『圉人之罪(圉人の罪)』書き下し文・現代語訳・解説|説苑・テスト予想問題付き

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. 景公の怒り
  3. 晏子の申し出
  4. 晏子が数えあげた三つの罪
  5. 景公の言葉
  6. テスト予想問題

『圉人之罪(ぎょじんのつみ)』(圉人の罪)の書き下し文・現代語訳・句法を解説します。出典は、前漢の劉向(りゅうきょう)が編んだ『説苑(ぜいえん)』です。漢代以前の故事や逸話をまとめた書物です。

書き下し文・現代語訳・解説

景公の怒り

本文(訓読文)

白文景公有馬。

書き下し景公(けいこう)馬有り。

現代語訳景公は馬を飼っていた。

景公
春秋時代の斉の君主。

白文其圉人殺之。

書き下し其の圉人(ぎよじん)之を殺す。

現代語訳その馬の世話係が、馬を死なせてしまった。

圉人
馬を飼育する役人。
之
景公の馬を指す。
殺
ここでは、死なせる。

白文公怒援戈、将自撃之。

書き下し公怒りて戈(ほこ)を援(と)り、将(まさ)に自(みづか)ら之を撃たんとす。

現代語訳景公は怒って戈を手に取り、自分の手でその世話係を撃ち殺そうとした。

援
「とル」。手に取る。
戈
柄の先に、柄と直角に刃をつけた武器。
自
「みづかラ」。自分から。自分の手で。
之
圉人を指す。

晏子の申し出

本文(訓読文)

白文晏子曰、「此不知其罪而死。

書き下し晏子(あんし)曰はく、「此れ其の罪を知らずして死す。

現代語訳晏子が言うには、「この者は(このままでは)自分の罪を知らないまま死ぬことになります。

晏子
斉の宰相。
此
圉人を指す。
而
置き字。ここでは「~して」と下へつなぐ。

白文臣請為君数之、令知其罪而殺之。」

書き下し臣請ふ、君の為に之を数(せ)め、其の罪を知らしめて之を殺さん。」と。

現代語訳どうか私に、殿のためにこの者の罪を数えあげて責め、その罪をわからせてから殺させてください。」と。

臣
家臣である私。晏子が自分をへりくだっていう。
請
「こフ」。どうか(~させてください)。
為君
君の為に。殿のために。
数
「せム」。罪を数えあげて責める。
令
「しム」。~させる。使役。

白文公曰、「諾。」

書き下し公曰はく、「諾(だく)。」と。

現代語訳景公は言った、「よろしい。」と。

諾
承知した。よろしい。

晏子が数えあげた三つの罪

本文(訓読文)

白文晏子挙戈而臨之曰、

書き下し晏子戈を挙げて之に臨(のぞ)みて曰はく、

現代語訳晏子は戈を振り上げて、世話係に向かって言った、

臨
向かい合う。
之
圉人を指す。

白文「汝為吾君養馬而殺之。

書き下し「汝(なんぢ)吾が君の為に馬を養ひて之を殺す。

現代語訳「おまえは、わが殿のために馬を飼っていながら、その馬を死なせた。

汝
「なんぢ」。おまえ。
吾君
わが殿。景公のこと。
之
馬を指す。

白文而罪当死。

書き下し而(なんぢ)の罪死に当たる。

現代語訳おまえの罪は死に値する。

而
「なんぢ」。おまえ。「汝」と同じ意味。
当
相当する。値する。

白文汝使吾君以馬之故殺圉人。

書き下し汝吾が君をして馬の故(ゆゑ)を以て圉人を殺さしむ。

現代語訳おまえは、わが殿に、馬のことが原因で馬の世話係を殺させることになる。

使AB
「AをしてBしむ」。AにBさせる。
以馬之故
馬のせいで。馬が原因で。

白文而罪又当死。

書き下し而の罪又死に当たる。

現代語訳おまえの罪は、これもまた死に値する。

又
「まタ」。これもまた。

白文汝使吾君以馬故殺人、聞於四隣諸侯。

書き下し汝吾が君をして馬の故を以て人を殺し、四隣(しりん)の諸侯に聞こえしむ。

現代語訳おまえは、わが殿に、馬のことが原因で人を殺させ、そのうわさを周りの国々の諸侯に知れわたらせることになる。

四隣
四方の隣国。周りの国々。
聞
(うわさが)聞こえる。評判になる。
於
置き字。「諸侯に」の「に」にあたる。
使
「殺」と「聞」の両方にかかる。

白文汝罪又当死。」

書き下し汝の罪又死に当たる。」と。

現代語訳おまえの罪は、これもまた死に値する。」と。

景公の言葉

本文(訓読文)

白文公曰、

書き下し公曰はく、

現代語訳景公は言った、

白文「夫子釈之。夫子釈之。勿傷吾仁也。」

書き下し「夫子(ふうし)之を釈(ゆる)せ。夫子之を釈せ。吾が仁を傷(そこ)なふ勿(な)かれ。」と。

現代語訳「先生、その者を許してやってくれ。先生、その者を許してやってくれ。私の仁徳を傷つけないでくれ。」と。

夫子
先生。男子に対する敬称。ここでは晏子を指す。
釈
「ゆるス」。許す。釈放する。
之
圉人を指す。
仁
思いやり。人徳。
傷
「そこなフ」。傷つける。

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語の読み(送り仮名を含め、現代仮名遣いのひらがな)を答えよ。
    ①戈
    ②数め
    ③而(而の罪)
    ④釈せ
    ⑤夫子

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    ①ほこ
    ②せめ
    ③なんじ
    ④ゆるせ
    ⑤ふうし

  2. 次の語の、本文中での意味を答えよ。
    ①圉人
    ②援(援戈)
    ③諾
    ④四隣

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    ①馬を飼育する役人(馬の世話係)
    ②手に取る
    ③よろしい(承知した)
    ④四方の隣国(周りの国々)

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「将自撃之」を書き下し文にし、「自」「之」の指すものを明らかにして現代語訳せよ。

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    書き下し文:将に自ら之を撃たんとす。
    現代語訳:景公が、自分の手で圉人(馬の世話係)を撃ち殺そうとした。

  2. 「令知其罪而殺之」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:其の罪を知らしめて之を殺さん。
    現代語訳:その罪をわからせてから、この者を殺しましょう。

  3. 「汝使吾君以馬之故殺圉人」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:汝吾が君をして馬の故を以て圉人を殺さしむ。
    現代語訳:おまえは、わが殿に、馬のことが原因で馬の世話係を殺させることになる。

  4. 「勿傷吾仁也」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:吾が仁を傷なふ勿かれ。
    現代語訳:私の仁徳を傷つけないでくれ。

C 内容の読み取り

  1. 次の「之」は、それぞれ何を指すか。本文中の語で答えよ。
    ①其圉人殺之
    ②挙戈而臨之
    ③夫子釈之

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    ①馬
    ②圉人
    ③圉人

  2. 「夫子」とは誰のことか。また、「吾君」とは誰のことか。

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    夫子=晏子 吾君=景公

  3. 晏子が数えあげた圉人の罪を、三つに分けて説明せよ。

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    ①殿の馬を飼っていながら、その馬を死なせたこと。
    ②馬のことが原因で、殿に人(世話係)を殺させること。
    ③馬のことで人を殺したといううわさを、周りの国々の諸侯に広めさせること。

  4. 景公が「夫子釈之」と言ったのはなぜか。説明せよ。

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    馬のことで人を殺したといううわさが周りの国々に広まれば、自分の仁徳が傷つくと気づいたから。

  5. 晏子は、どのようにして景公をいさめたか。説明せよ。

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    景公を直接とがめず、圉人の罪を数えあげて責めるふりをしながら、景公に自分の過ちを気づかせ、圉人を殺すのをやめさせた。