『源氏物語』夕顔② 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 寝静まった院
  4. 宮中を思う
  5. 息をしない夕顔
  6. テスト予想問題

『源氏物語(げんじものがたり)』夕顔(ゆうがお)の巻、「なにがしの院」(「廃院の怪」)の場面の中ほど、「風すこしうち吹きたるに」から「せむ方なき心地し給ふ」までの現代語訳・品詞分解・敬語・解説です(全3回の②)。夕顔①の続きです。

自分で人を起こしに出た光源氏は、院の管理人の子に明かりと魔よけを命じます。部屋に戻ると、夕顔は息もしていませんでした。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

寝静まった院

原文
風すこし副うち吹きカ四連用たる存続連体に接助添加、人は係助区別少なくク連用て接助単純接続、候さぶらふハ四連体謙→光源氏限りみな副寝ねナ下二連用たり存続終止。

現代語訳風がやや吹いていて、(宿直の)者は少なく、お仕えする者はみな眠りこんでいる。

候ふ
お仕えする。おそばに控える。
限り
(〜する)者全部。
解説

宿直の者がみな寝ていたので、さきほど手をたたいても、誰も来なかった。

原文
こ代名の格助体修院の格助体修預かりの格助体修子、睦むつましくシク連用使ひハ四連用給ふ補・ハ四連体尊→光源氏若きク連体男、また接上童うへわらは一人、例の格助体修随身ずいじんばかり副助限定ぞ係助強意ありラ変連用ける過去連体。

現代語訳この院の管理人の子で、(光源氏が)親しく使っていらっしゃる若い男と、ほかに殿上童が一人、いつもの随身だけがいたのだった。

預かり
邸の管理をする人。管理人。
睦まし
親しい。
上童
貴族の家などに仕える少年。
随身
貴人の外出のとき、護衛としてつき従う者。
解説

※「ぞ」を受けて「ける」が連体形で結ぶ(係り結び)。

原文

現代語訳(光源氏が)呼びなさると、(管理人の子が)返事をして起き出してきたので、

解説

「召せ」の主語は光源氏、「御答へして起きたれ」の主語は預かりの子。

原文
「紙燭さしサ四連用て接助単純接続参れラ四命令謙→光源氏。随身も係助類例弦打つるうちしサ変連用て接助単純接続絶えヤ下二未然ず打消連用声づくれラ四命令、と格助引用仰せよサ下二命令。

現代語訳「紙燭に火をつけて持って参れ。随身にも、弦打ちをして絶えず警戒の声をあげよ、と命じよ。

弦打ち
矢をつがえずに弓の弦を鳴らすこと。魔物を追い払うまじない。
声づくる
(警戒の)声をあげる。
仰す
命じる。言いつける。
解説

弦打ちを命じたのは、物の怪が出そうな気味の悪い気配を払うため。

原文
人離れラ下二連用たる存続連体所に格助場所、心とけカ下二連用て接助単純接続寝いぬるナ下二連体ものか終助詠嘆。惟光朝臣これみつのあそんの格助主格来たりラ四連用つ完了終止らむ現在推量連体は係助強意。」と格助引用問はハ四未然せ尊敬連用給へ補・ハ四已然尊→光源氏ば接助順接確定、

現代語訳人里離れた所で、気をゆるして眠りこんでいてよいものか。惟光朝臣が来ていたはずだが(どこにいる)。」とお尋ねになると、

人離る
人里から離れる。人気がない。
心とく
気を許す。
惟光
光源氏の乳母の子で、いちばん信頼している従者。「朝臣」は五位以上の人につける敬称。
解説

「惟光朝臣の来たりつらむは」には、頼りになる惟光にそばにいてほしいという光源氏の気持ちが表れている。

「問はせ給へ」は尊敬語を重ねた言い方で、作者から光源氏への敬意。

原文
「候さぶらひハ四連用謙→光源氏つれ完了已然ど接助逆接確定、仰せ言おほせごとも係助類例なしク終止、暁あかつきに格助時間御迎へに格助目的参るラ四終止謙→光源氏べき意志連体よし申しサ四連用謙→光源氏て接助単純接続なむ係助強意、まかでダ下二連用謙→光源氏侍り補・ラ変連用丁→光源氏ぬる完了連体。」と格助引用聞こゆヤ下二終止謙→光源氏。

現代語訳「(惟光どのは)こちらに控えておいででしたが、お言いつけもないので、夜明け前にお迎えにあがるつもりだと申して、下がりました。」と申し上げる。

仰せ言
ご命令。
暁
夜明け前。
まかづ
退出する。
解説

惟光は、光源氏からの命令もないので、明け方に迎えに来ると言って退出していた。

「聞こゆ」の主語は、預かりの子(滝口)。

宮中を思う

原文
こ代名の格助体修かう副申すサ四連体謙→光源氏者は係助区別、滝口たきぐちなり断定連用けれ過去已然ば接助順接確定、弓弦ゆづるいと副つきづきしくシク連用うち鳴らしサ四連用て接助単純接続、

現代語訳このようにお答えした者は、滝口の武士であったので、弓の弦をいかにもふさわしく鳴らして、

滝口
滝口の武士。宮中の警護をする武士。
弓弦
弓のつる。
つきづきし
ふさわしい。似つかわしい。
解説

「かう申す者」は、光源氏の問いに答えた預かりの子。

原文
「火危ふしク終止。」と格助引用言ふハ四終止言ふハ四終止、預かりが格助体修曹司ざうしの格助体修方に格助方向去いぬナ変終止なり推定終止。

現代語訳「火の用心」と言いながら、管理人の部屋のほうへ行くようだ。

火危ふし
火の用心。
曹司
部屋。
解説

「去ぬなり」の「なり」は推定。真っ暗で姿は見えず、弦の音や「火危ふし」の声が遠ざかるのを耳で聞いて判断している。

※「去ぬ」の「ぬ」は、ナ変動詞「去ぬ」の終止形活用語尾。

原文
内裏うちを格助対象思しやりラ四連用尊→光源氏て接助単純接続、名対面なだいめんは係助区別過ぎガ上二連用ぬ強意終止らむ現在推量終止、滝口の格助体修宿直奏とのゐまうし今こそ係助強意、と格助引用推しはかりラ四連用給ふ補・ハ四連体尊→光源氏は係助区別、

現代語訳(光源氏が)宮中のことを思いやって、もう名対面は過ぎただろう、滝口の宿直奏しはちょうど今ごろだろう、と推しはかりなさるのは、

名対面
宮中で、夜の宿直の者が名を名乗ること。亥の刻(午後十時ごろ)に行われた。
宿直奏し
名対面のあと、滝口の武士が名を名乗ること。
解説

滝口の武士の声から、光源氏は宮中の夜の様子を思いやっている。

※「過ぎぬらむ」の「ぬ」は強意の助動詞「ぬ」の終止形。

現代語訳まだそれほど夜が更けていないからであろう。

解説

名対面が終わったころなので、まだそれほど夜は更けていない。この長い夜をまだ過ごさねばならない心細さもうかがえる。

※「更けぬ」の「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形。

※「こそ」の結び(「あらめ」など)が省略されている。

息をしない夕顔

原文
帰り入りラ四連用て接助単純接続探りラ四連用給へ補・ハ四已然尊→光源氏ば接助順接確定、女君は係助区別さながら副臥しサ四連用て接助単純接続、右近は係助区別傍らに格助場所うつ伏し臥しサ四連用たり存続終止。

現代語訳(光源氏が部屋に)戻って手探りなさると、女君はさっきのまま横になっていて、右近はそのそばにうつぶせになっている。

さながら
そのまま。もとのまま。
うつ伏し臥す
うつぶせになる。
解説

夕顔は、光源氏が部屋を出る前と同じ姿勢で横になっている。

原文
「こ代名は係助区別な代名ぞ係助強意、あな感もの狂ほしシク終止の格助体修もの怖ぢや間助詠嘆。

現代語訳「これはどうしたことか、なんとまあ正気とも思えない怖がりようだ。

なぞ
何か。どうしたことか。
もの狂ほし
正気とも思えない。ふつうではない。
解説

右近の、正気を失ったような怖がりようを見て言った言葉。

原文
荒れラ下二連用たる存続連体所は係助区別、狐など副助例示やうの格助体修ものの格助主格、人おびやかさサ四未然む意志終止とて格助引用、け恐ろしうシク連用・音思はハ四未然する使役連体なら断定未然む推量終止。

現代語訳荒れた所では、狐などのようなものが、人をおどかそうとして、何となく恐ろしく思わせるのだろう。

け恐ろし
何となく恐ろしい。
原文
まろ代名あれラ変已然ば接助順接確定、さやうの格助体修ものに格助受身の相手は係助強意おどさサ四未然れ受身未然じ打消意志終止。」とて格助引用引き起こしサ四連用給ふ補・ハ四終止尊→光源氏。

現代語訳私がいるのだから、そんなものにはおどされはしない。」と言って(右近を)引き起こしなさる。

まろ
私。
解説

「さやうのもの」は、「狐などやうのもの」。

「まろあれば…おどされじ」は、右近をこれ以上怖がらせないための言葉で、自分を励ます強がりでもある。

「引き起こし給ふ」は、光源氏が右近を引き起こしなさる。

原文
「いと副うたて副、乱り心地の格助主格悪しうシク連用・音侍れ補・ラ変已然丁→光源氏ば接助順接確定、うつ伏し臥しサ四連用て接助単純接続侍る補・ラ変連体丁→光源氏や間助詠嘆。御前おまへに格助尊敬こそ係助強意わりなくク連用思さサ四未然尊→夕顔る自発終止らめ現在推量已然。」と格助引用言へハ四已然ば接助順接確定、

現代語訳「どうにもひどく気分がすぐれませんので、うつ伏しておりますのですよ。ご主人さまのほうこそ、たまらなく(恐ろしく)お思いでしょう。」と(右近が)言うので、

乱り心地
気分がすぐれないこと。
悪し
悪い。
わりなし
ひととおりでない。たまらない。
解説

「御前」は、右近が主人の夕顔を敬っていう語。私(右近)よりも夕顔さまのほうがずっと恐ろしいと思っていらっしゃるでしょう、ということ。

「侍れ」「侍る」は丁寧語で、右近から光源氏への敬意。

原文
「そよ感、など副かう副は係助区別。」とて格助引用、かい探りラ四連用給ふ補・ハ四連体尊→光源氏に接助単純接続、息も係助類例せサ変未然ず打消終止。

現代語訳「そうだ、どうしてこんなに(怖がるのか)。」と言って、(夕顔を)手探りなさると、息もしていない。

そよ
そうだ。そのことよ。
かい探る
手探りする。
解説

明かりがないので、光源氏は手探りで夕顔の様子を確かめている。

原文
引き動かしサ四連用給へ補・ハ四已然尊→光源氏ど接助逆接確定、なよなよと副しサ変連用て接助単純接続、我代名に断定連用も係助強意あら補・ラ変未然ぬ打消連体さまなれ断定已然ば接助順接確定、

現代語訳揺り動かしなさるけれども、ぐったりとして、正気を失っている様子なので、

なよなよと
ぐったりと。
我にもあらず
正気を失っている。正体がない。
解説

夕顔が、ぐったりとして意識がない様子。

原文
いと副いたくク連用若びバ上二連用たる存続連体人に断定連用て接助単純接続、物に格助受身の相手けどらラ四未然れ受身連用ぬる完了連体な断定連体・音めり推定終止と格助引用、せむ方なきク連体心地しサ変連用給ふ補・ハ四終止尊→光源氏。

現代語訳まったくひどく子どもじみた人だから、物の怪に魂を奪われてしまったのだろうと、どうしてよいかわからないお気持ちになる。

若ぶ
子どもっぽくふるまう。
けどる
(物の怪などが)魂を奪う。
せむ方なし
どうしようもない。
解説

「物にけどられぬるなめり」は、子どものような夕顔が、物の怪に魂を奪われてしまったらしいという光源氏の推測。この時点では、まだ気を失っているだけだと思っている。

続き:夕顔③ 前:夕顔①

源氏物語のほかの場面:桐壺①「いづれの御時にか」 若紫①「北山の垣間見」 車争い① 須磨①

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①上童
    ②随身
    ③朝臣
    ④曹司
    ⑤内裏
    ⑥名対面

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    ①うえわらわ
    ②ずいじん
    ③あそん
    ④ぞうし
    ⑤うち
    ⑥なだいめん

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①睦ましく
    ②つきづきしく
    ③さながら
    ④もの狂ほし
    ⑤我にもあらぬ
    ⑥せむ方なき

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    ①親しく
    ②ふさわしく
    ③もとのまま
    ④正気とも思えない
    ⑤正気を失っている
    ⑥どうしようもない

B 文法・敬語

  1. 次の「ぬ」を文法的に説明せよ。
    ①預かりが曹司の方に去ぬなり
    ②名対面は過ぎぬらむ
    ③まだいたう更けぬにこそは

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    ①ナ変動詞「去ぬ」の終止形の一部(活用語尾)
    ②助動詞「ぬ」(強意)の終止形
    ③助動詞「ず」(打消)の連体形

  2. 次の助動詞の意味を答えよ。
    ①惟光朝臣の来たりつらむは
    ②曹司の方に去ぬなり
    ③け恐ろしう思はするならむ
    ④さやうのものにはおどされじ
    ⑤物にけどられぬるなめり

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    ①現在推量
    ②推定
    ③使役
    ④打消意志
    ⑤推定

  3. 次の敬語について、種類を答え、だれからだれへの敬意かを示せ。
    ①候ふ限りみな寝たり
    ②問はせ給へば
    ③候ひつれど
    ④悪しう侍れば

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    ①謙譲語。作者から光源氏へ。
    ②尊敬語(「せ給ふ」で尊敬を重ねた言い方)。作者から光源氏へ。
    ③謙譲語。預かりの子から光源氏へ。
    ④丁寧語。右近から光源氏へ。

C 現代語訳・内容

  1. 「人離れたる所に、心とけて寝ぬるものか」を現代語訳せよ。

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    人里離れた所で、気をゆるして眠っていてよいものか。

  2. 「惟光朝臣の来たりつらむは」と尋ねたときの光源氏の気持ちを説明せよ。また、惟光はどうしていたか。

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    頼りになる惟光にそばにいてほしいという気持ち。惟光は、命令もないので、明け方に迎えに来ると言って退出していた。

  3. 「預かりが曹司の方に去ぬなり」を現代語訳せよ。また、このときの周囲はどのような状況か。

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    管理人の部屋のほうへ去って行くようだ。真っ暗で何も見えず、弦の音や声だけが聞こえている状況。

  4. 「まろあれば、さやうのものにはおどされじ」について、①「さやうのもの」が指す部分を本文から抜き出せ。②現代語訳せよ。

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    ①狐などやうのもの
    ②私がいるのだから、そのようなものにはおどされはしない。

  5. 「御前にこそわりなく思さるらめ」を、「御前」が指す人物を明らかにして現代語訳せよ。

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    (私よりも)夕顔さまのほうこそ、たまらなく(恐ろしく)お思いになっているでしょう。

  6. 「なよなよとして、我にもあらぬさま」とは、だれのどのような様子か。

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    夕顔が、ぐったりとして正気を失っている様子。

  7. 「物にけどられぬるなめり」を現代語訳せよ。

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    物の怪に魂を奪われてしまったらしい。