『土佐日記』帰京 現代語訳・品詞分解・助動詞・和歌・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 荒れ果てた家
  4. 庭の松
  5. 亡き子を思う歌
  6. テスト予想問題

『土佐日記(とさにっき)』「帰京」の現代語訳・品詞分解・助動詞・和歌・解説です。

土佐から旅をしてきた紀貫之が、ようやく京の自分の家に帰り着く、日記の最後の場面です。荒れ果てた家への不満と、庭の小松から思い出される亡き娘への悲しみが、二首の和歌とともに描かれます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。

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現代語訳・品詞分解・解説

荒れ果てた家

原文
京きやうに格助場所入り立ちタ四連用て接助順接確定うれしシク終止。家に格助場所至りラ四連用て接助単純接続、門かどに格助対象入るラ四連体に接助単純接続、月明あかけれク已然ば接助順接確定、いと副よくク連用ありさま見ゆヤ下二終止。

現代語訳京に入ってうれしい。家に着いて門に入ると、月が明るいので、とてもよく様子が見える。

見ゆ
見える。
解説

「うれし」は、長い船旅を終えて京に帰り着いた喜びを表す。

原文
聞きカ四連用し過去連体より格助比較も係助強意ましサ四連用て接助単純接続、言ふかひなくク連用ぞ係助強意こぼれラ下二連用破れラ下二連用たる存続連体。家に格助対象預けカ下二連用たり存続連用つる完了連体人の格助体修心も係助並列、荒れラ下二連用たる存続連体なり断定連用けり詠嘆終止。

現代語訳うわさに聞いていたよりもひどく、言いようもなく壊れ傷んでいる。家に預けておいた人の心も、すさんでいたのだった。

言ふかひなし
言いようもない、どうしようもない。
こぼれ破る
壊れ傷む。
解説

「聞きし」は、家の様子について以前から聞いていたこと。

「人の心も」の「も」は、家だけでなく、預けておいた人の心も、という気持ちを表す。

「家を預け」ではなく「家に預け」と言うことで、家ばかりか預かった人の心まで荒れていた、とおどけてみせた言い方(諧謔)になっている。

原文
「中垣こそ係助強意あれラ変已然、一つ家ひとついへの格助体修やうなれ比況已然ば接助順接確定、望みマ四連用て接助単純接続預かれラ四已然る完了連体なり断定終止。」

現代語訳「隔ての垣根はあるが、一つの家のようなものだから、(先方が)望んで預かったのだ。」

中垣
家と家とを隔てる垣根。
解説

「中垣こそあれ」は「こそ〜已然形」の逆接(下の解説を参照)。

「預かれる」の主語は隣人。

原文
「さるは接、たよりごとに格助時間、ものも係助添加絶えず副得ア下二未然させ使役連用たり完了終止。」

現代語訳「そうではあるが、機会があるごとに、贈り物も絶えず与えてきた。」

さるは
そうではあるが。
たより
機会。
得させたり
手に入れさせた→与える。
解説

「得させたり」の主語は作者(貫之)。

原文
今宵こよひ、「かかるラ変連体こと。」と格助引用、声高こわだかにナリ連用ものも係助強意言はハ四未然せ使役未然ず打消終止。いと副は係助強調つらくク連用見ゆれヤ下二已然ど接助逆接確定、こころざしは係助区別せサ変未然む意志終止と格助引用すサ変終止。

現代語訳(作者は)今夜、「こんなひどいありさまだ。」と(供の者たちに)大声で文句を言わせることもしない。とても薄情だとは思われるけれど、お礼はしようと思う。

つらし
薄情だ、つらい。
こころざし
お礼の贈り物。
解説

「かかること」は、家が荒れ果てていることを指す。

「声高にものも言はせず」…作者は、供の者たちが隣人について大声で不満を言うのをやめさせている。

貫之の家の隣人のほうから、留守の間家を預かろうと提案してきたのに、帰ってきたらぼろぼろになっていた。

庭の松

原文
さて接、池めいカ四連用・音て接助単純接続くぼまりラ四連用、水つけカ四已然る存続連体所ありラ変終止。ほとりに格助場所松も係助添加ありラ変連用き過去終止。

現代語訳さて、池のようにくぼんで、水がたまっている所がある。ほとりに松もあった。

池めく
池のようになる。荒れ果てて池の形をなしていない庭を、少し皮肉をこめて言っている(謙遜の言い方ととる説もある)。
原文
五年六年いつとせむとせの格助体修うちに格助時間、千年ちとせや係助疑問過ぎガ上二連用に完了連用けむ過去推量連体、かたへは係助区別なくなりラ四連用に完了連用けり詠嘆終止。今副生ひハ上二連用たる完了連体ぞ係助強意混じれラ四已然る存続連体。

現代語訳五、六年のうちに、千年も過ぎてしまったのだろうか、半分は枯れてなくなっていた。今生えたものが混じっている。

千年や過ぎにけむ
千年が過ぎてしまったのだろうか。松は千年の寿命があるといわれるのに、わずか五、六年で半分がなくなっていた。家を預かった隣人が管理を怠ったことへの、皮肉をこめた言い方。
かたへ
半分、一部分。
解説

「今生ひたる」は、新しく生えた小松のこと。

※「なくなりにけり」の「けり」は、気づいたことを表す詠嘆。

原文
おほかたの格助主格、みな副荒れラ下二連用に完了連用たれ存続已然ば接助順接確定、「あはれ感。」と格助引用ぞ係助強意人々言ふハ四連体。

現代語訳全体がみな荒れてしまっているので、「ああ。」と人々は言う。

解説

「あはれ」は、荒れ果てた家を見ての驚きや嘆きを表す言葉。

亡き子を思う歌

原文
思ひ出でダ下二未然ぬ打消連体ことなくク連用、思ひ恋しきシク連体が格助体修うちに格助場所、こ代名の格助体修家にて格助場所生まれラ下二連用し過去連体女子をんなごの格助主格、もろともに副帰らラ四未然ね打消已然ば接助順接確定、いかが副は係助強調悲しきシク連体。

現代語訳思い出さないことはなく、恋しく思う中でも、この家で生まれた女の子が、一緒に帰らないので、どれほど悲しいことか。

いかが
どんなに。
解説

紀貫之は、娘を土佐にいる間に亡くしていた。この家で生まれた女の子が一緒に帰れないことが、悲しみの中心にある。

原文
船人ふなびとも係助添加みな副、子たかりラ四連用て接助単純接続ののしるラ四終止。

現代語訳船の人たちもみな、子供が群がって大騒ぎをする。

ののしる
大声で騒ぐ。
解説

船人の子供たちが騒ぐ様子が、亡くなった娘を思い出させ、悲しみをいっそう深めている。

原文
かかるラ変連体うちに格助時間、なほ副悲しきシク連体に格助対象堪へハ下二未然ず打消連用して接助単純接続、ひそかにナリ連用心知れラ四已然る存続連体人と格助相手言へハ四已然り完了連用ける過去連体歌、

現代語訳(作者は)こうしているうちに、やはり悲しさに堪えられなくて、ひそかに事情を知っている人と詠み合った歌、

なほ
やはり。
解説

心知れる人…作者の妻のこととされる。

※「言へりける」の「けり」は過去。「なくなりにけり」の、気づきを表す詠嘆の「けり」との違いに注意。

原文
生まれラ下二連用し過去連体も係助添加帰らラ四未然ぬ打消連体ものを接助逆接確定わ代名が格助体修宿に格助場所小松の格助主格あるラ変連体を格助対象見るマ上一連体が格助体修悲しさ

現代語訳生まれた子も帰らないのに、わが家に小松があるのを見るのが悲しいことだ。

ものを
〜のに。逆接の接続助詞。
解説

庭に育つ小松を目にして、帰ってこないわが子を思い起こし、嘆いている。

原文
と格助引用ぞ係助強意言へハ四已然る完了連体。なほ副飽かカ四未然ず打消連用や係助疑問あら補・ラ変未然む推量連体、また副かく副なむ係助強意、

現代語訳と詠んだ。まだ満足できなかったのだろうか、またこのように、

飽く
満足する。
解説

「またかくなむ」の下には、「詠める」などの結びが省略されている。

現代語訳亡くなったあの子が松の千年のように生きていたならば、遠い土地で悲しい別れをしただろうか(しなかっただろうに)。

〜ましかば〜まし
反実仮想「もし〜だったら〜だろうに」。
解説

「や」は反語。「あの子が松のように長生きしていたなら、遠く離れた土地で悲しい死別などしただろうか、いや、しなかったはずだ」という意味。

「見し人」は亡くなった娘。「遠く悲しき別れ」は土佐での死別を指す。

原文
忘れがたくク連用、くちをしきシク連体こと多かれク已然ど接助逆接確定、え副尽くさサ四未然ず打消終止。とまれかうまれ副、とくク連用破りラ四連用て強意未然む意志終止。

現代語訳忘れがたく、残念なことは多いけれど、書き尽くすことができない。ともかく、早く破り捨ててしまおう。

え尽くさず
書き尽くすことはできない。「え〜打消」で「〜できない」。
とまれかうまれ
ともかく。
とく
はやく。
てむ
強意の助動詞「つ」の未然形+意志の「む」で、「きっと〜しよう」の意。
解説

※「とく破りてむ」は、取るに足りない書き物だという謙遜の言い方とされる。

『土佐日記』のほかの場面:阿倍仲麻呂の歌 / 白波 / 亡児

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①今宵
    ②五年六年
    ③千年
    ④女子
    ⑤船人
    ⑥宿

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    ①こよい
    ②いつとせむとせ
    ③ちとせ
    ④おんなご
    ⑤ふなびと
    ⑥やど

  2. 次の語の意味を答えよ。
    ①言ふかひなし
    ②たより
    ③つらし
    ④こころざし
    ⑤かたへ
    ⑥いかが
    ⑦くちをし

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    ①言いようもない・どうしようもない
    ②機会
    ③薄情だ・つらい
    ④お礼の贈り物
    ⑤半分・一部分
    ⑥どんなに
    ⑦残念だ・心残りだ

B 文法

  1. 「千年や過ぎにけむ」の「に」「けむ」について、意味と活用形をそれぞれ答えよ。また、「や」の結びはどれか。

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    「に」=完了の助動詞「ぬ」の連用形。「けむ」=過去推量の助動詞「けむ」の連体形。「や」の結びは「けむ」。

  2. 「荒れたるなりけり」の「たる」「なり」「けり」について、意味と活用形をそれぞれ答えよ。

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    「たる」=存続の助動詞「たり」の連体形。「なり」=断定の助動詞「なり」の連用形。「けり」=詠嘆の助動詞「けり」の終止形。

  3. 「中垣こそあれ、一つ家のやうなれば、望みて預かれるなり。」を、「こそ〜已然形」の働きがわかるように現代語訳せよ。また、「やうなれ」「る」「なり」の意味と活用形を答えよ。

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    隔ての垣根はあるけれども、一つの家のようなものだから、(先方が)望んで預かったのだ。「やうなれ」=比況の助動詞「やうなり」の已然形。「る」=完了の助動詞「り」の連体形。「なり」=断定の助動詞「なり」の終止形。

C 現代語訳・内容

  1. 「五年六年のうちに、千年や過ぎにけむ、かたへはなくなりにけり」を現代語訳せよ。また、「千年や過ぎにけむ」という言い方にこめられた作者の気持ちを説明せよ。

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    訳=五、六年の間に、千年もの年月が過ぎ去ってしまったのだろうか、(松の)半分は枯れてなくなっていた。気持ち=千年生きるはずの松が、留守のわずかな間に半分も消えていたことに対する、家を預かった隣人へのあてこすり。

  2. 「さるは、たよりごとに、ものも絶えず得させたり」を、「得させ」の主語と、だれに与えたのかを補って現代語訳せよ。

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    (家を預かってもらったとはいうものの)そうはいっても、(私は)機会があるたびに、(隣人に)贈り物も欠かさず与えてきたのだ。

  3. 「この家にて生まれし女子の、もろともに帰らねば、いかがは悲しき」を現代語訳せよ。また、「帰らねば」の「ね」「ば」を文法的に説明せよ。

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    訳=この家に生まれた娘が、(土佐で死んでしまい)ともに帰ってこないので、なんと悲しいことか。ね=打消の助動詞「ず」の已然形。ば=已然形に付く順接確定条件(原因・理由)の接続助詞。

  4. 「生まれしも帰らぬものをわが宿に小松のあるを見るが悲しさ」について、①歌を現代語訳せよ。②「ものを」の意味を答えよ。③新しく生えた小松は、作者に何を思い起こさせたのか。

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    ①この家で生まれた子さえ帰ってこないのに、わが家の庭に小松が育っているのを見るのは悲しいことだ。②逆接(〜のに)。③この家で生まれ、土佐で亡くした幼い娘のこと。

  5. 「見し人の松の千年に見ましかば遠く悲しき別れせましや」を、反実仮想の意味がわかるように現代語訳せよ。また、「や」の意味と、「見し人」が誰かを答えよ。

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    亡くなった娘が、松の千年の寿命のように長く生きていたならば、遠い土地で悲しい別れなどしただろうか、いや、しなかっただろうに。「や」=反語。「見し人」=亡くなった娘。

  6. 「忘れがたく、くちをしきこと多かれど、え尽くさず。とまれかうまれ、とく破りてむ。」を現代語訳せよ。また、「破りてむ」の「て」「む」の意味を答えよ。

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    忘れられず、心残りなことは多いが、すべては書ききれない。ともかく、早く破り捨ててしまおう。「て」=強意(完了)の助動詞「つ」の未然形。「む」=意志の助動詞。