『源氏物語』夕顔① 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 枕上の女
  4. 誰も来ない
  5. テスト予想問題

『源氏物語(げんじものがたり)』夕顔(ゆうがお)の巻、「なにがしの院」(「廃院の怪」)の場面の前半、「宵過ぐるほど、すこし寝入り給へるに」から「渡殿の灯も消えにけり」までの現代語訳・品詞分解・敬語・解説です(全3回の①)。

夕顔を荒れはてた「なにがしの院」に連れ出した光源氏が、夜、枕もとに現れた美しい女の夢を見て目を覚ます場面です。灯は消え、夕顔はおびえきっています。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

枕上の女

原文
宵よひ過ぐるガ上二連体ほど、すこし副寝入りラ四連用給へ補・ハ四已然尊→光源氏る存続連体に接助単純接続、御枕上に格助場所いと副をかしげなるナリ連体女ゐワ上一連用て接助単純接続、

現代語訳宵を過ぎるころ、少し眠り込んでいらっしゃると、枕もとにたいそう美しい女が座っていて、

宵
日が暮れて間もないころ。
をかしげなり
美しい様子だ。
ゐる
座る。
解説

「寝入り給へる」の主語は光源氏。

現代語訳「私は(あなた様を)とてもすばらしい方だとお慕いしておりますのに、その私のもとへはお訪ねになろうともお考えにならず、

おの
自分。私。
めでたし
すばらしい。立派だ。
思ほす
「思ふ」の尊敬語。
解説

「おの」は、枕もとに現れた女が自分のことをいう語。「めでたしと見奉る」相手は光源氏。

原文
かく副ことなるナリ連体ことなきク連体人を格助対象率ゐワ上一連用て接助単純接続おはし補・サ変連用尊→光源氏て接助単純接続、時めかしサ四連用給ふ補・ハ四連体尊→光源氏こそ係助強意、いと副めざましくシク連用つらけれク已然。」

現代語訳こんな、取り立てて優れた点もない女をお連れになって、ご寵愛なさるとは、本当に心外で恨めしいことです。」

ことなり
格別だ。すぐれている。
率る
連れる。
時めかす
寵愛する。かわいがる。
めざまし
心外だ。気に入らない。
つらし
恨めしい。
解説

「かくことなることなき人」は夕顔。

「めざましく」には、相手(夕顔)を見下して、光源氏の扱いを不愉快に思う気持ちがこめられている。

※「こそ」を受けて「つらけれ」が已然形で結ぶ(係り結び)。

原文
とて格助引用、こ代名の格助体修御傍らの格助体修人を格助対象かき起こさサ四未然む意志終止と格助引用すサ変終止と格助引用見マ上一連用給ふ補・ハ四終止尊→光源氏。

現代語訳と言って、(光源氏の)かたわらに寝ている女君を引き起こそうとする様子を、夢にご覧になる。

かき起こす
引き起こす。
解説

「御傍らの人」は、光源氏のそばに寝ている夕顔。

「見給ふ」は、光源氏が、美しい女が夕顔を引き起こそうとするのを夢に見たということ。

原文
物に格助受身の相手襲はハ四未然るる受身連体心地ここちしサ変連用て接助単純接続、おどろきカ四連用給へ補・ハ四已然尊→光源氏れ完了已然ば接助順接確定、灯ひも係助類例消えヤ下二連用に完了連用けり過去終止。

現代語訳何かに襲われるような気がして、はっとお目覚めになると、灯火も消えてしまっていた。

物
ここでは、物の怪(人に取りつく霊)。
おどろく
目を覚ます。
解説

目を覚ますと灯が消えていて、あたりは真っ暗になっている。

原文
うたて副思さサ四未然尊→光源氏るれ自発已然ば接助順接確定、太刀たちを格助対象引き抜きカ四連用て接助単純接続、うち置きカ四連用給ひ補・ハ四連用尊→光源氏て接助単純接続、右近うこんを格助対象起こしサ四連用給ふ補・ハ四終止尊→光源氏。

現代語訳いやな感じがなさるので、太刀を引き抜いて(そばに)お置きになり、右近をお起こしになる。

うたて
いやに。気味悪く。
解説

太刀を抜いて枕もとに置いたのは、魔よけのため。

原文
これ代名も係助類例恐ろしシク終止と格助引用思ひハ四連用たる存続連体さまに断定連用て接助単純接続、参り寄れラ四已然謙→光源氏り完了終止。

現代語訳右近も恐ろしいと思っている様子で、(光源氏の)おそばに寄って来た。

解説

「これ」は右近。

「参り寄れ」は謙譲語で、作者(語り手)から光源氏への敬意。

誰も来ない

原文
「渡殿わたどのなる存在連体宿直人とのゐびと起こしサ四連用て接助単純接続、紙燭しそくさしサ四連用て接助単純接続参れラ四命令謙→光源氏と格助引用言へハ四命令。」と格助引用のたまへハ四已然尊→光源氏ば接助順接確定、

現代語訳「渡殿にいる宿直の者を起こして、紙燭に火をつけて持って参れと言え。」とおっしゃると、

渡殿
建物と建物をつなぐ屋根のある廊下。
宿直人
夜の番をする者。
紙燭
紙や布を細く巻いて油をしみこませた、室内用の明かり。「紙燭さす」は、紙燭に火をつけること。
解説

光源氏が、明かりを持って来させるために右近を使いに出そうとしている。

原文
「いかで副か係助反語まからラ四未然謙→光源氏む推量連体、暗うク連用・音て接助単純接続。」と格助引用言へハ四已然ば接助順接確定、「あな感若々しシク終止。」と格助引用うち笑ひハ四連用給ひ補・ハ四連用尊→光源氏て接助単純接続、

現代語訳(右近が)「どうして行けましょうか、暗くて(行けません)。」と言うので、(光源氏は)「なんと子どもっぽい。」とお笑いになって、

まかる
(貴人のもとを離れて)参る。行く。
若々し
子どもっぽい。
解説

「いかでかまからむ」の「か」は反語。右近は、暗くて、渡殿まで宿直人を起こしに行くことはできないと言っている。

「あな若々し」は、子どものような言い訳をする右近にあきれて笑ったもの。右近を励まし、自分の恐ろしさを打ち消そうとする気持ちとも考えられる。

原文
手を格助対象たたきカ四連用給へ補・ハ四已然尊→光源氏ば接助順接確定、山彦やまびこの格助主格答ふるハ下二連体声いと副うとましシク終止。

現代語訳(人を呼ぼうと)手をたたきなさると、こだまが返ってくる音がひどく気味が悪い。

山彦
こだま。
うとまし
気味が悪い。
解説

手をたたいたのは、人を呼ぶため。

原文
人え副聞きつけカ下二未然で接助打消参らラ四未然謙→光源氏ぬ打消連体に接助単純接続、こ代名の格助体修女君いみじくシク連用わななき惑ひハ四連用て接助単純接続、いかさまにナリ連用せサ変未然む意志連体と格助引用思へハ四已然り存続終止。

現代語訳誰も聞きつけることができずに参上しないでいると、この女君(夕顔)はひどく震えおびえて、どうしたらよいのかと思っている。

え〜で
〜することができないで。
わななき惑ふ
震えおびえる。
解説

宿直の人々がみな寝ていたので、手をたたく音を聞きつける者がいない。

「いかさまにせむ」と思っているのは夕顔(「思へり」に尊敬語がない)。

原文
汗も係助類例しとどに副なりラ四連用て接助単純接続、我代名か係助疑問の格助体修気色けしきなり断定終止。

現代語訳汗もびっしょりになって、正気を失った様子である。

しとどに
びっしょりと。
我か
自分か(他人か)わからないほどの状態。「我かの気色」で、正気を失った様子。
原文
「もの怖おぢを格助対象なむ係助強意、わりなくク連用せサ変未然させ尊敬連用給ふ補・ハ四連体尊→夕顔本性に断定連用て接助単純接続、いかに副思さサ四未然尊→夕顔るる自発連体に断定連用か係助疑問。」と格助引用、右近も係助類例聞こゆヤ下二終止謙→光源氏。

現代語訳「(夕顔さまは)むやみに物をこわがりなさるご性分で、どれほど(恐ろしく)お感じになっていることでしょうか。」と、右近も申し上げる。

もの怖ぢ
物をこわがること。
わりなし
(連用形で)むやみに。ひどく。
本性
生まれつきの性質。
解説

「本性」は夕顔の性質。「せさせ給ふ」「思さるる」の尊敬語は、右近から夕顔への敬意。「聞こゆ」は謙譲語で、作者から光源氏への敬意。

「いかに思さるるにか」の下には「あらむ」が省略されている。

※「なむ」の結びは、「本性にて」と下に続いたため流れている(結びの流れ)。

原文
いと副か弱くク連用て接助単純接続、昼も係助類例空を格助対象のみ副助限定見マ上一連用つる完了連体ものを接助逆接確定、いとほしシク終止と格助引用思しサ四連用尊→光源氏て接助単純接続、

現代語訳(夕顔が)たいそうか弱くて、昼間もぼんやりと空ばかり見ていたのに、と(光源氏は)気の毒にお思いになって、

いとほし
気の毒だ。かわいそうだ。
解説

夕顔は、ひどくか弱く、昼も空ばかり見ていた人として描かれている。

原文
「我代名、人を格助対象起こさサ四未然む意志終止。手たたけカ四已然ば接助順接確定山彦の格助主格答ふるハ下二連体、いと副うるさしク終止。ここ代名に格助場所、しばし副、近くク連用。」とて格助引用、

現代語訳「私が(行って)人を起こそう。手をたたくと、こだまがはね返ってきて、まことにうるさい。ここに、しばらく、(夕顔の)近くに(いなさい)。」と言って、

うるさし
わずらわしい。
解説

「ここに」は夕顔のそば。言葉を切って要点だけを言う言い方で、ひどく差し迫った様子がうかがえる。

原文
右近を格助対象引き寄せサ下二連用給ひ補・ハ四連用尊→光源氏て接助単純接続、西の格助体修妻戸つまどに格助場所出でダ下二連用て接助単純接続、戸を格助対象押し開けカ下二連用給へ補・ハ四已然尊→光源氏れ完了已然ば接助順接確定、渡殿の格助体修灯も係助類例消えヤ下二連用に完了連用けり過去終止。

現代語訳右近を(夕顔のそばに)引き寄せなさって、(ご自分は)西の妻戸のところに出て、戸を押し開けなさると、渡殿の灯火も消えてしまっていた。

妻戸
建物の四隅にある両開きの板戸。
解説

部屋の中だけでなく、渡殿の灯も消えていて、外も真っ暗である。

続き:夕顔② 夕顔③

源氏物語のほかの場面:桐壺①「いづれの御時にか」 若紫①「北山の垣間見」 車争い① 須磨①

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①宵
    ②渡殿
    ③宿直人
    ④紙燭
    ⑤気色
    ⑥妻戸

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    ①よい
    ②わたどの
    ③とのいびと
    ④しそく
    ⑤けしき
    ⑥つまど

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①めざましく
    ②おどろき
    ③うたて
    ④若々し
    ⑤しとどに
    ⑥いとほし

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    ①心外で(気に入らなくて)
    ②目を覚まし
    ③気味悪く
    ④子どもっぽい
    ⑤びっしょりと
    ⑥気の毒だ

B 文法・敬語

  1. 次の助動詞の意味を答えよ。
    ①かき起こさむとす
    ②うたて思さるれば
    ③我かの気色なり
    ④いかさまにせむと思へり

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    ①意志
    ②自発
    ③断定
    ④存続

  2. 次の敬語について、種類を答え、だれからだれへの敬意かを示せ。
    ①めでたしと見奉る
    ②時めかし給ふこそ
    ③わりなくせさせ給ふ
    ④右近も聞こゆ

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    ①謙譲語。枕上の女から光源氏へ。
    ②尊敬語。枕上の女から光源氏へ。
    ③尊敬語。右近から夕顔へ。
    ④謙譲語。作者から光源氏へ。

C 現代語訳・内容

  1. 「かき起こさむとすと見給ふ」とあるが、だれが、何を見たのか。

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    光源氏が、枕もとに現れた美しい女が、そばに寝ている夕顔を引き起こそうとするのを夢に見た。

  2. 「かくことなることなき人を率ておはして、時めかし給ふこそ、いとめざましくつらけれ」について、①「ことなることなき人」とはだれか。②現代語訳せよ。

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    ①夕顔
    ②このように格別な取りえもない人をお連れになって、ご寵愛なさるのは、まったく心外で恨めしいことです。

  3. 太刀を引き抜いて枕もとに置いたのは、何のためか。

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    魔よけのため。

  4. 「いかでかまからむ、暗うて」を現代語訳せよ。また、右近はどうすることができないと言っているのか。

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    どうして行けましょうか、暗くて(行けません)。渡殿まで行って宿直人を起こし、紙燭に火をともして持って来るよう伝えること。

  5. 「人え聞きつけで参らぬに」を現代語訳せよ。

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    誰も聞きつけることができずに、参上しないでいると。

  6. 「いかに思さるるにか」を、下に省かれた言葉を補って現代語訳せよ。また、だれが「思さるる」のか。

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    どれほど(恐ろしく)お感じになっていることでしょうか。(「にか」の下に「あらむ」が省略)夕顔。

  7. 「ここに、しばし、近く」とあるが、①「ここに」とはどこか。②この言い方から、どのような状況がうかがえるか。

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    ①夕顔のそば。
    ②言葉を切って要点だけを伝えるほど、差し迫った状況。