漁夫之利(漁夫の利)

蚌方出曝。 

蚌方に出でて曝す。

ドブガイがちょうど(川から)出てひなたぼっこをしていた。

蚌・・・ドブガイ

方・・・「まさに」ちょうど

而鷸啄其肉。

しかしていつ其の肉をついばむ。

そこでシギがその肉をくちばしでつつき食べようとした。

鷸・・・シギ

而・・・「しかして」そこで、そして。   ここでは順接の用法。

其・・・「蚌」を指す。

※「而」は置き字(読まない字)になることが多いが、文の最初に来る場合は読む。

 「しかシテ」「しかうシテ」と読むときは順接で「そこで、そして」の意味、「しかレドモ」「しかモ」と読むときは逆接で「しかし」の意味。

 

蚌合而箝其喙。

蚌合して其のくちばしはさむ。

ドブガイは(貝殻を)閉じてそのくちばしをはさんでしまった。

其・・・「鷸」を指す。

 

鷸曰「今日不雨、明日不雨、即有死蚌。」

鷸日はく、「今日雨ふらず、明日雨ふらずんば、即ち死蚌有らん。」と。

シギが言うことには、「今日雨が降らず、明日も雨が降らなければ、ただちに死んだドブガイがあることになるだろう。」と。

不・・・否定「~ず」。基本の否定語。

※「~ないならば」と不(ず)に仮定の意味を添えるときは「~ずんば」と読む。

即・・・「すなはち・・・すぐに、ただちに」 読み・意味ともに重要。現代仮名遣いなら「すなわチ」。

○シギは「このまま、お前(ドブガイ)がくちばしをはさみつづけて、雨が降らなかったら、干からびて死んでしまうだろう」とおどした。

蚌亦謂鷸曰「今日不出、明日不出、即有死鷸。」

蚌も亦鷸に謂ひて日はく、「今日出ださず、明日出ださずんば、即ち死鷸有らん」と。

ドブガイも同じようにシギに言うことには、「今日放さないでいて、明日も放さなければ、ただちに死んだシギがあることになるだろう。」と。

亦・・・「また・・・また」  「た」と送り仮名にする場合もある。

○ドブガイも「このまま話さなかったらお前(シギ)は死んでしまうだろう」とおどした。

両者不肯相舎。

両者相舎つるを肯ぜず。

どちらも互いに捨て放つことを承知しなかった。

相・・・「あひ・・・互いに」

舎・・・捨て放つ

不肯~・・・「~をがへんぜず・・・~を承知しない、よしとしない」 「肯」は「肯定する」、その否定なので、「肯定しない→承知しない、受け入れない」の意味。 「へて~ず」と読む場合もある。

○ドブガイとシギは争って譲らなかった。

漁者得而幷擒之。

漁者得て之をあはとらふ。

(そこに通りかかった)漁師がこれらを一緒に捕らえた。

之・・・「蚌と鷸」を指す。

○ドブガイとシギが争っているところへ第三者がやって来て簡単に両方を捕まえてしまった。

戦国時代に七つの国が争っており、秦が最も強大な国だった。趙が燕を攻めようとしたときに、燕の蘇代という人が、趙の王に対してこの話をした。

蚌と鷸が争った結果、隙をつまれて漁夫に両者が捕らえられたように、燕と趙が争えば、秦に両国とも滅ぼされてしまうだろうということを伝え、趙が燕を攻めるのをやめさせようとした。

蚌=燕  鷸=趙  漁夫=秦 をたとえている。

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