蘇軾『赤壁賦』③書き下し文・現代語訳・解説|造物者の無尽蔵・テスト予想問題付き

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. 「変」と「不変」(第四段落)
  3. 夜明けまでの宴(第五段落)
  4. テスト予想問題
  5. 『赤壁賦』を最初から読む
  6. 蘇軾の詩も読む

蘇軾(そしょく)『赤壁賦(せきへきのふ)』③「造物者の無尽蔵」の書き下し文・現代語訳・解説です。教科書の第四・第五段落にあたります。本文は『古文真宝』後集によります。

②では、客が、英雄曹操も今はいないことを語り、ちっぽけで命の短い人間のはかなさを嘆きました。

書き下し文・現代語訳・解説

「変」と「不変」(第四段落)

本文(訓読文)

白文蘇子曰、「客亦知夫水与月乎。

書き下し蘇子曰はく、「客も亦(また)夫(か)の水と月とを知るか。

現代語訳蘇子が言った、「あなたもまた、あの水と月のことを知っていますか。

夫
「かノ」。あの。
水
長江の流れ。
乎
ここは「か」と読む疑問。

白文逝者如斯、而未嘗往也。

書き下し逝く者は斯(か)くのごとくなれども、未だ嘗(かつ)て往かざるなり。

現代語訳過ぎ去っていくものは、この川の水のように流れていきますが、(水そのものは)これまで去ったきりなくなってしまったことはないのです。

逝者
過ぎ去っていくもの。
斯
「かク」。このように。目の前の長江の流れを指す。
逝者如斯
『論語』に、孔子が川のほとりで「逝く者は斯くのごときか、昼夜を舎かず」と言ったとあるのにもとづく。
而
ここは逆接。
往
去ったきりになる。行ったきりで戻らない。

白文盈虚者如彼、而卒莫消長也。

書き下し盈虚(えいきよ)する者は彼(か)のごとくなれども、卒(つひ)に消長する莫きなり。

現代語訳あの月のように満ち欠けをくり返していても、(月そのものは)結局、消えてなくなったり大きくなったりすることはないのです。

盈虚
満ちたり欠けたりする。
彼
「かレ」。あれ。月を指す。
卒
「つひニ」。結局。
消長
減ったり増えたりする。
○川の水も月も、形は変わるが、その本体は変わらないということ。
本文(訓読文)

白文蓋将自其変者而観之、則天地曾不能以一瞬。

書き下し蓋(けだ)し将(は)た其の変ずる者よりして之を観れば、則ち天地も曾(かつ)て以て一瞬なる能はず。

現代語訳そもそも、変化するという見方からこれを見れば、天地でさえ一瞬も同じ状態ではありえません。

蓋将
そもそも。話を新しく進めるときに使う語。
自
「よリ」。~から。
其変者
変化するという面。変化するという見方。
曾
ここは下の打消を強める。まったく。決して。
不能以一瞬
一瞬も同じ状態ではいられない。

白文自其不変者而観之、則物与我皆無尽也。

書き下し其の変ぜざる者よりして之を観れば、則ち物と我と皆尽くること無きなり。

現代語訳変化しないという見方からこれを見れば、万物も私たちも、みな尽きてなくなることはないのです。

其不変者
変化しないという面。変化しないという見方。
物与我
万物と私たち(人間)。
無尽
尽きてなくなることがない。

白文而又何羨乎。

書き下し而(しか)るに又何をか羨(うらや)まんや。

現代語訳それなのに、また何をうらやむことがありましょうか(何もうらやむことはありません)。

而
「しかルニ」。逆接。それなのに。
何~乎
「何をか~んや」。何を~しようか、いや何も~ない(反語)。
○客が「羨長江之無窮」と言ったことへの答え。
本文(訓読文)

白文且夫天地之間、物各有主。

書き下し且つ夫れ天地の間、物各(おのおの)主(しゆ)有り。

現代語訳さて、そもそも天地の間では、物にはそれぞれ持ち主がいます。

且夫
「かツそレ」。さて。そもそも。話を新しく持ち出す語。
主
持ち主。所有者。

白文苟非吾之所有、雖一毫而莫取。

書き下し苟(いやし)くも吾の有する所に非ずんば、一毫(いちがう)と雖(いへど)も取ること莫(な)し。

現代語訳もし自分の持ち物でなければ、たとえほんのわずかなものでも取ることはありません。

苟
「いやしクモ」。もしも。かりにも。
非ずんば
~でなければ。
一毫
一本の細い毛。ごくわずかなもののたとえ。
雖
「いへどモ」。たとえ~でも。
而
置き字。

白文惟江上之清風、与山間之明月、耳得之而為声、目遇之而成色。

書き下し惟(た)だ江上の清風と、山間の明月とのみ、耳之を得て声を為し、目之に遇(あ)ひて色を成す。

現代語訳ただ、長江の上を吹きわたる清らかな風と、山あいの明月だけは、耳がとらえれば心地よい音となり、目が出会えば美しい景色となります。

惟
「たダ」。ただ~だけ。
江上之清風
長江の上を吹く清らかな風。
山間之明月
山あいにかかる明月。
耳得之
耳が清風(の音)をとらえる。「之」は江上之清風を指す。
目遇之
目が明月に出会う。「之」は山間之明月を指す。
声
ここは、心地よい響き。
色
ここは、美しい景色。

白文取之無禁、用之不竭。

書き下し之を取れども禁ずる無く、之を用ゐれども竭(つ)きず。

現代語訳これらは、いくら取っても禁じられることがなく、いくら使っても尽きることがありません。

之
江上之清風と山間之明月を指す。
竭
「つク」。尽きる。なくなる。

白文是造物者之無尽蔵也。而吾与子之所共適。」

書き下し是れ造物者(ざうぶつしや)の無尽蔵(むじんざう)なり。而して吾と子との共に適(てき)する所なり。」と。

現代語訳これこそ、天地万物を造った者の、尽きることのない宝の蔵なのです。そして、私とあなたとが、ともに心ゆくまで楽しめるものなのです。」と。

造物者
天地万物を造った者。創造主。
無尽蔵
いくら取り出してもなくならない蔵。
而
「しかうシテ」。そして。
適
心にかなう。満足する。
○「是」は、清風と明月のことを指す。

夜明けまでの宴(第五段落)

本文(訓読文)

白文客喜而笑、洗盞更酌。

書き下し客喜びて笑ひ、盞(さかづき)を洗ひて更(さら)に酌(く)む。

現代語訳客は喜んで笑い、杯を洗ってあらためて酒をくみかわした。

盞
さかずき。小さな杯。
更
「さらニ」。あらためて。

白文肴核既尽、杯盤狼藉。

書き下し肴核(かうかく)既に尽きて、杯盤(はいばん)狼藉(らうぜき)たり。

現代語訳酒のさかなもすっかりなくなり、杯や皿が散らかっていた。

肴核
酒のさかな。
杯盤
杯と皿。
狼藉
散らかっている様子。

白文相与枕藉乎舟中、不知東方之既白。

書き下し相与に舟中に枕藉(ちんしや)して、東方の既に白むを知らず。

現代語訳(私たちは)一緒に舟の中で互いに寄りかかって眠り、東の空がもう白んでいたのにも気づかなかった。

相与
一緒に。
枕藉
互いに寄りかかって眠る。
乎
置き字。
東方之既白
東の空がもう明るくなっている。夜が明けたこと。

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)を答えよ。
    ①卒
    ②蓋
    ③苟
    ④且夫
    ⑤竭

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    ①ついに
    ②けだし
    ③いやしくも
    ④かつそれ
    ⑤つく(本文は「竭きず」)

  2. 次の語の意味を答えよ。
    ①盈虚
    ②一毫
    ③造物者
    ④肴核
    ⑤枕藉

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    ①満ちたり欠けたりする
    ②ごくわずかなもの
    ③天地万物を造った者(創造主)
    ④酒のさかな
    ⑤互いに寄りかかって眠る

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「逝者如斯、而未嘗往也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:逝く者は斯くのごとくなれども、未だ嘗て往かざるなり。
    現代語訳:過ぎ去っていくものはこの川の水のように流れていくが、(水そのものは)これまで去ったきりなくなってしまったことはない。

  2. 「而又何羨乎」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:而るに又何をか羨まんや。
    現代語訳:それなのに、また何をうらやむことがあろうか、いや何もうらやむことはない。

  3. 「苟非吾之所有、雖一毫而莫取」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:苟くも吾の有する所に非ずんば、一毫と雖も取ること莫し。
    現代語訳:もし自分の持ち物でなければ、たとえほんのわずかなものでも取ることはない。

C 内容の読み取り

  1. 「逝者如斯」の「斯」と、「盈虚者如彼」の「彼」は、それぞれ何を指すか。本文中から一字で抜き出せ。

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    斯=水 彼=月

  2. 「自其変者而観之」と「自其不変者而観之」とでは、それぞれ天地や万物がどのように見えると蘇子は言っているか。

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    変化するという見方からは、天地でさえ一瞬も同じ状態ではありえないように見える。変化しないという見方からは、万物も自分たちも、みな尽きてなくなることはないように見える。

  3. 「物各有主」とあるが、これに対して、持ち主がなく誰でも自由に楽しめるものとして蘇子があげているものを、本文中から二つ抜き出せ(返り点・送り仮名は不要)。

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    江上之清風・山間之明月

  4. 「是造物者之無尽蔵也」とあるが、蘇子が清風と明月をこのように言うのはなぜか。

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    清風と明月は、いくら取っても誰からも禁じられず、いくら使っても尽きることがないから。

  5. 「客喜而笑」とあるが、客が喜んで笑ったのはなぜだと考えられるか。

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    人の命のはかなさを嘆いていたが、不変という見方に立てば人も尽きることはなく、尽きない自然を心ゆくまで楽しめばよいという蘇子の考えに共感し、悲しみが晴れたから。

『赤壁賦』を最初から読む

蘇軾の詩も読む