『堤中納言物語』虫めづる姫君① 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 虫をめでる姫君
  4. こわがる女房たち
  5. テスト予想問題

『堤中納言物語(つつみちゅうなごんものがたり)』「虫めづる姫君」①の現代語訳・品詞分解・解説です。

花や蝶ではなく、恐ろしげな毛虫をかわいがる按察使の大納言の姫君の話です。①では、姫君の「本地をたずねることこそ大切だ」という主張と、眉も抜かずお歯黒もつけない風変わりなふるまい、こわがる女房たちの様子が描かれます。同格の「の」、係り結び、姫君の考えがよく問われます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

虫をめでる姫君

原文
蝶めづるダ下二連体姫君の格助主格住みマ四連用給ふ補・ハ四連体尊→蝶めづる姫君かたはらに格助場所、按察使の大納言あぜちのだいなごんの格助体修御むすめ、

現代語訳蝶を愛する姫君のお住まいの隣に、按察使の大納言のお嬢様が(お住みになっていて)、

めづ
かわいがる、愛する。
按察使(あぜち)の大納言
按察使を兼ねている大納言。
解説

冒頭に、ふつうの姫君である「蝶めづる姫君」を出すことで、虫をかわいがる大納言の姫君の風変わりなところをきわだたせている。

「御むすめ、」のあとには「住み給へり」などが省かれている。

原文
心にくくク連用なべて副なら断定未然ぬ打消連体さまに断定連用、親たちかしづきカ四連用給ふ補・ハ四連体尊→親たちこと限りなしク終止。

現代語訳(その姫君を)奥ゆかしく並ひととおりでない様子に、親たちが大切に育てていらっしゃることはこのうえない。

心にくし
奥ゆかしい、心ひかれる。
なべてならず
並ひととおりでない。
かしづく
大切に育てる。
原文
こ代名の格助体修姫君の格助主格のたまふハ四連体尊→姫君こと、「人々の格助主格、花、蝶や間助呼びかけと格助引用めづるダ下二連体こそ係助強意、はかなくク連用あやしけれシク已然。

現代語訳この姫君がおっしゃることには、「世間の人たちが、花よ蝶よとかわいがるのは、浅はかでわけのわからないことです。

のたまふ
「言ふ」の尊敬語。
はかなし
ここは、浅はかだ。
あやし
ここは、わけがわからない、不思議だ。
解説

姫君は、世間の人が花や蝶をかわいがるのを、浅はかでわけのわからないことだと思っている。

原文
人は係助区別、まことありラ変連用、本地ほんぢたづねナ下二連用たる存続連体こそ係助強意、心ばへをかしけれシク已然。」と格助引用て接助単純接続、

現代語訳人は誠実な心があって、物事の本来の姿を追い求めているのこそ、心のあり方として趣深いのです。」と言って、

まこと
誠実さ。
本地(ほんぢ)
もとは仏の本来の姿のこと。ここは、物の本体、本来の姿。
心ばへ
心のあり方、心だて。
解説

「人は、まことあり、本地たづねたるこそ、心ばへをかしけれ」は、姫君の考えがもっともよく表れた一文。見た目の美しさではなく、物の本来の姿を追い求めることこそすばらしい、という主張。

「こそ」の結びは「をかしけれ」(已然形)。

原文
よろづの格助体修虫の格助同格、恐ろしげなるナリ連体を格助対象取り集めマ下二連用て接助単純接続、「これ代名が格助主格、成らラ四未然む婉曲連体さまを格助対象見マ上一未然む意志終止。」と格助引用て接助単純接続、さまざまなるナリ連体籠箱こばこどもに格助場所入れラ下二未然させ使役連用給ふ補・ハ四終止尊→姫君。

現代語訳いろいろな虫で、恐ろしそうなものを取り集めて、「これが成長して変わっていく様子を見よう。」と言って、さまざまな虫かごに(虫を)入れさせなさる。

恐ろしげなり
恐ろしそうだ。
籠箱(こばこ)
虫を入れておく箱。虫かご。
解説

「よろづの虫の、恐ろしげなる」の「の」は同格。「いろいろな虫で、恐ろしそうな虫」。

「これ」は、集めたいろいろな恐ろしそうな虫。

「成らむ」の「む」は婉曲、「見む」の「む」は意志。毛虫などが成長して姿を変えていく様子を観察しようとしている。

原文
中に格助場所も係助強意、「かは虫むしの格助主格、心深きク連体さましサ変連用たる存続連体こそ係助強意心にくけれク已然。」と格助引用て接助単純接続、

現代語訳中でも、「毛虫が、思慮深そうな様子をしているのが奥ゆかしい。」と言って、

かは虫
毛虫。
心深し
思慮深い。
心にくし
奥ゆかしい。
解説

「こそ」の結びは「心にくけれ」(已然形)。

原文
明け暮れは係助区別、耳みみはさみを格助対象しサ変連用て接助単純接続、手の格助体修裏に格助場所添へ臥せサ下二連用て接助単純接続、まぼりラ四連用給ふ補・ハ四終止尊→姫君。

現代語訳朝から晩まで、(額髪を)耳にはさんで、(毛虫を)手のひらにのせてはわせ、じっと見つめていらっしゃる。

明け暮れ
朝晩、いつも。
耳はさみ
額髪を耳の後ろにかきあげてはさむこと。品のない姿とされた。
添へ臥す
寄りそわせて寝かせる。ここは、手のひらに毛虫をはわせる。
まぼる
じっと見つめる。
解説

耳はさみをし、毛虫を手にのせて見つめるのは、高貴な姫君にはふさわしくないふるまい。

こわがる女房たち

原文
若きク連体人々は係助区別、怖ぢ惑おぢまどひハ四連用けれ過去已然ば接助順接確定、男の格助体修童わらはの格助同格、もの怖おぢせサ変未然ず打消連用、言ふかひなきク連体を格助対象召し寄せサ下二連用て接助単純接続、

現代語訳若い女房たちは怖がってうろたえたので、男の子の召使いで、物おじせず、身分の低い者を呼び寄せて、

若き人々
若い女房たち。
怖ぢ惑ふ
こわがってうろたえる。
言ふかひなし
取るに足りない、身分が低い。
解説

「男の童の、もの怖ぢせず、言ふかひなきを」の「の」は同格。「男の童で、物おじせず、身分の低い(童)を」。

姫君が男の童を召し寄せたのは、女房たちが虫をこわがるので、虫をこわがらずに世話をしてくれる者が必要だったから。

原文
箱の格助体修虫どもを格助対象取らラ四未然せ使役連用、名を格助対象問ひ聞きカ四連用、いま副新しきシク連体に格助対象は係助区別名を格助対象つけカ下二連用て接助単純接続、興じサ変連用給ふ補・ハ四終止尊→姫君。

現代語訳箱の虫たちを取り出させては、その名を問いただし、まだ名のない新しい虫には自分で名をつけて、楽しんでいらっしゃる。

問ひ聞く
たずねて聞く。
興ず
おもしろがる。
原文
「人は係助区別すべて副、つくろふハ四連体ところあるラ変連体は係助区別わろしク終止。」と格助引用て接助単純接続、眉さらに副抜きカ四連用給は補・ハ四未然尊→姫君ず打消連用、

現代語訳「人は何事も、とりつくろうところがあるのはよくない。」と言って、眉をまったく抜きなさらず、

つくろふ
(姿を)とりつくろう。化粧などをする。
わろし
よくない。
さらに〜ず
まったく〜ない。
解説

当時の成人の女性は眉を抜いて眉墨でかいたが、姫君は「とりつくろうのはよくない」という考えから、眉を抜かない。

原文
歯黒はぐろめ、「さらに副うるさしク終止、きたなしク終止。」と格助引用て接助単純接続、つけカ下二連用給は補・ハ四未然尊→姫君ず打消連用、

現代語訳お歯黒は、「まったくわずらわしい、きたない。」と言って、おつけにならず、

歯黒め
お歯黒。歯を黒く染めること。
うるさし
わずらわしい、面倒だ。
解説

同じ考えから、お歯黒もつけない。

原文
いと副白らかにナリ連用笑みマ四連用つつ接助並列、こ代名の格助体修虫どもを格助対象、朝夕あさゆふべに格助時間愛しサ変連用給ふ補・ハ四終止尊→姫君。

現代語訳(染めていない)真っ白な歯を見せて笑いながら、この虫たちを朝に夕にかわいがっていらっしゃる。

白らかなり
白い。
愛す
かわいがる。
解説

「いと白らかに笑みつつ」は、お歯黒をつけていないので、真っ白な歯を見せて笑う様子。

あとの「いと眉黒にて」と対になる表現。

原文
人々怖おぢわびバ上二連用て接助単純接続逃ぐれガ下二已然ば接助順接確定、そ代名の格助体修御方は係助区別、いと副あやしくシク連用なむ係助強意ののしりラ四連用ける過去連体。

現代語訳女房たちがこわがって困りはてて逃げるので、その姫君のお部屋では、ひどくとんでもない大騒ぎになった。

怖ぢわぶ
こわがって困りはてる。
ののしる
大声で騒ぐ。
解説

「その御方」は、姫君のいるところ(お部屋)。

「なむ」の結びは「ける」(連体形)。

原文
かく副怖おづるダ上二連体人を格助対象ば係助区別、「けしからシク未然ず打消連用、はうぞくなりナリ終止。」と格助引用て接助単純接続、いと副眉黒まゆぐろにナリ連用て接助単純接続なむ係助強意にらみマ四連用給ひ補・ハ四連用尊→姫君ける過去連体に接助順接確定、いとど副心地なむ係助強意惑まどひハ四連用ける過去連体。

現代語訳こんなふうにこわがる女房を、「けしからん、品がない。」と言って、抜いていない真っ黒な眉でにらみつけなさるので、(女房たちは)いっそう取り乱してしまった。

けしからず
けしからん、よくない。
はうぞくなり
ぶしつけだ、下品だ。「ばうぞく」と読む説もある。
眉黒なり
眉が黒々としている。
いとど
ますます、いっそう。
解説

「眉黒にてなむにらみ給ひけるに」は、「なむ」の結びになるはずの「ける」のあとに「に」が続いているので、結びが流れている(結びの消滅)。

「惑ひける」の主語は若き人々(女房たち)。

「いとど」とあるのは、女房たちが、恐ろしい毛虫にうろたえていたうえに、毛虫のように黒々とした眉の姫君ににらまれて、さらにどうしてよいかわからなくなったから。

続き:『堤中納言物語』虫めづる姫君②

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①按察使
    ②本地
    ③籠箱
    ④怖ぢ惑ひ
    ⑤歯黒め
    ⑥眉黒

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    ①あぜち
    ②ほんじ
    ③こばこ
    ④おじまどい
    ⑤はぐろめ
    ⑥まゆぐろ

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①めづ
    ②心にくし
    ③なべてならず
    ④はかなし
    ⑤まぼる
    ⑥言ふかひなし
    ⑦興ず
    ⑧わろし
    ⑨いとど

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    ①かわいがる
    ②奥ゆかしい
    ③並ひととおりでない
    ④浅はかだ
    ⑤じっと見つめる
    ⑥取るに足りない・身分が低い
    ⑦おもしろがる
    ⑧よくない
    ⑨ますます・いっそう

B 文法

  1. 「男の童の、もの怖ぢせず、言ふかひなきを召し寄せて」について、①「の」の用法を答えよ。②本文中から、①と同じ用法の「の」を含む部分を抜き出せ。③全体を現代語訳せよ。

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    ①同格の格助詞
    ②よろづの虫の、恐ろしげなる(を)
    ③男の童で、物おじせず、身分の低い者を呼び寄せて

  2. 「これが、成らむさまを見む」について、①「これ」の指す内容を本文中から抜き出せ。②二つの「む」の意味をそれぞれ答えよ。③全体を現代語訳せよ。

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    ①よろづの虫の、恐ろしげなる
    ②成らむ=婉曲、見む=意志
    ③これが成長して姿を変えていく様子を見よう。

  3. 次の各文の係助詞と、その結びの語を答えよ。結びがない場合は、その理由を答えよ。
    ①「本地たづねたるこそ、心ばへをかしけれ」
    ②「その御方は、いとあやしくなむののしりける」
    ③「いと眉黒にてなむにらみ給ひけるに」

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    ①係助詞=こそ、結び=をかしけれ
    ②係助詞=なむ、結び=ける
    ③係助詞=なむ。結びになるはずの「ける」のあとに接続助詞「に」が続いて文が終わらないので、結びが流れている(結びの消滅)。

C 内容

  1. 冒頭で、主人公の姫君の前に「蝶めづる姫君」を登場させているのはなぜか。

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    花や蝶をかわいがるふつうの姫君を先に出すことで、虫をかわいがる按察使の大納言の姫君の風変わりなところを、対比してきわだたせるため。

  2. 姫君は、世間の人が花や蝶をかわいがることをどう思っているか。また、姫君の考えがもっともよく表れている一文を抜き出し、現代語訳せよ。

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    思い=浅はかで、わけのわからないことだと思っている。一文=「人は、まことあり、本地たづねたるこそ、心ばへをかしけれ。」訳=人は誠実な心があって、物事の本来の姿を追い求めているのこそ、心のあり方として趣深いのです。

  3. 「人はすべて、つくろふところあるはわろし」という姫君の考えは、どのような行動に表れているか。当時の女性のふつうの身だしなみと比べて説明せよ。

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    当時の成人の女性は眉を抜いて眉墨でかき、歯をお歯黒で黒く染めていたが、姫君は眉をまったく抜かず、お歯黒もつけなかった(そのため、真っ白な歯を見せて笑っていた)。

  4. 「いとど心地なむ惑ひける」について、①主語を本文中から抜き出せ。②「いとど」とあるのはなぜか、説明せよ。

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    ①若き人々
    ②恐ろしい毛虫にうろたえていたうえに、毛虫のように黒々とした眉の姫君ににらまれて、さらにどうしてよいかわからなくなったから。

  5. 姫君が男の童を召し寄せたのはなぜか。

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    若い女房たちが虫をこわがってうろたえるので、物おじせずに虫を扱える者に、虫の世話をさせるため。