『方丈記』安元の大火 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 世の不思議
  4. 大火のあらまし
  5. 燃え広がる火
  6. 逃げまどう人々
  7. 大火の被害
  8. 作者の感想
  9. テスト予想問題

『方丈記(ほうじょうき)』「安元の大火(あんげんのたいか)」の現代語訳・品詞分解・解説です。

鴨長明が体験した災害の記録(大火・つむじ風・遷都・飢饉・大地震)のうち、最初に書かれている大火事の場面です。風にあおられて燃え広がる火、空を真っ赤に染める灰、逃げまどう人々のようすが、比喩・擬人法・対句を使って生々しく描かれます。最後の一文で、作者は危険な都に家を作ることのむなしさを述べます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

世の不思議

原文
予よ代名、ものの心を格助対象知れラ四已然り完了連用し過去連体より格助起点、四十あまりの格助体修春秋しゆんじうを格助対象送れラ四已然る存続連体あひだに格助時間、世の格助体修不思議を格助対象見るマ上一連体こと、やや副たびたびに格助変化なりラ四連用ぬ完了終止。

現代語訳私が物事の道理をわきまえるようになってから、四十年あまりの年月を過ごしてきた間に、世の中の思いもよらない出来事を見ることが、だんだん度重なってきた。

ものの心
物事の道理。
春秋
年月。
不思議
思いもよらない出来事。
やや
だんだん。しだいに。
解説

「世の不思議」は、このあとに書かれる安元の大火・治承のつむじ風・福原遷都・養和の飢饉・元暦の大地震などの災害を指す。

大火のあらまし

原文
いにし連体安元三年四月二十八日か係助疑問と格助引用よ間助詠嘆。

現代語訳あれは安元三年の四月二十八日のことだったろうか。

いにし
過ぎ去った。去る。
解説

「かとよ」は「〜であったろうか」。昔のことを思い出して書いているので、日付をはっきり言い切らない言い方になっている。

原文
風激しくシク連用吹きカ四連用て接助単純接続、静かならナリ未然ざり打消連用し過去連体夜、戌いぬの格助体修時ばかり副助程度、都の格助体修東南より格助起点火出で来いできカ変連用て接助単純接続、西北に格助方向至るラ四終止。

現代語訳風が激しく吹いて騒がしかった夜、午後八時ごろ、都の東南の方から火が出て、西北へと燃え広がった。

戌の時
今の午後八時ごろ。
解説

「東南」は「たつみ(辰巳・巽)」、「西北」は「いぬゐ(戌亥・乾)」とも言う。火は都の東南から出て、西北へ広がった。

原文
果てに格助時間は係助区別朱雀門しゆしやくもん、大極殿だいこくでん、大学寮だいがくれう、民部省みんぶしやうなど副助例示まで副助限界移りラ四連用て接助単純接続、一夜ひとよの格助体修うちに格助時間塵灰ぢんくわいと格助変化なりラ四連用に完了連用き過去終止。

現代語訳最後には朱雀門・大極殿・大学寮・民部省といった建物にまで燃え広がり、ひと晩で(すべて)焼けてちりや灰になった。

塵灰
ちりと灰。後の「灰燼」と同じ意味。
解説

朱雀門は大内裏の南側の正門。火が大内裏の建物にまで及んだ。

「なりにき」の「き」は、作者が自分で見た・体験した過去を表す。

原文
火ほもとは係助区別、樋口富小路ひぐちとみのこうぢと格助引用か係助疑問や間助詠嘆。舞人まひびとを格助対象宿せサ四已然る存続連体仮屋かりやより格助起点出で来いできカ変連用たり完了連用ける過去連体と格助引用なん係助強意。

現代語訳火元は樋口富小路だったとか。舞人を宿泊させていた仮の小屋から出火したという話だ。

舞人
舞を舞う人。
宿す
泊まらせる。
解説

「とかや」「となん」は、どちらも下に「言ふ」(「聞く」)などが省略されている(結びの省略)。「〜とかいうことだ」「〜ということだ」。

「出で来たりける」の主語は火。

燃え広がる火

原文
吹き迷ふハ四連体風に格助原因、とかく副移りゆくカ四連体ほどに接助経過、扇あふぎを格助対象広げガ下二連用たる完了連体が格助体修ごとく比況連用末広すゑひろに格助変化なりラ四連用ぬ完了終止。

現代語訳向きの定まらない風にあおられて、火はあちこちへ移りながら、扇を開いたような形に末広がりに広がった。

吹き迷ふ
あちこちと向きを変えて吹く。
とかく
あちらこちらと。
解説

「扇を広げたるがごとく」は比喩。火元から出た火が、先へいくほど広がっていくようすを、扇を開いた形にたとえている。

原文
遠きク連体家は係助区別煙けぶりに格助原因むせびバ四連用、近きク連体あたりは係助区別ひたすら副炎ほのほを格助対象地ちに格助場所吹きつけカ下二連用たり存続終止。

現代語訳火から遠い家は煙にむせかえるようであり、近いあたりでは(風が)ただもう炎を地面に吹きつけている。

ひたすら
ただもう。さかんに。
解説

「遠き家は煙にむせび」は、家を人のように「むせぶ」と言う擬人法。

「遠き家は〜」と「近きあたりは〜」は対句になっている。

原文
空に格助場所は係助区別灰を格助対象吹きたてタ下二連用たれ存続已然ば接助順接確定、火の格助体修光に格助原因映えいじサ変連用て接助単純接続、あまねくク連用紅くれなゐなる断定連体中に格助場所、

現代語訳空には(風が)灰を巻き上げているので、それが炎の光に照らされて、空じゅうが赤く染まっているところへ、

あまねし
すみずみまで行き渡っている。
解説

「火の光に映じて」の主語は、空に吹き上げられた灰。灰が下の炎の光に照らされて、空一面が真っ赤に見えている。

原文
風に格助対象堪へハ下二未然ず打消連用、吹き切らラ四未然れ受身連用たる完了連体炎、飛ぶバ四連体が格助体修ごとく比況連用して接助単純接続、一、二町を格助経過点越えヤ下二連用つつ接助反復移りゆくカ四終止。

現代語訳風の力にこらえきれずにちぎれた炎が、宙を飛ぶようにして、一、二町も先へと移っていく。

解説

「飛ぶがごとくして」も比喩。ちぎれた炎が空を飛ぶようにして離れた所へ燃え移っていく。

「移りゆく」のように現在形で終わる文が続き、目の前で見ているような臨場感が出ている。

逃げまどう人々

原文
そ代名の格助体修中の格助体修人、うつし心あらラ変未然ん推量終止や係助反語。

現代語訳その中にいる人は、生きた心地がしただろうか、いや、しなかっただろう。

うつし心
正気。生きた心地。
解説

「や」は反語。「生きた心地がしただろうか、いや、しなかっただろう」。

「その中の人」は、火が燃え広がった地域の中にいる人。

原文
あるいは煙けぶりに格助原因むせびバ四連用て接助単純接続倒れ臥たふれふしサ四連用、あるいは炎ほのほに格助原因まぐれラ下二連用て接助単純接続たちまちに副死ぬナ変終止。

現代語訳煙にむせて倒れ伏す人もいれば、炎で目がくらみ、そのまま息絶える人もいる。

まぐる
目がくらむ。
解説

「あるいは〜、あるいは〜」は対句。逃げられずに死ぬ人々のようすを並べている。

原文
あるいは身一つ辛からうじて副のがるるラ下二連体も接助逆接仮定、資財しざいを格助対象取り出とりいづるダ下二連体に格助変化及ばバ四未然ず打消終止。

現代語訳ある人は身一つでやっとのことで逃げても、家財を取り出すことはできない。

からうじて
やっとのことで。
資財
家財。
〜に及ばず
〜することができない。

大火の被害

原文
七珍万宝しつちんまんぼうさながら副灰燼くわいじんと格助変化なりラ四連用に完了連用き過去終止。そ代名の格助体修費つひえ、いくそばく副ぞ終助念押し。

現代語訳あらゆる宝物が、そっくりそのまま灰になってしまった。その損害は、いったいどれほどであっただろうか。

七珍万宝
あらゆる貴重な宝物。
さながら
そっくりそのまま。全部。
費え
損害。
いくそばく
どれほど。
解説

「その費え」は、火事による家・家財・宝物などの損害。

原文
そ代名の格助体修たび、公卿くぎやうの格助体修家十六焼けカ下二連用たり完了終止。まして副、そ代名の格助体修ほか数へ知かぞへしるラ四連体に格助変化及ばバ四未然ず打消終止。

現代語訳その時、公卿の家が十六軒焼けた。まして、そのほか(の家)は数えきることもできない。

公卿
大臣・大納言などの上級貴族。
解説

「数へ知るに及ばず」は「数えて知ることもできない」。公卿の家でさえ十六軒焼けたのだから、それより身分の低い人々の家はなおさら数えきれない、ということ。

原文
すべて副都の格助体修うち三分が格助体修一に格助変化及べバ四已然り完了終止と格助引用ぞ係助強意。男女なんによ死ぬるナ変連体もの数十人。馬牛の格助体修たぐひ辺際へんさいを格助対象知らラ四未然ず打消終止。

現代語訳全体で、都の三分の一に及んだということだ。死んだ男女は数十人。馬や牛のたぐいは、どれほどか見当もつかない。

辺際
果て。限り。
解説

「とぞ」の下にも「言ふ」などが省略されている(結びの省略)。

「辺際を知らず」は、死んだ馬や牛の数が数えきれないほど多い、ということ。「男女死ぬるもの」と「馬牛のたぐひ」が対になっている。

作者の感想

原文
人の格助体修営み、みな副愚かなるナリ連体中に格助場所、さしも副危ふきク連体京中きやうぢゆうの格助体修家を格助対象作るラ四終止とて格助目的、

現代語訳人間の営みはどれも愚かなものだが、なかでも、あれほど危ない都の中に家を建てようとして、

さしも
それほど。あれほど。
解説

「さしも危ふき京中の家」は、大火のように一晩で灰になってしまう、危険な都の中の家。

原文
財たからを格助対象費やしサ四連用、心を格助対象悩ますサ四連体ことは係助区別、すぐれて副あぢきなくク連用ぞ係助強意はべる補・ラ変連体丁→読者。

現代語訳財産を使い、心を悩ませることは、とりわけつまらないことでございます。

すぐれて
とりわけ。
あぢきなし
つまらない。むなしい。
解説

「あぢきなく」と言っているのは、危険な都に家を作るために、財産を使い、心を悩ませること。

どんな立派な家も一夜で灰になるという体験から、この世ははかない仮の世であるのに、家に執着するのはむなしいと述べている。作品全体に流れる無常観がうかがえる。

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①公卿
    ②灰燼
    ③朱雀門
    ④辺際
    ⑤大極殿
    ⑥男女

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    ①くぎょう
    ②かいじん
    ③しゅしゃくもん
    ④へんさい
    ⑤だいこくでん
    ⑥なんにょ

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①とかく
    ②あまねし
    ③まぐる
    ④さながら
    ⑤いくそばく
    ⑥あぢきなし

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    ①あちらこちらと
    ②すみずみまで行き渡っている
    ③目がくらむ
    ④そっくりそのまま・全部
    ⑤どれほど
    ⑥つまらない・むなしい

  3. 「戌の時」は今の何時ごろか。

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    午後八時ごろ

B 文法

  1. 「一夜のうちに塵灰となりにき」の「に」「き」の意味と活用形を答えよ。また、ここで「き」が使われていることから、どんなことがわかるか。

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    「に」=完了の助動詞「ぬ」の連用形。「き」=過去の助動詞「き」の終止形。 作者が大火を自分で見て体験したこと。

  2. 「火もとは、樋口富小路とかや」「仮屋より出で来たりけるとなん」「都のうち三分が一に及べりとぞ」の文末には、共通して何が省略されているか。省略されている語を一語で答えよ。

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    言ふ(聞く) ※係助詞「か」「なん」「ぞ」の結びが省略されている。

  3. 「舞人を宿せる仮屋」の「宿せ」「る」を文法的に説明せよ。

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    宿せ=サ行四段活用の動詞「宿す」の已然形。 る=存続の助動詞「り」の連体形。

C 現代語訳・内容

  1. 「吹き迷ふ風に、とかく移りゆくほどに、扇を広げたるがごとく末広になりぬ」を現代語訳せよ。また、「扇を広げたるがごとく」は、火のどのようなようすをたとえたものか。

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    訳=向きの定まらない風にあおられて、火はあちこちへ移りながら、扇を開いたような形に末広がりに広がった。 ようす=火元から出た火が、風にあおられて燃え移りながら、先へいくほど広い範囲に広がっていくようす。

  2. 「遠き家は煙にむせび」に使われている表現技法を答えよ。また、この文と対句になっている部分を本文から抜き出せ。

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    擬人法 対句=近きあたりはひたすら炎を地に吹きつけたり

  3. 「空には灰を吹きたてたれば、火の光に映じて、あまねく紅なる中に」とあるが、空はどのような状態になっているのか。説明せよ。

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    空に吹き上げられた灰が、下で燃える火の光に照らされて、空一面が真っ赤に見えている状態。

  4. 「その中の人、うつし心あらんや」を現代語訳せよ。また、「その中の人」とはどのような人か。

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    訳=その中にいる人は、生きた心地がしただろうか、いや、しなかっただろう。 どのような人=火が燃え広がった地域の中にいる人。

  5. 「すぐれてあぢきなくぞはべる」とあるが、何が「あぢきなし」だというのか。また、そこにうかがえる作者の考え方を「〜観」の形で答えよ。

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    危険な都の中に家を作るために、財産を使い、心を悩ませること。 無常観