『毎月抄』心と詞 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. ある人の意見
  4. 筆者の考え
  5. 心と詞は鳥の翼
  6. テスト予想問題

『毎月抄(まいげつしょう)』「心と詞」の現代語訳・品詞分解・敬語・解説です。教科書によっては「心と言葉」という題で、「詞」を「言葉」と書いて載っています。

ある人は「昔の歌は実ばかりで花がなく、今の歌は花ばかりで実がない」と言いました。藤原定家はこれをもっともだと認めながら、実とは心、花とは詞のことであり、昔の歌か今の歌かで決まるものではないと付け加えます。そして、心と詞は鳥の左右の翼のようにどちらも欠かせないと述べ、最後に、強いて言えば心のほうが大切だとまとめます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞・敬語の種類と向きを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

ある人の意見

原文
ある連体人、花実くわじつの格助体修ことを格助対象歌に格助対象立てタ下二連用申まうし補・サ四連用謙て接助単純接続侍はべる補・ラ変連体丁→読み手に格助対象とりラ四連用て接助単純接続、

現代語訳ある人が、花と実のことを歌にあてはめて申しておりましたことについて、

花実(くわじつ)
花と実。
歌に立つ
歌にあてはめる。
解説

「申し」は謙譲の補助動詞、「侍る」は丁寧の補助動詞。

原文
「古いにしへの格助体修歌は係助区別みな副、実みを格助対象存そんしサ変連用て接助単純接続花を格助対象忘れラ下二連用、

現代語訳「昔の歌はみな、実を大事に保って花を忘れており、

古(いにしへ)
昔。
存す
持っている。保つ。
原文
近代きんだいの格助体修歌は係助区別花を格助対象のみ副助限定心に格助対象かけカ下二連用て接助単純接続実に格助対象は係助強意目も係助強意かけカ下二未然ぬ打消連体から格助原因。」と格助引用申まうしサ四連用謙た存続連体・音めり婉曲終止。

現代語訳近ごろの歌は花ばかりを気にかけて、実には目も向けないからだ。」と申したようです。

近代
近ごろ。
目もかく
注意を向ける。「目もかけぬ」で、まったく目を向けない。
解説

ある人の意見は、昔の歌は実(心)はあるが花(詞)がなく、近ごろの歌は花ばかりを気にして実を無視しているということ。

「ためり」は「たるめり」が「たんめり」となり、「ん」を書かない形。

筆者の考え

原文
もつとも副、さ副と格助引用おぼえヤ下二連用侍はべる補・ラ変連体丁→読み手上うへ、古今序こきんじよに格助場所も係助添加そ代名の格助体修意い侍はべるラ変連体丁→読み手やらむ。

現代語訳いかにも、もっともなことだと思われますうえ、『古今和歌集』の序文にもそうした趣旨が書かれているようでございます。

もつとも
なるほど。いかにも。
さ
そのように。
やらむ
〜であろうか。〜のようだ。「にやあらむ」がつまった形。
解説

「さ」は、ある人の意見「古の歌はみな、…目もかけぬから」の内容。筆者はまず、この意見に賛成している。

「おぼえ侍る」の「侍る」は丁寧の補助動詞。「その意侍る」の「侍る」は、「ある」の意味の丁寧語(動詞)。

原文
さる連体に格助対象つきカ四連用て接助単純接続、なほ副こ代名の格助体修下したの格助体修了見れうけん、愚推ぐすいを格助対象わづかにナリ連用めぐらしサ四連用みマ上一連用侍れはべる補・ラ変已然丁→読み手ば接助順接確定、心得こころうア下二終止べき当然連体こと侍はべるラ変連体丁→読み手に断定連用や係助疑問。

現代語訳そのことについて、さらに以下のような私なりの考えや、つたない推測を少しめぐらしてみますと、心得ておくべきことがあるのではないでしょうか。

了見(れうけん)
考え。
愚推(ぐすい)
自分のつたない推測。自分の考えをへりくだって言う語。
心得
理解する。心にとめる。
解説

「にや」のあとに「あらむ」が省略されている(結びの省略)。

原文
いはゆる連体実と格助引用申まうすサ四連体謙は係助区別心、花と格助引用申まうすサ四連体謙は係助区別詞ことばなり断定終止。

現代語訳いわゆる実と申しますのは心、花と申しますのは詞なのです。

解説

「実=心、花=詞」と、ある人の言う花と実が何を表すかを示している。

原文
必かならず副古いにしへの格助体修詞ことば強くク連用聞きこゆるヤ下二連体を格助対象実と格助引用申まうすサ四終止謙と格助引用は係助強意定さだめがたかるク連体べし推量終止。

現代語訳昔の歌の詞が強く感じられるものを、必ず実があると申すとは、決めにくいでしょう。

解説

「必ず」は「(実と)申す」にかかる。昔の歌の詞が強く感じられるからといって、必ず実のある歌だとは決められない、ということ。

ここで筆者は、「古の歌はみな、実を存して」というある人の意見に、例外もあると一部訂正している。

原文
古人こじんの格助体修詠作えいさくに格助対象も係助添加、心なからク未然む婉曲連体歌を格助対象ば係助強意実なきク連体歌と格助引用ぞ係助強意申まうすサ四終止謙べき当然連体。

現代語訳昔の人の歌でも、心がないような歌は、実のない歌と申すべきです。

詠作
詠んだ歌。
解説

「ぞ」の結びは「べき」(連体形)。

原文
今の格助体修人の格助主格詠よめマ四已然ら完了未然む婉曲連体に格助対象も係助添加、うるはしくシク連用正ただしからシク未然む婉曲連体を格助対象ば係助強意実あるラ変連体歌と格助引用ぞ係助強意申まうしサ四連用謙侍はべる補・ラ変連体丁→読み手べく当然連用候さうらふ補・ハ四連体丁→読み手。

現代語訳今の人が詠んだような歌でも、きちんと整っているような歌は、実のある歌と申すべきでございます。

うるはし
きちんと整っている。端正だ。
解説

前の文と対句になっている。「古人の詠作にも」と「今の人の詠めらむにも」、「心なからむ歌」と「うるはしく正しからむ」、「実なき歌」と「実ある歌」が対応する。

「詠めらむ」の「ら」は完了の助動詞「り」の未然形。「なからむ」「正しからむ」の「ら」は形容詞の活用語尾。

「ぞ」の結びは「候ふ」(連体形)。

心と詞は鳥の翼

原文
さて接、「心を格助対象先さきに格助資格せよサ変命令。」と格助引用教をしふれハ下二已然ば接助順接確定、「詞ことばを格助対象次つぎに格助資格せよサ変命令。」と格助引用申まうすサ四連体謙に格助対象似にナ上一連用たり存続終止。

現代語訳さて、「心を第一にしなさい。」と教えると、「詞は二の次にしなさい。」と申しているのに似てしまう。

解説

心を第一にせよと教えると、詞はどうでもよいと言っているように聞こえてしまう、ということ。

原文
「詞ことばを格助対象こそ係助強意詮せんと格助結果すサ変終止べけれ当然已然。」と格助引用言いはハ四未然ば接助順接仮定、また副「心は係助区別なくク連用とも接助逆接仮定。」と格助引用言いふハ四連体に断定連用て接助単純接続侍はべり補・ラ変終止丁→読み手。

現代語訳(反対に)「詞こそを大切にしなければならない。」と言うと、今度は「心はなくても(よい)。」と言っていることになるのです。

詮(せん)
いちばん大切なこと。要点。
解説

「こそ」の結びは「べけれ」(已然形)。

「心はなくとも」のあとに「よし」などを補って読む。詞を重んじよと言うと、心はなくてもよいと言っているように聞こえてしまう。

前の文とあわせて、心と詞のどちらか一方だけを重んじるのはよくない、ということ。

原文
所詮しよせん副心と格助並列詞ことばと格助並列を格助対象兼かねナ下二連用たら存続未然む婉曲連体を格助対象よきク連体歌と格助引用申まうすサ四終止謙べし適当終止。

現代語訳結局、心と詞とを兼ね備えているような歌を、よい歌と申すのがよいでしょう。

所詮
結局。つまるところ。
解説

ここが筆者の結論。心と詞の両方を兼ね備えた歌がよい歌である。

原文
心・詞ことばの格助体修二ふたつは係助区別鳥とりの格助体修左右さいうの格助体修翼つばさの格助体修ごとくなる比況連体べき当然連体に断定連用こそ係助強意と格助引用ぞ係助強意思おもうハ四連用・音給たまへ補・ハ下二連用謙侍はべり補・ラ変連用丁→読み手ける詠嘆連体。

現代語訳心と詞の二つは、鳥の左右の翼のように(両方そろって)いるべきものであろうと思っております。

解説

「鳥の左右の翼」のたとえは、鳥が左右の翼のどちらが欠けても飛べないように、心と詞はどちらも欠かせず、両方がつり合って備わっているべきだということ。

「こそ」のあとに「あらめ」が省略されている(結びの省略)。「ぞ」の結びは「ける」(連体形)。

「給へ」は下二段活用の「給ふ」で、謙譲の補助動詞。自分が「思う」ことをへりくだって言う。「侍り」は丁寧の補助動詞。「思う給へ侍りける」で「思っております」。

原文
ただし接、心・詞ことばの格助体修二ふたつを格助対象ともに兼かねナ下二連用たら存続未然む婉曲連体は係助区別言いふハ四連体に格助比較及およばバ四未然ず打消連用、

現代語訳ただし、心と詞の両方をそなえた歌がすばらしいのは言うまでもないが、

言ふに及ばず
言うまでもない。
解説

心と詞を両方そなえた歌がすばらしいのは、言うまでもない、ということ。

現代語訳心の欠けた歌と比べるなら、詞のへたな歌のほう(がまだよいの)でございましょう。

つたなし
へただ。未熟だ。
解説

「こそ」の結びは「め」(已然形)。

「詞のつたなき」のあとに「歌」を補い、「心はある(が詞はへたな)歌」と読む。強いて言えば、筆者は心のほうを重んじている。

ほかの歌論:『無名抄』おもて歌

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①花実
    ②古
    ③了見
    ④愚推
    ⑤詞
    ⑥詮
    ⑦所詮

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    ①かじつ
    ②いにしえ
    ③りょうけん
    ④ぐすい
    ⑤ことば
    ⑥せん
    ⑦しょせん

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①歌に立て
    ②存し
    ③目もかけぬ
    ④もつとも
    ⑤愚推
    ⑥うるはしく正しからむ
    ⑦詮
    ⑧所詮
    ⑨つたなき

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    ①歌にあてはめて
    ②持っていて・保って
    ③まったく目を向けない
    ④なるほど・いかにも
    ⑤自分のつたない推測(考え)
    ⑥きちんと整っているような
    ⑦いちばん大切なこと・要点
    ⑧結局・つまるところ
    ⑨へたな・未熟な

B 文法・敬語

  1. 「さとおぼえ侍る上、古今序にもその意侍るやらむ」の二つの「侍る」の違いを説明せよ。

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    「おぼえ侍る」の「侍る」は、動詞「おぼゆ」に付いて丁寧の意味を添える補助動詞。「その意侍る」の「侍る」は、「ある」の意味を丁寧に言う動詞(丁寧語)。

  2. 「と申しためり」の「ためり」について、もとの形を答え、文法的に説明せよ。

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    もとの形=たるめり。助動詞「たり」の連体形「たる」が撥音便で「たん」となり、その「ん」が書かれていない形に、助動詞「めり」の終止形が付いたもの。

  3. 次の「らむ」のうち、文法的にほかと異なるものを一つ選び、その「ら」と「む」を文法的に説明せよ。
    A心なからむ歌 B今の人の詠めらむにも Cうるはしく正しからむを D心と詞とを兼ねたらむを

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    B。「ら」=完了の助動詞「り」の未然形、「む」=婉曲の助動詞「む」の連体形。(A・Cは形容詞の未然形活用語尾、Dは助動詞「たり」の未然形活用語尾の「ら」に「む」が付いたもの。)

  4. 「鳥の左右の翼のごとくなるべきにこそとぞ思う給へ侍りける」について、①「給へ」の活用の種類と敬語の種類を答えよ。②「なるべきにこそ」のあとに省略されている語を答えよ。③「思う給へ侍りける」を現代語訳せよ。

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    ①ハ行下二段活用・謙譲語(謙譲の補助動詞)
    ②あらめ
    ③思っております。

C 現代語訳・内容

  1. 「ある人、花実のことを歌に立て申して侍る」について、①「花」「実」はそれぞれ何のたとえか。本文の語(一語)で答えよ。②「ある人」の意見を説明せよ。③筆者はその意見に対してどのような態度をとっているか。

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    ①花=詞 実=心
    ②昔の歌はみな実(心)はあるが花(詞)がなく、近ごろの歌は花ばかりを気にして実を無視している、という意見。
    ③おおむね賛成しているが、例外もあると付け加えている。

  2. 「必ず古の詞強く聞こゆるを実と申すとは定めがたかるべし」を現代語訳せよ。

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    昔の歌の詞が強く感じられるものを、必ず実がある(歌だ)と申すとは、決めにくいでしょう。

  3. 「心なからむ歌」と反対の歌を表している語句(十字以内)を、本文から抜き出せ。

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    うるはしく正しからむ

  4. 「『詞をこそ詮とすべけれ。』と言はば、また『心はなくとも。』と言ふにて侍り」について、①「心はなくとも」のあとに補う語を答えよ。②全体を現代語訳せよ。

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    ①よし
    ②「詞こそを大切にすべきだ。」と言うと、今度は「心はなくてもよい。」と言っていることになるのです。

  5. 「心・詞の二つは鳥の左右の翼のごとくなるべき」とはどういうことか。説明せよ。

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    鳥が左右の翼の両方がなければ飛べないように、歌の心と詞はどちらも欠かすことができず、両方がつり合って備わっているべきだということ。

  6. 「心の欠けたらむよりは詞のつたなきにこそ侍らめ」を現代語訳せよ。また、ここから、筆者は心と詞のどちらをより重んじていると考えられるか。

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    訳=心の欠けた歌と比べるなら、詞のへたな(が心のある)歌のほうがよいでしょう。 重んじているもの=心