『無名抄』おもて歌 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 俊成への問い
  4. 俊成の答え
  5. 世間の評判
  6. 俊恵の批評
  7. 俊恵のおもて歌
  8. テスト予想問題

『無名抄(むみょうしょう)』「おもて歌」の現代語訳・品詞分解・敬語・解説です。教科書によっては「深草の里」「俊成自讃歌のこと」「おもて歌のこと」という題で載っています。

俊恵(しゅんえ)が、藤原俊成に「ご自分の歌でいちばんすぐれているのはどれか」とたずね、そのやりとりを弟子の鴨長明に語る話です。俊成が選んだ「夕されば」の歌について、俊恵は「身にしみて」の一句が惜しいと批評します。会話の中に会話が入っているので、だれがだれに話しているのか、敬語の向きとあわせて確かめましょう。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞・敬語の種類と向きを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

俊成への問い

原文
俊恵しゆんゑいはく、「五条三位入道ごでうさんみのにふだうの格助体修もとに格助場所まうでダ下二連用謙→五条三位入道たり完了連用し過去連体ついでに格助時間、

現代語訳俊恵が言うには、「五条三位入道(藤原俊成)のお宅にうかがった折に、

まうづ
参上する。「行く」の謙譲語。俊恵から五条三位入道への敬意。
ついで
機会、折。
原文
『御詠ごえいの格助体修中に格助場所は係助区別、いづれ代名を格助対象か係助疑問優れラ下二連用たり存続終止と格助引用思おぼすサ四連体尊→五条三位入道。

現代語訳『ご自身の御作の中では、どれがすぐれているとお思いですか。

御詠
お詠みになった歌。
思す
お思いになる。「思ふ」の尊敬語。俊恵から五条三位入道への敬意。
解説

「いづれをか」の「か」は疑問。結びは「思す」(連体形)。

原文
よその格助体修人さまざまにナリ連用定めマ下二連用侍はべれ補・ラ変已然丁→五条三位入道ど接助逆接確定、それ代名を格助対象ば係助強意用もちゐワ上一連用侍はべる補・ラ変連体丁→五条三位入道べから可能未然ず打消終止。

現代語訳ほかの人々はいろいろと評価を定めておりますが、それを採り上げるわけにはまいりません。

よそ
ほかの所。ここでは世間。
さまざまなり
いろいろだ。
解説

「それ」は、世間の人々がいろいろに評価している、俊成の歌の中のすぐれた歌。

「侍れ」「侍る」は丁寧語で、俊恵から五条三位入道への敬意。

原文
まさしくシク連用承うけたまはらラ四未然謙→五条三位入道ん意志終止と格助引用思ふハ四終止。』と格助引用聞こえヤ下二連用謙→五条三位入道しか過去已然ば接助順接確定、

現代語訳(ご本人から)確かにうかがおうと思います。』と申し上げたところ、

まさし
確かだ、間違いない。
承る
お聞きする。「聞く」の謙譲語。
聞こゆ
申し上げる。「言ふ」の謙譲語。
解説

「承ら」「聞こえ」は、どちらも俊恵から五条三位入道への敬意。

俊成の答え

原文
『夕ゆふされラ四已然ば接助順接確定野辺のべの格助体修秋風身に格助対象しみマ四連用て接助単純接続鶉うづら鳴くカ四終止なり推定終止深草ふかくさの格助体修里

現代語訳『夕方になると、野辺を吹く秋風が身にしみて、鶉が鳴いているようだ、この深草の里では。

夕されば
夕方になると。
野辺
野原。
深草
京都の地名。
解説

「鳴くなり」の「なり」は推定。鶉の声が聞こえてくるので「鳴いているようだ」と推し量っている。「鳴く」は四段活用なので、終止形か連体形かは形からは決められず、断定の「なり」との区別は意味で考える。

「なり」が終止形なので四句切れ。

原文
これ代名を格助対象なん係助強意、身に格助対象とりラ四連用て接助単純接続は係助区別おもて歌と格助引用思ひハ四連用給たまふる補・ハ下二連体謙→俊恵。』と格助引用言はハ四未然れ尊敬連用尊→五条三位入道し過去連体を接助順接確定、

現代語訳この歌を、自分としては代表作と思っております。』とおっしゃったので、

身にとりては
自分としては。
おもて歌
代表的な歌。
解説

「思ひ給ふる」の「給ふる」は下二段活用の謙譲の補助動詞「給ふ」(「〜ております」)。俊成から聞き手の俊恵への敬意。「なん」の結びで連体形。

「言はれし」の「れ」は尊敬。俊恵から五条三位入道への敬意。

世間の評判

原文
俊恵しゆんゑ、また副いはく、『世に格助場所あまねくク連用人の格助主格申まうしサ四連用謙→五条三位入道侍はべる補・ラ変連体丁→五条三位入道は係助区別、

現代語訳私(俊恵)が重ねて言ったことには、『世の中で多くの人が申しておりますのは、

あまねし
広く行きわたっている。
原文
面影おもかげに格助場所花の格助体修姿を格助対象先立さきだてタ下二連用て接助単純接続幾重いくへ越え来こえきカ変連用ぬ完了終止峰みねの格助体修白雲しらくも

現代語訳桜の花の姿を心に思い描いて、それに導かれて、いくつ越えて来てしまったことか、(桜かと見えた)峰の白雲を。

面影
目の前にあるように思い浮かぶ姿、幻。
先立つ
先に立てる。
解説

峰にかかる白雲を桜の花に見立てている。桜を思い浮かべながら、いくつもの峰を越えてきた、という歌。

「ぬ」は完了の終止形なので四句切れ。

原文
これ代名を格助対象優れラ下二連用たる存続連体やうに比況連用申まうしサ四連用謙→五条三位入道侍はべる補・ラ変連体丁→五条三位入道は係助区別、いかに副。』と格助引用聞こゆれヤ下二已然謙→五条三位入道ば接助順接確定、

現代語訳この歌をすぐれた作のように申しておりますのは、いかがですか。』と申し上げると、

解説

世間の人々は、俊成の歌の中では「面影に」の歌がすぐれていると言っている。

「聞こゆれ」の主語は俊恵。

原文

現代語訳『さあ。よそではそう評価しているのでしょうか。存じませんね。

いさ
さあ(どうでしょうか)。
解説

「さ」は、俊成の歌の中では「面影に」の歌がすぐれている、ということ。

「知り給へず」の「給へ」は下二段活用の謙譲の補助動詞(未然形)。俊成から俊恵への敬意。「存じません」と訳す。

原文
なほ副自みづからは係助区別、先の格助体修歌に格助比較は係助区別言ひ比いひくらぶバ下二終止べから可能未然ず打消終止。』と格助引用ぞ係助強意侍はべりラ変連用丁→作者し過去連体。」

現代語訳やはり自分としては、(この歌は)先ほどの歌とは比べものになりません。』ということでございました。」

言ひ比ぶ
比べて論じる。
解説

「先の歌」は「夕されば」の歌。「面影に」の歌は、「夕されば」の歌とは比べものにならないということ。

「侍りし」の「侍り」は丁寧語。俊恵から聞き手である作者(長明)への敬意。

俊恵の批評

原文
と格助引用語りラ四連用て接助単純接続、これ代名を格助対象うちうちに副申まうしサ四連用謙→?し過去連体は係助区別、

現代語訳と(俊恵は私に)語って、このことについて内々に話したことには、

うちうちに
内々に、こっそりと。
解説

「申しし」の主語は俊恵。俊成とのやりとりを語ったあと、作者(長明)に内々に話したことが次に続く。

原文
「か代名の格助体修歌は係助区別、『身に格助対象しみマ四連用て接助単純接続』と格助引用いふハ四連体腰の句こしのくの格助主格いみじうシク連用・音無念にナリ連用おぼゆるヤ下二連体なり断定終止。

現代語訳「あの(「夕されば」の)歌は、『身にしみて』という第三句が、とても残念に思われるのです。

腰の句
和歌の第三句。
無念なり
残念だ。
解説

「かの歌」は「夕されば」の歌。俊恵が惜しんだのは第三句の「身にしみて」。

原文
これ代名ほど副助程度に格助結果なりラ四連用ぬる完了連体歌は係助区別、景気けいきを格助対象言ひ流しサ四連用て接助単純接続、ただ副空そらにナリ連用身に格助対象しみマ四連用けん過去推量終止かし終助念押しと格助引用思はハ四未然せ使役連用たる存続連体こそ係助強意、心にくくク連用も係助並列優いうにナリ連用も係助並列侍はべれ補・ラ変已然丁→作者。

現代語訳これほどの出来になった歌は、景色をさらりと詠んで、ただなんとなく、(さぞ)身にしみたのだろうよと(読む人に)思わせることこそが、奥深く心ひかれ、優雅でもあるのです。

景気
景色、ありさま。
言ひ流す
さらりと詠む。
空に
なんとなく、それとなく。
心にくし
奥ゆかしい。
優なり
優雅だ。
解説

俊恵の考えるよい歌:景色だけをさらりと詠み、「身にしみたのだろう」という気持ちは、読む人がそれとなく感じ取るようにするのがよい。

原文
いみじうシク連用・音言ひもてゆきカ四連用て接助単純接続、歌の格助体修詮せんと格助結果すサ変終止べき当然連体ふしを格助対象、さ副は係助区別と格助引用言ひ表いひあらはしサ四連用たれ存続已然ば接助順接確定、むげにナリ連用こと浅くク連用なりラ四連用ぬる完了連体。」

現代語訳(ところがこの歌は)あまりに言い進めすぎて、歌の眼目とすべきところを、そうだとはっきり言い表しているので、ひどく浅い感じになってしまったのです。」

言ひもてゆく
どんどん言い進める。
歌の詮
歌の眼目、中心となる点。
むげなり
ひどい。
解説

「歌の詮とすべきふし」は、この歌にこめられた心情で、「身にしみて」のこと。

「夕されば」の歌は、心情を「身にしみて」とはっきり言ってしまったので、浅い感じになってしまった、というのが俊恵の批評。

俊恵のおもて歌

原文
と格助引用て接助単純接続、そ代名の格助体修ついでに格助時間、「わ代名が格助体修歌の格助体修中に格助場所は係助区別、

現代語訳と言って、その話のついでに、「私の歌の中では、

解説

「とて」は「と言って」の意。

原文
み吉野よしのの格助体修山かき曇りラ四連用雪降れラ四已然ば接助順接確定麓ふもとの格助体修里は係助区別うち時雨しぐれラ下二連用つつ接助反復

現代語訳吉野の山が一面にかき曇って雪が降るときには、ふもとの里では時雨が降ったりやんだりしている。

み吉野
吉野。「み」は語調を整える接頭語。
うちしぐる
時雨が降る。
解説

心情を表す言葉を使わず、山の雪とふもとの時雨という景色だけを詠んでいる。俊恵の考えるよい歌の例。

原文
これ代名を格助対象なん係助強意、か代名の格助体修たぐひに格助結果せサ変未然ん意志終止と格助引用思うハ四連用・音給たまふる補・ハ下二連体謙→作者。

現代語訳この歌を、あの(代表作の)たぐいにしようと思っております。

たぐひ
仲間、同類。
解説

「かのたぐひ」は「おもて歌」(代表的な歌)のたぐい。

「思う給ふる」の「給ふる」も謙譲の補助動詞。俊恵から作者(長明)への敬意。

原文
もし副世の格助体修末に格助時間、おぼつかなくク連用言ふハ四連体人も係助強意あらラ変未然ば接助順接仮定、『かく副こそ係助強意言ひハ四連用しか過去已然。』と格助引用語りラ四連用給たまへ補・ハ四命令尊→作者。」と格助引用ぞ係助強意。

現代語訳もし後の世に、(俊恵の代表作は何か)はっきりしないと言う人がいたら、『(俊恵は)このように言っていた。』と話してください。」ということであった。

世の末
後の世、将来。
おぼつかなし
はっきりしない。
解説

「かく」は、俊恵が「み吉野の」の歌を自分のおもて歌にしたいと言ったこと。

「語り給へ」の「給へ」は四段活用の尊敬の補助動詞(命令形)。俊恵から作者(長明)への敬意。

「とぞ」のあとには「言ひし」などの結びが省略されている。

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①三位
    ②御詠
    ③鶉
    ④幾重
    ⑤越え来ぬ
    ⑥歌の詮
    ⑦思う給ふる

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    ①さんみ
    ②ごえい
    ③うずら
    ④いくえ
    ⑤こえきぬ
    ⑥うたのせん
    ⑦おもうたもうる

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①ついで
    ②おもて歌
    ③あまねし
    ④いさ
    ⑤腰の句
    ⑥景気
    ⑦むげに
    ⑧おぼつかなし

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    ①機会・折
    ②代表的な歌
    ③広く行きわたっている
    ④さあ(どうでしょうか)
    ⑤和歌の第三句
    ⑥景色
    ⑦ひどく
    ⑧はっきりしない

B 文法・敬語

  1. 俊恵が五条三位入道にたずねる場面(「五条三位入道の…聞こえしかば」)について、①「まうで」「思す」「承ら」「聞こえ」の敬語の種類を答えよ。②これらはだれからだれへの敬意か。③「いづれをか優れたりと思す」を現代語訳せよ。

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    ①まうで=謙譲語、思す=尊敬語、承ら=謙譲語、聞こえ=謙譲語
    ②すべて俊恵から五条三位入道(藤原俊成)へ
    ③どの歌がすぐれているとお思いになりますか。

  2. 次の「給ふ」について、活用の種類・活用形・敬語の種類と、だれからだれへの敬意かを答えよ。
    ①おもて歌と思ひ給ふる
    ②知り給へず
    ③『かくこそ言ひしか。』と語り給へ

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    ①ハ行下二段活用・連体形・謙譲語。五条三位入道から俊恵へ
    ②ハ行下二段活用・未然形・謙譲語。五条三位入道から俊恵へ
    ③ハ行四段活用・命令形・尊敬語。俊恵から作者(鴨長明)へ

  3. 「鶉鳴くなり深草の里」の「なり」を文法的に説明せよ。また、「夕されば」の歌は何句切れか答えよ。

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    推定の助動詞「なり」の終止形(鶉の声が聞こえるので「鳴いているようだ」と推し量っている)。四句切れ。

  4. 次の文の係り結びについて、係助詞と結びの語を抜き出し、結びの活用形を答えよ。
    ①「いさ、よそにはさもや定め侍るらん」
    ②「これをなん、かのたぐひにせんと思う給ふる」
    ③「かくこそ言ひしか」

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    ①や・らん(連体形)
    ②なん・給ふる(連体形)
    ③こそ・しか(已然形)

C 現代語訳・内容

  1. 「いさ、よそにはさもや定め侍るらん。知り給へず。」を現代語訳せよ。また、「さ」の指す内容を説明せよ。

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    訳=さあ。よそではそう評価しているのでしょうか。存じませんね。「さ」=俊成の歌の中では「面影に」の歌がすぐれているということ。

  2. 「かの歌は、『身にしみて』といふ腰の句のいみじう無念におぼゆるなり」とあるが、俊恵が「身にしみて」を残念に思うのはなぜか。本文に即して説明せよ。

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    歌の中心となる心情を「身にしみて」とはっきり言い表してしまったため、読む人が自然に感じ取る余地がなくなり、歌がひどく浅いものになってしまったから。

  3. 「ただ空に身にしみけんかしと思はせたるこそ、心にくくも優にも侍れ」を現代語訳せよ。

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    ただそれとなく、(さぞ)身にしみたのだろうよと読む人に思わせることこそが、奥深く心ひかれ、優雅でもあるのです。

  4. 「これをなん、かのたぐひにせんと思う給ふる」について、①「かのたぐひ」とは何のたぐいか。②「これ」はどの歌を指すか、初句で答えよ。③全体を「かのたぐひ」の内容を補って現代語訳せよ。

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    ①おもて歌(代表的な歌)
    ②み吉野の
    ③この歌を、あの代表作のたぐいにしようと思っております。

  5. 本文から読み取れる、俊恵の考えるすぐれた歌とはどのような歌か。説明せよ。

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    心情を直接言葉で言い表さず、景色をさらりと詠むことで、その心情を読む人に余情としてそれとなく感じ取らせる歌。