『枕草子』虫は 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 虫の名を挙げる
  4. みの虫
  5. ぬかづき虫
  6. 蠅
  7. 夏虫・蟻
  8. テスト予想問題

『枕草子(まくらのそうし)』「虫は」の現代語訳・品詞分解・解説です。

心ひかれる虫の名前を並べたあと、みの虫・ぬかづき虫・蠅・夏虫・蟻の五つについて、清少納言が感じたことを書いた段です。親に置き去りにされたみの虫の話、虫の姿を人の行いに重ねる見方、「あはれ」と「をかし」の使い分けがよく問われます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

虫の名を挙げる

原文
虫は係助区別、鈴虫すずむし。ひぐらし。蝶てふ。松虫まつむし。きりぎりす。はたおり。われから。ひを虫。蛍ほたる。

現代語訳虫では、鈴虫(がよい)。ひぐらし。蝶。松虫。きりぎりす。はたおり。われから。ひを虫。蛍。

鈴虫(すずむし)
今の松虫のこと。
松虫(まつむし)
今の鈴虫のこと。昔と今とで名前が入れかわっている。
きりぎりす
今のこおろぎ。
はたおり
今のきりぎりす。鳴き声が機を織る音に似ている。
われから
海藻についている小さな虫。和歌では「我から(自分のせいで)」と掛けてよまれる。
ひを虫
かげろう。命の短い、はかないもののたとえ。
解説

ここで名前だけを挙げた虫は、和歌によまれてよく知られた虫。このあとの虫には説明が付き、筆者自身の見方や感じ方が書かれている。

みの虫

原文
みの虫、いと副あはれなりナリ終止。鬼の格助主格生みマ四連用たり完了連用けれ過去已然ば接助順接確定、親に格助比較似ナ上一連用て接助単純接続、これ代名も係助同趣おそろしきシク連体心あらラ変未然む推量終止と格助引用て接助単純接続、

現代語訳みの虫は、とても哀れだ。鬼が生んだ子だというので、親に似てこの子も恐ろしい心を持っているだろうと思って、

あはれなり
しみじみと心を動かされる。哀れだ。
解説

「生みたりければ」の「けれ」は、人から伝え聞いた話であることを表し、「生んだということなので」と訳す。

「これも」の「これ」はみの虫(鬼の子)。親の鬼と同じように、子にも恐ろしい心があるだろうと親が考えたのである。

原文
親の格助主格、あやしきシク連体衣きぬひき着せサ下二連用て接助単純接続、「いま副秋風吹かカ四未然む婉曲連体折をりぞ係助強意来こカ変未然む意志終止と格助引用するサ変連体。待てタ四命令よ間助呼びかけ。」と格助引用言ひおきカ四連用て接助単純接続、

現代語訳親が、粗末な着物を着せて、「もうすぐ秋風が吹くころには迎えに来ようと思う。それまで待っていなさいよ。」と言い残して、

あやし
粗末だ、みすぼらしい。
衣(きぬ)
着物。ここはみの虫のみのを着物に見立てている。
いま
まもなく、じきに。
解説

「吹かむ折」の「む」は婉曲(〜ような)、「来む」の「む」は意志(〜しよう)。

親のこの言葉は、また迎えに来ると約束したように見せて、子をだまして置き去りにするためのもの。

原文
逃げガ下二連用て接助単純接続去いにナ変連用ける過去連体も係助同趣知らラ四未然ず打消連用、風の格助体修音を格助対象聞き知りラ四連用て接助単純接続、八月はづきばかり副助程度に格助結果なれラ四已然ば接助順接確定、

現代語訳(親が)逃げて行ってしまったのも知らずに、風の音を聞いて(秋が来たと)知り、八月ごろになると、

去(い)ぬ
行ってしまう、去る。
聞き知る
聞いてそれと知る、聞き分ける。
八月(はづき)
陰暦の八月。秋のなかば。
解説

「逃げて去にけるも知らず」は、みの虫が、親が自分を捨てて逃げてしまったことを知らない、ということ。

「八月ばかり」は、親が約束した「秋風吹かむ折」にあたる時期。

原文
「ちちよ間助呼びかけ、ちちよ間助呼びかけ。」と格助引用はかなげにナリ連用鳴くカ四連体、いみじうシク連用・音あはれなりナリ終止。

現代語訳「父よ、父よ。」と心細げに鳴く、その様子はひどく哀れで胸にしみる。

ちち
父。
はかなげなり
心細そうだ、頼りなさそうだ。
解説

実際にはみの虫は鳴かないが、筆者はその声を「父よ、父よ」と親を呼んで鳴く声と聞いている。

秋風が吹くころに来ると約束した親が、秋になっても来ないので、心細そうに鳴くと見て「いみじうあはれなり」と感じている。

ぬかづき虫

原文
ぬかづき虫、また副あはれなりナリ終止。さる連体心地ここちに格助場所道心だうしんおこしサ四連用て接助単純接続、つきありくカ四終止らむ現在推量(原因)終止よ間助詠嘆。

現代語訳ぬかづき虫も、これまた感心だ。あんな(小さな虫の)心にも仏を信じる心を起こして、額をついて歩き回っているのだろうよ。

ぬかづき虫
今の米つき虫。頭を上下に動かして、額を地につくような動きをする。
さる
そのような。
道心(だうしん)
仏道を信じる心。
つきありく
額をついて回る。
解説

「さる心地に」は、あんな小さな虫の身で、その心の中に、ということ。

額をつくような動きを、人が仏を拝む姿に重ね、虫なのに信心を起こしているようだと見て「あはれなり」と言っている。

原文

現代語訳思いがけず暗い所などで、ことことと音を立てて歩き回っているのは、おもしろい。

思ひかく
予想する。「思ひかけず」で、思いがけず。
ほとめく
ことことと音を立てる。
解説

同じぬかづき虫でも、前の、虫の心の中を思いやったところでは「あはれなり」、ここの、音を立てて歩き回る様子には「をかし」と言い分けている。

蠅

原文
蠅はへこそ係助強意憎にくきク連体ものの格助体修うちに格助場所入いれラ下二連用つ強意終止べく当然連用、愛敬あいぎやうなきク連体ものは係助区別あれラ変已然。

現代語訳蠅こそは、憎らしいものの中に入れてしまうのが当然で、かわいげのないものである。

愛敬(あいぎやう)なし
かわいげがない。
解説

「入れつべく」は「きっと入れるのが当然な」の意。蠅を憎らしいものに数えるのは当然だという気持ち。

「蠅こそ〜ものはあれ」は、蠅ほど憎らしくてかわいげのないものはない、という強い言い方。

原文
人々ひとびとしうシク連用・音敵かたきなど副助婉曲に格助対象すサ変終止べき当然連体ものの格助体修大おほきさに断定連用は係助区別あら補・ラ変未然ね打消已然ど接助逆接確定、

現代語訳一人前に扱って敵などにするほどの大きさではないが、

人々(ひとびと)し
一人前だ、人並みだ。
敵(かたき)
相手。ここは、本気で相手にする敵。
原文
秋など副助例示、ただ副よろづの格助体修ものに格助対象居ゐワ上一連用、顔など副助例示に格助場所濡れ足ぬれあしして格助手段居ゐるワ上一連体など副助婉曲よ間助詠嘆。

現代語訳秋などは、ただもうどんなものにでもとまり、顔などにぬれた足でとまっているのなどは(いやなものだ)よ。

よろづ
すべてのもの、あらゆるもの。
ゐる
(鳥や虫が)とまる。
解説

「顔などに濡れ足して居る」は、ぬれた足で顔にとまられたときの感じを、肌の感覚(触覚)でとらえて書いたところ。

「居るなどよ」のあとに、「いやなものだ」という気持ちが省かれている。

原文
人の格助体修名に格助資格つきカ四連用たる存続連体、いと副うとましシク終止。

現代語訳人の名前に(「蠅」が)ついているのは、本当にいやな感じだ。

うとまし
いやだ、気味が悪い。
解説

「人の名につきたる」は、「蠅」という語が人の名前に使われていること。古い時代には、そうした名前の人がいた。

夏虫・蟻

現代語訳夏虫は、とても風情があって、いかにもかわいらしい。

夏虫
夏、灯火に集まってくる虫。
らうたげなり
かわいらしい様子だ。
原文
火近うク連用・音取り寄せサ下二連用て接助単純接続物語など副助例示見るマ上一連体に接助単純接続、草子さうしの格助体修上うへなど副助例示に格助場所飛びありくカ四連体、いと副をかしシク終止。

現代語訳灯火を近くに引き寄せて物語などを読んでいると、本の上などを飛び回るのは、とてもおもしろい。

草子(さうし)
紙を綴じた本。
解説

灯火のそばで物語を読んでいると、本の上を飛び回る夏虫の様子を「をかし」と言っている。

原文
蟻は係助区別、いと副憎にくけれク已然ど接助逆接確定、かろびいみじうシク連用・音て接助単純接続、水の格助体修上うへなど副助例示を格助場所ただ副歩あゆみマ四連用に格助強意歩あゆみありくカ四連体こそ係助強意をかしけれシク已然。

現代語訳蟻は、とても憎らしいけれど、身軽なことはたいしたもので、水の上などをただもうどんどん歩き回っているのは、おもしろい。

かろび
身の軽さ。
いみじ
はなはだしい。ここは、たいしたものだ。
ただ
ひたすら。
解説

蟻そのものは憎いけれど、身軽に水の上をどんどん歩き回る様子は「をかし」と、よい点を見つけている。

『枕草子』のほかの章段:春はあけぼの / 木の花は / 九月ばかり / すさまじきもの① / かたはらいたきもの / 野分のまたの日こそ / 宮に初めて参りたるころ① / 中納言参りたまひて

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①八月
    ②草子
    ③愛敬
    ④蠅
    ⑤道心

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    ①はづき
    ②そうし
    ③あいぎょう
    ④はえ
    ⑤どうしん

  2. 次の語句の本文中での意味を答えよ。
    ①あやしき(衣)
    ②いま(秋風吹かむ折)
    ③はかなげに
    ④人々しう
    ⑤うとまし
    ⑥らうたげなり
    ⑦かろび

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    ①粗末な・みすぼらしい
    ②まもなく・じきに
    ③心細そうに
    ④一人前に・人並みに
    ⑤いやだ
    ⑥かわいらしい様子だ
    ⑦身の軽さ

B 文法

  1. 次の傍線部の助動詞の意味と活用形を答えよ。
    ①鬼の生み【たり】ければ
    ②これもおそろしき心あら【む】とて
    ③秋風吹か【む】折
    ④折ぞ来【む】とする
    ⑤つきありく【らむ】よ
    ⑥ほとめきありき【たる】こそ
    ⑦憎きもののうちに入れ【つ】べく
    ⑧憎きもののうちに入れつ【べく】

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    ①完了・連用形
    ②推量・終止形
    ③婉曲・連体形
    ④意志・終止形
    ⑤現在の原因推量・終止形
    ⑥存続・連体形
    ⑦強意・終止形
    ⑧当然・連用形

  2. 次の傍線部「に」を文法的に説明せよ。
    ①はかなげ【に】鳴く
    ②ものの大きさ【に】はあらねど
    ③ただ歩み【に】歩みありく

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    ①形容動詞「はかなげなり」の連用形の活用語尾
    ②断定の助動詞「なり」の連用形
    ③強意を表す格助詞

  3. 次の文から係助詞とその結びの語を抜き出し、結びの語の活用形を答えよ。
    ①いま秋風吹かむ折ぞ来むとする。
    ②蠅こそ憎きもののうちに入れつべく、愛敬なきものはあれ。

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    ①係助詞=ぞ、結び=する(サ変動詞「す」の連体形)
    ②係助詞=こそ、結び=あれ(ラ変動詞「あり」の已然形)

C 内容

  1. 「鬼の生みたりければ、親に似て、これもおそろしき心あらむ」を、「けれ」の意味に注意して現代語訳せよ。また、「これ」は何を指すか。

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    訳=鬼が生んだ子だということで、親に似て、この子もきっと恐ろしい心があるだろう。「これ」=みの虫。

  2. 「いま秋風吹かむ折ぞ来むとする」を、言葉を補って現代語訳せよ。また、これは誰の、どのようなつもりで言った言葉か。

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    訳=もうすぐ秋風が吹くころに、(あなたを)迎えに来よう。誰の=みの虫の親の言葉。つもり=また来ると思わせて子をだまし、置き去りにしようというつもり。

  3. 「逃げて去にけるも知らず」とは、誰が、どのようなことを知らないのか。

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    みの虫が、親に捨てられて置き去りにされたことを知らないということ。

  4. みの虫が「ちちよ、ちちよ」と「はかなげに鳴く」のはなぜだと筆者は考えているか。

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    秋風が吹くころに迎えに来ると親が約束したのに、秋の八月になっても親が来ないので、親を呼んで心細く鳴いていると考えている。

  5. 「さる心地に道心おこして、つきありくらむよ」を現代語訳せよ。また、筆者はぬかづき虫のどのような様子を「あはれなり」と言っているか。

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    訳=あんな小さな虫の心にも仏道を信じる心を起こして、額をついて回っているのだろうよ。様子=虫の身でありながら信心を起こし、仏を拝むように額をつきつつ動き回っていると見える様子。

  6. 「蠅こそ憎きもののうちに入れつべく、愛敬なきものはあれ」を現代語訳せよ。また、筆者が蠅をいやだと感じる点を本文から二つ挙げて説明せよ。

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    訳=蠅こそは、憎らしいものの中にきっと入れるべきもので、(これほど)かわいげのないものはない。点=①秋など、どんなものにでもとまり、ぬれた足で人の顔にとまること。②「蠅」という語が人の名前についていること。

  7. 本文で、筆者が肌の感覚(触覚)でとらえたことを書いている部分を十五字程度で抜き出せ。

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    顔などに濡れ足して居るなどよ

  8. 本文の「あはれなり」と「をかし」は、どのように使い分けられているか。ぬかづき虫の例を挙げて説明せよ。

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    「あはれなり」は、虫の心の中を思いやって心を動かされたときに使い、「をかし」は、虫の動きや様子を目で見ておもしろいと感じたときに使っている。ぬかづき虫でも、信心を起こして額をついて回るのだろうと思いやるところは「あはれなり」、暗い所でことこと音を立てて歩き回る様子は「をかし」と言っている。