『伊勢物語』小野の雪 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 帰してもらえない翁
  4. 出家した親王を訪ねる
  5. テスト予想問題

『伊勢物語(いせものがたり)』第八十三段「小野の雪(おののゆき)」の現代語訳・品詞分解・解説です。

狩りから帰った惟喬親王(これたかのみこ)が、お供の翁(馬頭)をなかなか帰そうとしない前半と、出家した親王を、翁が雪深い小野に訪ねる後半からなる話です。だれの動作かという主語の判別、敬語の種類と敬意の方向、「枕とて」「忘れては」の二首の歌にこめられた気持ちがよく問われます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

帰してもらえない翁

原文
昔、水無瀬みなせに格助場所通ひハ四連用給ひ補・ハ四連用尊→惟喬親王し過去連体惟喬親王これたかのみこ、例の格助比喩狩りしサ変連用に格助目的おはしますサ四連体尊→惟喬親王供に格助資格、馬頭うまのかみなる断定連体翁仕うまつれラ四已然謙→惟喬親王り完了終止。

現代語訳昔、水無瀬の離宮へ通っておいでだった惟喬親王が、いつものとおり鷹狩りをしに出かけられるとき、そのお供として、右馬寮の長官である翁がお仕えしていた。

水無瀬(みなせ)
地名。惟喬親王の離宮があった。
例の
いつものように。
馬頭(うまのかみ)
馬寮(朝廷の馬を管理する役所)の長官。
翁(おきな)
老人。ここでは馬頭のこと。
解説

「例の」は、あとの「おはします」にかかる(いつものように、お出かけになる)。

「おはします」は「行く」の尊敬語で、作者から惟喬親王への敬意。「仕うまつれ」は謙譲語で、これも作者から親王への敬意。

原文
日ごろ経へハ下二連用て接助単純接続、宮に格助場所帰りラ四連用給う補・ハ四連用・音尊→惟喬親王けり過去終止。

現代語訳(親王は)何日かたって、(京の)御殿にお帰りになった。

日ごろ
数日。何日か。
宮
(京にある親王の)御殿。
解説

「帰り給う」の主語は惟喬親王。

原文
御送りしサ変連用て接助単純接続、疾とくク連用往いなナ変未然む意志終止と格助引用思ふハ四連体に接助逆接確定、

現代語訳(翁は親王を)お送りして、早く(自分の家へ)帰ろうと思うのに、

疾(と)し
早い。
往(い)ぬ
去る。帰る。
解説

「御送りして」の主語は翁。親王を京の御殿まで送り届け、そこから自分の家へ早く帰ろうと思ったのである。

「往なむ」は、ナ変動詞「往ぬ」の未然形「往な」+意志の助動詞「む」(帰ろう)。

原文
大御酒おおみき賜ひハ四連用尊→惟喬親王、禄ろく賜はハ四未然尊→惟喬親王む意志終止と格助引用て接助単純接続、遣はさサ四未然尊→惟喬親王ざり打消連用けり過去終止。

現代語訳(親王は)お酒をくださり、ほうびをくださろうというので、(翁を家に)お帰しにならなかった。

大御酒(おおみき)
お酒。「御酒」をさらに敬った言い方。
禄(ろく)
ほうび。
遣はす
(人を)おやりになる。ここでは、お帰しになる。
解説

「遣はさざりけり」は、親王が翁を(自宅へ)お帰しにならなかったということ。「遣はす」は尊敬語なので、主語は親王。

原文
こ代名の格助体修馬頭、心もとながりラ四連用て接助単純接続、

現代語訳この馬頭は、(帰りのお許しが)待ち遠しくて、

心もとながる
じれったく思う。待ち遠しく思う。
解説

翁がじれったく思ったのは、早く自分の家へ戻りたいのに、親王が引きとめて、帰るお許しをくださらないから。

原文
枕と格助引用て接助単純接続草ひき結ぶバ四連体ことも係助強意せサ変未然じ打消意志終止秋の格助体修夜と格助引用だに副助類推頼まマ四未然れ可能未然な打消未然くに格助原因

現代語訳枕にしようと草を引き結ぶこと(=旅寝)もいたしますまい。(夜の長い)秋の夜でさえあてにできないのですから(まして短い春の夜は、なおさらあてにできません)。

草ひき結ぶ
草を結んで枕にすること。旅先で寝ること(旅寝)をいう。
頼む(四段)
あてにする。
解説

「せじ」で切れる三句切れの歌。

「だに」は類推(〜さえ)。夜の長い秋の夜でさえあてにできないのだから、まして夜の短い春の夜はなおさらだ、ということ。

今夜はここに泊まらず、帰らせていただきたいという気持ちを、親王に伝えている。

原文
と格助引用詠みマ四連用ける過去連体。時は係助区別三月やよいの格助体修つごもりなり断定連用けり過去終止。

現代語訳と詠んだ。時は(陰暦)三月の末であった。

三月(やよい)
陰暦の三月。春の終わり。
つごもり
月の末。
解説

三月の末は、夜の短い春の終わり。歌の「秋の夜とだに頼まれなくに」と結びついている。

現代語訳親王は、おやすみにならずに(翁をそばに置いたまま)夜をお明かしになってしまった。

大殿籠(おおとのごも)る
おやすみになる(「寝」の尊敬語)。
解説

親王は、翁をそばに引きとめたまま、一晩中起きて夜を明かした。それほど翁と過ごしたかったのである。

出家した親王を訪ねる

現代語訳こうして(翁は)たびたび親王のもとへ参上してお仕えしていたが、思いもよらないことに、(親王は)髪をおろして出家なさってしまった。

まうづ
参上する(「行く」の謙譲語)。
思ひのほかに
思いがけず。
御髪(みぐし)下ろす
髪を剃って出家する。
解説

「まうで仕うまつりける」の主語は翁、「御髪下ろし給うてけり」の主語は親王。

この文から、親王が出家したあとの話になる。

原文
正月むつきに格助時間拝おがみマ四連用奉ら補・ラ四未然謙→惟喬親王む意志終止と格助引用て接助単純接続、小野に格助場所まうでダ下二連用謙→惟喬親王たる完了連体に接助単純接続、比叡の山ひえいのやまの格助体修麓なれ断定已然ば接助順接確定、雪いと副高しク終止。

現代語訳正月に(親王に)お目にかかろうと思って、小野に参上したところ、(そこは)比叡山のふもとなので、雪がたいそう高く積もっている。

正月(むつき)
陰暦の一月。
拝む
(貴人に)お目にかかる。
小野
比叡山のふもとの地。出家した親王が住んでいた。
解説

「拝み奉らむ」の主語は翁で、お目にかかる相手は親王。「奉ら」は謙譲の補助動詞。

原文
強ひしいて副御室みむろに格助場所まうでダ下二連用謙→惟喬親王て接助単純接続拝みマ四連用奉る補・ラ四連体謙→惟喬親王に接助順接確定、つれづれと副いと副もの悲しくシク連用て接助状態おはしまし補・サ四連用尊→惟喬親王けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳(雪の中を)無理をして(親王の)御庵室に参上してお目にかかると、(親王は)することもなく、たいそうもの悲しいご様子でいらっしゃったので、

強ひて
無理に。
御室(みむろ)
(出家した親王の)御庵室。
つれづれと
することもなく。所在なく。
解説

「強ひて」は、前の「雪いと高し」を受けて、雪が深いのに無理をして、ということ。

「つれづれといともの悲しくて」は、出家して訪ねる人もなく、寂しく暮らしている親王の様子。

原文
やや副久しくシク連用候ひさぶらいハ四連用謙→惟喬親王て接助単純接続、いにしへの格助体修ことなど副助例示思ひ出でダ下二連用聞こえヤ下二連用謙→惟喬親王けり過去終止。

現代語訳(翁は)ずいぶん長い時間おそば近くにひかえて、昔のできごとなどを思い出しては親王にお話し申し上げた。

やや
かなり。
候(さぶら)ふ
(貴人の)おそばにお仕えする(謙譲語)。
聞こゆ
申し上げる(「言ふ」の謙譲語)。
原文
さても副候ひハ四連用謙→惟喬親王てしがな終助願望と格助引用思へハ四已然ど接助逆接確定、公事おおやけごとどもありラ変連用けれ過去已然ば接助順接確定、え副候はハ四未然謙→惟喬親王で接助打消接続、夕暮れに格助時間帰るラ四終止と格助引用て接助単純接続、

現代語訳できるなら、このままずっとおそばでお仕えしていたいと思ったが、宮中の公の行事がいくつもあったので、とどまってお仕えすることができずに、夕暮れに帰ろうというときに、

さても
そのまま。
てしがな
〜したいものだ(自分の願望)。
公事(おおやけごと)
宮中の公務・儀式。
え〜で
〜できないで。
解説

「さても候ひてしがな」は、京へ帰らずに、このまま出家した親王のおそばにお仕えしていたい、ということ。

そう思いながらも帰ったのは、宮中の公務がいくつもあったから。

原文
忘れラ下二連用て接助単純接続は係助強調夢か係助疑問と格助引用ぞ係助強意思ふハ四連体思ひハ四連用き過去終止や係助反語雪踏み分けカ下二連用て接助単純接続君を格助対象見マ上一未然む推量終止と格助引用は係助強調

現代語訳(親王がご出家なさったという現実を)ふと忘れると、これは夢なのかと思ってしまいます。かつて思ったでしょうか、いいえ思いもしませんでした。深い雪を踏み分けて、わが君にお目にかかることになろうとは。

解説

「忘れては」は、親王が出家して雪深い山里に暮らしているという現実を、ふと忘れては、ということ。

「ぞ」の結びは「思ふ」(連体形)。「思ひきや」の「や」は反語で、「思っただろうか、いや思いもしなかった」。

倒置になっていて、ふつうの順なら「雪踏み分けて君を見むとは思ひきや」。皇位につくはずだった親王の、あまりにいたわしい境遇を嘆く気持ちを詠んでいる。

原文
と格助引用て接助単純接続なむ係助強意、泣く泣く副来きカ変連用に完了連用ける過去連体。

現代語訳と詠んで、泣きながら(京へ)帰って来たのだった。

泣く泣く
泣きながら。
解説

「なむ」の結びは「ける」(連体形)。

翁が泣いたのは、出家して寂しく暮らす親王の身の上を、いたわしく思ったから。

『伊勢物語』のほかの章段:初冠 / 月やあらぬ / 東下り① / 東下り② / 狩りの使ひ / 関守・つひにゆく道 / 渚の院

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①水無瀬
    ②馬頭
    ③大御酒
    ④禄
    ⑤三月(月の異名で)
    ⑥正月(月の異名で)
    ⑦御髪
    ⑧御室
    ⑨公事

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    ①みなせ
    ②うまのかみ
    ③おおみき
    ④ろく
    ⑤やよい
    ⑥むつき
    ⑦みぐし
    ⑧みむろ
    ⑨おおやけごと

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①例の
    ②日ごろ
    ③疾く
    ④心もとながる
    ⑤つごもり
    ⑥思ひのほかに
    ⑦つれづれと
    ⑧さても

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    ①いつものように
    ②数日・何日か
    ③早く
    ④じれったく思う・待ち遠しく思う
    ⑤月末
    ⑥思いがけず
    ⑦することもなく・所在なく
    ⑧そのまま

B 文法

  1. 次の傍線部を文法的に説明せよ。
    ①通ひ給ひ【し】惟喬親王
    ②翁仕うまつれ【り】
    ③疾く【往なむ】と思ふに
    ④草ひき結ぶこともせ【じ】
    ⑤明かし給う【て】けり

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    ①「き」(過去)の連体形
    ②「り」(完了)の終止形
    ③「往な」はナ変動詞「往ぬ」の未然形、「む」は意志の助動詞の終止形
    ④「じ」(打消意志)の終止形
    ⑤「つ」(完了)の連用形

  2. 次の傍線部の敬語の種類と、だれからだれへの敬意かを答えよ。
    ①狩りしに【おはします】
    ②翁【仕うまつれ】り
    ③【遣はさ】ざりけり
    ④【大殿籠ら】で
    ⑤拝み【奉ら】む
    ⑥思ひ出で【聞こえ】けり

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    ①尊敬語
    ②謙譲語
    ③尊敬語
    ④尊敬語
    ⑤謙譲語(補助動詞)
    ⑥謙譲語。どれも作者から惟喬親王への敬意。

  3. 「枕とて草ひき結ぶこともせじ秋の夜とだに頼まれなくに」について、①「草ひき結ぶ」とは、何をすることか。②「だに」の意味を答え、「秋の夜」から何を類推させているか説明せよ。③この歌で翁が親王に伝えたかったことは何か。

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    ①旅先で寝ること(旅寝)。②類推(〜さえ)。夜の長い秋の夜でさえあてにできないのだから、まして夜の短い春の夜はなおさらあてにできない、ということを類推させている。③今夜は泊まらずに、早く家へ帰らせていただきたいということ。

C 現代語訳・内容

  1. 「大御酒賜ひ、禄賜はむとて、遣はさざりけり」について、だれが、だれを、どうしなかったのか説明せよ。また、それを受けて馬頭が「心もとながりて」いるのはなぜか。

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    惟喬親王が、翁(馬頭)を自宅へ帰らせなかった。翁は早く家へ戻りたいのに、親王が引きとめて帰してくれないから。

  2. 「親王、大殿籠らで明かし給うてけり」を現代語訳せよ。また、親王がそうしたのはなぜだと考えられるか。

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    訳=親王は、おやすみにならずに夜をお明かしになってしまった。理由=翁をそばに引きとめて、一晩中いっしょに過ごしたかったから。

  3. 「かくしつつまうで仕うまつりけるを、思ひのほかに、御髪下ろし給うてけり」について、①「御髪下ろし」とはどうすることか。②この文を境にして、話の内容はどう変わるか。

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    ①髪を剃って出家すること。②前半は親王が出家する前のできごと、ここから後は、出家した親王を翁が訪ねる話になる。

  4. 「さても候ひてしがなと思へど、公事どもありければ、え候はで」を現代語訳せよ。また、翁にそう思わせた親王のご様子を説明せよ。

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    訳=このままずっとおそばでお仕えしていたいと思ったが、宮中の公の行事がいくつもあったので、とどまってお仕えすることができずに。様子=出家した親王が、することもなく、たいそうもの悲しげに暮らしていらっしゃったから。

  5. 「忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや雪踏み分けて君を見むとは」について、①「忘れては」とは、何を忘れるのか。②「思ひきや雪踏み分けて君を見むとは」を、倒置をふつうの順に戻して現代語訳せよ。③この歌にこめられた翁の気持ちを説明せよ。

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    ①親王が出家して、雪深い小野に暮らしているという現実。②雪を踏み分けてわが君にお目にかかろうとは、思っただろうか、いや思いもしなかった。③皇位につくはずだった親王が、出家して雪深い山里に寂しく暮らしているという、あまりにいたわしい境遇を嘆く気持ち。