『土佐日記』阿倍仲麻呂の歌 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 船を出せない日々
  4. 海から出る月
  5. 阿倍仲麻呂の話
  6. ある人の歌
  7. テスト予想問題

『土佐日記(とさにっき)』「阿倍仲麻呂の歌」の現代語訳・品詞分解・解説です。

土佐から京へ帰る船旅の途中、天気が悪くて何日も船を出せずにいます。一月二十日の夜、山ではなく海から昇る月を見て、昔、唐土で阿倍仲麻呂が帰国の際に詠んだ「青海原ふりさけ見れば」の歌が語られます。最後に、ある人も都で見た月を思って歌を詠みます。係り結び、「し」の識別、「かうやうなる」の指す内容、二首に共通する思いがよく問われます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

船を出せない日々

原文
二十日はつか。昨日きのふの格助体修やうなれ断定已然ば接助順接確定、船出いださサ四未然ず打消終止。

現代語訳(一月)二十日。昨日と同じような(悪い)天気なので、船を出さない。

解説

「昨日のやう」は、前の日と同じように天気が悪いということ。

原文
みな副人々、憂うれへハ下二連用嘆くカ四終止。苦しくシク連用心もとなけれク已然ば接助順接確定、

現代語訳人々はみな心配し嘆いている。苦しく、(出発が)待ち遠しいので、

憂ふ
心配する。嘆く。
心もとなし
待ち遠しい。じれったい。
解説

「苦しく心もとなければ」は、船が出せず、いつ京に帰れるのかわからないので、苦しく待ち遠しいということ。

原文
ただ副日の格助主格経へハ下二連用ぬる完了連体数を格助対象、今日けふ幾日いくか、二十日はつか、三十日みそかと格助引用数かぞふれハ下二已然ば接助順接確定、指およびも係助強意損そこなはハ四未然れ自発連用ぬ強意終止べし推量終止。

現代語訳ただ(船出してから)経った日にちを、今日で何日、二十日、三十日と指折り数えるので、指もいたんでしまいそうだ。

経(ふ)
(時が)過ぎる。
損なふ
傷つける。
解説

「指も損なはれぬべし」は、船出からの日にちをくり返し指折り数えるので指がいたみそうだ、という誇張した言い方。早く帰りたいのに船が進まない、不安といらだちが表れている。

原文

現代語訳とてもつらい。夜は眠ることもできない。

わびし
つらい。
寝(い)も寝(ね)ず
眠ることもできない。「寝(い)」は名詞で眠り。

海から出る月

原文
二十日はつかの格助体修夜よの格助体修月出でダ下二連用に完了連用けり詠嘆終止。山の格助体修端はも係助強意なくク連用て接助単純接続、海の格助体修中より格助起点ぞ係助強意出で来いでくるカ変連体。

現代語訳二十日の夜の月が出た。(ここでは)山の稜線もなくて、海の中から(月が)出てくる。

山の端
山の稜線。山の、空に接するあたり。
解説

都では月は山の端から出るが、海の上では海の中から出てくる。

二十日の夜の月は「更待月(ふけまちづき)」。夜がふけてから出る月。

阿倍仲麻呂の話

原文
かうやうなるナリ連体を格助対象見マ上一連用て接助単純接続や係助疑問、昔、阿倍仲麻呂あべのなかまろと格助引用いひハ四連用ける過去連体人は係助提示、唐土もろこしに格助場所渡りラ四連用て接助単純接続、帰り来かへりきカ変連用ける過去連体時に格助時間、

現代語訳こうした景色を見てのことだろうか、昔、阿倍仲麻呂という人が唐土に渡り、(日本に)帰ってくるときに、

かうやうなり
このようだ。
解説

「かうやうなる」は、山の端もなく、月が海の中から出てくる光景を指す。

「見てや」の下に「ありけむ」などが省略されている。ここから阿倍仲麻呂の話が始まる。

原文
船に格助対象乗るラ四終止べき当然連体所にて格助場所、か代名の格助体修国人くにびと、馬うまのはなむけしサ変連用、別れ惜しみマ四連用て接助単純接続、かしこ代名の格助体修漢詩からうた作りラ四連用など副助例示しサ変連用ける過去連体。

現代語訳船に乗る予定の場所で、唐土の人々が送別の宴を開き、名残を惜しんで、かの国の詩を作るなどした。

馬のはなむけ
送別の宴。餞別。
かしこ
あちら(唐土)。
漢詩(からうた)
中国の詩。
解説

「馬のはなむけし」の「し」はサ行変格活用動詞「す」の連用形。

原文
飽かカ四未然ず打消連用や係助疑問あり補・ラ変連用けむ過去推量連体、二十日はつかの格助体修夜よの格助体修月出づるダ下二連体まで副助範囲ぞ係助強意ありラ変連用ける過去連体。そ代名の格助体修月は係助提示、海より格助起点ぞ係助強意出でダ下二連用ける過去連体。

現代語訳別れを惜しむ心が満たされなかったのか、二十日の夜の月が昇るころまでその場にいたという。その月は海から昇った。

飽く
満足する。
解説

「飽かずやありけむ」は、別れを惜しんで、名残が尽きなかったのだろうか、ということ。そのため、二十日の夜の月が出るまで宴の場にいた。

原文
これ代名を格助対象見マ上一連用て接助単純接続ぞ係助強意、仲麻呂なかまろの格助体修主ぬし、「わ代名が格助体修国に格助場所、かかるラ変連体歌を格助対象なむ係助強意、神代かみよより格助起点神も係助並列詠んマ四連用・音給たび補・バ四連用尊→神、

現代語訳これを見て仲麻呂どのは、「私の国では、こういう歌を、神々の時代から神もお詠みになり、

主(ぬし)
人名に付ける敬称。〜さん。
神代
神々が治めていたという大昔。
解説

「詠ん給び」の「給び」は尊敬の補助動詞で、仲麻呂から神への敬意。

「これを見てぞ」の「ぞ」は、結びとなるはずの「詠めりける」が下の「歌」に続いているので、結びが流れている。

原文
今は係助提示上中下かみなかしもの格助体修人も係助並列、かうやうにナリ連用別れ惜しみマ四連用、喜びも係助並列ありラ変連用、悲しびも係助並列あるラ変連体時に格助時間は係助提示詠むマ四連体。」とて格助引用、詠めマ四已然り完了連用ける過去連体歌、

現代語訳今では身分の高い人も中くらいの人も低い人も、このように別れを惜しんだり、うれしいことや悲しいことがあったりすると歌を詠むのです。」と言って、詠んだ歌は、

上中下(かみなかしも)
身分の高い人から低い人まで。
悲しび
悲しみ。
解説

「かかる歌」が指すのは、このあとに詠む「青海原」の歌のような和歌。わが国では、別れや喜び・悲しみのときに、身分に関係なく和歌を詠むのだと、唐土の人に説明している。

原文
青海原あをうなばらふりさけ見みれマ上一已然ば接助順接確定春日かすがなる存在連体三笠の山みかさのやまに格助場所出でダ下二連用し過去連体月かも終助詠嘆

現代語訳青々とした海原のはるか遠くを仰ぎ見ると、(今見ている月は)春日にある三笠の山に出ていた月なのだなあ。

青海原
青々と広がる海。
ふりさけ見る
はるか遠くを仰ぎ見る。
春日なる
春日にある。「なる」は存在。
解説

春日(今の奈良市)の三笠の山は、仲麻呂の故郷の山。海から昇る月を見て、故郷で見た月と同じ月だと気づき、故郷をなつかしむ歌。

「出でし」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形。「馬のはなむけし」の「し」(サ変動詞)との違いに注意。

原文
と格助引用ぞ係助強意詠めマ四已然り完了連用ける過去連体。か代名の格助体修国人くにびと、聞き知るラ四終止まじく打消推量連用思おもほえヤ下二連用たれ存続已然ども接助逆接確定、

現代語訳と詠んだということだ。唐土の人々は、聞いてもわかるまいと思われたけれど、

解説

「聞き知るまじく思ほえたれども」は、唐土の人々には、言葉の違う和歌の意味はわからないだろうと思われたけれども、ということ。

原文
言ことの格助体修心を格助対象、男文字をとこもじに格助手段さまを格助対象書き出かきいだしサ四連用て接助単純接続、ここ代名の格助体修言葉伝へハ下二連用たる存続連体人に格助対象言ひ知らせサ下二連用けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳歌の内容を、漢字であらましを書いて、日本語をよく知っている人に説明してやったところ、

言の心
歌の意味。
男文字
漢字。(ひらがなは「女手(をんなで)」という。)
さま
おおよその様子。あらまし。
解説

「ここの言葉」は、日本の言葉。日本語がわかる人に、歌の意味を説明したということ。

原文
心を格助対象や係助疑問聞き得ききえア下二連用たり完了連用けむ過去推量連体、いと副思ひのほかにナリ連用なむ係助強意愛めでダ下二連用ける過去連体。

現代語訳(歌の)心を聞いて理解できたのであろうか、とても意外なほどに感心してほめたという。

思ひのほかなり
意外だ。
愛づ
感心してほめる。
解説

「愛でける」の主語はかの国人(唐土の人々)。言葉の違う和歌がわかるとは思われなかったので、「思ひのほか」と言っている。

阿倍仲麻呂の話は、ここまで。

原文
唐土もろこしと格助並列こ代名の格助体修国と格助並列は係助提示、言こと異なるナリ連体ものなれ断定已然ど接助逆接確定、月の格助体修影かげは係助提示同じシク連体ことなる断定連体べけれ当然已然ば接助順接確定、人の格助体修心も係助添加同じシク連体ことに断定連用や係助疑問あら補・ラ変未然む推量連体。

現代語訳唐土と日本とでは言葉は違うけれども、月の光は同じはずなので、(それを見る)人の心も同じなのだろうか。

言(こと)
言葉。
影
光。
解説

ここからは作者の感想。言葉は違っても、月の光が同じであるように、月を見て心を動かされる人の心も同じなのだろう、ということ。

ある人の歌

原文
さて接、今、そのかみを格助対象思ひやりラ四連用て接助単純接続、ある連体人の格助主格詠めマ四已然る完了連体歌、

現代語訳さて、今、その昔のことを思いやって、ある人が詠んだ歌、

そのかみ
その昔。当時。
解説

「そのかみ」は、阿倍仲麻呂のいた昔のこと。

原文
都みやこにて格助場所山の格助体修端はに格助場所見マ上一連用し過去連体月なれ断定已然ど接助逆接確定波より格助起点出でダ下二連用て接助単純接続波に格助場所こそ係助強意入れラ四已然

現代語訳都では山の稜線に(出入りするのを)見た月だけれど、(ここでは)波から出て波に入っていくことだ。

解説

都では山の端から出て山の端に入るのを見た月が、旅先の海の上では、波から出て波に入る。同じ月を見ながら、都を恋しく思う歌。

「青海原」の歌も、この歌も、月を見て故郷(都)を恋しく思う気持ちが共通している。

『土佐日記』のほかの場面:門出・馬のはなむけ① / 門出・馬のはなむけ② / 白波 / 帰京 / 亡児

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①二十日
    ②三十日
    ③指
    ④寝も寝ず
    ⑤唐土
    ⑥漢詩
    ⑦上中下
    ⑧愛でける

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    ①はつか
    ②みそか
    ③および
    ④いもねず
    ⑤もろこし
    ⑥からうた
    ⑦かみなかしも
    ⑧めでける

  2. 本文中で使われている意味を、次の語それぞれについて答えよ。
    ①心もとなし
    ②わびし
    ③馬のはなむけ
    ④言の心
    ⑤男文字
    ⑥(月の)影
    ⑦そのかみ

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    ①待ち遠しい
    ②つらい
    ③送別の宴・餞別
    ④歌の意味
    ⑤漢字
    ⑥光
    ⑦その昔・当時

B 文法

  1. 次の【 】の助動詞の意味を答えよ。
    ①日の経【ぬる】数
    ②月出でに【けり】
    ③春日【なる】三笠の山
    ④聞き得たり【けむ】
    ⑤同じことなる【べけれ】ば

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    ①完了
    ②詠嘆
    ③存在
    ④過去推量
    ⑤当然

  2. 次の各部分から、係助詞とその結びの語を抜き出し、結びの活用形を答えよ。
    ①飽かずやありけむ
    ②いと思ひのほかになむ愛でける
    ③波より出でて波にこそ入れ

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    ①や・けむ(連体形)
    ②なむ・ける(連体形)
    ③こそ・入れ(已然形)

  3. 「三笠の山に出でし月」の「し」の意味と活用形を答えよ。また、「馬のはなむけし」の「し」は助動詞か、それ以外か。

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    出でし月=過去の助動詞「き」の連体形。
    馬のはなむけし=助動詞ではない(「馬のはなむけす」という動作を表す動詞)。

C 現代語訳・内容

  1. 「指も損なはれぬべし」を現代語訳せよ。また、この表現からどのような気持ちが読み取れるか、説明せよ。

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    訳=指も傷んでしまいそうだ。
    気持ち=船が出せずに旅がはかどらず、出発からの日数を何度も指折り数えてしまうほど、早く帰りたいのにいつ帰れるかわからない不安といらだち。

  2. 「かうやうなるを見てや」の「かうやうなる」とは、どのような光景を指すか、説明せよ。

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    山の端もなく、月が海の中から出てくる光景。

  3. 「飽かずやありけむ、二十日の夜の月出づるまでぞありける。」を現代語訳せよ。

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    別れを惜しむ心が満たされなかったのか、二十日の夜の月が昇るころまでその場にいたという。

  4. 「青海原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」を現代語訳せよ。また、この歌に表れている仲麻呂の気持ちを説明せよ。

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    訳=青々とした海原のはるか遠くを仰ぎ見ると、(今見ている月は)春日にある三笠の山に出ていた月なのだなあ。
    気持ち=故郷で見た月と同じ月を見て、故郷をなつかしみ恋しく思う気持ち。

  5. 「ここの言葉伝へたる人に言ひ知らせければ……思ひのほかになむ愛でける」について、①「ここ」の内容を補って、「言ひ知らせければ」までを現代語訳せよ。②「愛でける」の主語を答えよ。③なぜ「思ひのほか」なのか、説明せよ。

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    ①日本語をよく知っている人に説明してやったところ
    ②かの国人(唐土の人々)
    ③言葉の違う唐土の人々には、和歌の意味はわからないだろうと思われていたから。

  6. 「唐土とこの国とは、言異なるものなれど、月の影は同じことなるべければ、人の心も同じことにやあらむ。」を現代語訳せよ。

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    唐土と日本とでは言葉は違うけれども、月の光は同じはずなので、(月を見て感じる)人の心も同じなのだろうか。

  7. 「都にて山の端に見し月なれど波より出でて波にこそ入れ」を現代語訳せよ。また、この歌と「青海原」の歌に共通する思いを答えよ。

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    訳=都では山の稜線に出入りするのを見た月だけれど、(ここでは)波から出て波に入っていくことだ。
    共通する思い=旅先で月を見て、故郷(都)を恋しく思う気持ち。