『源氏物語』須磨① 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 須磨の秋
  4. 眠れぬ夜
  5. お供の人々への思いやり
  6. テスト予想問題

『源氏物語(げんじものがたり)』須磨(すま)の巻、「須磨の秋」の場面の前半、「須磨には、いとど心づくしの秋風に」から「四、五人ばかりぞ、つと候ひける」までの現代語訳・品詞分解・敬語・解説です(全3回の①)。

都を離れて須磨に退いた光源氏が、秋の夜、波の音を聞きながら涙を流し、自分のために家族と別れてついてきたお供の人々を思いやる場面です。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

須磨の秋

原文
須磨すまに格助場所は係助区別、いとど副心こころづくしの格助体修秋風あきかぜに格助原因、海は係助区別少し副遠けれク已然ど接助逆接確定、行平の中納言ゆきひらのちゆうなごんの格助主格、「関せき吹き越ゆるヤ下二連体」と格助引用言ひハ四連用けむ過去伝聞連体浦波うらなみ、

現代語訳須磨では、ひとしお物思いをかきたてる秋風のせいで、(光源氏の住まいから)海は少し離れているけれども、行平の中納言が「関吹き越ゆる」と詠んだという浦の波が、

いとど
いっそう。ますます。
心づくし
あれこれと物思いをすること。「心づくしの秋風」は、物思いをかきたてる秋風。
行平の中納言
在原行平。在原業平の兄。須磨に流されたと伝えられる。
関吹き越ゆる
行平の歌「旅人はたもと涼しくなりにけり関吹き越ゆる須磨の浦風」(『続古今和歌集』)の一節。
解説

「秋風に」は、少し先の「(近く)聞こえて」にかかる。秋風のせいで、波の音がいっそう近く聞こえる、という流れ。

原文
夜々よるよるは係助区別げに副いと副近くク連用聞こえヤ下二連用て接助単純接続、またなくク連用あはれなるナリ連体ものは係助区別、かかる連体所の格助体修秋なり断定連用けり詠嘆終止。

現代語訳夜ごとに、なるほど(その歌のとおり)すぐ近くに聞こえて、またとなく心にしみるものは、このような土地の秋なのだなあ。

げに
なるほど。本当に。
またなし
またとない。この上ない。
あはれなり
しみじみと心にしみる。
解説

「夜々」は、「夜(よる)」と、浦波が「寄る」とを掛けた掛詞。

「かかる所」は、都から遠く離れた、寂しい須磨の地のこと。

眠れぬ夜

原文
御前おまへに格助場所いと副人少ひとずくなにナリ連用て接助単純接続、うち休みわたれラ四已然る存続連体に格助時間、ひとり目を格助対象覚ましサ四連用て接助単純接続、枕を格助対象そばだてタ下二連用て接助単純接続四方よもの格助体修嵐あらしを格助対象聞きカ四連用給ふ補・ハ四連体尊→光源氏に接助単純接続、

現代語訳おそばにはごくわずかな人しかおらず、皆が寝静まっているときに、ひとり目を覚まして、枕を立てて頭を上げ、あたりに吹きすさぶ風の音をお聞きになっていると、

人少ななり
人が少ない。
うち休みわたる
皆が寝静まる。
そばだつ
(枕を)立てる。枕を立てて頭を高くすることで、白居易の詩の「枕を欹てて聴く」をふまえた表現。
四方の嵐
あたり一面に吹く激しい風。
解説

「聞き給ふ」の主語は光源氏。お供の人々が眠っている中、光源氏だけが目を覚ましている。

原文
波ただ副ここもとに格助帰着立ち来るカ変連体心地しサ変連用て接助単純接続、涙落つタ上二終止と格助引用も係助強意おぼえヤ下二未然ぬ打消連体に接助逆接確定、枕浮くカ四連体ばかり副助程度に格助結果なりラ四連用に完了連用けり詠嘆終止。

現代語訳波がすぐここまで寄せてくる気がして、涙がこぼれているとも気づかないうちに、枕が浮いてしまうほど(涙で濡れて)しまったよ。

ここもと
すぐここ。
解説

「枕浮くばかりになりにけり」は、自分でも気づかないうちに、枕が浮くほど涙を流していたことを大げさに表した誇張表現。

※「おぼえぬに」の「に」は逆接の接続助詞(〜のに)、「なりにけり」の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形。

原文
琴きんを格助対象少し副かき鳴らしサ四連用給へ補・ハ四已然尊→光源氏る完了連体が格助主格、我代名ながら接助逆接確定いと副すごうク連用・音聞こゆれヤ下二已然ば接助順接確定、弾きさしサ四連用給ひ補・ハ四連用尊→光源氏て接助単純接続、

現代語訳琴を少しかき鳴らしなさった音が、自分でもひどくもの寂しく聞こえるので、途中で弾くのをおやめになって、

すごし
もの寂しい。ぞっとするほど寂しい。
弾きさす
途中で弾くのをやめる。
原文
恋ひわびバ上二連用て接助単純接続泣くカ四連体音ねに格助比較まがふハ四連体浦波うらなみは係助区別思ふハ四連体方かたより格助起点風や係助疑問吹くカ四終止らむ現在推量(原因)連体

現代語訳恋しさに耐えかねて泣く声とまちがえるほどよく似た浦波の音は、私を思ってくれる人たちのいる(都の)方角から風が吹いてくるからなのだろうか。

恋ひわぶ
恋しさに思い悩む。
まがふ
見分けがつかないほどよく似る。
解説

「思ふ方」は、光源氏を思ってくれている人々がいる方角、つまり都。

浦波の音が泣き声のように聞こえるのは、都のほうから風が吹いて、都の人々の泣く声を運んでくるからだろうか、と詠んでいる。

現代語訳と(光源氏が)声に出して歌いなさると、人々ははっと目を覚まし、見事な歌だと思うにつけても(悲しみを)こらえきれず、わけもなく起きて座っては、そっと鼻をかんで(泣いて)いる。

おどろく
目を覚ます。
忍ぶ
こらえる。がまんする。
あいなし
(連用形で)わけもなく。むやみに。
かみわたす
(一人一人が)鼻をかむ。
解説

「うたひ給へる」は、光源氏が「恋ひわびて…」の歌を声に出して歌うこと。

「人々おどろきて」の人々は、それまで寝静まっていた(「うち休みわたれる」)お供の人々。

「鼻を忍びやかにかみわたす」は、人々がこらえきれずに泣いていることを表す。

お供の人々への思いやり

原文
げに副いかに副思ふハ四終止らむ現在推量連体、わ代名が格助体修身一つに格助原因よりラ四連用、親兄弟おやはらから、片時かたときたち離れがたくク連用、

現代語訳(光源氏は思う。)本当に(この人たちは)どんな気持ちでいるのだろう、私ひとりのせいで、親や兄弟や、ほんのしばらくも離れがたく、

片時
ほんの少しの間。
解説

ここから「かく惑ひ合へる」までが、光源氏の心の中の思い。

原文
ほどに格助対象つけカ下二連用つつ接助反復思ふハ四終止らむ現在推量連体家を格助起点別れラ下二連用て接助単純接続、かく副惑ひ合へハ四已然る存続連体と格助引用思すサ四連体尊→光源氏に接助単純接続、いみじくシク連用て接助単純接続、

現代語訳身分に応じてそれぞれ大切に思っているはずの家を離れて、このように(私といっしょに)さすらっていることよとお思いになると、(お供の人たちが)ひどく気の毒で、

ほど
身分。
惑ふ
さまよう。
いみじ
(ここでは)ひどく気の毒だ。
解説

「思す」の主語は光源氏。「思ふらむ」の主語はお供の人々。

「いみじくて」は、自分のために家族や家と別れてきたお供の人々を、光源氏が痛ましく、気の毒に思う気持ち。

原文
いと副かく副思ひ沈むマ四連体さまを格助対象心細しク終止と格助引用思ふハ四終止らむ現在推量終止と格助引用思せサ四已然尊→光源氏ば接助順接確定、昼は係助区別何くれと副戯れ言たはぶれごとうちのたまひ紛らはしサ四連用尊→光源氏、

現代語訳(自分が)こんなにひどく沈みこんでいる様子を見て(お供の人たちは)心細く感じているにちがいないとお考えになるので、昼間はあれこれと冗談をおっしゃって気をまぎらわし、

何くれと
あれこれと。
戯れ言
冗談。
解説

「思ひ沈む」の主語は光源氏、「思ふらむ」の主語はお供の人々、「思せ」の主語は光源氏。

自分が沈んでいるとお供の人々が心細く思うだろうと考え、光源氏は冗談を言って、皆の気をまぎらわしている。

原文
つれづれなるナリ連体ままに格助状態、いろいろの格助体修紙を格助対象継ぎガ四連用つつ接助反復手習てならひを格助対象しサ変連用給ひ補・ハ四連用尊→光源氏、

現代語訳することもなく退屈なのにまかせて、色とりどりの紙を継ぎ合わせては、思いつくままに和歌などを書きなさり、

つれづれなり
することがなく退屈だ。
手習ひ
思いつくままに和歌などを書くこと。
原文
めづらしきシク連体さまなる断定連体唐からの格助体修綾あやなど副助例示に格助対象さまざまの格助体修絵ゑどもを格助対象かきすさびバ四連用給へ補・ハ四已然尊→光源氏る存続連体、屏風びやうぶの格助体修面おもてどもなど副助例示、いと副めでたくク連用見どころありラ変終止。

現代語訳珍しい模様の唐の綾織物などに、いろいろな絵を気の向くままに描いていらっしゃる、その屏風の表などは、たいそうすばらしく見ごたえがある。

唐の綾
中国から渡ってきた綾織物(模様を織り出した絹)。
すさぶ
気の向くままに〜する。
原文
人々の格助主格語りラ四連用聞こえ補・ヤ下二連用謙→光源氏し過去連体海山うみやまの格助体修ありさまを格助対象、はるかにナリ連用思おぼしやりラ四連用尊→光源氏し過去連体を接助逆接確定、

現代語訳(以前、都で)お供の人々が話してお聞かせ申し上げた海山の景色を、(そのころは)はるかに想像していらっしゃるだけだったが、

人々の語り聞こえし海山のありさま
以前、北山に行ったとき(若紫の巻)、お供の人々が光源氏に、各地の海や山の景色を話して聞かせたことをさす。
解説

光源氏のような身分の高い人が、景色を見るために遠くへ旅をすることはなく、話に聞いて想像するしかなかった。

原文
御目おほんめに格助場所近くク連用て接助単純接続は係助区別、げに副及ばバ四未然ぬ打消連体磯いその格助体修たたずまひ、二になくク連用かき集めマ下二連用給へ補・ハ四已然尊→光源氏り完了終止。

現代語訳いま目の前でご覧になると、なるほど(話から想像していたのでは)とても及ばない磯の景色を、またとないほど見事にたくさんお描きになった。

二なし
またとない。
解説

「げに及ばぬ」は、話を聞いて想像していたのでは及ばないほどの(すばらしい)磯の景色、ということ。

原文
「このごろの格助体修上手じやうずにナリ連用すサ変終止める婉曲連体千枝ちえだ、常則つねのりなど副助例示を格助対象召しサ四連用尊→光源氏て接助単純接続、作り絵つくりゑ仕つかうまつらラ四未然謙→光源氏せ使役未然ばや終助願望。」と格助引用、心もとながり合へハ四已然り存続終止。

現代語訳「近ごろ名人と評判の千枝や常則などを呼んで、(この墨絵に)色をつけさせ申し上げたいものだ。」と、(お供の人たちは)じれったく思い合っている。

上手
名人。
千枝、常則
絵の名人。常則は村上天皇のころ実際にいた画家。
作り絵
墨でかいた下絵に色を塗ること。
心もとながる
じれったく思う。もどかしがる。
解説

「召して」「仕うまつら」の敬語は、会話の主であるお供の人々から、光源氏への敬意。

お供の人々は、光源氏の墨絵に名人の色をつけさせたいのに、都から遠く離れていて、それができないのをもどかしがっている。

原文
なつかしうシク連用・音めでたきク連体御おほんさまに格助原因、世の格助体修もの思ひ忘れラ下二連用て接助単純接続、近うク連用・音馴れ仕なれつかうまつるラ四連体謙→光源氏を格助対象うれしきシク連体ことにて格助状態、四、五人よたりいつたりばかり副助程度ぞ係助強意、つと副候さぶらひハ四連用謙→光源氏ける過去連体。

現代語訳(光源氏の)親しみ深くすばらしいご様子に、世の中のつらさも忘れて、おそば近くでお仕え申し上げるのをうれしいことと思い、四、五人ほどが、いつもぴったりとおそばにお仕えしていた。

なつかし
親しみが持てる。心がひかれる。
つと
ずっと。ぴったりと。
解説

「仕うまつる」「候ひ」は謙譲語で、作者(語り手)から光源氏への敬意。

お供の人々は、光源氏のすばらしさに、自分たちのつらさを忘れていた。

続き:須磨② 須磨③

源氏物語のほかの場面:桐壺①「いづれの御時にか」 若紫①「北山の垣間見」 車争い①

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①御前
    ②四方
    ③親兄弟
    ④戯れ言
    ⑤千枝
    ⑥四、五人

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    ①おまえ
    ②よも
    ③おやはらから
    ④たわぶれごと
    ⑤ちえだ
    ⑥よたりいつたり

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①心づくし
    ②またなく
    ③すごう
    ④おどろきて
    ⑤あいなう
    ⑥心もとながり
    ⑦なつかしう

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    ①いろいろと物思いをすること
    ②このうえなく
    ③もの寂しく
    ④目を覚まして
    ⑤わけもなく
    ⑥じれったく思い
    ⑦親しみが持てて

B 文法・敬語

  1. 次の「に」を文法的に説明せよ。
    ①涙落つともおぼえぬに
    ②枕浮くばかりになりにけり
    ③鼻を忍びやかにかみわたす
    ④かく惑ひ合へると思すに

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    ①逆接の接続助詞
    ②完了の助動詞「ぬ」の連用形
    ③形容動詞「忍びやかなり」の連用形の活用語尾
    ④単純接続の接続助詞

  2. 次の助動詞の意味と活用形を答えよ。
    ①言ひけむ
    ②心細しと思ふらむ
    ③はるかに思しやりし
    ④つと候ひける

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    ①過去の伝聞・連体形
    ②現在推量・終止形
    ③過去・連体形
    ④過去・連体形(「ぞ」の結び)

  3. 次の敬語について、種類を答え、だれからだれに向けた敬意かを示せ。
    ①四方の嵐を聞き給ふ
    ②人々の語り聞こえし
    ③近う馴れ仕うまつる
    ④つと候ひける

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    ①尊敬語。作者から光源氏へ。
    ②謙譲語。作者から光源氏へ。
    ③謙譲語。作者から光源氏へ。
    ④謙譲語。作者から光源氏へ。

C 現代語訳・内容

  1. 「夜々はげにいと近く聞こえて」について、①「夜々」は掛詞である。「夜」と重ねられている語を、漢字を使って書け。②「げに」とは何に照らして「なるほど」と言っているのか。

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    ①寄る寄る(浦波が寄せる)
    ②在原行平の「関吹き越ゆる須磨の浦風」の歌。

  2. 「枕浮くばかりになりにけり」は、光源氏のどのような様子を表しているか。

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    自分でも気づかないうちに、枕が浮いてしまうほど涙を流していた様子(誇張した表現)。

  3. 「恋ひわびて泣く音にまがふ浦波は思ふ方より風や吹くらむ」を現代語訳せよ。また、「思ふ方」とは具体的にどこか。

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    恋しさに耐えかねて泣く声とまちがえるほど似ている浦波の音は、私を思ってくれる人たちのいる方角から風が吹いてくるからだろうか。「思ふ方」=都。

  4. 「人々おどろきて」を現代語訳せよ。また、それまで人々がどのような状態だったかがわかる部分を、本文から抜き出せ。

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    人々は目を覚まして。「うち休みわたれる」

  5. 「げにいかに思ふらむ…かく惑ひ合へる」と思ったのは誰か。また、それはどのような気持ちか。

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    光源氏。自分のために、親兄弟や大切な家と離れて須磨までついてきたお供の人々を、気の毒に思う気持ち。

  6. 「いとかく思ひ沈むさまを心細しと思ふらむと思せば」の「思ひ沈む」「思ふ」「思せ」の主語をそれぞれ答えよ。また、そう考えた光源氏は、昼はどのようにふるまったか。

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    思ひ沈む=光源氏、思ふ=お供の人々、思せ=光源氏。冗談を言って皆の気をまぎらわし、手習いをしたり、唐の綾などに絵をかいたりして過ごした。

  7. 「千枝、常則などを召して作り絵仕うまつらせばや」を現代語訳せよ。また、これは誰の言葉か。

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    千枝や常則などを呼んで、(光源氏の絵に)色を塗らせ申し上げたいものだ。お供の人々の言葉。