『論語②仁・政治』書き下し文・現代語訳・解説|巧言令色・己所不欲勿施於人・民無信不立・テスト予想問題付き

目次
  1. 仁
  2. 一 巧言令色、鮮なし仁(学而篇)
  3. 二 其れ恕か(衛霊公篇)
  4. 三 何ぞ仁を事とせん(雍也篇)
  5. 四 孝弟なる者は、其れ仁の本たるか(学而篇)
  6. 政治
  7. 五 政は正なり(顔淵篇)
  8. 六 民信無くんば立たず(顔淵篇)
  9. 七 之を道くに徳を以つてす(為政篇)
  10. 八 政を為すは徳を以つてす(為政篇)
  11. テスト予想問題

『論語(ろんご)』のうち、「仁」について述べた四つの章と、「政治」について述べた四つの章の書き下し文・現代語訳・語句・句法を解説します。見出しの( )は、その章が収められている『論語』の篇名です。学問について述べた章は「論語①学び」で解説しています。

仁

一 巧言令色、鮮なし仁(学而篇)

本文(訓読文)

白文子曰、「巧言令色、鮮矣仁。」

書き下し子(し)曰(い)はく、「巧言令色(かうげんれいしよく)、鮮(すく)なし仁(じん)。」と。

現代語訳先生が言われた、「言葉を巧みに飾り立て、うわべだけ愛想よくする者には、仁(人を愛する心)がほとんどないものだ。」と。

巧言
言葉を巧みに飾り立てること。
令色
顔つきをとりつくろい、うわべだけ愛想よくすること。
鮮
「すくなシ」。少ない。ほとんどない。
矣
置き字。断定の意を添える。
鮮矣仁
ふつうの語順なら「仁鮮矣」。「鮮矣」を先に出して「仁」を最後に置き、意味を強めている(倒置)。

二 其れ恕か(衛霊公篇)

本文(訓読文)

白文子貢問曰、「有一言而可以終身行之者乎。」

書き下し子貢(しこう)問ひて曰はく、「一言(いちげん)にして以つて終身(しゆうしん)之を行ふべき者有りや。」と。

現代語訳子貢が(先生に)お尋ねして言った、「ひとことで言えて、一生それを行っていくべきことがありますか。」と。

子貢
孔子の弟子。弁舌にすぐれ、外交の交渉を得意とした。
一言
ひとことで言い表せること。
可以~
「以つて~べし」。~することができる。~するのがよい。
終身
一生の間。生涯。
之
「一言」を指す。
有~乎
「~有りや」。~はありますか。(疑問)

白文子曰、「其恕乎。己所不欲、勿施於人。」

書き下し子曰はく、「其れ恕(じよ)か。己(おのれ)の欲(ほつ)せざる所は、人に施(ほどこ)すこと勿(な)かれ。」と。

現代語訳先生が言われた、「それは恕(思いやり)であろうか。自分が人からされたくないことは、他人にもしてはならない。」と。

其
「それ」。語調を整え、推量の気持ちを添える。
恕
「じよ」。思いやり。自分の心と同じように、相手の心を思いやること。
乎
ここは「か」と読む。
己所不欲
自分が望まないこと。
施
(ある事を)人に対して行う。

三 何ぞ仁を事とせん(雍也篇)

本文(訓読文)

白文子貢曰、「如有博施於民而能済衆、何如。可謂仁乎。」

書き下し子貢曰はく、「如(も)し博(ひろ)く民に施して、能(よ)く衆(しゆう)を済(すく)ふ有らば、何如(いかん)。仁と謂(い)ふべきか。」と。

現代語訳子貢が言った、「もし人民に広く恵みを施して、多くの人々を救うことができる者がいたら、いかがでしょう。仁と言ってよいでしょうか。」と。

博施
広く恵みを与える。施すものは、物や心の恵み。
能
「よク」。~できる。
済衆
多くの人々を救う。
何如
「いかん」。どうか。状態や程度を問う。
可謂仁乎
仁と言ってよいか。

白文子曰、「何事於仁。必也聖乎。尭・舜其猶病諸。

書き下し子曰はく、「何ぞ仁を事とせん。必ずや聖(せい)か。尭(げう)・舜(しゆん)も其れ猶(な)ほ諸(これ)を病(や)めり。

現代語訳先生が言われた、「どうして仁どころであろうか、いや、仁にとどまらない。それはきっと聖人の行いだろう。尭や舜のような聖天子でさえ、なおそれが十分にできないことを悩んでおられたのだ。

事
「こととス」。問題にする。
何事於仁
どうして仁などと言っていられようか、仁の程度ではすまない。(反語)
必也~乎
「必ずや~か」。きっと~であろう。
聖
聖人。仁よりもさらに上の、最高の徳をそなえた人。
尭・舜
古代の伝説上の聖天子。
病
「やム」。悩む。心配する。
諸
「これ」。「博く民に施して、能く衆を済ふ」ことを指す。

白文夫仁者、己欲立而立人、己欲達而達人。能近取譬。可謂仁之方也已。」

書き下し夫(そ)れ仁者(じんしや)は、己立たんと欲して人を立て、己達せんと欲して人を達す。能く近く譬(たと)へを取る。仁の方(はう)と謂ふべきのみ。」と。

現代語訳そもそも仁の人は、自分が身を立てたいと思えば人を立たせ、自分が目的を達したいと思えば人に達成させる。身近な自分の身にひきくらべて、人のことを考えることができる。(それが)仁に至る方法と言えるだけだ。」と。

夫
「そレ」。そもそも。文のはじめに置き、話を起こす。
立
身を立てる。世に立つ。
達
目的を達する。栄達する。
能近取譬
身近な自分の身を例にとって、人の気持ちを推しはかることができる。
方
方法。手立て。
也已
「のみ」。限定・強意。

四 孝弟なる者は、其れ仁の本たるか(学而篇)

本文(訓読文)

白文有子曰、「其為人也、孝弟而好犯上者、鮮矣。不好犯上、而好作乱者、未之有也。

書き下し有子(いうし)曰はく、「其の人と為(な)りや、孝弟(かうてい)にして而(しか)も上(かみ)を犯(をか)すを好む者は、鮮なし。上を犯すを好まずして、而も乱(らん)を作(な)すを好む者は、未(いま)だ之れ有らざるなり。

現代語訳有子が言った、「その人柄が、親や年長者によく仕えていながら、目上の人に逆らうことを好む者は、ほとんどいない。目上の人に逆らうことを好まないのに、世の中を乱すことを好む者は、これまでいたためしがない。

有子
孔子の弟子、有若のこと。
為人
「ひととなり」。人柄。生まれつきの性質。
孝弟
「孝」は親によく仕えること。「弟」は兄や年長者に素直に従うこと(「悌」と同じ)。
犯上
目上の人に逆らう。
作乱
世の中の乱れを起こす。
鮮矣
ほとんどない。
未之有也
これまでにあったためしがない。「鮮矣」よりも強い言い方。

白文君子務本。本立而道生。孝弟也者、其為仁之本与。」

書き下し君子(くんし)は本(もと)を務(つと)む。本立ちて道生(しやう)ず。孝弟なる者は、其れ仁の本たるか。」と。

現代語訳君子は物事の根本のことに努める。根本が定まってはじめて、人の行うべき道もはっきりしてくる。孝と弟こそが、仁の根本であろうか。」と。

君子
徳のある立派な人。
務本
根本のことに努力する。
本立而道生
根本がしっかり定まってこそ、人の行うべき道(仁の道)が見えてくる。
孝弟也者
「孝弟なる者は」。孝弟というものは。
為
ここでは「たリ」。~である。
与
「か」。疑問の形だが、ここでは断定をひかえめにした言い方。

政治

五 政は正なり(顔淵篇)

本文(訓読文)

白文季康子問政於孔子。

書き下し季康子(きかうし)政(せい)を孔子に問ふ。

現代語訳季康子が、政治について孔子に尋ねた。

季康子
魯の国の大夫(国政をとる重臣)。
政
政治。
問A於B
「AをBに問ふ」。AについてBに尋ねる。「於」は置き字。

白文孔子対曰、「政者正也。子帥以正、孰敢不正。」

書き下し孔子対(こた)へて曰はく、「政は正(せい)なり。子(し)帥(ひき)ゐるに正を以つてせば、孰(たれ)か敢(あ)へて正(ただ)しからざらん。」と。

現代語訳孔子がお答えして言った、「政治とは、正しいということです。あなたが率先して正しく行えば、誰がわざわざ不正をするでしょうか、いや、誰も不正はしません。」と。

対
「こたフ」。目上の人にお答えする。
政者正也
政治とは正しいことである。「政」と「正」は同じ音で、音の通じる字を使って説明している。
子
あなた。ここでは季康子を指す。
帥
「ひきゐル」。率いる。人々の先に立って導く。
孰
「たれ」。誰。人を問う疑問詞で、「だれ」と濁らない。
敢
「あヘテ」。わざわざ。進んで。

六 民信無くんば立たず(顔淵篇)

本文(訓読文)

白文子貢問政。子曰、「足食、足兵、民信之矣。」

書き下し子貢政(せい)を問ふ。子曰はく、「食(しよく)を足(た)らし、兵(へい)を足らし、民(たみ)は之を信(しん)にす。」と。

現代語訳子貢が政治のあり方について質問した。先生は言われた、「食糧を満たし、軍備を整え、民に信義を大切にさせることだ。」と。

足
「たラス」。十分にする。満たす。
食
食糧。
兵
軍備。兵力。
民信之
人民に信義を重んじるようにさせる。「之」は「民」を指す。「民」を強めるために前に出し、もとの位置に「之」を置いた形。

白文子貢曰、「必不得已而去、於斯三者何先。」曰、「去兵。」

書き下し子貢曰はく、「必ず已(や)むを得ずして去(さ)らば、斯(こ)の三者(さんしや)に於(お)いて何(なに)をか先(さき)にせん。」と。曰はく、「兵を去らん。」と。

現代語訳子貢が言った、「どうしてもやむをえず切り捨てるとしたら、この三つのうち、どれを先にしますか。」と。先生は言われた、「軍備を捨てよう。」と。

必不得已
「必ず已むを得ず」。どうしてもやむをえず。
去
取り除く。捨てる。
斯三者
この三つ。食・兵・信を指す。
何先
どれを先に(捨てる)か。

白文子貢曰、「必不得已而去、於斯二者何先。」曰、「去食。自古皆有死。民無信不立。」

書き下し子貢曰はく、「必ず已むを得ずして去らば、斯の二者(にしや)に於いて何をか先にせん。」と。曰はく、「食を去らん。古(いにしへ)より皆死有り。民信無くんば立たず。」と。

現代語訳子貢が言った、「どうしてもやむをえず切り捨てるとしたら、この二つのうち、どちらを先にしますか。」と。先生は言われた、「食糧を捨てよう。昔から人は誰でもいつかは死ぬものだ。(だが)民が信義を失えば、国は立ちゆかない。」と。

斯二者
食と信を指す。
自古
「古より」。昔から。「自」は起点を表す。
皆有死
誰にも死は訪れる。
民無信不立
民に信義の心がなければ、国は立ちゆかない。

七 之を道くに徳を以つてす(為政篇)

本文(訓読文)

白文子曰、「道之以政、斉之以刑、民免而無恥。

書き下し子曰はく、「之を道(みちび)くに政(せい)を以つてし、之を斉(ととの)ふるに刑(けい)を以つてすれば、民免(まぬか)れて恥(はぢ)無し。

現代語訳先生が言われた、「人民を導くのに法律や命令を用い、人民を取りしまるのに刑罰を用いると、人民は刑罰をうまく逃れようとするだけで、恥じる心を持たない。

道
「みちびク」。導く。「導」と同じ。
之
人民を指す。この章の四つの「之」はすべて同じ。
政
ここでは法律や命令。
斉
「ととのフ」。そろえる。社会の秩序からはずれた民を取りしまる。
刑
刑罰。
免
(法の網をくぐって)刑罰を免れる。
無恥
罪を犯しても、それを恥と感じない。

白文道之以徳、斉之以礼、有恥且格。」

書き下し之を道くに徳(とく)を以つてし、之を斉ふるに礼(れい)を以つてすれば、恥有りて且(か)つ格(いた)る。」と。

現代語訳人民を導くのに道徳を用い、人民を整えるのに礼を用いると、人民は恥じる心を持ち、そのうえ正しい道に至る。」と。

徳
道徳。
礼
礼儀。社会の正しいきまり。
且
「かツ」。そのうえ。
格
「いたル」。(善に)至る。正しくなる。

八 政を為すは徳を以つてす(為政篇)

本文(訓読文)

白文子曰、「為政以徳。譬如北辰居其所而衆星共之。」

書き下し子曰はく、「政を為(な)すは徳を以つてす。譬(たと)ふれば北辰(ほくしん)の其の所に居(を)りて衆星(しゆうせい)之と共(とも)にするがごとし。」と。

現代語訳先生が言われた、「政治を行うには、道徳をもとにする。たとえるならば、北極星が自分の場所にじっとしていて、多くの星がそれを中心にめぐっているようなものだ。」と。

為政
政治を行う。
譬
「たとフ」。たとえる。
北辰
北極星。天の北極近くにあって、位置を変えずに輝く星。
居其所
自分の場所にいて動かない。
衆星
多くの星。
共之
北極星と共に動く。北極星をめぐる。「之」は北辰を指す。
如
「ごとシ」。~のようだ。

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)と、ここでの意味を答えよ。
    ①鮮なし
    ②如し
    ③猶ほ
    ④対へて
    ⑤譬ふれば

    解答を見る

    ①すくなし/少ない、ほとんどない
    ②もし/もし~ならば
    ③なお/それでもやはり
    ④こたえて/(目上の人に)お答えして
    ⑤たとうれば/たとえるならば

  2. 「巧言令色、鮮矣仁」を現代語訳せよ。また、ふつうの語順に直すとどのような順になるか、白文で答えよ。

    解答を見る

    現代語訳:言葉を巧みに飾り、うわべだけ愛想よくする者には、仁の心がほとんどない。
    ふつうの語順:仁鮮矣

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「己所不欲、勿施於人」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:己の欲せざる所は、人に施すこと勿かれ。
    現代語訳:自分が人からされたくないことは、他人にもしてはならない。

  2. 「何事於仁。必也聖乎」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:何ぞ仁を事とせん。必ずや聖か。
    現代語訳:どうして仁どころであろうか、いや、仁にとどまらない。きっと聖人の行いであろう。

  3. 「子帥以正、孰敢不正」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:子帥ゐるに正を以つてせば、孰か敢へて正しからざらん。
    現代語訳:あなたが率先して正しく行えば、誰がわざわざ不正をするだろうか、いや、誰も不正をしない。

  4. 「民無信不立」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:民信無くんば立たず。
    現代語訳:民が信義を失えば、国(の政治)は立ちゆかない。

C 内容の読み取り

  1. 孔子が子貢に示した「一言」とは何か。漢字一字で答え、その具体的な内容を本文中から抜き出せ(訓点不要)。

    解答を見る

    恕 具体的な内容:己所不欲、勿施於人

  2. 「尭・舜其猶病諸」の「諸」は何を指すか。現代語で説明せよ。

    解答を見る

    人民に広く恵みを施して、多くの人々を救うこと。

  3. 有子が「孝弟」を「仁之本」と考えるのはなぜか。

    解答を見る

    親や年長者によく仕える人は、目上に逆らわず、世の中を乱すこともない。親や身近な人を大切にする心が、広く人を愛する心(仁)の出発点になるから。

  4. 「斯二者」は何と何を指すか。また、孔子がそのうち最後まで残したのはどちらか。その理由も答えよ。

    解答を見る

    食(食糧)と信(民の信義)。最後まで残したのは信。
    理由:人は昔から誰でもいつかは死ぬものだが、民に信義がなければ国の政治が成り立たないから。

  5. 「道之以政…」の章で、法律や刑罰で治めた場合と、道徳や礼で治めた場合とでは、人民はそれぞれどうなると述べているか。

    解答を見る

    法律・刑罰の場合=刑罰をうまく逃れようとするだけで、恥じる心を持たない。
    道徳・礼の場合=恥じる心を持ち、そのうえ正しい道に至る。

  6. 「北辰」と「衆星」は、それぞれ何をたとえているか。

    解答を見る

    北辰=徳によって政治を行う為政者 衆星=為政者の徳を慕って集まる人民