『大鏡』貫之と躬恒 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 貫之の歌
  4. 躬恒の歌
  5. 繁樹の感想
  6. テスト予想問題

『大鏡(おおかがみ)』「貫之と躬恒(つらゆきとみつね)」の現代語訳・品詞分解・敬語・解説です。

『古今和歌集』が選ばれていたころ、醍醐天皇に召された紀貫之と凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)が、その場で見事な歌を詠んだという話です。身分の低い躬恒を近くに召して褒美を与えた帝と、それに歌で応えた躬恒のやりとりが語られます。主語と敬語の向き、二首の歌の掛詞、「さばかりの者」がだれのことかがよく問われます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

貫之の歌

原文
延喜えんぎの格助体修御時おほんときに格助時間『古今こきん』抄せうせサ変未然られ尊敬連用し過去連体折をり、貫之つらゆきは係助区別さらなりナリ連用、忠岑ただみねや間助並列躬恒みつねなど副助例示は係助区別、御書所ごしよどころに格助場所召めさサ四未然尊→帝れ受身連用て接助単純接続候さぶらひハ四連用謙→帝ける過去連体ほどに格助時間、

現代語訳(醍醐天皇の)延喜の御代に『古今和歌集』をお選びになったころ、貫之は言うまでもなく、忠岑や躬恒なども、御書所に呼び出されてお仕えしていたときに、

延喜の御時
醍醐天皇の御代。
『古今』
『古今和歌集』。
抄す
(多くの歌から)選び出す。
さらなり
言うまでもない。もちろんだ。
御書所(ごしよどころ)
宮中の書物を管理する所。
解説

ここから最後の「思ひ給へしか」までが夏山繁樹の語り。地の文の敬語は繁樹からの敬意になる。

「召されて」は、尊敬語「召す」に受身の「る」が付いた形。貫之たちが(帝に)呼び出されて、ということ。

原文
四月二日しぐわつふつかなり断定連用しか過去已然ば接助順接確定、まだ副忍び音しのびねの格助体修ころに断定連用て接助単純接続、いみじくシク連用興きようじサ変連用おはします補・サ四終止尊→帝。

現代語訳(その日は)四月二日だったので、(ほととぎすは)まだ声をひそめて鳴く時期で、(帝は)たいそうおもしろがっていらっしゃいます。

忍び音(しのびね)
ほととぎすが声をひそめて鳴く、その年のはじめの鳴き声。
興ず
おもしろがる。
解説

「いみじく興じおはします」の主語は帝。ほととぎすが盛んに鳴くのはふつう五月なので、四月二日の忍び音はめずらしく、趣深いものとされていた。

原文
貫之つらゆき召し出めしいでダ下二連用尊→帝て接助単純接続、歌仕つかうまつらラ四未然謙→帝しめ使役連用給たまへ補・ハ四已然尊→帝り完了終止。

現代語訳(帝は)貫之をお呼び出しになって、歌を詠んで差し上げさせなさった。

召し出づ
お呼び出しになる。
仕うまつる
ここでは「詠む」の謙譲語。お詠み申し上げる。
解説

主語は帝。「しめ」は使役で、帝が貫之に歌を詠ませた。「給へ」は四段活用の尊敬の補助動詞。

原文
こと夏なつは係助区別いかが副鳴きカ四連用けむ過去推量連体ほととぎすこ代名の格助体修宵よひばかり副助程度あやしきシク連体ぞ係助強意なきク連体

現代語訳ほかの年の夏は、どんなふうに鳴いていたのだろうか、ほととぎすは。今夜ほど、不思議なほど心ひかれる(鳴き声の)ことはない。

こと夏
ほかの年の夏。
あやし
不思議だ。ここでは、不思議なほど心ひかれる。
解説

三句切れで、「ほととぎす」は倒置になっている。帝が興じている今夜のほととぎすの声を、これまでにないすばらしさだとほめた歌。

躬恒の歌

原文
それ代名を格助対象だに副助類推けやけきク連体ことに格助状態思ひハ四連用給たまへ補・ハ下二連用謙→聞き手し過去連体に接助逆接確定、

現代語訳そのこと(貫之の歌)でさえ、見事なことだと存じておりましたのに、

けやけし
際立っている。すばらしい。
解説

「それ」は、貫之が詠んだ「こと夏は」の歌のこと。「だに」は類推で、それでさえすばらしいと思ったのに(次の躬恒の話はなおさらだ)と続く。

「思ひ給へ」の主語は繁樹。「給へ」は下二段活用の謙譲の補助動詞で、繁樹から聞き手への敬意を表す。

原文
同じシク連体御時おほんとき、御遊おほんあそびありラ変連用し過去連体夜よ、御前おまへの格助体修御階みはしの格助体修もとに格助場所躬恒みつねを格助対象召めしサ四連用尊→帝て接助単純接続、

現代語訳同じ(帝の)御代に、管弦のお遊びがあった夜、(帝が)御前の階段の下に躬恒をお呼びになって、

御遊び
管弦の遊び。
御階(みはし)
御殿に上る階段。
解説

躬恒が階段の下に召されたのは、身分が低く、殿上に上がることを許されていなかったから。

原文
「月を格助対象弓張ゆみはりと格助引用いふハ四連体心は係助区別何なに代名の格助体修心ぞ係助強意。これ代名が格助体修由よし仕つかうまつれラ四命令謙→帝。」と格助引用仰せ言おほせごとありラ変連用しか過去已然ば接助順接確定、

現代語訳「月を弓張というのは、どういう意味か。そのわけを歌に詠め。」とご命令があったので、

弓張
弓張月。弓を張ったような形の半月。
心
意味。わけ。
由(よし)
理由。わけ。
仰せ言
天皇のご命令。
解説

帝の言葉。「これが由」の「これ」は、月を弓張ということ。「仕うまつれ」は「(そのわけを)歌に詠め」という命令。

「仕うまつれ」は謙譲語だが、帝が自分への敬意を表すために使っている(自敬表現)。

原文
照てるラ四連体月を格助対象弓張ゆみはりと格助引用し副助強意も係助強意いふハ四連体ことは係助区別山辺やまべを格助対象さしサ四連用て接助単純接続いれラ四已然ば接助順接確定なり断定連用けり詠嘆終止

現代語訳照る月を弓張と言うのは、山のあたりをめがけて、(弓で矢を)射るように(月が)入っていくからなのだなあ。

山辺(やまべ)
山のあたり。
解説

「いれ」は「入れ(月が山に入る)」と「射れ(矢を射る)」の掛詞。月が山のあたりをめがけて沈んでいくのを、弓で矢を射るようすに見立て、弓張と呼ぶわけを答えている。

原文
と格助引用申まうしサ四連用謙→帝たる完了連体を格助対象、いみじうシク連用・音感かんぜサ変未然させ尊敬連用給たまひ補・ハ四連用尊→帝て接助単純接続、大袿おほうちき賜たまひハ四連用尊→帝て接助単純接続、肩かたに格助対象うち掛かくるカ下二連体ままに格助状態、

現代語訳と申し上げたところ、(帝は)たいそう感心なさって、大袿をお与えになり、(躬恒は)それを肩に掛けるとすぐに、

大袿(おほうちき)
褒美として与えるため、大きめに仕立てた袿。
賜ふ
「与ふ」の尊敬語。お与えになる。
ままに
〜するとすぐに。
解説

「申し」「うち掛くる」の主語は躬恒、「感ぜさせ給ひ」「賜ひ」の主語は帝。「させ」は尊敬で、「させ給ひ」は最高敬語。

原文
白雲しらくもの格助主格こ代名の格助体修かたに格助場所し副助強意も係助強意おりゐるワ上一連体は係助区別天あまつ格助体修風かぜこそ係助強意吹きカ四連用て接助単純接続きカ変連用ぬ完了終止らし推定已然

現代語訳白雲がこちらのほうに下りてとどまっているのは、空を吹く風が吹いてきたからに違いない。(白い大袿がこの私の肩にかかっているのは、帝のお恵みによるものなのでしょう。)

天つ風
空を吹く風。
解説

「白雲」は白い大袿、「天つ風」は帝のお恵みをたとえている。肩に掛けた大袿を、帝のもとから下りてきた白雲に見立てて、お礼の気持ちを詠んだ歌。

掛詞は、「かた」=方・肩、「おり」=下り・織り、「きぬ」=来ぬ・着ぬ。「白雲」と「天つ風」は空に関わる縁語、「織り」と「着」は衣に関わる縁語。

繁樹の感想

原文
いみじかりシク連用し過去連体ものかな終助詠嘆。

現代語訳すばらしかったことですよ。

解説

「いみじかりしものかな」は、帝の躬恒への扱いと、それに即座に歌で応えた躬恒の歌のうまさを、繁樹がほめている言葉。

原文
さ副ばかり副助程度の格助体修者に格助対象、近うク連用・音召し寄めしよせサ下二連用尊→帝て接助単純接続勅禄ちよくろく賜たまはすサ下二終止尊→帝べき当然連体ことなら断定未然ね打消已然ど接助逆接確定、

現代語訳(帝が)あれほどの(低い身分の)者を、近くにお呼び寄せになって、ご褒美をお与えになるはずのことではないけれども、

さばかり
それほど。その程度。
勅禄(ちよくろく)
天皇からの褒美。
賜はす
お与えになる。
解説

「さばかりの者」は躬恒のこと。帝が近くに呼び寄せて、じきじきに褒美を与えるような身分ではない、身分の低い者ということ。

原文
そしりラ四連用申まうす補・サ四連体謙→帝人の格助主格なきク連体も係助強意、君の格助主格重おもくク連用おはしまし補・サ四連用尊→帝、また接躬恒みつねが格助主格和歌わかの格助体修道に格助場所許ゆるさサ四未然れ受身連用たる存続連体と格助引用こそ係助強意、思ひハ四連用給たまへ補・ハ下二連用謙→聞き手しか過去已然。

現代語訳(それを)非難申し上げる人がいないのも、帝が重々しくていらっしゃり、また躬恒が和歌の道で(大家と)認められていたからだと存じました。

そしる
非難する。
重し
重々しい。威厳がある。
許す
(世間が)認める。
解説

非難する人がいなかった理由は、帝が重々しい方であったことと、躬恒が和歌の道で(大家として)認められていたことの二つ。

『大鏡』のほかの話:鶯宿梅 / 雲林院の菩提講① / 三舟の才 / 弓争ひ / 花山天皇の出家① / 道真左遷① / 道真左遷② / 道長の豪胆(肝試し) / 時平の大臣 / 最後の除目 / 宣耀殿の女御

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①忍び音
    ②弓張
    ③大袿
    ④御階
    ⑤勅禄
    ⑥天つ風
    ⑦山辺

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    ①しのびね
    ②ゆみはり
    ③おおうちき
    ④みはし
    ⑤ちょくろく
    ⑥あまつかぜ
    ⑦やまべ

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①さらなり
    ②興ず
    ③けやけし
    ④(御)遊び
    ⑤由
    ⑥ままに
    ⑦そしる

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    ①言うまでもない・もちろんだ
    ②おもしろがる
    ③際立っている・すばらしい
    ④管弦の遊び
    ⑤理由・わけ
    ⑥〜するとすぐに
    ⑦非難する

B 文法・敬語

  1. 次の助動詞の意味と活用形を答えよ。
    ①『古今』抄せ「られ」し折
    ②歌仕うまつら「しめ」給へ「り」
    ③いかが鳴き「けむ」
    ④いればなり「けり」
    ⑤吹きてき「ぬ」「らし」

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    ①尊敬・連用形
    ②しめ=使役・連用形 り=完了・終止形
    ③過去推量・連体形
    ④詠嘆・終止形
    ⑤ぬ=完了・終止形 らし=推定・已然形

  2. ①次の助詞の用法を答えよ。
    「この宵ばかり」の「ばかり」 「それをだに」の「だに」 「このかたにしも」の「し」
    ②「あやしきぞなき」「天つ風こそ吹きてきぬらし」「許されたるとこそ、思ひ給へしか」の係り結びについて、結びの語とその活用形を答えよ。

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    ①ばかり=程度 だに=類推 し=強意
    ②なき(連体形) らし(已然形) しか(已然形)

  3. 次の敬語の種類と、だれからだれへの敬意かを答えよ。
    ①御書所に召されて「候ひ」けるほどに
    ②これが由「仕うまつれ」
    ③いみじう感ぜさせ「給ひ」て
    ④大袿「賜ひ」て
    ⑤思ひ「給へ」しか

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    ①謙譲語。繁樹から帝へ
    ②謙譲語。帝から帝へ(自敬表現)
    ③尊敬語。繁樹から帝へ
    ④尊敬語。繁樹から帝へ
    ⑤謙譲語。繁樹から聞き手(世継たち)へ

  4. 「歌仕うまつらしめ給へり」の「給へ」と、「けやけきことに思ひ給へしに」の「給へ」について、それぞれ活用の種類・活用形と敬語の種類を答えよ。

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    前者=ハ行四段活用の已然形、尊敬の補助動詞。後者=ハ行下二段活用の連用形、謙譲の補助動詞。

C 現代語訳・内容

  1. 「いみじく興じおはします。貫之召し出でて、歌仕うまつらしめ給へり。」を、主語を補って現代語訳せよ。また、何をおもしろがっていたのか、なぜおもしろがったのかを説明せよ。

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    訳=(帝は)たいそうおもしろがっていらっしゃる。(帝は)貫之をお呼び出しになって、歌を詠んで差し上げさせなさった。
    説明=ほととぎすの忍び音。ほととぎすがふつう鳴くのは五月なので、四月二日に聞く忍び音はめずらしく趣深かったから。

  2. 「こと夏はいかが鳴きけむほととぎすこの宵ばかりあやしきぞなき」を現代語訳せよ。

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    ほかの年の夏はどのように鳴いていたのだろうか、ほととぎすは。今夜ほど不思議なまでに心ひかれる(鳴き声の)ことはない。

  3. 「それをだにけやけきことに思ひ給へしに」を現代語訳せよ。また、「それ」が指す内容と、「思ひ」の主語を答えよ。

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    訳=そのことでさえ、見事なことだと存じておりましたのに。
    「それ」=貫之が帝に召されて詠んだ「こと夏は」の歌。主語=夏山繁樹(語り手)。

  4. ①「これが由仕うまつれ」を、「これ」の内容を明らかにして現代語訳せよ。②躬恒が「御前の御階のもと」に召されたのはなぜか。

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    ①月を「弓張」と呼ぶのはなぜか、その理由を歌に詠んでみよ。
    ②躬恒は身分が低く、殿上に上がることを許されていなかったから。

  5. 「照る月を弓張としもいふことは山辺をさしていればなりけり」について、①掛詞を抜き出し、何と何が掛けられているかを漢字を用いて答えよ。②躬恒は帝の問いにどのように答えたのか、説明せよ。

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    ①「いれ」が、月が山に「入れ」と、矢を「射れ」の二つの意味を持つ掛詞。
    ②月が山のあたりをめがけて入っていくようすが、弓で矢を射るのに似ているから「弓張」というのだ、と答えた。

  6. 「白雲のこのかたにしもおりゐるは天つ風こそ吹きてきぬらし」について、①「白雲」「天つ風」はそれぞれ何をたとえているか。②この歌の掛詞を三つ挙げ、何と何が掛けられているか答えよ。

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    ①白雲=(帝からいただいた)白い大袿 天つ風=帝のお恵み
    ②「かた」=方・肩 「おり」=下り・織り 「きぬ」=来ぬ・着ぬ

  7. 「さばかりの者に、近う召し寄せて勅禄賜はすべきことならねど、そしり申す人のなきも、…」について、①「さばかりの者」とはだれのことで、どのような者か。②非難する人がいなかったのはなぜか。本文に即して二つ答えよ。

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    ①躬恒。帝が近くに呼んで褒美を与えるような身分ではない、身分の低い者。
    ②帝が威厳のある重々しい方だったから。/躬恒が歌人として世間から高く評価されていたから。