『徒然草』名を聞くより 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 名前と顔
  4. 昔物語を聞くとき
  5. いつかあったような気持ち
  6. テスト予想問題

『徒然草(つれづれぐさ)』第七十一段「名を聞くより」の現代語訳・品詞分解・解説です。

名前を聞いただけで顔を思い描いてしまうのに、会ってみると思っていたとおりの人はいない。昔物語を聞くと、身近な家や人に重ねてしまう。今のできごとを、前にもあったように感じる――。だれにでもある心の働きを、兼好は「誰もかくおぼゆるにや」「我ばかりかく思ふにや」と問いかけるように書きとめています。自発の「る・らる」、「こそ」の結び、「にや」の下の省略がよく問われます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

名前と顔

原文
名を格助対象聞くカ四連体より格助即時、やがて副面影おもかげは係助提示推しはからラ四未然るる自発連体心地するサ変連体を接助逆接確定、

現代語訳(人の)名前を聞くとすぐに、(その人の)顔つきが自然と思い浮かぶような気がするのだが、

〜より
〜するとすぐに。
やがて
すぐに。
面影
顔つき。(心に浮かぶ)姿。
推しはかる
おしはかる。想像する。
解説

「推しはからるる」の「るる」は自発。思おうとしなくても、自然と顔つきが思い浮かんでしまうということ。

原文
見るマ上一連体ときは係助提示、また副、かねて副思ひハ四連用つる完了連体ままの格助体修顔しサ変連用たる存続連体人こそ係助強意なけれク已然。

現代語訳(実際に)会ってみると、また、前から想像していたままの顔の人はいないものだ。

かねて
前もって。前々から。
解説

「見る」は、実際にその人に会うこと。

「こそ」の結びで、形容詞「なし」が已然形「なけれ」になっている。

昔物語を聞くとき

原文
昔物語を格助対象聞きカ四連用て接助単純接続も係助強意、このごろの格助体修人の格助体修家の格助体修、そこほど代名に断定連用て接助単純接続ぞ係助強意あり補・ラ変連用けん過去推量連体と格助引用おぼえヤ下二連用、

現代語訳昔の物語を聞いても、(物語の舞台は)このごろのだれそれの家の、あのあたりであったのだろうと思われ、

昔物語
昔の物語。昔の話。
そこほど
そのあたり。
解説

昔の物語の舞台を、「今の、だれそれの家のあのあたりだったのだろう」と、知っている場所に当てはめて思い描くということ。

原文
人も係助添加、今副見るマ上一連体人の格助体修中に格助対象思ひよそへハ下二未然らるる自発連体は係助提示、誰たれ代名も係助添加かく副おぼゆるヤ下二連体に断定連用や係助疑問。

現代語訳(物語の)人物も、今会っている人の中のだれかに自然と重ね合わせてしまうのは、だれでもこのように感じるのであろうか。

思ひよそふ
ほかのものになぞらえて思う。重ね合わせる。
解説

「思ひよそへらるる」の「らるる」も自発。物語の人物を、今会っている人のだれかに自然と重ねてしまう。

「にや」のあとに「あらむ」などが省かれている(「に」は断定「なり」の連用形)。

いつかあったような気持ち

原文
また接、いかなるナリ連体折ぞ係助強意、ただ今副人の格助主格言ふハ四連体ことも係助並列、目に格助対象見ゆるヤ下二連体物も係助並列、我代名が格助体修心の格助体修うちも係助並列、

現代語訳また、どのような折だったか、たった今だれかが話していることも、目に映る物も、わが心の内も、

ただ今
たった今。
解説

「いかなる折ぞ」は、「どのような時であったか」と、はさみこむように言った部分。

「人の言ふこと」「目に見ゆる物」「我が心のうち」と、今のできごとを並べている。

原文
かかるラ変連体ことの格助主格いつぞや副ありラ変連用し過去連体か終助詠嘆と格助引用おぼえヤ下二連用て接助単純接続、

現代語訳こういうことが、いつだったか前にあったなあと感じられて、

いつぞや
いつだったか。
解説

「ありしか」の「か」は詠嘆。「いつだったか、こういうことがあったなあ」と思われる、ということ。

原文
いつ代名と格助引用は係助提示思ひ出でダ下二未然ね打消已然ども接助逆接確定、まさしくシク連用ありラ変連用し過去連体心地の格助主格するサ変連体は係助提示、我代名ばかり副助限定かく副思ふハ四連体に断定連用や係助疑問。

現代語訳いつのことかは思い出せないけれども、確かにあった気がするのは、自分ひとりがそう感じるのだろうか。

まさしく
確かに。間違いなく。
解説

はじめて見聞きしたはずのことを、前にも確かに経験したように感じる心の働きを言っている。

前の段落の「誰もかくおぼゆるにや」に対して、ここは「我ばかりかく思ふにや」。だれにでもあることか、自分だけのことかと問いかける形で結んでいる。

『徒然草』のほかの段:花は盛りに① / 家居のつきづきしく / 世に語り伝ふること / 今日はそのことをなさんと思へど / あだし野の露消ゆる時なく / ある人、弓射ることを習ふに

テスト予想問題

A 語句

  1. 本文中で使われている意味を、次の語それぞれについて答えよ。
    ①やがて
    ②面影
    ③かねて
    ④そこほど
    ⑤いつぞや
    ⑥まさしく

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    ①すぐに
    ②顔つき
    ③前もって・前々から
    ④そのあたり
    ⑤いつだったか
    ⑥確かに・間違いなく

B 文法

  1. 「推しはからるる心地」「思ひよそへらるる」の「るる」「らるる」について、意味と活用形をそれぞれ答えよ。

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    どちらも自発の助動詞の連体形(「るる」は「る」、「らるる」は「らる」)。

  2. 「かねて思ひつるままの顔したる人こそなけれ」について、「こそ」に対する結びの語と、その活用形を答えよ。

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    なけれ。已然形。

  3. 次の【 】の助動詞の終止形と意味を答えよ。
    ①思ひ【つる】まま
    ②そこほどにてぞあり【けん】
    ③思ひ出で【ね】ども
    ④まさしくあり【し】心地

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    ①つ・完了
    ②けむ・過去推量
    ③ず・打消
    ④き・過去

  4. 「誰もかくおぼゆるにや」の「に」を文法的に説明せよ。また、「や」の下に省略されている語を補え。

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    「に」=断定の助動詞「なり」の連用形。
    省略=あらむ(あらん)

C 現代語訳・内容

  1. 「名を聞くより、やがて面影は推しはからるる心地するを、見るときは、また、かねて思ひつるままの顔したる人こそなけれ。」を現代語訳せよ。

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    名前を聞くとすぐに、その人の顔つきが自然と思い浮かぶような気がするのだが、実際に会ってみると、前から想像していたままの顔の人はいないものだ。

  2. 「このごろの人の家の、そこほどにてぞありけん」を現代語訳せよ。また、何がそのあたりであったと思われるのか。

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    訳=今の(だれそれの)家の、あのあたりであったのだろう。
    何が=昔物語に出てくる場所(物語の舞台)。

  3. 「かかることのいつぞやありしかとおぼえて」を現代語訳せよ。また、「かかること」とは何を指すか。

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    訳=こういうことが、いつだったか前にあったなあと感じられて。
    指すもの=たった今だれかが話していること、目に映る物、自分の心の中の思い。

  4. 第一段落と第二段落では、それぞれどのような心の働きを述べているか。違いがわかるように説明せよ。

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    第一段落=名前や昔の話を聞くと、まだ見ていない顔や場所・人物を、自分の知っているものをもとに想像してしまうこと。
    第二段落=今はじめて見聞きしていることを、前にも確かに経験したことのように感じてしまうこと。