知。是知也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。
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書き下し文:之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずと為す。是れ知るなり。
現代語訳:知っていることは知っていることとし、知らないことは知らないこととして区別する。それこそが知るということだ。
C 内容の読み取り
「人不知而不慍」とあるが、世間の人は何を「知」らないのか。
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自分の学問や能力(学徳)の値打ち。世間の人がそれを認めてくれないということ。
「学而不思則罔」の「則」は、どのような意味を表すか。
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「~ならば、そのときは」という意味で、前の部分が条件になることを表す。
「為己」「為人」は、それぞれどのように学問をすることか。また、孔子が評価しているのはどちらか。
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為己=自分の修養のため(自分を高めるため)に学問をすること。
為人=人に認められ、名声を得るために学問をすること。
評価しているのは「為己」(古之学者)のほう。「学如不及、猶恐失之」は、学問に対するどのような態度を述べたものか。「之」が指すものを明らかにして説明せよ。
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自分はまだ十分でないという気持ちで学問に努め、それでもなお学問(の目標)を見失うのではないかと心配する、という謙虚で厳しい態度。