『紫式部日記』土御門邸の秋 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 土御門殿の秋の景色
  4. 中宮彰子の姿
  5. 作者の心
  6. テスト予想問題

『紫式部日記(むらさきしきぶにっき)』「土御門邸の秋」の現代語訳・品詞分解・敬語・解説です。教科書によっては「秋のけはひ」という題で載っています。

日記の冒頭の場面です。出産のために里下がりしている中宮彰子のいる土御門殿の、秋の景色と読経の声が描かれ、後半では、苦しさを見せない中宮の姿に、作者が日ごろの憂いを忘れていく心の動きが書かれます。「聞きまがはさる」の内容、「べかめる」の文法、敬意の方向、「かつはあやし」の心情がよく問われます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

土御門殿の秋の景色

原文
秋の格助体修けはひ入り立つタ四連体ままに格助状態、土御門殿つちみかどどのの格助体修ありさま、言はハ四未然む婉曲連体かたなくク連用をかしシク終止。

現代語訳秋の気配が濃くなっていくにつれて、土御門殿のたたずまいは、言葉にできないほど趣深い。

入り立つ
(季節などが)深まる、入りこんでくる。「入り立つままに」は、深まるにつれて。
土御門殿(つちみかどどの)
藤原道長の屋敷。
言はむかたなし
何とも言いようがない。
原文
池の格助体修わたりの格助体修梢こずゑども、遣水やりみづの格助体修ほとりの格助体修草むら、おのがじし副色づきわたりラ四連用つつ接助並行、

現代語訳池の岸辺の木々の梢も、遣水のそばの草むらも、思い思いに一面色づいていき、

わたり
あたり。
遣水(やりみづ)
庭に引き入れた水の流れ。
おのがじし
それぞれ、めいめいに。
原文
おほかたの格助体修空も係助添加艶えんなるナリ連体に格助対象もてはやさサ四未然れ受身連用て接助単純接続、不断の格助体修御読経みどきやうの格助体修声々こゑごゑ、あはれまさりラ四連用けり過去終止。

現代語訳あたり一帯の空の美しさにも引き立てられて、絶え間なく続く御読経の声々は、いっそう心にしみるものになった。

おほかた
あたり一帯、全体。
艶(えん)なり
優美だ、しっとりと美しい。
もてはやす
引き立てる。
不断の御読経
僧たちが交代で、昼も夜も絶え間なく経を読むこと。ここは、中宮の安産を祈るため。
解説

「おほかたの空も艶なるにもてはやされて」は、あたり一帯の空の美しさにも引き立てられて、読経の声がいっそうしみじみと感じられる、ということ。

原文
やうやう副涼しきシク連体風の格助体修けはひに格助添加、例の格助体修絶えせサ変未然ぬ打消連体水の格助体修おとなひ、夜もすがら副聞きまがはさサ四未然る自発終止。

現代語訳しだいに涼しくなる風の気配に加えて、いつものように絶えず流れる遣水の音が、一晩中(読経の声と)まじり合って聞こえてくる。

やうやう
しだいに、だんだん。
例の
いつもの。
おとなひ
音。「水のおとなひ」は遣水の流れる音。
夜もすがら
一晩中。
聞きまがはす
まじり合って聞こえる。
解説

まじり合って聞こえるのは、遣水の音(絶えせぬ水のおとなひ)と読経の声(不断の御読経の声々)。

中宮彰子の姿

原文
御前おまへに格助主格も係助添加、近うク連用・音候さぶらふハ四連体謙→中宮彰子人々、はかなきク連体物語するサ変連体を格助対象聞こしめしサ四連用尊→中宮彰子つつ接助並行、

現代語訳中宮様におかれても、おそばに控えている女房たちがたわいない話をしているのに、耳を傾けていらっしゃりながら、

御前(おまへ)
ここは中宮彰子。
はかなし
とりとめもない、ちょっとした。
解説

「御前にも」は「中宮様におかれても」。「に」は、敬うべき人を主語として示している。ここから、景色の話から中宮の話に移る。

「候ふ」は謙譲語で、作者から中宮への敬意。「聞こしめし」は尊敬語で、作者から中宮への敬意。

現代語訳(身重のため)さぞお苦しくていらっしゃるだろうに、何でもないようにそれを隠しておいでになるご様子などは、まったく今さら言うまでもない(すばらしい)ことだけれど、

なやまし
(体の)具合が悪い、苦しい。
さりげなし
何事もないようだ、そ知らぬふうだ。
もて隠す
(人目から)隠す。
さらなり
言うまでもない。
解説

「なやましうおはしますべかめる」は、中宮が、身重のために気分がすぐれないであろう様子。

「べかめる」は、推量「べし」の連体形「べかる」の撥音便「べかん」の「ん」を書かない形+推定「めり」の連体形。

「もて隠させ給へる」の「せ」は尊敬で、「給へ」と重ねて中宮への高い敬意を表す。苦しさを隠すのは、周りの人々に心配をかけまいとする心づかいと考えられる。

「さらなること」は、そうした中宮のすばらしさは今さら言うまでもない、ということ。

作者の心

原文
憂き世の格助体修慰なぐさめに格助資格は係助区別、かかる連体御前おまへを格助対象こそ係助強意たづねナ下二連用参るラ四終止謙→中宮彰子べかり当然連用けれ詠嘆已然と格助引用、

現代語訳つらい世の中の慰めとしては、このような中宮様をこそ探し求めてでもお仕えするべきだったのだなあと、

憂き世
つらいこの世。
かかる
このような。
たづぬ
探し求める。
解説

「参る」は謙譲語で「お仕えする」。作者から中宮への敬意。

「こそ」の結びは「けれ」(詠嘆「けり」の已然形)。「べかりけれ」は「〜べきだったのだなあ」。こんなにすばらしい中宮にこそお仕えするべきだった、と気づいた作者の感動。

原文
うつし心を格助対象ば係助強意ひきたがへハ下二連用、たとしへなくク連用よろづ忘らラ四未然るる自発連体も係助添加、かつは副あやしシク終止。

現代語訳ふだんの(沈みがちな)心とはうってかわって、たとえようもなく何もかもがおのずと忘れられてしまうのも、我ながら一方では不思議なことだ。

うつし心
ふだんの心、正気の心。
ひきたがふ
(すっかり)変える。
たとしへなし
たとえようもない。
かつは
一方では。
あやし
不思議だ。
解説

「うつし心」は、ふだんの、この世をつらく思う沈みがちな心。

「かつはあやし」は、すばらしい中宮の姿に接すると、日ごろの憂いをすっかり忘れてしまう自分の心を不思議に思う、ということ。

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①土御門殿
    ②遣水
    ③御読経
    ④御前
    ⑤候ふ
    ⑥梢

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    ①つちみかどどの
    ②やりみず
    ③みどきょう
    ④おまえ
    ⑤さぶらう
    ⑥こずえ

  2. 本文で使われている意味を答えよ。
    ①入り立つ
    ②おのがじし
    ③艶なり
    ④夜もすがら
    ⑤はかなし
    ⑥なやまし
    ⑦さらなり
    ⑧たとしへなし

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    ①(季節の気配が)深まる
    ②それぞれ・めいめいに
    ③優美だ
    ④一晩中
    ⑤とりとめもない
    ⑥(体の)具合が悪い・苦しい
    ⑦言うまでもない
    ⑧たとえようもない

B 文法・敬語

  1. 次の助動詞の意味を答えよ。
    ①「もてはやされて」の「れ」
    ②「聞きまがはさる」の「る」
    ③「もて隠させ給へる」の「せ」と「る」
    ④「忘らるるも」の「るる」

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    ①受身
    ②自発
    ③せ=尊敬、る=存続
    ④自発

  2. 「なやましうおはしますべかめるを」について、①「べかめる」を文法的に説明せよ。②だれのことかを補って現代語訳せよ。

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    ①推量の助動詞「べし」の連体形「べかる」の撥音便「べかん」の「ん」を書かない形「べか」+推定の助動詞「めり」の連体形「める」。②(中宮様は、身重のために)さぞお苦しくていらっしゃるだろうに

  3. 次の敬語の種類と、だれからだれへの敬意かを答えよ。
    ①近う候ふ人々
    ②聞こしめしつつ
    ③たづね参る

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    ①謙譲語、作者から中宮彰子へ
    ②尊敬語、作者から中宮彰子へ
    ③謙譲語、作者から中宮彰子へ

  4. 「かかる御前をこそたづね参るべかりけれ」について、係り結びを説明し、現代語訳せよ。

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    係助詞「こそ」の結びが、詠嘆の助動詞「けり」の已然形「けれ」になっている。訳=このような(すばらしい)中宮様をこそ、探し求めてでもお仕えするべきだったのだなあ。

C 内容

  1. 「おほかたの空も艶なるにもてはやされて」とは、何が、どのようになっているということか。

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    不断の御読経の声々が、あたり一帯の美しい空にも引き立てられて、いっそうしみじみと感じられるということ。

  2. 「夜もすがら聞きまがはさる」について、①何と何がまじり合って聞こえるのか、本文中の語句で答えよ。②「不断の御読経」は何のために行われているのか。

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    ①「不断の御読経の声々」と「絶えせぬ水のおとなひ」(遣水の音)
    ②出産をひかえた中宮彰子の安産を祈るため。

  3. 「さりげなくもて隠させ給へる御ありさま」について、中宮は何を隠しているのか。また、作者はその様子をどう感じているか。

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    身重で気分がすぐれないこと。周りに心配をかけまいと苦しさを見せない中宮の様子を、言うまでもなくすばらしいと感じている。

  4. 「うつし心をばひきたがへ、たとしへなくよろづ忘らるるも、かつはあやし」について、①「うつし心」とはどのような心か。②作者は何を「あやし」と思っているのか。

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    ①ふだんの、この世をつらく思っている沈みがちな心。②すばらしい中宮の姿に接すると、日ごろの憂いをすっかり忘れてしまう自分の心の変わりようを、不思議に思っている。