『紫式部日記』和泉式部と清少納言 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 和泉式部の手紙
  4. 和泉式部の和歌
  5. 清少納言への批判
  6. テスト予想問題

『紫式部日記(むらさきしきぶにっき)』「和泉式部と清少納言」の現代語訳・品詞分解・解説です。

『源氏物語』の作者紫式部が、同じ時代の才女である和泉式部と清少納言を批評する場面です。和泉式部については才能を認めながら欠点も挙げ、清少納言についてはほとんど全否定しています。係り結びの省略、「侍らざめれ」「なめり」の文法、指示語の内容、二人への評価の違いがよく問われます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

表示:

現代語訳・品詞分解・解説

和泉式部の手紙

原文
和泉式部いづみしきぶと格助引用いふハ四連体人こそ係助強意、おもしろうク連用・音書きかはしサ四連用ける過去連体。

現代語訳和泉式部という人は、本当に趣のある手紙をやりとりした(人です)。

おもしろし
趣がある、すばらしい。
書きかはす
(手紙を)やりとりする。
解説

「こそ」の結びは已然形になるはずだが、「ける」は連体形。下に「人なれ」などが省略されている(結びの省略)。「おもしろう書きかはしける人なれ」ということ。

原文
されど接、和泉いづみは係助区別けしからシク未然ぬ打消連体かたこそ係助強意あれラ変已然。

現代語訳けれども、和泉には感心できない面があります。

けしからず
感心できない、よくない。
解説

「けしからぬかた」は、和泉式部の自由奔放な恋愛(男性関係)のことと考えられる。和泉式部は親王たちとの恋で知られていた。

原文
うちとけカ下二連用て接助単純接続文ふみはしり書きカ四連用たる完了連体に格助時間、そ代名の格助体修かたの格助体修才ざえあるラ変連体人、はかないク連体・音言葉の格助体修、にほひも係助添加見えヤ下二連用侍はべる補・ラ変連体丁→読み手めり推定終止。

現代語訳くつろいで手紙をさらさらと書いたときには、その方面(文章)の才能がある人で、何気ない言葉にも、つややかな美しさが見えるようです。

うちとく
くつろぐ、気を許す。
はしり書く
さらさらと書く。
才(ざえ)
才能、学識。
はかなし
ちょっとした、何気ない。「はかない」は「はかなき」のイ音便。
にほひ
つややかな美しさ、魅力。
解説

「そのかた」は、手紙をさらさらと書く方面、つまり文章の才能のこと。気楽に書いた手紙のちょっとした言葉にも、輝きがあるとほめている。

和泉式部の和歌

原文
歌は係助区別、いと副をかしきシク連体こと。

現代語訳和歌は、とても趣深いものです。

をかし
趣がある。
原文
ものおぼえ、歌の格助体修ことわり、まことの格助体修歌詠みざまに断定連用こそ係助強意侍はべら補・ラ変未然丁→読み手ざ打消連体・音めれ推定已然、

現代語訳(けれども、)古歌の知識や歌の理論(の点)では、本物の歌人の詠みぶりではないようですが、

ものおぼえ
(古歌などについての)知識。
ことわり
理論、筋道。「歌のことわり」は、歌の理論や批評。
解説

「侍らざめれ」は、丁寧の補助動詞「侍り」(ラ変)の未然形+打消「ず」の連体形「ざる」の撥音便「ざん」の「ん」を書かない形+推定「めり」の已然形。

「こそ〜めれ」で文が終わらず、「、」で下に続いているので、逆接の意味になる(〜ではないようですが)。

原文
口に格助場所まかせサ下二連用たる完了連体ことどもに格助対象、かならず副をかしきシク連体一ひとふしの格助同格、目に格助場所とまるラ四連体詠みそへハ下二連用侍はべり補・ラ変終止丁→読み手。

現代語訳思いつくまま口にした歌などには、きまって趣深い一か所があって、それが目をひくように詠みこまれています。

一ふし
一つの点、一か所。
解説

「一ふしの」の「の」は同格。「趣のある一点で、目にとまるもの」と訳す。

知識や理論はなくても、口から出るままに詠んだ歌に、必ず人をはっとさせる表現がある、という和泉式部の歌の長所。

原文
それ代名だに副助類推、人の格助主格詠みマ四連用たら完了未然む婉曲連体歌、難なんじサ変連用ことわりラ四連用ゐワ上一連用たら完了未然む仮定連体は係助区別、

現代語訳それほどの歌人でさえ、他人の詠んだ歌にけちをつけたり、よしあしを論じたりしているような場合には、

難ず
非難する。
ことわる
(よしあしを)判断する、批評する。
解説

「それだに」の「それ」は和泉式部。「だに」は類推で、「それほどの歌人でさえ」の意。

原文
いでや感さ副まで副助範囲心は係助区別得ア下二未然じ打消推量終止、口に格助手段いと副歌の格助主格詠まマ四未然るる自発連体な断定連体・音めり推定終止と格助引用ぞ係助強意、見えヤ下二連用たる完了連体すぢに断定連用侍はべる補・ラ変連体丁→読み手かし終助強意。

現代語訳いやもう、そこまで歌のことがわかってはいないだろう、口からすらすらと自然に歌が出てくるのであるようだ、と見えるたぐいの人なのですよ。

いでや
いやもう、いやいや。
解説

「さまで心は得じ」は、他人の歌を非難したり批評したりできるほど、歌の道に通じてはいないだろうということ。

「詠まるる」の「るる」は自発。「なめり」は、断定「なり」の連体形「なる」の撥音便「なん」の「ん」を書かない形+推定「めり」。

「ぞ」の結びは「侍る」(連体形)。

原文
恥づかしげナリ語幹の格助体修歌詠みや終助詠嘆と格助引用は係助区別おぼえヤ下二連用侍はべら補・ラ変未然丁→読み手ず打消終止。

現代語訳こちらが気おくれするほど立派な歌人だとは思われません。

恥づかしげなり
こちらが恥ずかしくなるほど立派だ。
解説

「恥づかしげの歌詠み」は、こちらが気おくれするほどすぐれた歌人。和泉式部の才能は認めながらも、そこまでの歌人とは認めていない。

清少納言への批判

原文
清少納言せいせうなごんこそ係助強意、したり顔にナリ連用いみじうシク連用・音侍はべり補・ラ変連用丁→読み手ける過去連体人。

現代語訳清少納言は、得意顔でひどくえらそうにしていた人(です)。

したり顔なり
得意顔だ。「したり顔に」で、得意顔で。
いみじ
はなはだしい。ここは、ひどく(えらそうにしている)。
解説

「こそ」の結びは省略されている。「人」の下に「なれ」を補う。

和泉式部のときと違い、ほめる言葉から始めず、いきなり「したり顔」と批判している。

原文
さばかり副さかしだちタ四連用、真名まな書きちらしサ四連用て接助単純接続侍はべる補・ラ変連体丁→読み手ほども係助強意、よくク連用見れマ上一已然ば接助順接確定、まだ副いと副足らラ四未然ぬ打消連体こと多かりク終止。

現代語訳あれほど利口そうにふるまって、漢字を書き散らしておりますが、その(学識の)程度も、よく見るとまだまだ足りないところが多いのです。

さばかり
あれほど。
さかしだつ
利口ぶる、かしこそうにふるまう。
真名(まな)
漢字。対になる語は「仮名」。
解説

「真名書きちらして」は、漢字(漢学の知識)をひけらかしているということ。その学識も、よく見ればまだ十分ではない、と批判している。

原文
かく副、人に格助比較異ならナリ未然む意志終止と格助引用思ひハ四連用好このめマ四已然る存続連体人は係助区別、かならず副見劣りしサ変連用、行く末うたて副のみ副助限定侍はべれラ変已然丁→読み手ば接助順接確定、

現代語訳このように、他人と違って(すぐれて)いようと思い、好んでそうふるまう人は、必ず見劣りがして、行く末は悪くなるばかりですから、

異なり
違っている。「人に異ならむ」は、他の人と違って(すぐれて)いよう、ということ。
このむ
好んで(そうふるまう)。
見劣りす
(期待より)劣って見える。
うたて
ひどく、いやなことに。「うたてのみ」で、悪くなるばかり。
解説

「人に異ならむと思ひこのめる人」は、人よりすぐれていると見せようと、わざとそうふるまう人。清少納言のことを言っている。

原文
艶えんにナリ連用なりラ四連用ぬる完了連体人は係助区別、いと副すごうク連用・音すずろなるナリ連体折をりも係助添加、もののあはれに格助目的すすみマ四連用、をかしきシク連体ことも係助添加見すぐさサ四未然ぬ打消連体ほどに格助時間、

現代語訳風流ぶるのが身にしみついてしまった人は、ひどく殺風景でつまらないときでも、しみじみ心を動かされたようにふるまい、趣のあることを一つも見のがすまいとしているうちに、

艶(えん)なり
風流だ、優美だ。
すごし
もの寂しい、殺風景だ。
すずろなり
これといったこともない、つまらない。
見すぐす
見逃す。
解説

「艶になりぬる人」は、風流ぶることが身についてしまった人。

「すごうすずろなる折」は、もの寂しくてつまらないとき。そんなときにまで、しみじみと感動したようにふるまい、趣のあることを見逃すまいとする。

原文
おのづから副さるラ変連体まじく不適当連用あだなるナリ連体さまに格助結果も係助強意なるラ四連体に断定連用侍はべる補・ラ変連体丁→読み手べし推量終止。

現代語訳自然と、そうあってはならない浮ついた様子にもなるのでしょう。

おのづから
自然と。
さるまじ
そうあってはならない、よくない。
あだなり
浮ついている、誠実でない。
解説

「さるまじくあだなるさま」は、そうあってはならない浮ついた様子。

原文
そ代名の格助体修あだにナリ連用なりラ四連用ぬる完了連体人の格助体修果て、いかで副か係助反語は係助強意よくク連用侍はべら補・ラ変未然丁→読み手む推量連体。

現代語訳その浮ついた人になってしまった人の行く末が、どうしてよいはずがありましょうか(、いや、よくはありません)。

果て
行く末、なれの果て。
解説

「あだになりぬる人」は、前の「艶になりぬる人」と同じ人で、清少納言を指す。

「いかでかは〜む」は反語。「どうしてよいことがありましょうか、いや、よいはずがない」と、清少納言の行く末を強く否定している。

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①文
    ②才
    ③真名
    ④艶
    ⑤一ふし
    ⑥難じ

    解答を見る

    ①ふみ
    ②ざえ
    ③まな
    ④えん
    ⑤ひとふし
    ⑥なんじ

  2. 本文で使われている意味を答えよ。
    ①にほひ
    ②ものおぼえ
    ③いでや
    ④したり顔
    ⑤さかしだつ
    ⑥うたて
    ⑦すずろなり
    ⑧あだなり

    解答を見る

    ①つややかな美しさ・魅力
    ②古歌などについての知識
    ③いやもう・いやいや
    ④得意顔
    ⑤利口ぶる
    ⑥ひどく・いやなことに(「うたてのみ」で、悪くなるばかり)
    ⑦これといったこともない・つまらない
    ⑧浮ついている・誠実でない

B 文法

  1. 「和泉式部といふ人こそ、おもしろう書きかはしける。」の係り結びはどうなっているか、説明せよ。また、省かれている語を補って訳せ。

    解答を見る

    「こそ」の結びは已然形になるはずだが、「ける」は連体形で、下に「人なれ」などが省略されている(結びの省略)。訳=和泉式部という人は、本当に趣のある手紙をやりとりした人です。

  2. 「まことの歌詠みざまにこそ侍らざめれ」について、①「侍らざめれ」を文法的に説明せよ(「侍り」は敬語の種類も答えること)。②現代語訳せよ。

    解答を見る

    ①丁寧の補助動詞「侍り」(ラ変)の未然形+打消の助動詞「ず」の連体形「ざる」の撥音便「ざん」の「ん」を書かない形「ざ」+推定の助動詞「めり」の已然形「めれ」(「こそ」の結び)。②本物の歌人の詠みぶりではないようですが

  3. 次の語を文法的に説明せよ。
    ①「かならずをかしき一ふしの、目にとまる」の「の」
    ②「それだに」の「だに」
    ③「歌の詠まるるなめり」の「るる」
    ④「いかでかはよく侍らむ」の「か」と「む」

    解答を見る

    ①同格の格助詞
    ②類推の副助詞(〜さえ)
    ③自発の助動詞「る」の連体形
    ④か=反語の係助詞、む=推量の助動詞「む」の連体形(「か」の結び)

C 内容

  1. ①「けしからぬかた」とは、和泉式部のどのような面をいうと考えられるか。②「そのかたの才ある人」の「そのかた」とは、何の方面か。

    解答を見る

    ①自由奔放な恋愛(男性関係)など、ふだんのふるまいで感心できない面。②手紙をさらさらと書く方面、つまり文章の才能。

  2. 「人の詠みたらむ歌、難じことわりゐたらむは、いでやさまで心は得じ」を、だれのどのような様子についての言葉かがわかるように現代語訳せよ。

    解答を見る

    (和泉式部が)他人の詠んだ歌にけちをつけたり、よしあしを論じたりしている場合には、いやもう、そこまで歌の道に通じてはいないだろう(と思われる)。

  3. 「恥づかしげの歌詠みやとはおぼえ侍らず」を現代語訳せよ。また、作者は和泉式部の和歌のどのような点を認めているか。

    解答を見る

    訳=こちらが引け目を感じるほど立派な歌人だとは思えません。認めている点=古歌の知識や歌の理論はなくても、口から出るままに詠んだ歌に、必ず目をひく趣のある表現があること。

  4. 「さばかりさかしだち」から「足らぬこと多かり」までの部分で、作者は清少納言の何を批判しているか。

    解答を見る

    利口ぶって漢字を書き散らし、漢学の知識をひけらかしているが、よく見るとその学識にはまだ足りない点が多いこと。

  5. ①「艶になりぬる人」と同じ人物を指す言葉を、本文中から抜き出せ。②そのような人は、どのようにして「あだなるさま」になってしまうと述べているか。

    解答を見る

    ①あだになりぬる人(清少納言を指す)
    ②もの寂しくつまらないときでも、しみじみと感動したようにふるまい、趣のあることを見逃すまいとしているうちに、自然とそうあってはならない浮ついた様子になってしまう。

  6. 「そのあだになりぬる人の果て、いかでかはよく侍らむ」を現代語訳せよ。また、和泉式部と清少納言とで、作者の評価はどう違うか説明せよ。

    解答を見る

    訳=その浮ついた人になってしまった人の行く末が、どうしてよいはずがありましょうか、いや、よくはありません。違い=和泉式部については、手紙や歌の才能を認めながら欠点も挙げているが、清少納言については、よい点を一つも挙げず、強く否定している。