『枕草子』中納言参りたまひて 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 扇の骨の自慢
  4. 清少納言の切り返し
  5. 書きとめたわけ
  6. テスト予想問題

『枕草子(まくらのそうし)』「中納言参りたまひて」の現代語訳・品詞分解・敬語・解説です。

中宮定子の弟である中納言隆家が、すばらしい扇の骨を手に入れたと得意げに話します。それを聞いた清少納言のとっさの一言に、隆家も感心して笑います。登場人物が三人いるので、敬語から誰の動作・誰への敬意かを見分けることが大切です。「ななり」や「に」の識別もよく問われます。

原文の読み方

原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。

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現代語訳・品詞分解・解説

扇の骨の自慢

原文
中納言参りラ四連用謙→中宮たまひ補・ハ四連用尊→隆家て接助単純接続、御扇おんあふぎ奉らせサ下二連用謙→中宮たまふ補・ハ四連体尊→隆家に格助時間、

現代語訳中納言(隆家様)が(中宮様のもとに)参上なさって、扇を献上なさるときに、

参る
参上する(謙譲語)。
奉らす
差し上げる(謙譲語)。
解説

隆家が参上したのは、宮中の、姉である中宮定子のもと。

「参りたまひ」は、謙譲語「参り」が作者から中宮への敬意、尊敬語「たまひ」が作者から隆家への敬意を表す二方面敬語。「奉らせたまふ」「申したまふ」も同じ。

原文
「隆家たかいへこそ係助強意いみじきシク連体骨は係助区別得ア下二連用て接助単純接続はべれ補・ラ変已然丁→中宮。

現代語訳「私隆家は、見事な(扇の)骨を手に入れたのでございます。

いみじ
すばらしい。
解説

「隆家こそ」は、自分の名を出して「この隆家は」と強く言ったもの。

「はべれ」は丁寧の補助動詞で、隆家から聞き手の中宮への敬意。「こそ」の結び。

原文
それ代名を格助対象張らラ四未然せ使役連用て接助単純接続参らせサ下二未然謙→中宮む意志終止と格助引用するサ変連体に接助逆接確定、

現代語訳その骨に紙を張らせて献上しようとしているのですが、

参らす
差し上げる(謙譲語)。隆家から中宮への敬意。
解説

「それ」は、隆家が手に入れた「いみじき骨」を指す。その骨に紙を張らせて、中宮に差し上げるつもりでいる。

「するに」の「に」は逆接の確定条件の接続助詞(〜のに、〜が)。

原文

現代語訳ありふれた紙ではとても張れそうにないので、(ふさわしい紙を)探しているのです。」と申し上げなさる。

おぼろけなり
ふつうだ、ありふれている。
え〜まじ
とても〜できそうにない。
解説

隆家が探しているのは、すばらしい骨に見合う、特別な紙。ありふれた紙では、骨に釣り合わない。

原文
「いかやうにナリ連用か係助疑問ある補・ラ変連体。」と格助引用問ひハ四連用きこえ補・ヤ下二未然謙→隆家させ尊敬連用たまへ補・ハ四已然尊→中宮ば接助順接確定、

現代語訳「どのような骨なのですか。」と(中宮様が)お尋ね申し上げなさると、

いかやうなり
どのようだ。
解説

「いかやうにかある」は中宮の言葉。

「問ひきこえさせたまへ」の「きこえ」は謙譲の補助動詞で作者から隆家への敬意、「させたまへ」は最高敬語(二重敬語)で作者から中宮への敬意。

原文
「すべて副いみじうシク連用・音はべり補・ラ変終止丁→中宮。『さらに副まだ副見マ上一未然ぬ打消連体骨の格助体修さまなり断定終止。』と格助引用なむ係助強意人々申すサ四連体謙→中宮。

現代語訳「とにかくすばらしいものでございます。『これまでまったく見たことのない骨のありさまだ。』と人々が申しております。

さらに〜打消
まったく〜ない。
解説

人々の言葉を引いて、骨のすばらしさをさらに強調している。

※「申す」は、その場にいる中宮をはばかって改まった言い方をしたもので、隆家から中宮への敬意を表す。人々が中宮に直接申し上げたわけではない。

原文
まことに副かばかり副の格助体言の代用は係助区別見えヤ下二未然ざり打消連用つ完了終止。」と格助引用、言こと高くク連用のたまへハ四已然尊→隆家ば接助順接確定、

現代語訳実際、これほどの(骨)は目にしたことがありませんでした。」と、大きな声でおっしゃるので、

かばかり
これほど。
言高し
声が大きい。
のたまふ
おっしゃる(尊敬語)。
解説

「かばかりの」の「の」は体言の代用で、「これほどの骨」の意。「かばかり」は、前の「いみじき骨」「さらにまだ見ぬ骨」を受けている。

「言高く」には、すばらしい骨を手に入れた隆家の得意げな様子が表れている。

清少納言の切り返し

原文
「さては接、扇の格助体言の代用に断定連用は係助強調あら補・ラ変未然で接助打消、くらげの格助体言の代用な断定連体・音なり推定終止。」と格助引用聞こゆれヤ下二已然謙→隆家ば接助順接確定、

現代語訳「それでは、扇の(骨)ではなくて、くらげの(骨)であるようですね。」と(私が)申し上げると、

さては
それでは。
聞こゆ
申し上げる(謙譲語)。作者から隆家への敬意。
解説

作者(清少納言)の言葉。隆家の「さらにまだ見ぬ骨のさまなり」をとらえて、だれも見たことがない骨なら、骨のないくらげの骨でしょう、ととっさに切り返した。

「扇の」「くらげの」の「の」は体言の代用で、下に「骨」が省略されている。

「ななり」は、断定の助動詞「なり」の連体形「なる」が撥音便で「なん」となり、「ん」が書かれていない「な」に、推定の助動詞「なり」の終止形が付いたもの。「〜であるようだ」と訳す。

原文
「これ代名は係助提示隆家が格助体修言ことに格助結果しサ変連用て強意未然む意志終止。」とて格助引用、笑ひハ四連用たまふ補・ハ四終止尊→隆家。

現代語訳(隆家様は)「これは隆家が言ったことにしてしまおう。」と言って、お笑いになる。

言(こと)
言葉。
解説

隆家は、作者のしゃれに感心して、「これは隆家が言ったことにしてしまおう」と笑っている。からかわれたことを怒ってはいない。

「言にしてむ」は、言(名詞)+に(格助詞・変化の結果)+し(サ変「す」の連用形)+て(「つ」の未然形・強意)+む(意志)。「〜にしてしまおう」と訳す。

書きとめたわけ

原文
かやうナリ語幹の格助体修ことこそ係助強意は係助区別、かたはらいたきク連体ことの格助体修うちに格助対象入れラ下二連用つ強意終止べけれ適当已然ど接助逆接確定、

現代語訳このようなことは、(書くと)聞き苦しいことの中に入れておくべきなのだろうが、

かたはらいたし
(そばで聞いていて)聞き苦しい、みっともない。
解説

「かやうのこと」は、隆家の自慢に作者がとっさに機知のある言葉を返し、隆家に感心されたという話。自分の自慢話になるので、書くのは「かたはらいたきこと」だと言っている。

「つべけれ」は「きっと〜するのがよい」の意。「こそ」の結びの「べけれ」は、下に「ど」が続いて文が終わらないので、結びは流れている(結びの消滅)。

原文
「一つな副落としサ四連用そ終助禁止。」と格助引用言へハ四已然ば接助順接確定、いかが副は係助強調せサ変未然む意志連体。

現代語訳(まわりの人が)「一つも書き落とすな。」と言うのだから、どうしようもない(書くしかない)。

な〜そ
〜するな(禁止)。
いかがはせむ
どうしようか、いや、どうしようもない(反語)。
解説

「一つな落としそ」は「一つも書きもらすな」の意。「言へ」の主語は、作者のまわりの人々(同僚の女房たち)。敬語が使われていない。

人に勧められたからしかたなく書くのだと、自慢話を書きとめることの言い訳をしている。

『枕草子』のほかの章段:宮に初めて参りたるころ① / 雪のいと高う降りたるを / 九月ばかり

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語句の、ここでの意味を答えよ。
    ①おぼろけなり
    ②いみじ
    ③かたはらいたし
    ④かばかり
    ⑤いかがはせむ

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    ①ふつうだ・ありふれている
    ②すばらしい
    ③聞き苦しい・みっともない
    ④これほど
    ⑤どうしようか、いや、どうしようもない

B 敬語・文法

  1. 次の傍線部の敬語の種類を答え、誰から誰への敬意かを答えよ。
    ①中納言【参り】たまひて
    ②参り【たまひ】て
    ③得て【はべれ】
    ④張らせて【参らせ】む
    ⑤問ひ【きこえ】させたまへば
    ⑥問ひきこえ【させたまへ】ば
    ⑦言高く【のたまへ】ば
    ⑧と【聞こゆれ】ば

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    ①謙譲語・作者から中宮
    ②尊敬語・作者から隆家
    ③丁寧語・隆家から中宮
    ④謙譲語・隆家から中宮
    ⑤謙譲語・作者から隆家
    ⑥尊敬語・作者から中宮
    ⑦尊敬語・作者から隆家
    ⑧謙譲語・作者から隆家

  2. 次の「に」を文法的に説明せよ。
    ①参らせむとする【に】
    ②いかやう【に】かある
    ③扇の【に】はあらで
    ④隆家が言【に】してむ

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    ①接続助詞(逆接の確定条件)
    ②形容動詞「いかやうなり」の連用形活用語尾
    ③断定の助動詞「なり」の連用形
    ④格助詞(変化の結果)

  3. 「くらげのななり」の「ななり」を文法的に説明し、「くらげのななり」を現代語訳せよ。

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    断定の助動詞「なり」の連体形「なる」の撥音便「なん」の「ん」が表記されていない形+推定の助動詞「なり」の終止形。訳=くらげの(骨)であるようだ。

  4. 「かたはらいたきことのうちに入れつべけれど」の「つ」「べけれ」を文法的に説明せよ。

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    つ=強意の助動詞「つ」の終止形 べけれ=適当の助動詞「べし」の已然形

  5. 次を現代語訳せよ。
    ①おぼろけの紙はえ張るまじければ
    ②さらにまだ見ぬ骨のさまなり
    ③一つな落としそ

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    ①ありふれた紙ではとても張ることができそうにないので
    ②これまでまったく見たことのない骨のありさまだ
    ③一つも書き落とすな

C 内容

  1. 「求めはべるなり」とあるが、隆家は何を探しているのか。

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    見事な扇の骨に見合う、並のものではない紙。

  2. 「言高くのたまへば」には、誰のどのような様子が表れているか。

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    隆家の、すばらしい扇の骨を手に入れたことを得意に思い、自慢する様子。

  3. 「さては、扇のにはあらで、くらげのななり」について、①誰の言葉か。②隆家のどの言葉を受けたものか、本文中から抜き出せ。③どのような意図で言ったのか。

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    ①作者(清少納言)
    ②さらにまだ見ぬ骨のさまなり
    ③隆家が「まだ見たことのない骨だ」と自慢したのをとらえて、だれも見たことのない骨なら、骨のないくらげの骨だろうと、しゃれで切り返した。

  4. 「これは隆家が言にしてむ」と言ったときの隆家の気持ちとして考えられることを説明せよ。

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    作者のとっさのしゃれに感心し、おもしろく思って、自分が言ったことにしてしまおうと冗談を言っている。

  5. 「かやうのこと」とはどのようなことか。また、作者がそれを「かたはらいたきこと」と考えるのはなぜか。

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    隆家の扇の骨の自慢に、作者が機知のある言葉で切り返し、隆家に感心されたこと。自分の自慢話になってしまうから。