近世俳諧(芭蕉・蕪村・一茶) 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 松尾芭蕉
  3. 枯れ枝に烏のとまりけり秋の暮れ
  4. 海暮れて鴨の声ほのかに白し
  5. 梅が香にのつと日の出る山路かな
  6. この道や行く人なしに秋の暮れ
  7. 蛸壺やはかなき夢を夏の月
  8. 病雁の夜寒に落ちて旅寝かな
  9. 与謝蕪村
  10. 牡丹散りて打ちかさなりぬ二三片
  11. 五月雨や大河を前に家二軒
  12. 月天心貧しき町を通りけり
  13. 小林一茶
  14. これがまあつひの栖か雪五尺
  15. 悠然として山を見る蛙かな
  16. 露の世は露の世ながらさりながら
  17. 芭蕉の門人
  18. 梅一輪一輪ほどのあたたかさ(服部嵐雪)
  19. 応々といへどたたくや雪の門(向井去来)
  20. テスト予想問題

江戸時代の俳諧から、松尾芭蕉・与謝蕪村・小林一茶らの発句(ほっく)十四句を取り上げ、現代語訳・品詞分解・解説をまとめました。教科書によく載る句を中心に選んでいます。

それぞれの句の季語と季節、切れ字、そして何を詠んだ句か(情景と心情)がよく問われます。句の中の語の意味や、ふまえている古典・漢詩にも注意しましょう。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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松尾芭蕉

枯れ枝に烏のとまりけり秋の暮れ

原文
枯れ枝に格助場所烏からすの格助主格とまりラ四連用けり詠嘆終止秋の格助体修暮れ

現代語訳(葉の落ちつくした)枯れ枝に烏がとまっていることよ。(そのもの寂しさは)まさに秋の夕暮れである。

秋の暮れ
秋の夕暮れ。
解説

季語は「秋の暮れ」(秋)、切れ字は「けり」。

葉の落ちた枯れ枝に烏がとまっている寂しい姿が、秋の夕暮れのもの寂しい趣にいかにもふさわしい、と詠んでいる。

中七が「からすのとまりけり」の八音で、字余りになっている。初めは「とまりたるや」という形だったのを、のちに「とまりけり」に改めた。

海暮れて鴨の声ほのかに白し

原文
海暮れラ下二連用て接助単純接続鴨かもの格助体修声こゑほのかにナリ連用白しク終止

現代語訳海が暮れていき、(暗くなった海の向こうから聞こえてくる)鴨の声が、ほのかに白く感じられる。

ほのかなり
かすかだ。ぼんやりしている。
解説

季語は「鴨」(冬)。尾張の熱田(今の名古屋市)で、海辺で一日を過ごしたときの作。

「ほのかに白し」は、鴨の声がそう感じられるということ。耳で聞いた鴨の声を、「白し」と目で見た色のように表している。

ふつうの五・七・五でなく、五・五・七の形になっている。「ほのかに白し鴨の声」としないことで、鴨の声を含んだ冬の海の夕暮れの景色全体が「白し」と感じられる。

梅が香にのつと日の出る山路かな

原文
梅が格助体修香かに格助場所のつと副日の格助主格出でるダ下二連体山路やまぢかな終助詠嘆

現代語訳梅の香りが漂う(早春の)山道を行くと、その香りの中に、ぬっと朝日が昇ってきたことよ。

梅が香
梅の香り。
のつと
ぬっと。突然、姿を現すさま。
山路
山道。
解説

季語は「梅(が香)」(春)、切れ字は「かな」。梅の咲く早春の、まだ寒さの残る早朝の山道を詠んでいる。

優美な「梅が香」に、「のつと」という俗な言葉(擬態語)を取り合わせている。芭蕉が晩年に目指した「かるみ」をよく表す句といわれる。

この道や行く人なしに秋の暮れ

原文
こ代名の格助体修道や間助詠嘆行くカ四連体人なしク終止に格助状態秋の格助体修暮れ

現代語訳この道よ。(ほかに)行く人もないまま、秋の夕暮れ(の寂しさがせまってくる)。

所思
(前書き)心に思うこと。
解説

季語は「秋の暮れ」(秋)、切れ字は「や」。芭蕉が亡くなった年(元禄七年)の作。

目の前の、だれも通る人のない道を詠みながら、「この道」には自分の歩んできた俳諧の道が重ねられている。自分に続く者がいないという孤独と寂しさがこめられている。

蛸壺やはかなき夢を夏の月

原文
蛸壺たこつぼや間助詠嘆はかなきク連体夢を格助対象夏の格助体修月

現代語訳蛸壺よ。(夜が明ければ引き上げられるとも知らず)蛸ははかない夢を見ているのだろう、(短い)夏の夜の月の下で。

明石夜泊
(前書き)明石(今の兵庫県明石市)に船で一夜泊まって。
蛸壺
蛸をとるための素焼きの壺。
解説

季語は「夏の月」(夏)、切れ字は「や」。夏の夜の短さを感じさせる。

「はかなき夢」は、夜が明ければ壺ごと引き上げられてしまうことも知らずに、蛸が壺の中で見ている夢。そこに、旅寝をする自分の人生のはかなさも重ねている。

病雁の夜寒に落ちて旅寝かな

原文
病雁びやうがんの格助主格夜寒よさむに格助時間落ちタ上二連用て接助単純接続旅寝たびねかな終助詠嘆

現代語訳病んだ雁が、夜寒のころに(群れから離れて)降り立って、旅寝をしていることよ。(病む自分もここで旅寝をしている。)

堅田にて
(前書き)堅田(琵琶湖の西岸の地)で。
病雁
病気の雁。「びょうがん」とも「やむかり」とも読む。
夜寒
秋が深まって夜に寒さを感じること。
落つ
(鳥が)降り立つ。
解説

季語は「雁」「夜寒」(秋)、切れ字は「かな」。

旅寝をしているのは病雁だが、そこに、堅田で病気になって旅寝をしている作者自身の姿が重ねられている。

与謝蕪村

牡丹散りて打ちかさなりぬ二三片

原文
牡丹ぼたん散りラ四連用て接助単純接続打ちかさなりラ四連用ぬ完了終止二三片にさんぺん

現代語訳牡丹の花が散って、重なり合った。二、三枚の花びらが。

二三片
二、三枚(の花びら)。
解説

季語は「牡丹」(夏)、切れ字は「ぬ」(完了の助動詞の終止形)。

上五が「ぼたんちりて」の六音で、字余りになっている。

「打ちかさなりぬ」の主語は「二三片(の牡丹の花びら)」。主語を後に置く倒置になっていて、大きな花びらが重なり合う様子が印象に残る。

五月雨や大河を前に家二軒

原文
五月雨さみだれや間助詠嘆大河たいがを格助対象前に格助場所家二軒にけん

現代語訳五月雨が降り続いている。(雨で水かさが増し)濁流となった大河を前に、家が二軒(身を寄せ合って建っている)。

五月雨
陰暦五月ごろに降り続く長雨。梅雨。
解説

季語は「五月雨」(夏)、切れ字は「や」。

「大河」は、降り続く五月雨で水かさが増し、濁流となって流れている川。

「家二軒」は、その大河の前で、二軒の家が寄り添うように心細く建っている様子。大きな自然の脅威と、小さな家の心細さが対照的に描かれている。芭蕉の「五月雨を集めてはやし最上川」を思わせる句。

月天心貧しき町を通りけり

原文
月天心てんしん貧しきシク連体町を格助場所通りラ四連用けり詠嘆終止

現代語訳月が空の真ん中に(高く輝いている)。(その光に照らされた)貧しい町を、(私は)通り過ぎたことよ。

天心
天の中心。空の真上。
解説

季語は「月」(秋)、切れ字は「けり」。俳句でただ「月」といえば秋。

「通りけり」の主語は作者。月光に照らされた、寝静まった貧しい町を、作者がひとり通っていく。

初めは上五が「名月や」だった。「月天心」とすることで、月が真上にあり、夜更けであることがはっきりする。漢語の「天心」が引きしまった響きを生んでいる。

小林一茶

これがまあつひの栖か雪五尺

原文
これ代名が格助主格まあ感つひの格助体修栖すみかか終助詠嘆雪五尺ごしやく

現代語訳これがまあ、(私の)最後の住まいとなるところなのか。雪が五尺も積もっている(この故郷の家が)。

十二月二十四日、故郷に入る
(前書き)一茶が五十歳のとき、故郷の柏原に永住しようと決めて帰ったときの作。
つひ
終わり。最後。
栖
住まい。
五尺
一尺は約三十センチメートル。
解説

季語は「雪」(冬)。「か」は詠嘆の終助詞で、ここで句が切れる。

「つひの栖」は、命が尽きるまで住む最後の住まい。長い放浪の末に帰った故郷は、五尺もの雪に埋もれている。結びの「雪五尺」は体言止め。

悠然として山を見る蛙かな

原文
悠然いうぜんとタリ連用して接助単純接続山を格助対象見るマ上一連体蛙かはづかな終助詠嘆

現代語訳(まるで隠者のように)ゆったりと落ち着いて、山を見ている蛙だなあ。

悠然
ゆったりと落ち着いているさま。
解説

季語は「蛙」(春)、切れ字は「かな」。

中国の詩人陶淵明(陶潜)の漢詩「飲酒」の一節「菊を采る東籬の下、悠然として南山を見る」をふまえている。

ふてぶてしい顔の蛙を、山を眺める隠者の詩人に見立てたところに、おかしみがある。

露の世は露の世ながらさりながら

原文
露の格助比喩世は係助提示露の格助比喩世ながら接助逆接確定さりながら接

現代語訳この世は露のようにはかない世だとわかっている。わかってはいるけれど、そうではあっても(わが子の死はあきらめきれない)。

露の世
露のようにはかない世。
さりながら
そうではあるが。しかし。
解説

季語は「露」(秋)。長女さとを満一歳あまりで亡くしたときの作。

「ながら」は逆接の接続助詞。この世がはかないものだとわかってはいても、「さりながら」の後には、わが子の死をあきらめきれないという気持ちが省かれている。

「露の世」「ながら」を繰り返すリズムの中に、あきらめきれない悲しみがこめられている。

芭蕉の門人

梅一輪一輪ほどのあたたかさ(服部嵐雪)

原文
梅一輪いちりん一輪いちりんほど副助程度の格助体修あたたかさ

現代語訳梅が一輪咲いた。(まだ寒い中に)その一輪ほどの(ほのかな)暖かさが感じられる。

解説

季語は「梅」。寒さの中に咲いた梅(寒梅)で、冬の季語とされる。切れ字はない(「一輪」の後で切れる)。

梅が一輪咲いたことに、ほんのわずかな暖かさ、近づいてくる春の気配を感じている。

「一輪ほどの」であって「一輪づつの」ではないので、梅は一輪だけ咲いている。

応々といへどたたくや雪の門(向井去来)

原文
応々おうおう感と格助引用いへハ四已然ど接助逆接確定たたくカ四終止や間助詠嘆雪の格助体修門かど

現代語訳「おうおう」と(家の中から)返事をするのに、なおも門をたたいていることよ。雪の(降る夜の)門を。

応々
「おう、おう」という返事の声(擬声語)。
解説

季語は「雪」(冬)、切れ字は「や」。

「応々」と返事をしているのは、家の中にいる人(作者)。返事をしているのに、外の訪問者は門をたたき続けている。

たたき続けるのは、降る雪に声がかき消されて返事が聞こえないからか、寒さのために早く開けてほしくて急かしているからだと考えられる。

おくのほそ道の句:立石寺(閑かさや岩にしみ入る蟬の声) / 平泉(夏草や兵どもが夢の跡) / 『去来抄』:行く春を

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①烏
    ②夜寒
    ③牡丹
    ④五月雨
    ⑤天心
    ⑥栖
    ⑦蛙

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    ①からす
    ②よさむ
    ③ぼたん
    ④さみだれ
    ⑤てんしん
    ⑥すみか
    ⑦かわず

  2. 次の語の意味を答えよ。
    ①秋の暮れ
    ②のつと
    ③天心
    ④つひの栖
    ⑤露の世

    解答を見る

    ①秋の夕暮れ
    ②ぬっと・突然姿を現すさま
    ③天の中心・空の真上
    ④最後の住まい・命が尽きるまで住む所
    ⑤露のようにはかない世

B 季語・切れ字・文法

  1. 次の句の季語と季節を答えよ。
    ①海暮れて鴨の声ほのかに白し
    ②梅が香にのつと日の出る山路かな
    ③蛸壺やはかなき夢を夏の月
    ④病雁の夜寒に落ちて旅寝かな
    ⑤五月雨や大河を前に家二軒
    ⑥月天心貧しき町を通りけり
    ⑦悠然として山を見る蛙かな
    ⑧露の世は露の世ながらさりながら

    解答を見る

    ①鴨・冬
    ②梅(梅が香)・春
    ③夏の月・夏
    ④雁、夜寒・秋
    ⑤五月雨・夏
    ⑥月・秋
    ⑦蛙・春
    ⑧露・秋

  2. 次の句の切れ字を抜き出せ。
    ①枯れ枝に烏のとまりけり秋の暮れ
    ②この道や行く人なしに秋の暮れ
    ③牡丹散りて打ちかさなりぬ二三片
    ④応々といへどたたくや雪の門

    解答を見る

    ①けり
    ②や
    ③ぬ
    ④や

  3. 次の傍線部の品詞と意味・用法を答えよ。
    ①露の世は露の世ながら の「ながら」
    ②病雁の夜寒に の「の」
    ③打ちかさなりぬ の「ぬ」

    解答を見る

    ①接続助詞・逆接(確定)
    ②格助詞・主格
    ③完了の助動詞(終止形)

C 句の内容

  1. 「海暮れて鴨の声ほのかに白し」について、①「ほのかに白し」とは何がそうだというのか。②この句の表現の特徴を、音数と感覚の面から説明せよ。

    解答を見る

    ①鴨の声
    ②五・五・七の破調になっている。耳で聞いた鴨の声を「白し」と、目で見た色のように表している。

  2. 「この道や行く人なしに秋の暮れ」について、「この道」には目の前の道のほかに何が重ねられているか。また、この句にはどのような心情がこめられているか。

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    俳諧の道。 自分に続く者がいないという、孤独で寂しい思い。

  3. 「蛸壺やはかなき夢を夏の月」の「はかなき夢」とは、どういうことか。説明せよ。

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    夜が明ければ壺ごと引き上げられてしまうことも知らずに、蛸が壺の中で見ている短い夢。そこに人生のはかなさも重ねている。

  4. 「病雁の夜寒に落ちて旅寝かな」について、①「落ちて」とはどういう意味か。②この句で、作者は病雁に何を重ねているか。

    解答を見る

    ①(群れから離れて)降り立って。
    ②病気になって旅寝をしている自分自身の姿。

  5. 「月天心貧しき町を通りけり」について、①「通りけり」の主語を答えよ。②上五が初め「名月や」だったのを「月天心」としたことで、どのようなことがはっきりしたか。

    解答を見る

    ①作者
    ②月が空の真上にあること、そして夜更けであること。

  6. 「悠然として山を見る蛙かな」は、だれの何という漢詩をふまえているか。また、この句のおもしろさはどこにあるか。

    解答を見る

    陶淵明(陶潜)の「飲酒」。 蛙を、山をゆったりと眺める隠者の詩人に見立てたところ。

  7. 「露の世は露の世ながらさりながら」の「さりながら」の後には、どのような気持ちが省略されていると考えられるか。この句が詠まれた事情をふまえて答えよ。

    解答を見る

    長女を幼くして亡くした作者が、この世がはかないものだとわかってはいても、わが子の死をあきらめきれないという気持ち。

  8. 「応々といへどたたくや雪の門」について、①「応々」と言っているのはだれか。②訪問者が門をたたき続けるのはなぜだと考えられるか。

    解答を見る

    ①家の中にいる人(作者)
    ②降る雪に声がかき消されて返事が聞こえないから。(寒さのために、早く門を開けてほしいと急かしているから。)