『枕草子』すさまじきもの① 現代語訳・品詞分解・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 興ざめなものの列挙
  4. 戻ってきた手紙
  5. 験者の失敗
  6. テスト予想問題

『枕草子(まくらのそうし)』「すさまじきもの」①の現代語訳・品詞分解・解説です。

「すさまじ」は、期待や場の雰囲気にそぐわず、興ざめだと感じる気持ちを表す言葉です。この段で作者は、季節はずれのもの、あるはずのものがないもの、期待を裏切られることなどを次々に挙げていきます。①では冒頭の列挙、届かずに戻ってきた手紙、物の怪を退散させられない験者の場面を読みます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

興ざめなものの列挙

原文
すさまじきシク連体もの。昼ほゆるヤ下二連体犬。春の格助体修網代あじろ。三、四月さんしぐわつの格助体修紅梅の格助体修衣きぬ。

現代語訳興ざめなもの。昼間に吠える犬。春の網代。三、四月に着る紅梅襲の着物。

すさまじ
興ざめだ。
網代(あじろ)
竹や木を編んで川に仕掛け、魚をとる仕掛け。冬に使うもの。
紅梅の衣(きぬ)
紅梅襲の着物。
解説

犬がほえて番をするのは夜、網代を使うのは冬、紅梅の衣を着るのは冬から春先である。「昼ほゆる犬」「春の網代」「三、四月の紅梅の衣」は、どれも時季や時間に合わないものである。

原文
牛死にナ変連用たる完了連体牛飼ひ。乳児ちご亡くなりラ四連用たる完了連体産屋うぶや。火おこさサ四未然ぬ打消連体炭櫃すびつ、地火炉ぢくわろ。

現代語訳飼っていた牛が死んだ牛飼い。生まれた子を亡くした産室。火の気のない角火鉢やいろり。

産屋(うぶや)
出産のための部屋。
炭櫃(すびつ)
角火鉢。
地火炉(ぢくわろ)
いろり。
解説

牛のいない牛飼い、赤ん坊のいない産屋、火のない火鉢といろりは、どれもそこにあるはずのものがないものである。

原文
博士はかせの格助主格うち続きカ四連用女子をんなご生まマ四未然せ使役連用たる存続連体。方違かたたがへに格助帰着行きカ四連用たる完了連体に接助逆接確定、あるじせサ変未然ぬ打消連体所。まいて副節分せちぶんなど副助婉曲は係助区別、いと副すさまじシク終止。

現代語訳博士が続けざまに女の子ばかり生ませていること。方違えに出かけたのにもてなさない家。まして節分の方違えのときなどは、ひどく興ざめだ。

方違へ《かたたがへ》
行き先の方角が悪いとき、いったん別の方角の家に泊まり、方角を変えてから目的地へ行うこと。
あるじす
主人としてもてなす。
まいて
まして。「まして」のイ音便。
解説

博士は代々家で受け継ぎ、男子しかなれなかったので、女の子ばかり生まれると跡継ぎがいなくなる。期待がくり返し外れてがっかりするのである。

「生ませたる」「あるじせぬ所」は連体形・名詞で止めた形で、「(それは)すさまじ」が省略されている。

方違えの客をもてなすのは当時の習わしで、節分は方違えをするのが決まっていたから、もてなしの用意がないのはなおさら興ざめだ、ということ。

戻ってきた手紙

原文
人の国ひとのくにより格助起点おこせサ下二連用たる完了連体文ふみの格助同格物なきク連体。京きやうの格助準体を格助対象も係助同趣さ副こそ係助強意思ふハ四終止らめ現在推量已然、

現代語訳地方から送ってきた手紙で、贈り物が添えていないもの。(こちらが)京から送る手紙も(贈り物がなければ、相手は)そのように(興ざめだと)思っているだろうが、

人の国
地方。
おこす
(こちらへ)よこす。
物
贈り物。
解説

「さ」は前の「文の物なき」(贈り物のない手紙は興ざめだ)をさす。「京からの手紙でも、贈り物がなければ相手はそう(興ざめだと)思っているだろうが」と訳す。

「こそ〜らめ、」は、こそ〜已然形で文が終わらずに続く逆接の形。

原文
されど接それ代名は係助区別ゆかしきシク連体ことどもを格助対象も係助並列書き集めマ下二連用、世に格助場所あるラ変連体ことなど副助例示を格助対象も係助並列聞けカ四已然ば接助順接確定、いと副よしク終止。

現代語訳しかしそれは、(相手が)知りたいことなども書き集め、都での出来事なども聞けるので、とてもよい。

ゆかし
知りたい。
解説

京からの手紙には、地方にいては知ることのできない都の出来事が書かれているので、贈り物がなくてもよい、ということ。

原文
人の格助体修もとに格助帰着わざと副清げにナリ連用書きカ四連用て接助単純接続やりラ四連用つる完了連体文の格助体修返りごと、今副は係助区別持て来カ変連用ぬ強意終止らむ現在推量終止かし終助念押し、

現代語訳人のもとへ、特に念を入れてきれいに書いて届けさせた手紙の返事を、もうそろそろ(使いが)持って来ているだろうよ、

わざと
とりわけ。特別に。
清げなり
きれいだ。
解説

「今は持て来ぬらむかし」の「ぬ」は強意、「らむ」は現在推量で、「もう(返事を)持って来ているだろうよ」と、期待しながら待っている気持ち。

原文
あやしうシク連用・音遅きク連体と格助引用待つタ四連体ほどに格助時間、ありつる連体文、

現代語訳妙に遅いことだと待っているうちに、さきほど(こちらから送った)手紙を、

あやし
変だ。
ありつる
さきほどの。
解説

「ありつる文」は、さきほどこちらから使いに持たせて送った自分の手紙。

原文
立て文たてぶみを格助対象も係助並列結びバ四連用たる存続連体を格助対象も係助並列いと副汚げにナリ連用取りなしサ四連用、ふくだめマ下二連用て接助単純接続、上うへに格助場所引きカ四連用たり存続連用つる完了連体墨など副助婉曲消えヤ下二連用て接助単純接続、

現代語訳立て文でも結び文でも、ひどく汚らしく扱って、紙をけばだたせ、上に引いてあった封じ目の墨なども消えて、

立て文
手紙の包み方の一つ。
結び(文)
細く巻いて結んだ手紙。
ふくだむ
(紙が)けばだつ。
解説

「上に引きたりつる墨」は、手紙の封じ目に引いた墨のこと。

原文
「おはしまさサ四未然尊→手紙の相手ざり打消連用けり過去終止。」もしは接、「御物忌おほんものいみと格助引用て接助単純接続取り入れラ下二未然ず打消終止。」と格助引用言ひハ四連用て接助単純接続、持て帰りラ四連用たる完了連体、いと副わびしくシク連用すさまじシク終止。

現代語訳「(先方は)いらっしゃいませんでした。」あるいは「御物忌みだといって受け取りません。」と言って(使いが)持ち帰ってきたのは、ひどく情けなく興ざめだ。

物忌み
災いを避けるため、一定の間家にこもって身を慎むこと。
わびし
やりきれない。情けない。
解説

「おはしまさ」は尊敬語で、手紙を持って行った使者から手紙の相手への敬意(使者の言葉)。

「いとわびしくすさまじ」なのは、特別にきれいに書いて返事を期待していた手紙が、相手に読まれもせず、汚くなって戻ってきたから。

験者の失敗

原文
験者げんざの格助主格、物の怪もののけ調てうずサ変終止と格助引用て接助単純接続、いみじうシク連用・音したり顔にナリ連用独鈷とこや間助並列数珠ずずなど副助例示持たタ四未然せ使役連用、

現代語訳験者が、物の怪を祈りしずめるといって、ひどく得意そうな顔で、(よりましに)独鈷や数珠などを持たせ、

験者(げんざ)
祈禱によって物の怪をはらう修験者。
物の怪
人にとりついて病気などを起こす霊。
調ず《てうず》
(祈禱で)物の怪を退散させる。
したり顔
得意げな顔。
独鈷(とこ)
仏具の一つ。
解説

独鈷や数珠を持たせた相手は、物の怪を乗り移らせるための者(よりまし)。

「いみじうしたり顔に」からは、物の怪を退散させることに自信を持っている験者の様子が読み取れる。

原文
蟬せみの格助比喩声しぼり出だしサ四連用て接助単純接続よみ居ワ上一連用たれ存続已然ど接助逆接確定、いささか副さりげも係助強意なくク連用、護法ごほふも係助並列つかカ四未然ね打消已然ば接助順接確定、

現代語訳蟬の鳴くような声をしぼり出して座って経を読んでいるが、(物の怪が)少しも退散しそうな様子もなく、護法童子も(よりましに)乗り移らないので、

よみ居る
座って経を読む。
いささか〜なし
少しも〜ない。
護法
験者に仕える神霊(護法童子)。
解説

「いささかさりげもなく」は、物の怪が少しも退散しそうな様子がないということ。

「つか」の主語は護法。護法童子がよりましに乗り移らないのである。

原文

現代語訳(家の者たちが)集まって座り祈っていると、男も女も変だと思っているうちに、

念ず
祈る。
解説

「集まり居念じたる」「思ふ」の主語は、祈禱を頼んだ家の者たち。

原文
時の格助主格変はるラ四連体まで副助範囲よみマ四連用困こうじサ変連用て接助単純接続、「さらに副つかカ四未然ず打消終止。立ちタ四連用ね完了命令。」と格助引用て接助単純接続、数珠取り返しサ四連用て接助単純接続、

現代語訳(験者は)決まった時間が過ぎるまで読み疲れて、「まったく乗り移らない。(よりましよ、)立ちなさい。」と言って、数珠を取り返して、

困ず《こうず》
疲れる。
さらに〜打消
まったく〜ない。
解説

「さらにつかず」は「まったく(護法がよりましに)乗り移らない」の意。

「立ちね」は、験者がよりましに向かって言った言葉。「ね」は完了の助動詞「ぬ」の命令形で、「立ちなさい」と強く命じている。うまくいかないいらだちが表れている。

原文
「あな感、いと副験げんなしク終止や間助詠嘆。」と格助引用うち言ひハ四連用て接助単純接続、額ひたひより格助起点上かみざまに格助帰着さくり上げガ下二連用、

現代語訳「ああ、まったく効き目がないなあ。」と言って、額から上の方へ(髪を)なで上げ、

あな
ああ。
験(げん)
ききめ。
さくり上ぐ
(髪を)なで上げる。
原文
あくびおのれ代名より格助起点うちしサ変連用て接助単純接続、寄りふしサ四連用ぬる完了連体。

現代語訳(験者が)真っ先に自分からあくびをして、物に寄りかかって寝てしまったこと(は興ざめだ)。

解説

家の者たちの気持ちも考えず、自分が先にあくびをして寝てしまう験者の無神経さが描かれている。

「寄りふしぬる」は連体形で止めた形で、「(こと)はすさまじ」が省略されている。

原文
いみじうシク連用・音ねぶたしク終止と格助引用思ふハ四連体に格助時間、いと副し副助強意も係助強意おぼえヤ下二未然ぬ打消連体人の格助主格押し起こしサ四連用て接助単純接続、

現代語訳とても眠いと思っているときに、たいして親しいとも思わない人が、揺り起こして、

ねぶたし
眠い。
いとしも〜打消
それほど〜ない。
解説

「いとしもおぼえぬ人」は、たいして親しいとも思っていない人。

原文
せめて副もの言ふハ四連体こそ係助強意いみじうシク連用・音すさまじけれシク已然。

現代語訳むりやり話しかけてくるのは、ひどく興ざめだ。

せめて
むりに。しいて。
解説

「こそ〜すさまじけれ」は係り結び。

続き:『枕草子』すさまじきもの②

『枕草子』のほかの章段:春はあけぼの / この草子、目に見え心に思ふことを / 九月ばかり / 雪のいと高う降りたるを / 宮に初めて参りたるころ①

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①網代
    ②炭櫃
    ③方違へ
    ④験者
    ⑤独鈷
    ⑥数珠

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    ①あじろ
    ②すびつ
    ③かたたがえ
    ④げんざ
    ⑤とこ
    ⑥ずず

  2. 次の語句の意味を答えよ。
    ①すさまじ
    ②あるじす
    ③ゆかし
    ④わざと
    ⑤ありつる
    ⑥したり顔
    ⑦せめて

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    ①興ざめだ
    ②(主人として)もてなす
    ③知りたい
    ④とりわけ・特別に
    ⑤さきほどの
    ⑥得意げな顔
    ⑦むりに・しいて

B 文法

  1. 次の傍線部「せ」を文法的に説明せよ。
    ①博士のうち続き女子生ま【せ】たる
    ②人の国よりおこ【せ】たる文
    ③独鈷や数珠など持た【せ】

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    ①使役の助動詞「す」の連用形
    ②サ行下二段活用動詞「おこす」の連用形活用語尾
    ③使役の助動詞「す」の連用形

  2. 次の傍線部の助動詞の意味を答えよ。
    ①京のをもさこそ思ふ【らめ】
    ②今は持て来【ぬ】らむかし
    ③今は持て来ぬ【らむ】かし
    ④立ち【ね】

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    ①現在推量
    ②強意
    ③現在推量
    ④完了(命令形)

C 内容

  1. 冒頭の列挙のうち、①「昼ほゆる犬。春の網代。三、四月の紅梅の衣」、②「牛死にたる牛飼ひ。乳児亡くなりたる産屋。火おこさぬ炭櫃、地火炉」は、それぞれどのような点で興ざめなのか。

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    ①時季や時間に合っていない点。②そこにあるはずのものがない点。

  2. 「博士のうち続き女子生ませたる」が興ざめなのはなぜか。

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    博士は代々家で受け継ぐ職で、男子しかなれなかったので、女の子ばかりだと跡継ぎがいなくなるから。

  3. 「京のをもさこそ思ふらめ」を、「さ」の内容を明らかにして現代語訳せよ。

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    京から送る手紙も、贈り物がなければ興ざめだと(地方の人は)思っているだろうが。

  4. 手紙の使いが戻ってきたことを、作者が「いとわびしくすさまじ」と感じたのはなぜか。

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    特別にきれいに書いて送り、返事を期待していた手紙が、相手に読まれもせず、汚くなって戻ってきたから。

  5. 「いささかさりげもなく、護法もつかねば」とはどのような様子か。

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    物の怪が少しも退散しそうな様子がなく、護法童子もよりましに乗り移らない様子。

  6. 「さらにつかず。立ちね。」は、誰が誰に言った言葉か。また、現代語訳せよ。

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    験者がよりましに言った言葉。訳=まったく(護法が)乗り移らない。立ちなさい。

  7. 「いとしもおぼえぬ人の、押し起こしてせめてもの言ふ」を現代語訳せよ。

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    たいして親しいとも思わない人が、揺り起こしてむりやり話しかけてくる(こと)。