『史記』「孫臏」③書き下し文・現代語訳・解説|遂に豎子の名を成さしむ・テスト予想問題付き

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. 馬陵での待ち伏せ
  3. 龐涓の最期
  4. 孫臏の名が天下に知れわたる
  5. テスト予想問題
  6. 『孫臏』を最初から読む

『史記』「孫臏(そんぴん)」③「遂に豎子の名を成さしむ」の書き下し文・現代語訳・解説です。出典は『史記』孫子呉起列伝です。

②では、孫臏の計略にかかった魏の将軍龐涓(はうけん)が、歩兵を残し、精鋭だけで斉軍を追いかけました。③では、孫臏が馬陵(ばりよう)で待ち伏せをして魏軍を破ります。かつて孫臏を罪に陥れた龐涓は、ここで最期を迎えます。

書き下し文・現代語訳・解説

馬陵での待ち伏せ

本文(訓読文)

白文孫子度其行、暮当至馬陵。

書き下し孫子(そんし)其の行(かう)を度(はか)るに、暮(く)れに当(まさ)に馬陵(ばりよう)に至(いた)るべし。

現代語訳孫臏が魏軍の行軍の速さを計算してみると、夕暮れにはきっと馬陵に着くはずであった。

孫子
孫臏のこと。
度
「はかル」。計算する。見積もる。
其行
龐涓の率いる魏軍の行軍(の速さ)。
馬陵
地名。

白文馬陵道狭而旁多阻隘、可伏兵。

書き下し馬陵は道(みち)狭(せま)くして旁(かたは)ら阻隘(そあい)多(おほ)く、兵(へい)を伏(ふく)すべし。

現代語訳馬陵は道が狭いうえに、そのわきには険しく狭い所が多く、兵を隠しておくことができた。

旁
「かたはラ」。道のわき。両側。
阻隘
険しくて狭い所。
伏兵
兵を隠しておく。待ち伏せの兵を置く。
可
「べシ」。ここでは「〜できる」という可能の意味。

白文乃斫大樹、白而書之曰、「龐涓死于此樹之下。」

書き下し乃(すなは)ち大樹(たいじゆ)を斫(き)り、白(しら)げて之に書(しよ)して曰(い)はく、「龐涓此の樹(じゆ)の下(もと)に死(し)せん。」と。

現代語訳そこで大木の皮を削り取って白い木はだを出し、そこに「龐涓はこの木の下で死ぬだろう。」と書いた。

斫
「きル」。刃物で削る。
白
「しらグ」。皮を削って、白い木はだを出す。
于
置き字。場所を表す。

白文於是令斉軍善射者、万弩夾道而伏。

書き下し是に於(お)いて斉の軍の善(よ)く射(い)る者をして、万弩(ばんど)道(みち)を夾(はさ)みて伏(ふく)せしむ。

現代語訳そして、斉の軍の弓の上手な者たちに、たくさんのいしゆみを持たせて道の両側に隠れさせた。

善射者
弓を射るのが上手な者。
弩
いしゆみ。ばねじかけで矢を放つ弓。
万弩
数多くのいしゆみ。
夾道
道を両側からはさむ。

白文期曰、「暮見火挙而倶発。」

書き下し期(き)して曰(い)はく、「暮れに火(ひ)の挙(あ)がるを見(み)て倶(とも)に発(はつ)せよ。」と。

現代語訳そして、「夕暮れに火が挙がるのを見たら、一斉に(矢を)放て。」と言いつけておいた。

期
あらかじめ約束する。取り決める。
倶
「ともニ」。いっしょに。一斉に。
発
矢を放つ。

龐涓の最期

本文(訓読文)

白文龐涓果夜至斫木下、見白書。

書き下し龐涓果(は)たして夜(よる)斫木(しやくぼく)の下(もと)に至(いた)り、白書(はくしよ)を見(み)る。

現代語訳龐涓は、孫臏の予想どおり、夜になって皮を削った木の下にやって来て、白い木はだに書かれた文字を見つけた。

果
「はたシテ」。予想どおり。案の定。
斫木
皮を削った木。
白書
白い木はだに書いた文字。

白文乃鑽火燭之。

書き下し乃ち火を鑽(き)りて之を燭(て)らす。

現代語訳そこで火をおこして、その文字を照らした。

鑽火
木をきりもみして火をおこす。
燭
「てらス」。照らす。
之
木に書かれた文字。

白文読其書、未畢、斉軍万弩倶発。

書き下し其の書(しよ)を読(よ)み、未(いま)だ畢(を)はらざるに、斉の軍の万弩倶(とも)に発(はつ)す。

現代語訳その文字を読んで、まだ読み終わらないうちに、斉の軍のたくさんのいしゆみが、一斉に放たれた。

未畢
まだ(読み)終わらない。
畢
「をはル」。終わる。

白文魏軍大乱相失。

書き下し魏の軍大(おほ)いに乱(みだ)れ相失(あひしつ)す。

現代語訳魏の軍は大混乱におちいり、互いを見失ってばらばらになった。

相失
互いに見失う。仲間どうしの連絡がとれなくなるほど混乱する。同士討ちをしたと解することもある。

白文龐涓自知智窮兵敗、乃自剄曰、「遂成豎子之名。」

書き下し龐涓自(みづか)ら智(ち)窮(きは)まり兵(へい)敗(やぶ)るるを知(し)り、乃(すなは)ち自剄(じけい)して曰(い)はく、「遂(つひ)に豎子(じゆし)の名(な)を成(な)さしむ。」と。

現代語訳龐涓は、自分の知恵も尽き、軍も敗れたことをさとって、自分で首をはねて言った、「とうとうあの小僧に名をあげさせてしまった。」と。

智窮
知恵が尽きる。打つ手がなくなる。
自剄
自分で首をはねて死ぬ。
遂
「つひニ」。とうとう。
豎子
小僧。人をののしっていう語。ここでは孫臏をさす。
成名
名をあげる。「成さしむ」で、名をあげさせる。

孫臏の名が天下に知れわたる

本文(訓読文)

白文斉因乗勝、尽破其軍、虜魏太子申以帰。

書き下し斉因(よ)りて勝(か)ちに乗(じよう)じて、尽(ことごと)く其の軍(ぐん)を破(やぶ)り、魏の太子(たいし)申(しん)を虜(とりこ)にし以(もつ)て帰(かへ)る。

現代語訳斉はこうして勝ちに乗じて、魏の軍をすっかり打ち破り、魏の太子の申を捕虜にして帰国した。

因
「よリテ」。そこで。こうして。
乗勝
勝った勢いに乗る。
尽
「ことごとク」。すべて。
太子申
魏の恵王の太子。名は申。
虜
「とりこニス」。捕虜にする。

白文孫臏以此名顕天下。

書き下し孫臏此(これ)を以(もつ)て名(な)天下(てんか)に顕(あらは)る。

現代語訳孫臏は、この戦いによって、名が天下に知れわたった。

以此
このことによって。馬陵の戦いで魏軍を破ったことをさす。
顕
「あらはル」。広く知られる。

白文世伝其兵法。

書き下し世(よ)其(そ)の兵法(へいはふ)を伝(つた)ふ。

現代語訳世の中では、孫臏の兵法が伝えられている。

其兵法
孫臏の兵法。

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語を、送り仮名まで含めてどう読むか。現代仮名遣いのひらがなで書け。
    ①度る
    ②旁ら
    ③果たして
    ④自ら
    ⑤尽く

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    ①はかる
    ②かたわら
    ③はたして
    ④みずから
    ⑤ことごとく

  2. 次の語の意味を答えよ。
    ①阻隘
    ②期(期して曰はく)
    ③相失
    ④豎子

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    ①険しく狭い所
    ②あらかじめ約束する(取り決める)
    ③互いを見失うほど混乱する(ばらばらになる)
    ④小僧(人をののしっていう語)

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「暮当至馬陵」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:暮れに当に馬陵に至るべし
    現代語訳:夕暮れにはきっと馬陵に着くはずだ。

  2. 「令斉軍善射者、万弩夾道而伏」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:斉の軍の善く射る者をして、万弩道を夾みて伏せしむ
    現代語訳:斉の軍の弓の上手な者たちに、たくさんのいしゆみを持たせて道の両側に隠れさせた。

  3. 「遂成豎子之名」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:遂に豎子の名を成さしむ
    現代語訳:とうとうあの小僧に名をあげさせてしまった。

C 内容の読み取り

  1. 孫臏が馬陵を待ち伏せの場所に選んだのはなぜか。本文に即して説明せよ。

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    龐涓の軍が夕暮れに着くと計算でき、しかも道が狭く、両側に険しい所が多くて、兵を隠しておくことができたから。

  2. 孫臏が「暮見火挙而倶発」と命じたのは、どのようなことを予測したからか。

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    夜に大木の下に来た龐涓が、書かれた文字を読むために火をつけること。

  3. 「魏軍大乱相失」とあるが、魏軍がこのようになったのはなぜか。

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    暗い夜に、隠れていた斉軍から突然いしゆみを一斉に射かけられたから。

  4. 「豎子」とは誰をさすか。また、この言葉から龐涓のどのような気持ちが読み取れるか。

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    孫臏。
    孫臏の計略にかかって敗れた無念さと、最後まで孫臏を見下そうとする負け惜しみの気持ち。

『孫臏』を最初から読む