『宇治拾遺物語』小野篁広才のこと 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 「無悪善」の立て札
  4. 読むのをためらう篁
  5. 帝を呪う言葉
  6. 「子」の字十二
  7. テスト予想問題

『宇治拾遺物語(うじしゅういものがたり)』「小野篁広才のこと(おののたかむら こうさいのこと)」の現代語訳・品詞分解・解説です。

内裏に「無悪善」と書かれた立て札が立てられます。帝に命じられた小野篁は、ためらいながらも読み解きますが、そのために「書いたのはおまえだろう」と疑われてしまいます。篁はどうやって疑いを晴らしたのでしょうか。「広才」は、幅広い学識・才能のことです。帝と篁の会話が続くので、だれの言葉か、敬語がだれからだれへの敬意かに注意して読みましょう。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

「無悪善」の立て札

原文
今は係助区別昔、小野篁をののたかむらと格助引用いふハ四連体人おはしサ変連用尊→篁けり過去終止。

現代語訳今はもう昔のことだが、小野篁という人がおいでになった。

おはす
「あり」「をり」の尊敬語。いらっしゃる。
原文
嵯峨の帝さがのみかどの格助体修御時おほんときに格助時間、内裏だいりに格助場所札ふだを格助対象立てタ下二連用たり完了連用ける過去連体に接助単純接続、「無悪善むあくぜん」と格助引用書きカ四連用たり存続連用けり過去終止。

現代語訳嵯峨天皇の御代に、(何者かが)内裏に札を立てたことがあったが、(その札には)「無悪善」と書いてあった。

内裏
天皇の住む御殿。宮中。
札
立て札。
御時(おおんとき)
天皇の御代。

読むのをためらう篁

原文
帝みかど、篁に格助対象、「読めマ四命令。」と格助引用仰せサ下二未然尊→帝られ尊敬連用尊→帝たり完了連用けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳帝が篁に「読め。」とおっしゃったので、

仰す
「言ふ」の尊敬語。おっしゃる。
解説

「仰せられ」は、尊敬の動詞「仰す」に尊敬の助動詞「らる」が付いた形で、二重に尊敬を表す(最高敬語)。帝に対して使われている。

現代語訳(篁は)「読むことはきっと読みましょう。けれども、畏れ多いことでございますから、口に出して申し上げることはできかねます。」と帝に申し上げたところ、

恐れ
恐れ多いこと。
え
下に打消の語を伴って「〜できない」。
奏す
天皇に申し上げる。
候ふ
ここは丁寧の補助動詞。〜ます。〜ございます。
解説

「奏す」は、天皇(上皇)に対してだけ使う謙譲語(絶対敬語)。

「なん」は、強意の助動詞「ぬ」の未然形+意志の助動詞「む」。「きっと読みましょう」。

「え申し候はじ」は「え〜打消」で不可能。「じ」は打消意志。申し上げることはできません。

篁が「恐れ」たのは、札の内容が帝を呪う言葉だったから。それを口にすれば帝の怒りを招き、さらに自分が疑われるおそれもあった。

原文
「ただ副申せサ四命令謙→帝。」と格助引用たびたび副仰せサ下二未然尊→帝られ尊敬連用尊→帝けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳(帝は)「かまわないから申せ。」と何度もおっしゃったので、

ただ
かまわずに。とにかく。
解説

どんな内容なのか、とにかく聞かせよと迫る帝の気持ちが表れている。

帝を呪う言葉

原文
「さがなくク連用て接助単純接続よからク未然ん推量終止と格助引用申しサ四連用謙→帝て接助単純接続候ふ補・ハ四連体丁→帝ぞ終助念押し。されば接、君を格助対象呪ひハ四連用参らせ補・サ下二連用謙→帝て接助単純接続候ふ補・ハ四連体丁→帝なり断定終止。」と格助引用申しサ四連用謙→帝けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳(篁は)「『さがなくてよからん(悪がなくてよいだろう)』と書いてあるのでございます。つまり、帝をお呪い申しているのです。」と申し上げたところ、

さが
悪。生まれつきの悪い性質。「嵯峨」と掛ける。
されば
だから。
君
天皇。ここは嵯峨天皇。
解説

「無悪善」を訓読すると「悪(さが)無くて善(よ)からん」。本来は「悪い性質がなくてよいだろう」という意味だが、「さが」に「嵯峨」が掛けられ、「嵯峨天皇がいなくてよいだろう」と読める。そのため、帝を呪う言葉になる。

会話文中の「申し」「参らせ」は謙譲語、「候ふ」は丁寧語で、篁から帝への敬意。

原文
「おのれ代名放ちタ四連用て接助単純接続は係助強調、誰たれ代名か係助反語書かカ四未然ん推量連体。」と格助引用仰せサ下二未然尊→帝られ尊敬連用尊→帝けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳(帝は)「おまえ以外に、だれが書くだろうか、いや、だれも書くまい。」とおっしゃったので、

おのれ
おまえ。
放つ
除く。
解説

「か」は反語。結びは「ん」(連体形)。

帝が篁を疑ったのは、「無悪善」はだれにでも読めるものではなく、読めた者こそが書いた本人だと考えたから。

原文
「されば接こそ係助強意、申しサ四連用謙→帝候は補・ハ四未然丁→帝じ打消意志終止と格助引用は係助強調申しサ四連用謙→帝て接助単純接続候ひ補・ハ四連用丁→帝つれ完了已然。」と格助引用申すサ四連体謙→帝に接助単純接続、

現代語訳(篁が)「だからこそ、申し上げますまいと申し上げたのでございます。」と申し上げると、

されば
だから。
解説

「さればこそ」は「だからこそ」。帝に疑われることを予想していたから、初めに「え申し候はじ」と言って読むのをためらったのだ、ということ。

「こそ」の結びは「つれ」(完了の助動詞「つ」の已然形)。

「子」の字十二

原文

現代語訳帝は「それでは、何でも書いてあるようなものは、きっと読めるのか。」とおっしゃったので、

さて
それでは。
解説

「書きたらんもの」の「ん」は婉曲(〜ような)。

「読みてんや」は「読み+て(強意「つ」の未然形)+ん(推量「む」)+や」。きっと読めるのか。

原文
「何代名に断定連用て接助単純接続も係助強意、読みマ四連用候ひ補・ハ四連用丁→帝な強意未然ん意志終止。」と格助引用申しサ四連用謙→帝けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳(篁が)「何であっても、きっと読みましょう。」と申し上げたので、

原文
片仮名の格助体修「子」文字を格助対象十二書かカ四未然せ尊敬連用尊→帝たまひ補・ハ四連用尊→帝て接助単純接続、「読めマ四命令。」と格助引用仰せサ下二未然尊→帝られ尊敬連用尊→帝けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳(帝は)片仮名の「子」の字を十二並べてお書きになり、「読め。」とお命じになったので、

解説

片仮名の「子」…当時は、漢字の「子」の形が、片仮名の「ネ」として多く使われていた。

帝が「子」の字を十二書いて読ませたのは、篁が本当に何でも読めるのかを確かめるため。読めれば、「無悪善」が読めたのも篁の学識によるもので、書いた犯人だからではないことになる。

原文
「ねこの格助体修子の格助同格こねこ、ししの格助体修子の格助同格こじし。」と格助引用読みマ四連用たり完了連用けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳(篁が)「猫の子の子猫、獅子の子の子獅子。」と読んだので、

解説

「子」を、十二支の「ね」、訓読みの「こ」、音読みの「し」の三通りに読み分けている。漢字に直すと「子子の子の子子子、子子の子の子子子」。

原文
帝、ほほゑまマ四未然せ尊敬連用尊→帝たまひ補・ハ四連用尊→帝て接助単純接続、事なくク連用て接助単純接続やみマ四連用に完了連用けり過去終止。

現代語訳帝はにっこりとほほえまれて、おとがめもなく済んだのだった。

事なし
何事もない。おとがめがない。
解説

帝がほほえんだのは、難しい文字を見事に読んでみせた篁の学識に感心したから。

「事なくてやみにけり」は、篁にかかった疑いが晴れて、おとがめもなく済んだということ。

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①帝
    ②内裏
    ③奏し
    ④誰(誰か書かん)

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    ①みかど
    ②だいり
    ③そうし
    ④たれ

  2. 次の語の意味を答えよ。
    ①おはす
    ②奏す
    ③されば
    ④おのれ
    ⑤事なし

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    ①いらっしゃる
    ②(天皇に)申し上げる
    ③だから・そういうわけで
    ④おまえ
    ⑤何事もない・おとがめがない

B 文法・敬語

  1. 次の傍線部の敬語の種類と、だれへの敬意かを答えよ。
    ①【仰せ】られたりければ
    ②え申し【候は】じ
    ③と【奏し】ければ

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    ①尊敬語・帝への敬意
    ②丁寧語・帝への敬意(会話の聞き手)
    ③謙譲語・帝への敬意

  2. 「読みは読み候ひなん」の「なん」と、「読みてんや」の「てん」を、それぞれ文法的に説明せよ。

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    なん=「な」は強意「ぬ」の未然形、「ん」は意志「む」の終止形。てん=「て」は強意「つ」の未然形、「ん」は推量「む」の終止形。

  3. 「恐れにて候へば、え申し候はじ」を現代語訳せよ。また、「じ」の意味を答えよ。

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    訳=畏れ多いことでございますから、申し上げることはできかねます。 じ=打消意志。

C 内容

  1. 「無悪善」について、①篁はどのように読んだか。本文中の言葉で答えよ。
    ②それが「君を呪ひ」の言葉になるのはなぜか。

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    ①さがなくてよからん
    ②「さが(悪)」に「嵯峨」が掛けられていて、「嵯峨天皇がいなくてよいだろう」という意味になるから。

  2. 「おのれ放ちては、誰か書かん」を現代語訳せよ。また、帝がこのように言ったのはなぜか。

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    訳=おまえ以外に、だれが書くだろうか、いや、だれも書かないだろう。 理由=「無悪善」はだれにでも読めるものではなく、読めた篁こそが書いた本人だと考えたから。

  3. 「さればこそ、申し候はじとは申して候ひつれ」とあるが、篁が初め「え申し候はじ」と言ったのはなぜか。

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    札の内容が帝を呪うものだったので、読めば帝の怒りを招き、自分が書いたと疑われることを予想していたから。

  4. 「ねこの子のこねこ、ししの子のこじし」について、①十二の「子」を漢字で示せ。
    ②「子」はどのように読み分けられているか。

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    ①子子の子の子子子、子子の子の子子子
    ②十二支の「ね」、訓読みの「こ」、音読みの「し」の三通りに読み分けている。

  5. 「事なくてやみにけり」とあるが、どうなったということか。また、そうなったのはなぜか。

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    篁にかかった疑いが晴れて、おとがめもなく済んだということ。難しい文字を見事に読んだことで、「無悪善」が読めたのも篁の学識によるもので、書いたからではないと帝が理解したから。