『源氏物語』夕顔③ 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 夢の女ふたたび
  4. 夕顔の死
  5. テスト予想問題

『源氏物語(げんじものがたり)』夕顔(ゆうがお)の巻、「なにがしの院」(「廃院の怪」)の場面の後半、「紙燭持て参れり」から「あきれたる心地し給ふ」までの現代語訳・品詞分解・敬語・解説です(全3回の③)。夕顔②の続きです。

紙燭の明かりで夕顔を見ると、枕もとに夢で見た女が現れて、ふっと消えます。夕顔はすでに息絶えていました。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

夢の女ふたたび

原文
紙燭しそく持て参れラ四已然謙→光源氏り完了終止。右近も係助類例動くカ四終止べき可能連体さまに断定連用も係助強意あら補・ラ変未然ね打消已然ば接助順接確定、

現代語訳(管理人の子が)紙燭を持ってやって来た。右近も身動きできるありさまではないので、

解説

「紙燭持て参れり」の主語は、預かりの子(滝口)。

右近も動けないので、紙燭を取り次ぐ人がいない。

原文
近きク連体御几帳みきちやうを格助対象引き寄せサ下二連用て接助単純接続、「なほ副持て参れラ四命令謙→光源氏。」と格助引用のたまふハ四終止尊→光源氏。

現代語訳(光源氏は)そばにある几帳を引き寄せて(夕顔を隠してから)、「もっと(近くへ)持って参れ。」とおっしゃる。

御几帳
室内に立てて仕切りにする道具。
解説

几帳を引き寄せたのは、夕顔の姿を隠すため。

原文
例なら断定未然ぬ打消連体ことに断定連用て接助単純接続、御前おまへ近くク連用も係助類例え副参らラ四未然謙→光源氏ぬ打消連体つつましさに格助原因、長押なげしに格助場所も係助類例え副上のぼらラ四未然ず打消終止。

現代語訳いつもと違うことなので、(光源氏の)おそば近くにも参上できない遠慮から、(管理人の子は)長押にも上がることができない。

例ならず
いつもと違う。
つつましさ
遠慮。気がひけること。
長押
廂(ひさし)と簀子(すのこ)の境にある横木。
解説

「御前」は光源氏。身分の低い預かりの子は、遠慮して、光源氏のそば近くまで上がって来られない。

原文
「なほ副持て来もてこカ変命令や間助呼びかけ。所に格助対象従ひハ四連用て接助単純接続こそ係助強意。」とて格助引用、召し寄せサ下二連用尊→光源氏て接助単純接続見マ上一連用給へ補・ハ四已然尊→光源氏ば接助順接確定、

現代語訳「もっと(近くへ)持って来い。(遠慮も)場所によるものだ。」と言って、(紙燭を)お取り寄せになって(夕顔を)ご覧になると、

持て来
持って来る。
解説

「所に従ひてこそ」は、遠慮も場所によるものだ(今はそんな遠慮は無用だ)ということ。早く明かりがほしい光源氏の焦りがうかがえる。

「召し寄せて見給へば」は、光源氏が預かりの子(の紙燭)を呼び寄せて、その明かりで夕顔をご覧になると、ということ。

原文
ただ副こ代名の格助体修枕上まくらがみに格助場所、夢に格助場所見えヤ下二連用つる完了連体容貌かたちしサ変連用たる存続連体女、面影に格助状態見えヤ下二連用て接助単純接続、ふと副消え失せサ下二連用ぬ完了終止。

現代語訳すぐその枕もとに、夢に見えたのと同じ顔かたちをした女が、幻のように見えて、ふっと消え失せてしまった。

面影
幻。
ふと
さっと。急に。
解説

「この枕上」は夕顔の枕もと。夢に見たのと同じ女(物の怪)が、明かりがともったので消えたのである。

原文
昔物語など副助例示に格助場所こそ係助強意かかるラ変連体ことは係助区別聞けカ四已然、と格助引用いと副めづらかにナリ連用むくつけけれク已然ど接助逆接確定、

現代語訳昔物語などではこのようなことを聞くけれども(現実にあるとは)、とたいそう珍しく気味が悪いけれど、

めづらかなり
めったにない。
むくつけし
気味が悪い。
解説

「かかること」は、物の怪が現れること。

「昔物語などにこそかかることは聞け」の下には、「(現実に起こるとは思わなかった)」という気持ちが省略されている。「こそ〜已然形」で文が終わらずに続くときは、逆接の意味になる。

夕顔の死

原文
まづ副、こ代名の格助体修人いかに副なりラ四連用ぬる完了連体ぞ終助念押しと格助引用思ほすサ四連体尊→光源氏心騒ぎに格助原因、身の格助体修上も係助類例知らラ四未然れ可能連用給は補・ハ四未然尊→光源氏ず打消連用添ひ臥しサ四連用て接助単純接続、

現代語訳何よりもまず、この人はどうなってしまったのかと案じなさる胸の騒ぎに、わが身の危険も考えることがおできにならないまま、(夕顔に)寄り添って横になり、

心騒ぎ
胸騒ぎ。
解説

「身の上も知られ給はず」は、物の怪に襲われたらしい夕顔に近づけば自分の身に何が起こるかも、考えることがおできにならないということ。光源氏が自分のことを忘れて夕顔に寄り添っている。

原文
「やや感。」と格助引用おどろかしサ四連用給へ補・ハ四已然尊→光源氏ど接助逆接確定、ただ副冷えヤ下二連用に格助強意冷え入りラ四連用て接助単純接続、息は係助区別とく副絶え果てタ下二連用に完了連用けり過去終止。

現代語訳「これ、これ。」と起こそうとなさるけれど、(夕顔の体は)ただもう冷えきっていくばかりで、息はもうとうに絶えてしまっていた。

やや
もしもし。これこれ。(呼びかける声)
おどろかす
起こす。目を覚まさせる。
とく
とっくに。
解説

「おどろかし給へど」は、光源氏が、声をかけて夕顔の目を覚まさせようとなさるけれど、ということ。

※「冷えに冷え入りて」の「に」は、同じ動詞の間にはさんで意味を強める格助詞。

原文
言はハ四未然む婉曲連体方なしク終止。頼もしくシク連用、いかに副と格助引用言ひふれラ下二連用給ふ補・ハ四終止尊→光源氏べき可能連体人も係助類例なしク終止。

現代語訳言葉にしようもない。頼もしく、どうしたものかと相談なさることのできる人もそばにいない。

言ひふる
話しかける。相談する。
解説

どう対処すればよいかを相談できる相手が、そばに一人もいない。

原文
法師など副助例示を格助対象こそ係助強意は係助区別、かかるラ変連体方の格助体修頼もしきシク連体ものに格助内容は係助強意思すサ四終止尊→光源氏べけれ当然已然ど接助逆接確定。

現代語訳法師などを、このような場合に頼りになるものとはお思いになるはずだけれど(その法師もいない)。

かかる方
物の怪に取りつかれたような場合。
解説

このような場合には法師が頼りになるはずだが、その法師もいない。

現代語訳あれほど強がっておられたけれど、まだお若い心なので、(夕顔が)死んでしまったのを目の当たりになさると、

言ふかひなくなる
死ぬ。
解説

「さ」は、前の「まろあれば、さやうのものにはおどされじ」を指す。

「言ふかひなくなりぬる」は、夕顔が死んでしまったこと。それを光源氏が目の当たりにしたのである。

原文
やるラ四連体方なくク連用て接助単純接続、つと副抱きカ四連用て接助単純接続、「あ代名が格助体修君、生き出でダ下二連用給へ補・ハ四命令尊→夕顔。

現代語訳気持ちの晴らしようもなくて、ひしと(夕顔を)抱いて、「いとしい人よ、生き返ってください。

やる方なし
気持ちを晴らしようがない。
つと
しっかりと。
あが君
私のいとしい人よ。
原文
いと副いみじきシク連体目な副見せサ下二連用給ひ補・ハ四連用尊→夕顔そ終助禁止。」と格助引用のたまへハ四已然尊→光源氏ど接助逆接確定、

現代語訳ひどく悲しい目にあわせないでください。」とおっしゃるけれど、

いみじ
ひどい。悲しい。
解説

「な〜そ」で禁止。「な見せ給ひそ」で、見せないでください。

原文
冷え入りラ四連用に完了連用たれ存続已然ば接助順接確定、けはひものうとくク連用なりゆくカ四終止。

現代語訳(夕顔の体は)すっかり冷えきってしまっているので、様子がだんだん気味悪く変わっていく。

けはひ
様子。
ものうとし
何となく気味が悪い。
解説

夕顔に、死相が現れてきたことを表している。

原文
右近は係助区別、ただ副あな感むつかしシク終止と格助引用思ひハ四連用ける過去連体心地みな副さめマ下二連用て接助単純接続、泣き惑ふハ四連体さまいと副いみじシク終止。

現代語訳右近は、ただもう気味が悪いと思っていた気持ちもすっかり消えて、取り乱して泣く様子はたいへんなものである。

むつかし
気味が悪い。
泣き惑ふ
取り乱して泣く。
解説

右近は、物の怪の気配を「気味が悪い」と思っていたが、夕顔が死んだことがはっきりすると、その気持ちも消えて、悲しみのあまり取り乱して泣くようになった。

原文
南殿なでんの格助体修鬼の格助主格、なにがし代名の格助体修大臣おとどおびやかしサ四連用ける過去連体たとひを格助対象思し出でダ下二連用尊→光源氏て接助単純接続、心強くク連用、

現代語訳(光源氏は)紫宸殿の鬼が、某大臣をおどしたという例をお思い出しになって、気を強くもって、

南殿
紫宸殿。宮中の正殿。
なにがし
だれそれ。名前をぼかす言い方。
心強し
気が強い。しっかりしている。
解説

「南殿の鬼の…たとひ」は、藤原忠平が紫宸殿で鬼に襲われたが、一喝して追い払ったという話(『大鏡』)。光源氏はこの話を思い出して、気を強くもとうとしている。

原文
「さりとも接、いたづらにナリ連用なり果てタ下二連用給は補・ハ四未然尊→夕顔じ打消推量終止。夜の格助体修声は係助区別おどろおどろしシク終止。あな感かまシク語幹。」と格助引用いさめマ下二連用給ひ補・ハ四連用尊→光源氏て接助単純接続、

現代語訳「まさか、このままお亡くなりになってしまうことはないだろう。夜の声は大げさに響く。しっ、静かに。」と(右近を)おしかりになって、

さりとも
いくらなんでも。
いたづらになる
死ぬ。
おどろおどろし
大げさだ。
あなかま
しっ、静かに。
いさむ
しかって止める。
解説

「さりとも」は、夕顔が冷えきって死相が現れてきたことを受けて、それでも、と言っている。光源氏は、夕顔が生き返ることを信じようとしている。

「いさめ給ひ」は、泣き惑う右近を光源氏が静かにさせたということ。

原文
いと副あわたたしきシク連体に格助原因、あきれラ下二連用たる存続連体心地しサ変連用給ふ補・ハ四終止尊→光源氏。

現代語訳あまりにも急なことなので、呆然とした気持ちがなさる。

あわたたし
突然だ。あわただしい。
あきる
途方に暮れる。呆然とする。
解説

右近をしかってはみたものの、光源氏自身も、あまりに突然のできごとに呆然としている。

前:夕顔① 夕顔②

源氏物語のほかの場面:桐壺①「いづれの御時にか」 若紫①「北山の垣間見」 車争い① 須磨①

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①御几帳
    ②長押
    ③持て来
    ④容貌
    ⑤南殿
    ⑥大臣

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    ①みきちょう
    ②なげし
    ③もてこ
    ④かたち
    ⑤なでん
    ⑥おとど

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①つつましさ
    ②むくつけけれ
    ③言ふかひなくなり
    ④むつかし
    ⑤いたづらになり
    ⑥おどろおどろし
    ⑦あなかま

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    ①遠慮
    ②気味が悪い
    ③死に
    ④気味が悪い
    ⑤死んで
    ⑥大げさだ
    ⑦しっ、静かに

B 文法・敬語

  1. 次の「に」を文法的に説明せよ。
    ①例ならぬことにて
    ②昔物語などにこそ
    ③いとめづらかに
    ④息はとく絶え果てにけり

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    ①断定の助動詞「なり」の連用形
    ②格助詞
    ③形容動詞「めづらかなり」の連用形の活用語尾
    ④完了の助動詞「ぬ」の連用形

  2. 次の助動詞の意味を答えよ。
    ①動くべきさまにもあらねば
    ②言はむ方なし
    ③頼もしきものには思すべけれど
    ④いたづらになり果て給はじ

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    ①可能
    ②婉曲
    ③当然
    ④打消推量

  3. 次の敬語について、種類を答え、だれからだれへの敬意かを示せ。
    ①召し寄せて
    ②身の上も知られ給はず
    ③生き出で給へ
    ④なり果て給はじ

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    ①尊敬語。作者から光源氏へ。
    ②尊敬語。作者から光源氏へ。
    ③尊敬語。光源氏から夕顔へ。
    ④尊敬語。光源氏から夕顔へ。

C 現代語訳・内容

  1. 「なほ持て来や。所に従ひてこそ」について、①現代語訳せよ。②光源氏が言いたいのはどのようなことか。

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    ①もっと(近くへ)持って来い。(遠慮も)場所によるものだ。
    ②遠慮も時と場所しだいで、今のような非常の時に遠慮などしなくてよいということ。

  2. 「召し寄せて見給へば」を、主語などを補って現代語訳せよ。

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    光源氏が、預かりの子を(紙燭とともに)そばに呼び寄せて、その明かりで夕顔をご覧になると。

  3. 「昔物語などにこそかかることは聞け」について、①「かかること」とはどのようなことか。②現代語訳せよ。

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    ①物の怪が現れること。
    ②昔物語などでは、このようなことを聞くけれども(現実に起こるとは思わなかった)。

  4. 「身の上も知られ給はず添ひ臥して」とは、だれのどのような様子か。

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    光源氏が、自分の身に何が起こるかも考えられないまま、夕顔に寄り添って横になっている様子。

  5. 「いといみじき目な見せ給ひそ」を現代語訳せよ。

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    ひどく悲しい目にあわせないでください。

  6. 「右近は、ただあなむつかしと思ひける心地みなさめて、泣き惑ふ」とあるが、右近の気持ちはどのように変わったか。

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    物の怪の気配を気味悪く思っていたが、夕顔が死んだことがはっきりして、その気持ちも消え、悲しみのあまり取り乱して泣くようになった。

  7. 「さりとも、いたづらになり果て給はじ」を現代語訳せよ。

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    まさか、このままお亡くなりになってしまうことはないだろう。