『史記』澠池之会 書き下し文・現代語訳・解説|テスト予想問題

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. テストで問われるポイント
  3. テスト予想問題

司馬遷『史記』廉頗藺相如列伝のうち、「澠池之会(めんちのかい)」の書き下し文・現代語訳・解説です。

強国の秦が、友好を結ぶという名目で趙王を呼び出しました。会見の席で、秦王は趙王に恥をかかせようとします。藺相如は、それにどう立ち向かったのでしょうか。

前の話は完璧帰趙①〜④、続きは刎頸の交わり①です。

書き下し文・現代語訳・解説

本文(訓読文)

白文秦王使使者告趙王、欲与王為好、会於西河外澠池。

書き下し秦王使者(ししや)をして趙王に告げしめ、王と好(よしみ)を為し、西河(せいか)の外の澠池(めんち)に会せんと欲す。

現代語訳秦王は使者を趙王のもとに送って、「王と友好を結びたい。西河の外の澠池で会見したい」と告げさせた。

使者をして告げしめ
使者に告げさせて。(使役)
好(よしみ)を為す
友好を結ぶ。「好」は「よしみ」で、親しい交わり。
西河(せいが)の外の澠池(めんち)
黄河の南にある土地。趙と秦の境に近い。

白文趙王畏秦、欲毋行。

書き下し趙王秦を畏(おそ)れ、行(ゆ)くこと毋(な)からんと欲す。

現代語訳趙王は秦を恐れて、行かずにおこうと思った。

畏(おそ)る
恐れる。おじけづく。
毋(な)し
~ない。禁止や否定を表す。「母」と形が似ているので注意。

白文廉頗藺相如計曰、「王不行、示趙弱且怯也。」

書き下し廉頗(れんぱ)・藺相如(りんしやうじよ)計(はか)りて曰はく、「王行かずんば、趙の弱(よわ)くして且(か)つ怯(けふ)なるを示すなり。」と。

現代語訳廉頗と藺相如が相談して言った、「王様が行かれなければ、趙が弱く、そのうえ臆病でもあると、示すことになります。」と。

王不行
「王行かずんば」で、王が行かなければ。(仮定)
怯(けふ)
臆病。

白文趙王遂行。相如従。

書き下し趙王遂(つひ)に行く。相如従(したが)ふ。

現代語訳趙王はとうとう出かけることにした。相如がお供をした。

白文廉頗送至境、与王訣曰、

書き下し廉頗送りて境に至(いた)り、王と訣(わか)して曰はく、

現代語訳廉頗は見送って国境まで行き、王に別れを告げて言った、

訣(けつ)す
別れを告げる。

白文「王行、度道里、会遇之礼畢還、不過三十日。

書き下し「王の行(かう)、道里(だうり)を度(はか)るに、会遇(くわいぐう)の礼畢(を)はりて還(かへ)るまで、三十日を過ぎざらん。

現代語訳「王様のご出発から、道のりを見積もりますと、会見の礼が済んで戻られるまで、三十日を過ぎることはないはずです。

道里(だうり)
道のり。行程。
度(はか)る
推し量る。見積もる。
会遇(くわいぐう)の礼
会見の儀式。
畢(を)はる
終わる。

白文三十日不還、則請立太子為王、以絶秦望。」

書き下し三十日にして還らずんば、則ち請ふ太子を立てて王と為し、以て秦の望(のぞ)みを絶たん。」と。

現代語訳三十日たってもお戻りにならなければ、そのときは太子を立てて王とし、そうして秦の望みを断ちたいと存じます。」と。

則(すなは)ち
そのときは。(仮定の後を受ける)
請(こ)ふ
~したいと願う。
太子(たいし)
跡継ぎの子。
秦の望み
秦の野望。ここでは、趙王を人質にして趙を思いのままにしようというたくらみ。

白文王許之。遂与秦王会澠池。

書き下し王之を許す。遂に秦王と澠池に会す。

現代語訳王はこれを承知した。こうして秦王と澠池で会見した。

白文秦王飲酒酣曰、「寡人窃聞趙王好音。請奏瑟。」趙王鼓瑟。

書き下し秦王酒を飲み酣(たけなは)にして曰はく、「寡人(くわじん)窃(ひそ)かに趙王音を好むと聞く。請ふ瑟(しつ)を奏せよ。」と。趙王瑟を鼓(こ)す。

現代語訳秦王は酒を飲んで宴がたけなわになったころ、言った、「私は内々に、趙王が音楽をお好きだと聞いている。どうか瑟を演奏してくださらぬか。」と。趙王は瑟を弾いた。

酣(たけなは)
宴会が盛り上がっている最中。
寡人(くわじん)
諸侯の謙称(けんしよう)。「徳の少ない人」の意味。
窃(ひそ)かに
こっそりと。内々に。自分の行為をへりくだって言う。
請(こ)ふ
~してほしい、と相手に頼む。
瑟(しつ)
二十五本ほどの弦を張った、大きな琴。
鼓(こ)す
弾く。打ち鳴らす。

白文秦御史前、書曰、「某年月日、秦王与趙王会飲、令趙王鼓瑟。」

書き下し秦の御史(ぎよし)前(すす)み、書して曰はく、「某年月日(ぼうねんぐわつぴ)、秦王趙王と会飲(くわいいん)し、趙王をして瑟を鼓せしむ。」と。

現代語訳秦の記録係の御史が進み出て、こう書きつけた、「某年某月某日、秦王は趙王と酒宴をともにし、趙王に命じて瑟を弾かせた。」と。

御史(ぎよし)
記録を担当する役人。

白文藺相如前曰、「趙王窃聞秦王善為秦声。請奉盆缻秦王、以相娯楽。」

書き下し藺相如前みて曰はく、「趙王窃かに秦王善(よ)く秦声を為すと聞く。請ふ盆缻(ぼんぷ)を秦王に奉(ほう)じ、以て相(あひ)娯楽(ごらく)せん。」と。

現代語訳藺相如が前に出て言った、「趙王がひそかに耳にしましたところ、秦王は秦の歌をお上手に歌われるとのこと。盆缻を秦王に献上いたしますので、ともに楽しみたく存じます。」と。

秦声(しんせい)
秦の地方の歌。民謡。
盆缻(ぼんふ)
素焼きの酒器。これを打ち鳴らして拍子をとる。
相娯楽(あひごらく)せん
ともに楽しもう。「相」は互いに。

白文秦王怒不許。於是、相如前進缻、因跪請秦王。秦王不肯撃缻。

書き下し秦王怒りて許さず。是(ここ)に於(お)いて相如前みて缻を進(すす)め、因りて跪(ひざまづ)きて秦王に請ふ。秦王缻を撃つことを肯(がへん)ぜず。

現代語訳秦王は腹を立てて聞き入れない。すると相如は進んで缻を差し出し、ひざをついて秦王に願った。それでも秦王は缻を打とうとはしなかった。

因(よ)りて
そのまま。それをきっかけにして。
跪(ひざまづ)く
ひざをついてかしこまる。
肯(がへん)ぜず
承知しない。よしとしない。

白文相如曰、「五歩之内、相如請、得以頸血濺大王矣。」

書き下し相如曰はく、「五歩(ごほ)の内、相如請ふ、頸血(けいけつ)を以て大王に濺(そそ)ぐことを得ん。」と。

現代語訳相如は言った、「私と王様とは五歩の内、すぐそばにおります。この相如が、自分の首から出る血を大王にそそぎかけてみせましょうか。」と。

頸血(けいけつ)
首の血。
濺(そそ)ぐ
注ぎかける。ふりかける。
請(こ)ふ
~させてほしい。ここでは「~してみせましょうか」と、相手にうかがう形をとった脅し。

白文左右欲刃相如。相如張目叱之。左右皆靡。

書き下し左右相如を刃(じん)せんと欲す。相如目(め)を張(は)りて之を叱(しつ)す。左右皆靡(なび)く。

現代語訳側近たちが相如に斬りかかろうとした。相如は目をかっと見開いてどなりつけた。側近たちは皆ひるんで退いた。

刃(じん)す
刃物で斬る。
叱(しつ)す
どなりつける。
靡(なび)く
ひるんで引き下がる。たじろぐ。

白文於是、秦王不懌、為一撃缻。

書き下し是(ここ)に於(お)いて、秦王懌(よろこ)ばざるも、為(ため)に一たび缻を撃つ。

現代語訳そこで秦王は、気が進まないながらも、趙王のために一度だけ缻を打った。

懌(よろこ)ぶ
喜ぶ。「不懌」は、不愉快に思う、気が進まないの意。

白文相如顧召趙御史、書曰、「某年月日、秦王為趙王撃缻。」

書き下し相如顧(かへり)みて趙の御史を召し、書せしめて曰はく、「某年月日、秦王趙王の為に缻を撃つ。」と。

現代語訳相如はふり返って趙の御史を呼び、書かせて言った、「某年某月某日、秦王は趙王のために缻を打った。」と。

書せしむ
書かせる。(使役)

白文秦之群臣曰、「請以趙十五城為秦王寿。」藺相如亦曰、「請以秦之咸陽為趙王寿。」

書き下し秦の群臣曰はく、「請ふ趙の十五城(じふごじやう)を以て秦王の寿(じゆ)を為せ。」と。藺相如も亦曰はく、「請ふ秦の咸陽(かんやう)を以て趙王の寿を為せ。」と。

現代語訳秦の家臣たちが言った、「どうか趙の十五の都市を、秦王のご長寿を祝う贈り物として差し出していただきたい。」と。すると藺相如も言った、「それなら、秦の都の咸陽を、趙王のご長寿を祝う贈り物として差し出していただきたい。」と。

寿(じゆ)を為す
長寿を祝って贈り物をする。
咸陽(かんやう)
秦の都。

白文秦王竟酒、終不能加勝於趙。趙亦盛設兵以待秦。秦不敢動。

書き下し秦王酒を竟(を)ふるまで、終に勝ちを趙に加ふること能(あた)はず。趙も亦盛(さか)んに兵を設け、以て秦を待つ。秦敢(あ)へて動かず。

現代語訳秦王は宴が終わるまで、とうとう趙を屈服させることができなかった。趙のほうでも、軍備をしっかりと整えて、秦に備えていた。秦は思い切って動くことができなかった。

竟(を)ふ
終える。
勝(か)ちを加(くは)ふ
勝利を相手に押しつける。優位に立つ。
兵を設(まう)く
軍隊を配置する。軍備を整える。

テストで問われるポイント

  • 秦王の申し出=友好を結ぶための会見。趙王は秦を恐れて行くまいとした。
  • 「王不行、示趙弱且怯也」=王が行かなければ、趙が弱く臆病だと示すことになる。
  • 「立太子為王、以絶秦望」=万一のとき、太子を王に立てて、趙王を人質にしようとする秦の野望を絶つ。
  • 秦王が瑟を請うた意図=趙王を臣下のように扱い、御史に記録させておとしめること。
  • 相如が盆缻を請うた意図=同じ屈辱を秦王にも与え、趙王の面目を保つこと。盆缻は瑟より品のない楽器。
  • 「五歩之内、相如請、得以頸血濺大王矣」=秦王を殺し、自分も死ぬ覚悟の脅し。
  • 趙の御史に「秦王為趙王撃缻」と記録させ、対等の立場を示した。
  • 「十五城」に対して「咸陽」で対抗した。
  • 「不能加勝於趙」=趙を屈服させることができなかった。
  • 「秦不敢動」の理由=宴で趙に勝てなかったこと、趙が軍備を整えていたこと。

テスト予想問題

A 語句・読み

  1. 次の語の読みを、送り仮名を含めて現代仮名遣いで答えよ。
    「度る」「畢はる」「酣」「懌ばず」「窃かに」

    解答を見る

    はかる・おわる・たけなわ・よろこばず・ひそかに

  2. 次の語の、ここでの意味を答えよ。
    「好」「道里」「訣す」「靡く」

    解答を見る

    好=よしみ。友好。 道里=道のり。 訣す=別れを告げる。 靡く=ひるむ。たじろぐ。

  3. 「寡人」とは、誰が自分をさして言う言葉か。また「寡」とは何が少ないという意味か。

    解答を見る

    諸侯(王)が自分をさして言う言葉。徳が少ないという意味で、へりくだった言い方。

  4. 「瑟」と「盆缻」は、それぞれどのようなものか。

    解答を見る

    瑟=二十五本ほどの弦を張った大きな琴。 盆缻=素焼きの酒器で、打ち鳴らして拍子をとるもの。

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「趙王畏秦、欲毋行。」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:趙王秦を畏れ、行くこと毋からんと欲す
    現代語訳:趙王は秦を恐れて、行かずにおこうと思った。

  2. 「三十日不還、則請立太子為王、以絶秦望。」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:三十日にして還らずんば、則ち請ふ太子を立てて王と為し、以て秦の望みを絶たん
    現代語訳:三十日たってもお戻りにならなければ、そのときは太子を立てて王とし、そうして秦の野望を断ちたいと存じます。

  3. 「五歩之内、相如請、得以頸血濺大王矣。」を書き下し文にし、現代語訳せよ。また、この言葉で相如が示した覚悟を説明せよ。

    解答を見る

    書き下し文:五歩の内、相如請ふ、頸血を以て大王に濺ぐことを得ん
    現代語訳:私と王様とは五歩の内におります。この相如が、首の血を大王にそそぎかけてみせましょうか。(秦王を殺し、自分も死ぬ覚悟だということ)

  4. 「秦王竟酒、終不能加勝於趙。」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:秦王酒を竟ふるまで、終に勝ちを趙に加ふること能はず
    現代語訳:秦王は宴が終わるまで、とうとう趙を屈服させることができなかった。

  5. 「請以趙十五城為秦王寿。」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

    解答を見る

    書き下し文:請ふ趙の十五城を以て秦王の寿を為せ
    現代語訳:どうか趙の十五の都市を、秦王のご長寿のお祝いとして差し出していただきたい。

C 内容の読み取り

  1. 趙王が会見に行くことを決意したのは、なぜか。

    解答を見る

    廉頗と藺相如が、趙王が行かなければ趙が弱くて臆病だと天下に示すことになる、と説得したから。

  2. 「立太子為王、以絶秦望」とあるが、太子を王に立てることが、なぜ「秦望」を絶つことになるのか。「秦望」の内容にふれて説明せよ。

    解答を見る

    秦の野望は、趙王を人質にして趙を思いのままに動かすことである。万一のとき、すでに新しい王を立てておけば、人質にとる意味がなくなり、王不在の混乱にもつけこまれないから。

  3. 秦王が趙王に瑟を弾かせ、御史に記録させたのは、どのような意図からか。

    解答を見る

    趙王を臣下のように扱い、秦のほうが上だという記録を残して、趙王に恥をかかせるため。

  4. 相如が秦王に盆缻を打つよう求めたのは、なぜか。

    解答を見る

    秦王が趙王にさせたのと同じ屈辱を、秦王にも味わわせて、趙王の面目を保ち、両国の王が対等であることを示すため。

  5. 秦王が「怒不許」とあるが、なぜ怒ったのか。

    解答を見る

    大国の王である自分が、弱い国の臣下から、品のない盆缻を打つよう頼まれ、趙王と同じ立場に置かれたから。

  6. 秦王がいやいやながら缻を打ったのは、なぜか。

    解答を見る

    相如が「五歩の内」で秦王を殺す覚悟だと脅し、斬りかかろうとした側近たちも、相如に叱りつけられてひるんでしまったから。

  7. 相如が趙の御史を呼んで記録させたのは、何のためか。

    解答を見る

    秦の御史の記録に対抗し、秦王が趙王のために缻を打ったと残させて、趙王の面目を守るため。

  8. 秦が趙に手出しできなかった理由を、本文から二文抜き出せ。

    解答を見る

    「秦王竟酒、終不能加勝於趙。」「趙亦盛設兵、以待秦。」

  9. この会見で、廉頗と藺相如が果たした役割を、それぞれ答えよ。

    解答を見る

    廉頗:趙に残って軍備を整え、秦を牽制した。(国境で別れの取り決めもした。)
    藺相如:趙王に付き従い、命がけで秦王に立ち向かい、趙王の面目を守った。