『大鏡』最後の除目 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 危篤の兼通と兼家の素通り
  4. 兼通の参内
  5. 最後の除目
  6. テスト予想問題

『大鏡(おおかがみ)』「最後の除目(さいごのじもく)」の現代語訳・品詞分解・解説です。

長年、官位を争って仲の悪かった兄の藤原兼通(かねみち)と弟の兼家(かねいえ)。危篤になった兼通は、弟が見舞いに来てくれるものと思って待ちますが、兼家は家の前を素通りして内裏へ向かいます。怒った兼通は、死にかけた体で参内し、最後の除目を行います。主語、敬語の向き、兼通の心情がよく問われます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

危篤の兼通と兼家の素通り

原文
こ代名の格助体修殿とのたちの格助体修兄弟きやうだいの格助体修御仲おほんなか、年ごろの格助体修官位くわんゐの格助体修劣り優おとりまさりの格助体修ほどに格助時間、御仲おほんなか悪あしくシク連用て接助単純接続過ぎガ上二未然させ尊敬連用給ひ補・ハ四連用尊→兼通・兼家し過去連体間あひだに格助時間、

現代語訳このご兄弟(兼通と兼家)のお仲は、長年官位の上下を争っていたことから、仲が悪いままお過ごしになっていた間に、

年ごろ
長年。数年来。
劣り優り
(官位の)上下。
解説

「この殿たち」は、兄の兼通と弟の兼家。官位の上下を争って、長年仲が悪かった。この時点で官位が上なのは、関白の兼通。

「過ぎさせ給ひ」の「させ」「給ひ」は、語り手から兼通・兼家の二人への敬意。

原文
堀河殿ほりかはどの御病おほんやまひ重くク連用ならラ四未然せ尊敬連用給ひ補・ハ四連用尊→兼通て接助単純接続、今は係助区別限りに断定連用て接助単純接続おはしまし補・サ四連用尊→兼通し過去連体ほどに格助時間、

現代語訳堀河殿(兼通)のご病気が重くなりなさって、もはや最期というご様子でいらっしゃった時に、

堀河殿
藤原兼通。
今は限り
もはや最期であること。危篤の状態。
原文
東ひんがしの格助体修方かたに格助場所、先追さきおふハ四連体音おとの格助主格すれサ変已然ば接助順接確定、御前おまへに格助場所候さぶらふハ四連体謙→兼通人たち、「誰たれ代名ぞ係助強意。」など副助引用言ふハ四連体ほどに格助時間、

現代語訳東の方で先払いの声がするので、(兼通の)おそばにお仕えする人たちが「誰だろう」などと言っているうちに、

先追ふ
先払いをする。身分の高い人が通るとき、前の人々を追い払う。
候ふ
お仕えする。おそばに控える。
解説

ここの「御前」は、兼通の御前。兼通の家でお仕えしている人たちのこと。

原文
「東三条の大将殿とうさんでうのだいしやうどの参らラ四未然謙→兼通せ尊敬連用給ふ補・ハ四終止尊→兼家。」と格助引用人の格助主格申しサ四連用謙→兼通けれ過去已然ば接助順接確定、殿との聞かカ四未然せ尊敬連用給ひ補・ハ四連用尊→兼通て接助単純接続、

現代語訳「東三条の大将殿(兼家)がおいでになります」と(家来の)人が申し上げたので、殿(兼通)はお聞きになって、

東三条の大将殿
藤原兼家。兼通の弟。
解説

「参らせ給ふ」は家来の言葉。「参ら」は謙譲語で家来から兼通への敬意、「せ給ふ」は尊敬語で家来から兼家への敬意。

「聞かせ給ひて」は、兼通が、兼家が来るという知らせをお聞きになったということ。

原文
年ごろ仲なからひよからク未然ず打消連用して接助単純接続過ぎガ上二連用つる完了連体に接助逆接確定、今は係助区別限りに格助結果なりラ四連用たる完了連体と格助引用聞きカ四連用て接助単純接続、とぶらひに格助目的おはするサ変連体尊→兼家に断定連用こそ係助強意は係助区別と格助引用て接助単純接続、

現代語訳「長年仲がよくないまま過ごしてきたが、(私が)もう最期だと聞いて、見舞いにおいでになるのだろう」と思って、

仲らひ
仲。間柄。
とぶらひ
見舞い。
解説

「年ごろ…おはするにこそは」は、兼通の心の中の言葉。

「聞きて」は、兼家が、兼通は危篤だと聞いて、ということ(と兼通は思っている)。

「こそは」の下には「あらめ」が省略されている。「見舞いにおいでになるのだろう」の意味。

原文
御前おまへなる存在連体苦しきシク連体もの取りやりラ四連用、大殿籠おほとのごもりラ四連用尊→兼通たる存続連体所ひきつくろひハ四連用など副助婉曲しサ変連用て接助単純接続、入れラ下二連用奉ら補・ラ四未然謙→兼家む意志終止と格助引用て接助単純接続待ちタ四連用給ふ補・ハ四連体尊→兼通に接助順接確定、

現代語訳(兼通の)前にある見苦しい物を取りのけ、寝ていらっしゃる所も整えなどして、(兼家を)部屋にお入れ申し上げようと、お待ちになっていると、

苦し
ここは、見苦しい。
大殿籠る
「寝」の尊敬語。おやすみになる。
ひきつくろふ
きちんと整える。
解説

「御前なる」の「なる」は存在の助動詞「なり」。場所を表す語について「〜にある」の意味。

「入れ奉らむ」は、兼通が、見舞いに来る兼家を自分の部屋にお迎え入れ申し上げようということ。「待ち給ふ」の主語も兼通。

原文
「早く副過ぎガ上二連用て接助単純接続、内裏うちへ格助方向参らラ四未然謙→帝せ尊敬連用給ひ補・ハ四連用尊→兼家ぬ完了終止。」と格助引用人の格助主格申すサ四連体謙→兼通に接助順接確定、いと副あさましくシク連用心憂こころうくク連用て接助単純接続、

現代語訳「(兼家殿は)とっくに(この前を)通り過ぎて、内裏へ参上なさいました」と人が申し上げるので、(兼通は)ひどく驚きあきれ、不愉快に思って、

早く
すでに。もう。(あとに完了・過去の助動詞がくるとき)
あさまし
驚きあきれるほどだ。
心憂し
不愉快だ。情けない。
解説

「参らせ給ひぬ」は家来の言葉。「参ら」は家来から帝への敬意、「せ給ひ」は家来から兼家への敬意。

「いとあさましく心憂くて」は、見舞いに来てくれるものと思って待っていたのに、兼家が自分の家に寄らず、そのまま内裏へ向かってしまったことに、兼通が驚きあきれ、不愉快に思う気持ち。

原文
御前おまへに格助場所候さぶらふハ四連体謙人々も係助類例、をこがましくシク連用思ふハ四終止らむ現在推量終止。おはしサ変連用尊→兼家たら完了未然ば接助順接仮定、関白くわんぱくなど副助婉曲譲るラ四連体ことなど副助例示申さサ四未然謙→兼家む意志終止と格助引用こそ係助強意思ひハ四連用つる完了連体に接助逆接確定。

現代語訳おそばにお仕えする人々も、(私を)ばかげていると思っているだろう。(兼家が)おいでになったなら、関白などを譲ることなどを申そうと思っていたのに。

をこがまし
ばかげている。みっともない。
解説

「御前に候ふ…安からぬことなり」は、兼通の心の中の言葉。

「をこがましく思ふらむ」は、来ない兼家を準備して待っていた自分を、家来たちがばかげていると思っているだろう、ということ。

「こそ」の結びは、「思ひつる」の下に「に」が続いたため成り立っていない(結びの流れ)。

原文

現代語訳こんなふう(に薄情)だから、長い間ずっと不仲のまま過ごしてきたのだ。驚きあきれるほど腹の立つことだ」と思って、

安からず
心穏やかでない。腹立たしい。
解説

「かかれば」は、危篤の兄を見舞いもせずに素通りするような、兼家の薄情さをさす。

「こそ」の結びは「つれ」(完了の助動詞「つ」の已然形)。

「あさましく安からぬこと」は、兼家が自分の家を素通りして内裏へ参上したことへの怒り。

兼通の参内

原文
限りの格助体修さまにて格助状態臥ふしサ四連用給へ補・ハ四已然尊→兼通る存続連体人の格助主格、「かき起こせサ四命令。」と格助引用のたまへハ四已然尊→兼通ば接助順接確定、人々ひとびとあやしシク終止と格助引用思ふハ四連体ほどに格助時間、

現代語訳死を待つばかりの様子で横になっていらっしゃった人(兼通)が、「抱き起こせ」とおっしゃるので、人々が不思議だと思っているうちに、

かき起こす
抱き起こす。
解説

「限りのさまにて臥し給へる人」は兼通。「人の」の「の」は主格。

人々が「あやし」と思ったのは、死にかけて寝ていた兼通が、急に「抱き起こせ」と言い出したから。

原文
「車に格助対象装束さうぞくせよサ変命令。御前ごぜんもよほせサ四命令。」と格助引用仰おほせサ下二未然尊→兼通らるれ尊敬已然ば接助順接確定、

現代語訳「車の支度をせよ。先払いの者を呼び集めよ」とおっしゃるので、

装束す
支度を整える。
御前(ごぜん)
先払いをする人。
もよほす
呼び集める。
解説

短い命令の言葉が続き、怒りにかられた兼通が、急いで参内しようとしている様子が伝わる。

原文
物の格助主格つかカ四未然せ尊敬連用給へ補・ハ四已然尊→兼通る存続連体か係助疑問、現し心うつしごころも係助強意なくク連用て接助単純接続仰おほせサ下二未然尊→兼通らるる尊敬連体か係助疑問と格助引用、あやしくシク連用見マ上一連用奉る補・ラ四連体謙→兼通ほどに格助時間、

現代語訳「物の怪がおとりつきになったのか、正気もなくおっしゃるのか」と、(人々が)不思議に思って見申し上げているうちに、

物
物の怪。
現し心
正気。
解説

人々がこう思ったのは、危篤の兼通が、車の支度など参内の準備を命じたから。

「つかせ給へる」「仰せらるる」の敬語は、人々から兼通への敬意。

原文
御冠おほんかうぶり召し寄めしよせサ下二連用尊→兼通て接助単純接続、装束さうぞくなど副助婉曲せサ変未然させ尊敬連用給ひ補・ハ四連用尊→兼通て接助単純接続、内裏うちへ格助方向参らラ四未然謙→帝せ尊敬連用給ひ補・ハ四連用尊→兼通て接助単純接続、陣ぢんの格助体修内うちは係助区別君達きんだちに格助対象かかりラ四連用て接助単純接続、

現代語訳冠をお取り寄せになって、装束などをお着けになって、内裏へ参上なさって、陣の内側は君達(若い貴族たち)に寄りかかって、

召し寄す
お取り寄せになる。
君達(きんだち)
貴族の子弟たち。
解説

ここの「参らせ給ひて」は地の文。「参ら」は語り手から帝への敬意、「せ給ひ」は語り手から兼通への敬意。家来の言葉の「内裏へ参らせ給ひぬ」とは、敬意を表す人も、尊敬の対象もちがう。

原文
滝口の陣たきぐちのぢんの格助体修方かたより格助経過点御前おまへへ格助方向参らラ四未然謙→帝せ尊敬連用給ひ補・ハ四連用尊→兼通て接助単純接続、昆明池の障子こんめいちのさうじの格助体修もとに格助場所さし出いでダ下二未然させ尊敬連用給へ補・ハ四已然尊→兼通る完了連体に接助単純接続、

現代語訳滝口の陣の方を通って帝の御前へ参上なさって、昆明池の障子のあたりに姿をお現しになると、

解説

冠を取り寄せ、装束を着け、人に寄りかかり、と参内までの様子を細かく描くことで、病をおして一歩ずつ進む兼通の執念が伝わってくる。

原文
昼の御座ひのおましに格助場所、東三条の大将とうさんでうのだいしやう、御前おまへに格助場所候さぶらひハ四連用謙→帝給ふ補・ハ四連体尊→兼家ほどなり断定連用けり過去終止。

現代語訳昼の御座では、東三条の大将(兼家)が、帝の御前にお控えになっているところであった。

解説

ここの「御前」は帝の御前。兼家は、ちょうど帝の前にいた。

最後の除目

原文
こ代名の格助体修大将殿だいしやうどのは係助区別、堀河殿ほりかはどのすでに副失うせサ下二未然させ尊敬連用給ひ補・ハ四連用尊→兼通ぬ完了終止と格助引用聞かカ四未然せ尊敬連用給ひ補・ハ四連用尊→兼家て接助単純接続、内うちに格助対象関白くわんぱくの格助体修こと申さサ四未然謙→帝む意志終止と格助引用思ひハ四連用給ひ補・ハ四連用尊→兼家て接助単純接続、

現代語訳この大将殿(兼家)は、堀河殿(兼通)がすでに亡くなられたと耳にされて、関白の件を帝に申し上げようとお考えになって、

内
ここは、帝。
解説

「関白のこと申さむ」は、兼通の後の関白に自分を任命してほしいと、帝に申し上げようということ。

原文
こ代名の格助体修殿とのの格助体修門かどを格助経過点通りラ四連用て接助単純接続、参りラ四連用謙→帝て接助単純接続申しサ四連用謙→帝奉る補・ラ四連体謙→帝ほどに格助時間、堀河殿ほりかはどのの格助主格目を格助対象つづらかにナリ連用さし出いでダ下二連用給へ補・ハ四已然尊→兼通る完了連体に接助順接確定、

現代語訳この殿(兼通)の家の門の前を通って、(内裏に)参上して(帝に)申し上げているところに、堀河殿が目を大きく見開いて姿をお現しになったので、

つづらかなり
(目を)丸く大きく見開いたさま。
解説

「この殿の門」は兼通の家の門。兼家は兼通の家の前を通って内裏へ向かった。

「申し奉る」は謙譲語を重ねた形で、どちらも語り手から帝への敬意。

「堀河殿の」の「の」は主格。

原文
帝みかども係助並列大将だいしやうも係助並列いと副あさましくシク連用思し召おぼしめすサ四終止尊→帝・兼家。大将だいしやうは係助区別うち見るマ上一連体ままに格助状態、立ちタ四連用て接助単純接続鬼の間おにのまの格助体修方かたに格助方向おはしサ変連用尊→兼家ぬ完了終止。

現代語訳帝も大将もたいそう驚きあきれなさる。大将は(兼通の姿を)ちらりと見るやいなや、立ち上がって鬼の間の方へ行ってしまわれた。

うち見る
ちらりと見る。
ままに
〜するやいなや。
おはす
ここは「行く」の尊敬語。
解説

帝と兼家が「いとあさましく」思ったのは、もう亡くなったと聞いていた兼通が、目を大きく見開いて目の前に現れたから。

兼家は、兼通の姿を見るとすぐに立ち上がり、隣の鬼の間の方へ行ってしまった。

原文
関白殿くわんぱくどの、御前おまへに格助場所つい居ゐワ上一連用給ひ補・ハ四連用尊→兼通て接助単純接続、御気色みけしきいと副悪あしくシク連用て接助単純接続、「最後さいごの格助体修除目ぢもく行おこなひハ四連用に格助目的参りラ四連用謙→帝て接助単純接続侍はべり補・ラ変連用丁→帝つる完了連体なり断定終止。」と格助引用て接助単純接続、

現代語訳関白殿(兼通)は、帝の御前にひざをついてお座りになり、たいそう不機嫌な様子で、「最後の除目を行いに参ったのでございます」と言って、

つい居る
ひざをついて座る。
御気色(みけしき)
ご機嫌。ご様子。
除目(ぢもく)
官職を任命する儀式。
解説

「御気色いと悪しくて」は、兼通がひどく機嫌が悪い様子。

「参り」は謙譲語、「侍り」は丁寧語で、どちらも兼通から帝への敬意。

「最後の除目」と言ったのは、もうすぐ死ぬと覚悟していて、関白として官職の任命を決められるのは今回が最後だと考えたから。

原文
蔵人頭くらうどのとう召しサ四連用尊→兼通て接助単純接続、関白くわんぱくに格助結果は係助区別頼忠の大臣よりただのおとど、東三条殿とうさんでうどのの格助体修大将だいしやうを格助対象取りラ四連用て接助単純接続、

現代語訳蔵人頭を呼び寄せなさって、頼忠の大臣を関白に(任じ)、東三条殿(兼家)からは大将の位を取り上げて、

召す
お呼びになる。
取る
ここは、取り上げる。
原文
小一条の済時の中納言こいちでうのなりときのちゆうなごんを格助対象大将だいしやうに格助結果なしサ四連用聞こゆる補・ヤ下二連体謙→済時宣旨せんじ下しサ四連用て接助単純接続、東三条殿とうさんでうどのを格助対象ば係助強意治部卿ぢぶきやうに格助結果なしサ四連用聞こえ補・ヤ下二連用謙→兼家て接助単純接続、

現代語訳小一条の済時の中納言を大将に任命申し上げるという宣旨を下し、東三条殿は治部卿に任命申し上げて、

宣旨(せんじ)
天皇の命令を伝える文書。
解説

兼通は、関白を頼忠に譲り、兼家の大将の位を取り上げて治部卿に落とした。兼家が関白になるのを阻み、降格させたということ。

「なし聞こゆる」の「聞こゆる」は語り手から済時への敬意、「なし聞こえ」の「聞こえ」は語り手から兼家への敬意。

現代語訳(内裏から)お下がりになって、ほどなく亡くなられたのですよ。

解説

「出でさせ給ひ」は、兼通が内裏を退出なさったということ。

原文
心意地こころいぢに断定連用て接助単純接続おはせ補・サ変未然尊→兼通し過去連体殿とのに断定連用て接助単純接続、さばかり副限りに断定連用おはせ補・サ変未然尊→兼通し過去連体に接助逆接確定、

現代語訳(兼通公は)意地っ張りでいらっしゃった方で、あれほど死にかけていらっしゃったのに、

心意地
意地っ張りなこと。
さばかり
あれほど。
解説

「心意地にておはせし殿」は兼通。

原文
ねたさに格助原因内裏うちに格助場所参りラ四連用謙→帝て接助単純接続申さサ四未然謙→帝せ尊敬連用給ひ補・ハ四連用尊→兼通し過去連体ほど、異人ことひとすサ変終止べう可能連用・音も係助強意なかりク連用し過去連体ことぞ係助強意かし終助念押し。

現代語訳いまいましさから内裏に参上して(除目のことを)申し上げなさった様子などは、ほかの人にはとてもできそうにないことでしたよ。

ねたさ
いまいましさ。
異人(ことひと)
ほかの人。
解説

「申させ給ひし」は、兼通が除目のことを帝に申し上げなさったこと。

「異人すべうもなかりしこと」には、危篤の身で参内してまで意地を通した兼通を、ほかの人にはとてもまねできないと感じ入る語り手の気持ちが表れている。

『大鏡』のほかの話:花山天皇の出家① / 道長の豪胆(肝試し) / 弓争ひ / 三舟の才 / 鶯宿梅 / 道真左遷① / 道真左遷② / 時平の大臣 / 雲林院の菩提講① / 宣耀殿の女御

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①兄弟
    ②官位
    ③先追ふ
    ④大殿籠る
    ⑤御前(御前もよほせ)
    ⑥現し心
    ⑦君達
    ⑧昆明池
    ⑨除目
    ⑩蔵人頭
    ⑪宣旨
    ⑫異人

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    ①きょうだい
    ②かんい
    ③さきおう
    ④おおとのごもる
    ⑤ごぜん
    ⑥うつしごころ
    ⑦きんだち
    ⑧こんめいち
    ⑨じもく
    ⑩くろうどのとう
    ⑪せんじ
    ⑫ことひと

  2. 本文中での次の語句の意味を答えよ。
    ①今は限り
    ②年ごろ
    ③とぶらひ
    ④早く(早く過ぎて)
    ⑤心憂し
    ⑥をこがまし
    ⑦うち見るままに
    ⑧御気色
    ⑨心意地
    ⑩ねたさ

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    ①もはや最期であること・危篤
    ②長年
    ③見舞い
    ④すでに・とっくに
    ⑤不愉快だ・情けない
    ⑥ばかげている・みっともない
    ⑦ちらりと見るやいなや
    ⑧ご機嫌・ご様子
    ⑨意地っ張りなこと
    ⑩いまいましさ

B 文法・敬語

  1. 次の傍線部の敬語の種類と、だれからだれへの敬意かを答えよ。
    ①「東三条の大将殿『参ら』せ給ふ。」と人の申しければ
    ②「東三条の大将殿参ら『せ給ふ』。」と人の申しければ
    ③「内裏へ『参ら』せ給ひて」(兼通が参内する場面)
    ④「内裏へ参ら『せ給ひ』て」(同じ場面)

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    ①謙譲語。家来(人)から兼通へ
    ②尊敬語。家来(人)から兼家へ
    ③謙譲語。語り手から帝へ
    ④尊敬語。語り手から兼通へ

  2. 係り結びについて答えよ。
    ①「とぶらひにおはするにこそは」の下に省略されている語を答えよ。
    ②「関白など譲ることなど申さむとこそ思ひつるに」の「こそ」の結びはどうなっているか、説明せよ。
    ③「かかればこそ年ごろ仲らひよからで過ぎつれ」の「こそ」の結びの語を抜き出し、文法的に説明せよ。

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    ①あらめ
    ②「思ひつる」の下に接続助詞「に」が続いて文が終わらないため、結びが成り立っていない(結びの流れ)。
    ③つれ(完了の助動詞「つ」の已然形)

  3. 次の傍線部を文法的に説明せよ。
    ①御前「なる」苦しきもの取りやり
    ②をこがましく思ふ「らむ」
    ③物のつかせ給へ「る」か
    ④異人す「べう」もなかりしことぞかし

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    ①存在の助動詞「なり」の連体形
    ②現在推量の助動詞「らむ」の終止形
    ③存続の助動詞「り」の連体形
    ④可能の助動詞「べし」の連用形「べく」のウ音便

  4. 「最後の除目行ひに参りて侍りつるなり」の「参り」「侍り」の敬語の種類と、だれからだれへの敬意かを答えよ。

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    参り=謙譲語。兼通から帝へ/侍り=丁寧語。兼通から帝へ

C 現代語訳・内容

  1. 「いとあさましく心憂くて」とは、だれの、どのような気持ちか。そう思った理由がわかるように説明せよ。

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    兼通の気持ち。見舞いに来てくれるものと思って準備して待っていたのに、兼家が家に立ち寄らず、そのまま内裏へ向かったことに、驚きあきれ、不愉快に思う気持ち。

  2. 「御前に候ふ人々も、をこがましく思ふらむ」を現代語訳せよ。また、人々は何を「をこがまし」と思っているだろうというのか。

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    訳=おそばにお仕えする人々も、ばかげていると思っているだろう。/兼家が見舞いに来ると思い込み、部屋を片づけて待ち受けていた兼通自身のこと。

  3. 「物のつかせ給へるか、現し心もなくて仰せらるるか」を現代語訳せよ。また、人々がこのように思ったのはなぜか。

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    訳=物の怪がおとりつきになったのか、正気をなくしておっしゃるのか。/理由=危篤で寝ていた兼通が、急に抱き起こせと言い、参内の支度を命じたから。

  4. 「帝も大将もいとあさましく思し召す」とあるが、帝と兼家が驚きあきれたのはなぜか。

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    もう亡くなったと聞いていた兼通が、目を大きく見開いて、突然目の前に現れたから。

  5. 兼通は「最後の除目」で兼家をどのように扱ったか。また、その目的は何か。

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    兼家の大将の位を取り上げて治部卿に落とした(関白は頼忠に譲った)。/目的=薄情な兼家が関白になるのを阻むため。

  6. 「異人すべうもなかりしことぞかし」を現代語訳せよ。また、語り手は兼通のふるまいをどのように感じているか。

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    訳=ほかの人にはとてもできそうにないことでしたよ。/気持ち=危篤の身で参内してまで意地を通した兼通の気迫に、感じ入る気持ち。