『おくのほそ道』立石寺 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 立石寺へ
  4. 山上の堂に登る
  5. テスト予想問題

『おくのほそ道』「立石寺」の現代語訳・品詞分解・解説です。

人々に勧められ、予定を変えて山形の立石寺を訪れた芭蕉が、岩山の上の静まりかえった寺に参拝し、「閑かさや岩にしみ入る蟬の声」の句を詠む場面です。短い文章ですが、漢語・対句の多い引き締まった表現や、句と本文の関係がよく問われます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

立石寺へ

原文
山形領やまがたりやうに格助場所立石寺りふしやくじと格助引用いふハ四連体山寺やまでらありラ変終止。

現代語訳山形藩の領地の中に、山寺の立石寺がある。

山形領
山形藩の領内。
山寺
山の中にある寺。立石寺は「山寺」とも呼ばれる。
原文
慈覚大師じかくだいしの格助体修開基かいきに断定連用して接助単純接続、ことに副清閑せいかんの格助体修地ちなり断定終止。

現代語訳慈覚大師が開いた寺で、とりわけ清らかで静かな土地である。

慈覚大師
この寺を開いた僧。
開基
寺を初めて開くこと。
ことに
とりわけ。特に。
清閑
清らかで静かなこと。
原文
一見いつけんすサ変終止べき適当連体よし、人々の格助主格勧むるマ下二連体に格助拠所よつラ四連用・音て接助単純接続、尾花沢をばねざはより格助起点とつて返しサ四連用、そ代名の格助体修間あひ七里しちりばかり副助程度なり断定終止。

現代語訳人々が「一度は見ておくとよい」と勧めてくれたので、尾花沢から道を引き返して(立石寺へ向かったが)、その道のりは七里ほどである。

一見す
一度見る。
よし
(〜という)こと。
とつて返す
引き返す。「とりて」が促音便になったもの。
七里
約二十八キロメートル。
解説

「一見すべきよし」は「一度は見ておくのがよいということ」。立石寺は予定になかったが、人々に勧められて訪れることにした。

「勧むるによつて」の「よつ」は動詞「よる」(〜によって)、「尾花沢より」の「より」は格助詞(起点)。

「とつて返し」の後には、「立石寺へ向かふ」といった内容が省かれている。

原文
日いまだ副暮れラ下二未然ず打消終止。ふもとの格助体修坊ばうに格助場所宿借りおきカ四連用て接助単純接続、山上さんじやうの格助体修堂だうに格助対象登るラ四終止。

現代語訳(着いたときには)まだ日が暮れていなかった。ふもとの宿坊に宿を取っておき、山上の堂へ登る。

坊
僧の住まい。ここでは参詣する人を泊める宿坊。
山上
山の上。

山上の堂に登る

原文
岩に格助添加巌いはほを格助対象重ねナ下二連用て接助単純接続山と格助結果しサ変連用、松柏しようはく年としふりラ上二連用、土石どせき老いヤ上二連用て接助単純接続苔こけなめらかにナリ連用、

現代語訳岩の上に大岩が重なって山となり、松や柏は年を経て古木となり、土や石も古びて苔がなめらかに覆い、

巌(いはほ)
大きな岩。
松柏(しようはく)
松や柏(ヒノキの類)などの常緑樹。
年ふる
年を経て古くなる。
解説

「岩に巌を重ねて山とし」は、ふつうなら「(岩が)重なりて山となり」と言うところを、「重ね」「し」と他動詞を使い、自然の大きな力が岩を積み上げたように表している。

「岩」より大きく重々しい「巌」を重ねることで、形や大きさの違う岩が重なり合う、険しく奥深い山の様子が伝わる。

「松柏年ふり」と「土石老いて」は対句。「土石老いて」は、土や石を人のように「老いる」と言った擬人法。

原文
岩上がんじやうの格助体修院々ゐんゐん扉とびらを格助対象閉ぢダ上二連用て接助単純接続、物の格助体修音聞こえヤ下二未然ず打消終止。

現代語訳岩の上に建つ寺院はどれも扉を閉じていて、物音ひとつ聞こえない。

岩上(がんじやう)
岩の上。
院々
(山の上にある)一つ一つの寺院。
解説

「岩に巌を重ねて」から「物の音聞こえず」までの一文が、最初に言う「ことに清閑の地なり」の様子を具体的に表している。

原文
岸を格助対象巡りラ四連用岩を格助対象はひハ四連用て接助単純接続、仏閣ぶつかくを格助対象拝しサ変連用、佳景かけい寂寞じやくまくとタリ連用して接助単純接続心澄みゆくカ四連体のみ副助限定おぼゆヤ下二終止。

現代語訳崖のふちを回り、岩にはいつくばるようにして仏堂にお参りすると、美しい景色はしんと静まりかえり、心が澄みわたっていくことだけが感じられる。

岸
崖。(水辺に限らない)
仏閣
仏堂。
佳景
すばらしい景色。
寂寞(じやくまく)たり
ひっそりと静まりかえっている。
おぼゆ
(自然に)感じられる。
解説

「岸を巡り」と「岩をはひて」は対句。切り立った崖のふちを、岩にはうようにして登っていく様子。

「佳景寂寞として心澄みゆくのみおぼゆ」は、「閑かさや」の句と同じ趣を表した部分。静まりかえった景色の中で、作者の心も澄みきっていく。

原文
閑しづかさや間助詠嘆岩に格助対象しみ入るラ四連体蟬せみの格助体修声こゑ

現代語訳なんという静けさだろう。その中で鳴く蟬の声が、岩にしみ入っていくように感じられる。

解説

季語は「蟬」(夏)、切れ字は「や」。

蟬が鳴いているのに「閑かさ」と言っている。蟬の声が岩にしみ入っていくように感じられることで、かえってあたりの静けさが深く感じられる。

「静」でなく「閑」の字を使うのは、物音がないことだけでなく、心が落ち着いて静かである様子もこめるため。

この句は、「山寺や石にしみつく蟬の声」「さびしさや岩にしみこむ蟬の声」と推敲を重ねて、この形になった。

『おくのほそ道』のほかの章段:旅立ち(漂泊の思ひ) / 平泉

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①開基
    ②清閑
    ③坊
    ④巌
    ⑤松柏
    ⑥寂寞

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    ①かいき
    ②せいかん
    ③ぼう
    ④いわお
    ⑤しょうはく
    ⑥じゃくまく

  2. 次の語句の意味を答えよ。
    ①ことに
    ②よし(一見すべきよし)
    ③とつて返す
    ④佳景
    ⑤おぼゆ

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    ①とりわけ・特に
    ②(〜という)こと
    ③引き返す
    ④すばらしい景色
    ⑤(自然に)感じられる・思われる

B 文法

  1. 次の傍線部「に」を文法的に説明せよ。
    ①慈覚大師の開基【に】して
    ②こと【に】清閑の地なり
    ③ふもとの坊【に】宿借りおきて
    ④苔なめらか【に】

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    ①「なり」(断定の助動詞)の連用形
    ②「ことに」という副詞の一部分
    ③場所を表す格助詞
    ④形容動詞「なめらかなり」(ナリ活用)の連用形活用語尾

  2. 「一見すべきよし、人々の勧むるによつて、尾花沢よりとつて返し」について答えよ。
    ①「一見すべきよし」を現代語訳せよ。②「よつて」の「よつ」と「尾花沢より」の「より」の違いを、文法的に説明せよ。

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    ①一度は見ておくのがよいということ。
    ②「よつ」=ラ行四段活用動詞「よる」の連用形の促音便。「より」=格助詞(起点)。

C 現代語訳・内容

  1. 「ことに清閑の地なり」とあるが、その様子が具体的に書かれている一文を探し、最初と最後の五字を書け。

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    岩に巌を重〜音聞こえず

  2. 「岩に巌を重ねて山とし」について答えよ。
    ①ふつうの言い方(自動詞を使った言い方)に改めよ。②「岩」に「巌」を重ねると書いたことで、どのような様子が表されているか。

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    ①(岩に巌)重なりて山となり
    ②形や大きさの異なるさまざまな岩が重なり合い、登るにつれて岩がさらに大きくなる、険しく奥深い山の様子。

  3. 本文中から対句を二か所抜き出せ。また、そのうち一方に用いられている擬人法の部分を答えよ。

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    対句=「松柏年ふり」と「土石老いて」、「岸を巡り」と「岩をはひて」。擬人法=土石老いて

  4. 「佳景寂寞として心澄みゆくのみおぼゆ」を現代語訳せよ。また、この部分と「閑かさや」の句とは、どのような関係にあるか。

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    訳=美しい景色はしんと静まりかえり、心が澄みわたっていくことだけが感じられる。関係=句と同じ趣(静けさの中で心が澄んでいく境地)を表している。

  5. 「閑かさや岩にしみ入る蟬の声」について答えよ。
    ①季語と季節、切れ字を答えよ。②蟬が鳴いているのに「閑かさ」と詠んでいるのはなぜか。説明せよ。

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    ①季語=蟬 季節=夏 切れ字=や
    ②蟬の声だけが岩にしみ通るように聞こえることで、ほかに何の物音もしないあたりの静けさが、いっそう深く感じられるから。

  6. 「閑かさや」の句は、「山寺や石にしみつく蟬の声」「さびしさや岩にしみこむ蟬の声」から推敲された。「山寺や」「さびしさや」を「閑かさや」に、「しみつく」「しみこむ」を「しみ入る」に変えたことで、それぞれどうなったか説明せよ。

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    初句=「山寺」は場所の説明にすぎず、「さびしさ」は主観が強すぎたが、「閑かさ」とすることで、山寺の静寂と作者の澄んだ心とが一つになった。動詞=「しみつく」では蟬の声が岩の表面にとどまる感じだが、「しみ入る」で岩の奥まで深くしみ通っていく感じが出た。