『枕草子』野分のまたの日こそ 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 野分の翌日の庭
  4. 寝起きの女房
  5. 十七、八歳の女性
  6. テスト予想問題

『枕草子(まくらのそうし)』「野分のまたの日こそ」の現代語訳・品詞分解・解説です。

野分(台風)が吹き荒れた翌日の庭の様子と、そこにいる二人の女性の姿を描いた段です。冒頭の一文に「あはれにをかし」と感想を示し、そのあとに具体的な描写が続きます。風の「荒々しさ」と「繊細さ」、二人の女性の服装と髪、「むべ山風を」の古歌がよく問われます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

野分の翌日の庭

原文
野分のわきの格助体修また副の格助体修日こそ係助強意、いみじうシク連用・音あはれにナリ連用をかしけれシク已然。

現代語訳野分が吹いた翌日は、たいそうしみじみとして趣がある。

野分
秋に吹く激しい風。台風
いみじ
「いみじく」のウ音便
解説

この章段の主題を示す一文。このあとの文章は、「あはれにをかし」と感じた具体的な内容を書いている。

「こそ」の結びは「をかしけれ」(已然形)。

原文
立蔀たてじとみ、透垣すいがいなど副助例示の格助主格乱れラ下二連用たる存続連体に接助添加、前栽せんざいどもいと副心苦しげなりナリ終止。

現代語訳立蔀や透垣などが乱れ倒れているうえに、庭の植え込みの草木もひどく痛々しい様子である。

前栽ども
庭の植え込み(の草木)
心苦しげなり
痛々しい感じだ
立蔀
細い木を格子に組み、裏に板を張って立てた、目隠しの囲い。
透垣
板や竹で、すき間をあけて作った垣根。
原文
大きなるナリ連体木どもも係助類例倒れラ下二連用、枝など副助例示吹き折らラ四未然れ受身連用たる完了連体が格助主格、萩はぎ、女郎花をみなへしなど副助例示の格助体修上に格助場所よころばひハ四連用伏せサ四已然る存続連体、いと副思はずなりナリ終止。

現代語訳大きな木々も倒れ、枝などが吹き折られたのが、萩や女郎花などの上に横たわってかぶさっているのは、まったく思いがけない(光景だ)。

よころばふ
横たわる
思はずなり
思いがけない
解説

倒れた大木や折れた枝が、萩や女郎花の上に横たわってかぶさっている様子を、作者は「思はずなり(思いがけない)」と感じている。

原文
格子かうしの格助体修壺つぼなど副助例示に格助場所、木の葉このはを格助対象ことさらにナリ連用しサ変連用たら完了未然む婉曲連体やうに比況連用、

現代語訳格子の枠の一つ一つなどに、木の葉を、わざわざそうしたかのように、

壺
(格子の)枠の一つ一つ
ことさらなり
わざわざ
解説

「格子の壺」は、格子の枠組みの一つ一つ。

原文
こまごまと副吹き入れラ下二連用たる存続連体こそ係助強意、荒かりク連用つる完了連体風の格助体修しわざと格助引用は係助強調おぼえヤ下二未然ね打消已然。

現代語訳一つ一つ細かく吹きこんであるのは、ゆうべのあの荒れ狂った風がしたこととは、とても思えない。

解説

格子の枠の一つ一つに、わざとそうしたかのように木の葉を細かく吹き入れていることを、荒々しかった風のしわざとは思えない、と言っている。

作者は野分の、大木を吹き倒す荒々しい面と、木の葉を細かく吹き入れる繊細な面の両方に興味をもっている。

「こそ」の結びは「ね」(打消の助動詞「ず」の已然形)。

寝起きの女房

原文
いと副濃きク連体衣きぬの格助同格うはぐもりラ四連用たる存続連体に格助添加、黄朽葉きくちばの格助体修織物、薄物など副助例示の格助体修小袿こうちき着きカ上一連用て接助単純接続、

現代語訳ひどく濃い色の着物で、表のつやがあせたものの上に、黄朽葉色の織物や薄物の小袿をはおって、

うはぐもる
表面のつやがなくなる
黄朽葉
赤みがかった黄色
薄物
薄く透ける織物
解説

「衣の」の「の」は同格の格助詞(「着物で、表面のつやがなくなったもの」)。

原文
まことしうシク連用・音清げなるナリ連体人の格助主格、夜よは係助区別風の格助体修騒ぎに格助原因寝ねナ下二未然られ可能未然ざり打消連用けれ過去已然ば接助順接確定、

現代語訳いかにもきちんとした感じの美しい人が、ゆうべは風が吹き荒れて寝つけなかったので、

まことし
まじめそうだ。実直そうだ
清げなり
こざっぱりと美しい
解説

「清げなる人」は、着ているものや、母屋からにじり出てきたことから、身分の高い人に仕える上級の女房と考えられる。

原文
久しうシク連用・音寝起ねおきカ上二連用たる完了連体ままに格助状態、母屋もやより格助起点少し副ゐざり出いでダ下二連用たる存続連体、

現代語訳朝遅くまで寝て起きたままの姿で、母屋から少しにじり出ている、

ゐざり出づ
ひざをついて進み出る
原文
髪は係助区別風に格助相手吹きまよはさサ四未然れ受身連用て接助単純接続、少し副うちふくだみマ四連用たる存続連体が格助主格、肩に格助対象かかれラ四已然る存続連体ほど、まことに副めでたしク終止。

現代語訳(その人の)髪が風に乱されて、少しふわりとふくらみ、肩にかかっているさまは、実にみごとだ。

うちふくだむ
(髪が)ふくらんでけば立つ
解説

「まことにめでたし」とほめているのは、風に吹き乱されて少しふくらんだ髪が、肩にかかっている様子。

原文
ものあはれなるナリ連体気色けしきに格助状態見出みいだしサ四連用て接助単純接続、「むべ副山風を格助対象」など副助引用言ひハ四連用たる存続連体も係助類例心あらラ変未然む推量終止と格助引用見ゆるヤ下二連体に接助単純接続、

現代語訳(その人が)しんみりとした面持ちで外へ目をやって、「むべ山風を」などと口にしているのも、風流を知る人らしく見えるが、

見出だす
(内から外を)眺める
むべ
なるほど
解説

「むべ山風を」は、『古今和歌集』の文屋康秀の歌「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ」の一部。「山」と「風」を合わせると「嵐」になる、という歌。

「心あらむと見ゆる」のは、まことしう清げなる人。野分の翌日の情景にふさわしい古歌を口ずさんだので、情趣を解する人なのだろうと見えた。

十七、八歳の女性

原文
十七、八ばかり副助程度や係助疑問あらラ変未然む推量連体、小さうク連用・音は係助強調あら補・ラ変未然ね打消已然ど接助逆接確定、わざと副大人おとなと格助引用は係助強調見えヤ下二未然ぬ打消連体が格助主格、

現代語訳年は十七、八ほどであろうか、子どもではないが、まだ一人前の大人とも見えない人が、

わざと
とりたてて
解説

ここから終わりまでが、二人目の女性の描写。「見えぬが」の「が」は主格の格助詞。

「十七、八ばかりやあらむ」は、作者が年ごろを推し量ってはさみこんだことば。

原文
生絹すずしの格助体修単衣ひとへの格助同格いみじうシク連用・音ほころび絶えヤ下二連用、花も係助類例かへりラ四連用、濡れラ下二連用など副助婉曲しサ変連用たる存続連体、

現代語訳生絹の単衣で、ひどくほころびて糸が切れ、縹色もあせて、濡れなどしているものに、

生絹
生糸で織った薄い絹
ほころび絶ゆ
縫い目がほころびて糸が切れる
花
縹(はなだ)色。薄い藍色
かへる
(色が)あせる
解説

「単衣の」の「の」は同格の格助詞。

「生絹の単衣の〜宿直物を着て」までが、この女性の衣装の描写。

原文
薄色うすいろの格助体修宿直物とのゐものを格助対象着きカ上一連用て接助単純接続、髪、色にナリ連用、こまごまと副うるはしうシク連用・音、

現代語訳薄紫色の夜着を着て、髪はつややかで、細やかにきちんと整っていて、

薄色
薄い紫色
宿直物
夜着
色なり
つややかで美しい
うるはし
きちんと整っている
原文
末すゑも係助類例尾花をばなの格助体修やうに比況連用て接助単純接続丈たけばかり副助程度なり断定連用けれ過去已然ば接助順接確定、衣きぬの格助体修裾すそに格助場所隠れラ下二連用て接助単純接続、袴はかまの格助体修そばそばより格助経由見ゆるヤ下二連体に接助単純接続、

現代語訳毛先もすすきの穂のようにふさふさとして、身の丈ほどもあったので、(その毛先は)着物の裾に隠れ、袴のひだのあいだからのぞいているが、

末
髪の先
尾花
すすきの穂
丈
背丈
そばそば
ひだの所々
解説

「袴のそばそばより見ゆる」のは、髪の毛先。身の丈ほどもある長い髪なので、その先が袴のひだのあいだからのぞいている。

原文
童部わらはべ、若きク連体人々の格助主格、根ごめに格助状態吹き折らラ四未然れ受身連用たる完了連体、ここかしこ代名に格助場所取り集めマ下二連用、起こし立てタ下二連用など副助例示するサ変連体を格助対象、

現代語訳(その人が、)童女や若い女房たちが、根こそぎ吹き倒された草木を、そこここで拾い集めたり、立て直したりしているのを、

根ごめ
根もとから全部
解説

「童部、若き人々の」の「の」は主格。「取り集め、起こし立てなどする」のは、召使いの子どもや若い女房たち。

「吹き折られたる」の下に「草木」などのことばが省略されている。

原文
うらやましげにナリ連用押し張りラ四連用て接助単純接続、簾すに格助対象添ひハ四連用たる存続連体後ろ手うしろでも係助類例をかしシク終止。

現代語訳うらやましそうに(簾を)外へ押し出して、簾に寄りそって(眺めて)いる後ろ姿も趣がある。

押し張る
(簾を)外へ押し出す
後ろ手
後ろ姿
解説

「うらやましげに」は、自分は庭に出るべき立場ではないが、自分も庭に出てみたいという気持ち。簾を外へ押し出して、身を乗り出すように見ている。

二人の女性について、作者はどちらも着ているものと髪の様子をくわしく書いている。

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①母屋
    ②立蔀
    ③小袿
    ④野分
    ⑤宿直物
    ⑥透垣
    ⑦生絹
    ⑧前栽
    ⑨後ろ手
    ⑩女郎花
    ⑪簾
    ⑫黄朽葉

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    ①もや
    ②たてじとみ
    ③こうちき
    ④のわき
    ⑤とのいもの
    ⑥すいがい
    ⑦すずし
    ⑧せんざい
    ⑨うしろで
    ⑩おみなえし
    ⑪す
    ⑫きくちば

  2. 本文で使われている意味を答えよ。
    ①またの日
    ②心苦しげなり
    ③思はずなり
    ④ことさらに
    ⑤まことし
    ⑥清げなり
    ⑦めでたし
    ⑧後ろ手

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    ①翌日
    ②痛々しい感じだ
    ③思いがけない
    ④わざわざ・わざと
    ⑤まじめそうだ・実直そうだ
    ⑥こざっぱりと美しい
    ⑦すばらしい
    ⑧後ろ姿

B 文法

  1. 次の「れ」を文法的に説明せよ。
    ①枝など吹き折られたるが
    ②夜は風の騒ぎに寝られざりければ
    ③肩にかかれるほど
    ④いみじうあはれにをかしけれ

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    ①受身の助動詞「る」の連用形
    ②可能の助動詞「らる」の未然形の一部
    ③ラ行四段動詞「かかる」の已然形の活用語尾
    ④シク活用の形容詞「をかし」の已然形の一部

  2. 次の「の」「が」の用法を答えよ。
    ①いと濃き衣のうはぐもりたるに
    ②まことしう清げなる人の、夜は
    ③わざと大人とは見えぬが
    ④生絹の単衣のいみじうほころび絶え(「単衣の」)
    ⑤童部、若き人々の、根ごめに

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    ①同格
    ②主格
    ③主格
    ④同格
    ⑤主格

  3. 次の文中の( )内の助動詞について、意味と活用形をそれぞれ示せ。
    ①荒かりつる風のしわざとはおぼえね(ね)
    ②木の葉をことさらにしたらむやうに(む)
    ③十七、八ばかりやあらむ(む)

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    ①打消・已然形(「こそ」の結び)
    ②婉曲・連体形
    ③推量・連体形(「や」の結び)

C 内容

  1. ①この章段の主題にあたる一文を抜き出せ。②この章段は、類集的章段・日記的章段・随想的章段のどれにあたるか。

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    ①野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ。②随想的章段

  2. 「荒かりつる風のしわざとはおぼえね」について、①作者は何を見てこう感じたのか。②作者は野分のどのような二つの面に興味をもっているか。

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    ①格子の枠組みの一つ一つに、わざとそうしたかのように木の葉が細かく吹き入れてある様子。②大木を吹き倒すような荒々しい面と、格子に木の葉を細かく吹き入れるような繊細な面。

  3. 「まことしう清げなる人」について、①どのような身分の人と考えられるか。②作者が「まことにめでたし」とほめているのは、何がどのような様子であることか。

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    ①(着ているものや、母屋からにじり出てきたことから)高貴な方に仕える、身分の高い女房。②風に乱されてふわりとふくらんだ髪が、肩にかかっているさま。

  4. 「『むべ山風を』など言ひたるも心あらむと見ゆる」について、①「むべ山風を」はどのような和歌をふまえているか。和歌集の名とあわせて答えよ。②「心あらむと見ゆる」のはだれか。本文中から抜き出せ。③そう見えたのはなぜか。

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    ①『古今和歌集』の「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ」(文屋康秀)。②まことしう清げなる人
    ③野分の翌日の情景にふさわしい古歌を口ずさんだから。

  5. 十七、八歳の女性について、①「根ごめに吹き折られたる、ここかしこに取り集め」の部分を、省略されている語を補って現代語訳せよ。②「うらやましげに」から、この女性のどのような気持ちが読み取れるか。③作者が二人の女性について共通してくわしく書いていることを二つ答えよ。

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    ①根こそぎ吹き倒された(草木)を、そこここで拾い集め
    ②自分も庭に出てみたいという気持ち。③着ているもの(服装)と、髪の様子。