『正徹物語』為秀の秀歌(独り雨聞く秋の夜すがら) 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 為秀の歌と了俊
  4. 意味のうえでの上の句
  5. 「夜半かな」と「夜すがら」
  6. テスト予想問題

『正徹物語(しょうてつものがたり)』「為秀の秀歌」の現代語訳・品詞分解・解説です。教科書によっては「独り雨聞く秋の夜すがら」という題で載っています。

了俊は、為秀の「あはれ知る友こそかたき世なりけれ独り雨聞く秋の夜すがら」という歌を聞いて、為秀の弟子になりました。筆者の正徹は、この歌のすぐれた点を、「夜半かな」と言い切らずに「夜すがら」と言いさして、思いを余情として残したところにあると説きます。「上の句」の意味と、歌の言葉の順序に注意して読みましょう。

この文章には続きがあり、杜甫の漢詩の読み方の話をへて「歌もただ一字で別のものに聞こえる」と結ばれます(→『正徹物語』一字の違ひ)。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞・敬語の種類と向きを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

為秀の歌と了俊

原文
為秀ためひでの格助体修、あはれ知るラ四連体友こそ係助強意かたきク連体世なり断定連用けれ詠嘆已然独ひとり雨聞くカ四連体秋の格助体修夜よすがら

現代語訳為秀の、しみじみとした情趣のわかる友というものは、なかなか得られない世の中であるなあ。独りで雨の音を聞いて過ごす、この秋の夜通し(思うことには)。

あはれ
しみじみとした情趣。
かたし(難し)
めったにない。得がたい。
夜すがら
一晩中。夜通し。
解説

「こそ」の結びは「けれ」(已然形)。ここで意味が切れる三句切れの歌。

意味のうえでは「独り雨聞く秋の夜すがら」→「あはれ知る友こそかたき世なりけれ」の順になる。それを入れかえた倒置の形で、「夜すがら」という体言で終わっている(体言止め)。

原文
の格助体修歌を格助対象聞きカ四連用て接助単純接続、了俊れうしゆんは係助区別為秀の格助体修弟子でしに格助結果ならラ四未然れ尊敬連用尊→了俊たる完了連体なり断定終止。

現代語訳という歌を耳にして、了俊は為秀に弟子入りなさったのである。

解説

「弟子に」の「に」は変化の結果を表す格助詞。

「なられ」の「れ」は尊敬の助動詞。作者(正徹)から了俊への敬意。了俊は正徹の和歌の師にあたる。

了俊が弟子入りを決めたのは、この歌の言葉の使い方に感動したから。歌のすばらしさを、筆者の説明とは別の面から示すエピソードになっている。

意味のうえでの上の句

原文
「独ひとり雨聞くカ四連体秋の格助体修夜よすがら」は係助区別、上の句に断定連用て接助単純接続ある補・ラ変連体なり断定終止。

現代語訳「独り雨聞く秋の夜すがら」の句は、(意味のうえでは)上の句にあたるのである。

解説

歌の形では最後(下の句)にある「独り雨聞く秋の夜すがら」が、意味のうえでは上の句にあたる、ということ。

「上の句にて」の「に」は断定の助動詞「なり」の連用形。

原文
秋の格助体修夜よ独ひとり雨を格助対象聞きカ四連用て接助単純接続、「あはれ知るラ四連体友こそ係助強意かたきク連体世なり断定連用けれ詠嘆已然」と格助引用思ひハ四連用たる存続連体なり断定終止。

現代語訳秋の夜にただ一人、雨音に耳を傾けながら、「情趣のわかる友はなかなか得られない世の中だなあ」と思ったのだ。

解説

秋の夜に独りで雨の音を聞きながら思ったのが、「あはれ知る友こそかたき世なりけれ」ということ。倒置をもとに戻した、意味の順序を説明している。

原文
あはれ知るラ四連体友の格助主格あるラ変連体なら断定未然ば接助順接仮定、誘はハ四未然れ受身連用て接助単純接続、いづち代名へ格助方向も係助強意行きカ四連用て接助単純接続、語りも係助強意明かさサ四未然ば接助順接仮定、

現代語訳もし情趣のわかる友がいるのなら、(その友に)誘われて、どこへでも出かけて行き、語り明かしでもするとしたら、

いづち
どこ。どちら。
解説

誘うのは「あはれ知る友」。

「語りも明かさ」は、「語り明かす」の間に係助詞「も」が入った形。

原文
かく副雨を格助対象ば係助強意聞くカ四終止べから当然未然ず打消終止。

現代語訳このように(独りで)雨の音を聞いているはずがない。

解説

「かく」は、独りで(一晩中しみじみと)雨の音を聞いていることを指す。

「をば」は格助詞「を」+係助詞「は」が濁ったもの。

現代語訳(どこへも)行こうともしないところが、格別にすぐれていると思われるのです。

殊勝なり(しゆしようなり)
格別にすぐれている。
解説

「いかん」は「行かん」と読む。どこへも行こうとせず、独りで雨を聞いているところを、筆者は格別にすぐれているとほめている。

「いかん」を「如何(いかん)」と見て、「どうしようもない(孤独な)ところが、しみじみと心ひかれる」と解する読み方もある。

「侍る」は丁寧の補助動詞で、作者(正徹)から読み手への敬意。

「夜半かな」と「夜すがら」

原文
「独ひとり雨聞くカ四連体秋の格助体修夜半よはかな終助詠嘆」と格助引用も係助強意あらラ変未然ば接助順接仮定、果はつタ下二終止べき推量連体が接助逆接確定、

現代語訳もし「独り雨聞く秋の夜半かな(独りで雨の音を聞いている秋の夜更けだなあ)」とでもあったなら、(歌の意味は)そこで切れて終わってしまうだろうが、

夜半(よは)
夜中。夜更け。
果つ(はつ)
終わる。
解説

「果つ」は、「秋の夜半かな」のように終助詞「かな」で結んで言い切り、歌の意味が切れて終わること。

原文
「秋の格助体修夜よすがら」と格助引用言ひ捨いひすてタ下二連用て接助単純接続、果はてタ下二未然ざる打消連体ところが格助主格肝要かんえうなりナリ終止。

現代語訳「秋の夜すがら」と言いっぱなしにして、(意味が)切れて終わらないところが大切なのだ。

言ひ捨つ
言いっぱなしにする。言いさす。
肝要なり(かんえうなり)
非常に大切だ。
解説

「言ひ捨て」は、「夜すがら」で言いさして、すべてを言い切らないこと。

「果てざるところが肝要」なのは、意味が切れないことで、一人で思う余韻(余情)が生まれるから。

原文
「独ひとり雨聞くカ四連体秋の格助体修夜よすがら思ひハ四連用たる存続連体は係助区別」と格助引用いふハ四連体心を格助対象残しサ四連用て接助単純接続、「夜よすがら」と格助引用は係助強意言へハ四已然る完了連体なり断定終止。

現代語訳「独りで雨の音を聞いて、秋の夜通し思ったことは」という気持ちを(言葉の外に)残して、「夜すがら」と言ったのである。

解説

「心を残して」は、言いたいことを言い切らずに残すこと、つまり余情。

「夜すがら思ひたるは」のあとに、思った内容である「あはれ知る友こそかたき世なりけれ」が言葉の外で続いて響く。

原文
されば接、「独ひとり雨聞くカ四連体秋の格助体修夜よすがら」が格助主格上の句に断定連用て接助単純接続ある補・ラ変連体なり断定終止。

現代語訳だから、「独り雨聞く秋の夜すがら」が(意味のうえでは)上の句にあたるのである。

されば
だから。そういうわけで。
解説

「されば」は、前の「「独り雨聞く秋の夜半かな」とも…「夜すがら」とは言へるなり」までの説明を受けて、結論を述べている。

原文
「独ひとり雨聞くカ四連体」が格助主格下の句しものくなら断定未然ば接助順接仮定、させる連体節ふしも係助強意なきク連体歌に断定連用て接助単純接続ある補・ラ変連体べき当然連体なり断定終止。

現代語訳もし「独り雨聞く」が(意味のうえでも)下の句であったなら、これといってすぐれた所もない歌になるにちがいない。

させる
(下に打消の語を伴って)これといった。たいした。
節(ふし)
きわだった点。すぐれたところ。
解説

「『独り雨聞く』が下の句ならば」とは、倒置がなく、意味のうえでも「独り雨聞く」が下の句になるということ。たとえば「あはれ知る友こそかたき世なりけれ独り雨聞く秋の夜半かな」のように、そこで言い切る形をいう。

そうなると余情が残らないので、「させる節もなき歌」になってしまう。

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①為秀
    ②了俊
    ③夜半
    ④殊勝
    ⑤肝要
    ⑥節

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    ①ためひで
    ②りょうしゅん
    ③よわ
    ④しゅしょう
    ⑤かんよう
    ⑥ふし

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①かたき
    ②あはれ
    ③夜すがら
    ④いづち
    ⑤殊勝に
    ⑥肝要なり
    ⑦させる節もなき

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    ①めったにない・得がたい
    ②しみじみとした情趣
    ③一晩中・夜通し
    ④どこ
    ⑤格別にすぐれて
    ⑥非常に大切だ
    ⑦これといってすぐれた点もない

B 文法

  1. 次の助動詞の意味と活用形を答えよ。
    ①弟子になられたるなりの「れ」
    ②誘はれての「れ」
    ③かく雨をば聞くべからずの「べから」
    ④果つべきがの「べき」
    ⑤「夜すがら」とは言へるなりの「る」

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    ①尊敬・連用形(作者から了俊への敬意)
    ②受身・連用形
    ③当然・未然形
    ④推量・連体形
    ⑤完了・連体形

  2. 次の「なら」「に」を文法的に説明せよ。
    ①弟子になられたるなりの「なら」
    ②友のあるならばの「なら」
    ③上の句にてあるなりの「に」

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    ①ラ行四段活用の動詞「なる」の未然形
    ②断定の助動詞「なり」の未然形
    ③断定の助動詞「なり」の連用形

  3. 「あるならば」の「ば」と同じく、順接の仮定条件を表す「ば」を含む部分を、本文中から三つ抜き出せ。

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    語りも明かさば/「独り雨聞く秋の夜半かな」ともあらば(あらば)/下の句ならば

C 現代語訳・内容

  1. 「あはれ知る友こそかたき世なりけれ独り雨聞く秋の夜すがら」の歌について、①何句切れか。②使われている表現技法を二つ答えよ。③歌全体を現代語訳せよ。

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    ①三句切れ
    ②倒置法・体言止め
    ③しみじみとした情趣のわかる友というものは、なかなか得られない世の中であるなあ。独りで雨の音を聞いて過ごす、この秋の夜通し(思うことは)。

  2. 「かく雨をば聞くべからず」を、「かく」の内容を補って現代語訳せよ。また、どのような状況であればこうなると言っているか。

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    訳=このように独りで雨の音を聞くはずがない。 状況=情趣のわかる友がいて、その友に誘われてどこかへ出かけ、語り明かしている状況。

  3. 「いかんともせぬところが殊勝におぼえ侍るなり」を現代語訳せよ。

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    (どこへも)行こうともしないところが、格別にすぐれていると思われるのです。(「いかん」を「如何」と見て、「どうしようもない(孤独な)ところが、しみじみと心ひかれるのです」と訳す読み方もある。)

  4. 「『秋の夜すがら』と言ひ捨てて、果てざるところが肝要なり」について、①「果つ」「言ひ捨て」とは、それぞれ具体的にどうすることか。②「果てざるところが肝要」なのはなぜか。

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    ①果つ=「夜半かな」のように終助詞「かな」などで結んで言い切り、歌の意味が切れて終わること。 言ひ捨て=「夜すがら」で言いさして、すべてを言い切らないこと。
    ②意味が切れないことで、独りで思う余情(余韻)が残るから。

  5. 「『独り雨聞く秋の夜すがら思ひたるは』といふ心を残して」について、①「心を残して」とはどういうことか、漢字二字の語を使って説明せよ。②「思ひたる」内容は何か。歌の中から抜き出せ。

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    ①言いたいことを言い切らずに、余情として残すこと。
    ②あはれ知る友こそかたき世なりけれ

  6. 「『独り雨聞く』が下の句ならば、させる節もなき歌にてあるべきなり」について、①「『独り雨聞く』が下の句」とはどういうことか。②全体を現代語訳せよ。

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    ①倒置がなく、意味のうえでも「独り雨聞く」が下の句になっている(「秋の夜半かな」などで言い切る)ということ。
    ②もし「独り雨聞く」が下の句であったら、これといってすぐれた点もない歌になるにちがいない。

  7. 筆者は「あはれ知る…」の歌のどのような点がすぐれていると言っているか。説明せよ。

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    意味のうえでは先にくるはずの「独り雨聞く秋の夜すがら」を後に置き、「夜すがら」と言いさして意味を切らないことで、「独りで夜通し思ったことは」という気持ちを余情として残している点。