『枕草子』頭の弁の、職に参り給ひて② 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 手紙を見せた頭の弁、隠した作者
  4. 作者に感心する頭の弁
  5. 経房の中将の話
  6. テスト予想問題

『枕草子(まくらのそうし)』「頭の弁の、職に参り給ひて」②の現代語訳・品詞分解・敬語・解説です。教科書によっては「鳥の空音」という題で載っています。

手紙のやりとりのあと、頭の弁(藤原行成)は、作者の手紙を殿上人たちにみな見せたと言います。作者はそれを怒るどころか、自分を大切に思ってくれた証拠だと喜んでみせ、頭の弁を感心させます。会話が多いので、誰の言葉か、敬語が誰から誰への敬意かを押さえることが大切です。

前の場面:『枕草子』頭の弁の、職に参り給ひて①

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

手紙を見せた頭の弁、隠した作者

原文
さて接、「そ代名の格助体修文ふみは係助区別、殿上人てんじやうびとみな副見マ上一連用て完了連用し過去連体は係助強意。」と格助引用のたまへハ四已然尊→頭の弁ば接助順接確定、

現代語訳さて、(頭の弁が)「あの手紙は、殿上人がみんな見てしまったよ。」とおっしゃるので、

解説

「その文は……見てしは」は頭の弁の言葉。「その文」は、作者の「夜をこめて」の歌を書いた手紙。

「見てし」は、て=「つ」(完了)の連用形、し=「き」(過去)の連体形。「見てしまったよ」の意。

原文
「まことに副思しサ四連用尊→頭の弁けり詠嘆終止と格助引用、これ代名に格助原因こそ係助強意知らラ四未然れ自発連用ぬれ完了已然。めでたきク連体ことなど副助婉曲、人の格助主格言ひ伝へハ下二未然ぬ打消連体は係助区別、かひなきク連体わざぞ係助強意かし終助念押し。

現代語訳「(あなたが私を)心から大事に思っていてくださったのだと、この一件で自然とわかりました。すばらしいものは、人が言い広めてくれなければ、かいのないことですものね。

思す
お思いになる(尊敬語)。
かひなし
かいがない、効き目がない。
解説

「まことに思しけり」は、頭の弁が作者を本当に大切に思っていたということ。「知られ」の「れ」は自発。

「これ」は、作者からの手紙を頭の弁が殿上人みなに見せたこと。

「めでたきこと」は、作者自身のすばらしい手紙(歌)のこと。すばらしいものは人が言い伝えてくれないとかいがない、と、見せてくれたことを喜んでみせている。

原文
また接、見苦しきシク連体こと散るラ四連体が格助主格わびしけれシク已然ば接助順接確定、御文おほんふみは係助区別いみじうシク連用・音隠しサ四連用て接助単純接続、人に格助対象つゆ副見せサ下二連用侍ら補・ラ変未然丁→頭の弁ず打消終止。

現代語訳また、見苦しいものが世間に広まるのはつらいので、(あなたの)お手紙はしっかり隠して、人には少しも見せておりません。

わびし
つらい。
つゆ〜ず
少しも〜ない。
解説

「見苦しきこと」は、作者が返歌できなかった頭の弁の「逢坂は」の歌(手紙)のこと。

見苦しいものが世間に広まるのはつらいので、頭の弁の手紙は隠して誰にも見せていないと言っている。

原文
御心みこころざしの格助体修ほどを格助対象比ぶるバ下二連体に接助単純接続、等しくシク連用こそ係助強意は係助強意。」と格助引用言へハ四已然ば接助順接確定、

現代語訳(お互いの)お気持ちの深さを比べると、同じくらいでございましょう。」と言うと、

心ざし
(相手を思う)気持ち。
解説

「等しくこそは」は、作者のすばらしい手紙を殿上人に見せた頭の弁の気持ちと、頭の弁の見苦しい手紙を隠した作者の気持ちは、どちらも相手を大切に思う点で同じだということ。

「こそは」の結びは省略されている。

作者に感心する頭の弁

原文
「かく副ものを格助対象思ひ知りラ四連用て接助単純接続言ふハ四連体が格助主格、なほ副人に格助対象は係助強意似ナ上一未然ず打消連用おぼゆるヤ下二連体。

現代語訳「このように物事をよくわきまえて言うのが、やはり普通の人とは違っていると思われる。

思ひ知る
物事をよくわきまえる。
解説

手紙を人に見せられて怒るのではなく、それを自分を大切に思ってくれたしるしだと受けとめ、喜んでみせた作者の機知に、頭の弁は感心している。

原文
『思ひぐまなくク連用、悪しうシク連用・音しサ変連用たり完了終止。』など副助引用、例の格助体修女の格助比喩やうに比況連用や係助疑問言はハ四未然む推量連体と格助引用こそ係助強意思ひハ四連用つれ完了已然。」など副助引用言ひハ四連用て接助単純接続、笑ひハ四連用給ふ補・ハ四終止尊→頭の弁。

現代語訳『思いやりもなく、ひどいことをしたものだ。』などと、世間の女のように言うのではないかと思っていた。」などと言って、お笑いになる。

思ひぐまなし
思いやりがない。
解説

「思ひぐまなく、悪しうしたり」は、頭の弁が作者の手紙を殿上人に見せたことを、普通の女なら非難するだろうと思っていた言葉。

原文
「こ代名は係助強意などて副。喜びを格助対象こそ係助強意聞こえヤ下二未然謙→頭の弁め意志已然。」など副助引用言ふハ四終止。

現代語訳「これはまたどうして(そんなことを)。お礼を申し上げたいくらいです。」などと言う。

などて
どうして。
喜び
お礼。
解説

「聞こえ」は謙譲語で、作者から頭の弁への敬意。

原文
「まろ代名が格助体修文ふみを格助対象隠しサ四連用給ひ補・ハ四連用尊→作者ける過去連体、また副、なほ副あはれにナリ連用うれしきシク連体ことなり断定終止かし終助念押し。いかに副心憂くク連用つらからク未然まし反実仮想終止。

現代語訳「私の手紙をお隠しになったというのは、これもまた、やはりしみじみとうれしいことですよ。(もし人に見られたら)どんなに情けなくつらいことだろうに。

まろ
私。
心憂し
情けない。
解説

「いかに心憂くつらからまし」の前に「もし私の手紙を人が見たとしたら」という仮定が省略されている。「まし」は反実仮想で、「どんなに情けなくつらいだろうに」と訳す。

原文
今より格助起点も係助強意、さ副を格助対象頼みマ四連用聞こえ補・ヤ下二未然謙→作者む意志終止。」など副助引用のたまひハ四連用尊→頭の弁て接助単純接続、後のちに格助時間、経房の中将つねふさのちゆうじやうおはしサ変連用尊→経房て接助単純接続、

現代語訳これから先も、そのように(隠してくれるものと)頼りにさせていただこう。」などとおっしゃった。その後、経房の中将がおいでになって、

解説

「さ」は、作者が頭の弁の手紙を隠してくれたこと。これからもそのように隠してくれるものと頼りにしよう、ということ。

「頼み聞こえ」の「聞こえ」は謙譲の補助動詞で、頭の弁から作者への敬意。

経房の中将の話

原文
「頭の弁とうのべんは係助区別いみじうシク連用・音ほめマ下二連用給ふ補・ハ四終止尊→頭の弁と格助引用は係助強意知りラ四連用たり存続終止や係助疑問。一日ひとひの格助体修文ふみに格助場所、ありラ変連用し過去連体ことなど副助例示語りラ四連用給ふ補・ハ四終止尊→頭の弁。

現代語訳「頭の弁が、あなたをとてもほめておいでなのを知っているか。先日の手紙に、あの日あったことなどを書いておられる。

一日(ひとひ)
先日。
解説

「ほめ給ふ」「語り給ふ」の「給ふ」は、経房から頭の弁への敬意。

原文
思ふハ四連体人の格助主格人に格助受身ほめマ下二未然らるる受身連体は係助区別、いみじうシク連用・音うれしきシク連体。」など副助引用、まめまめしうシク連用・音のたまふハ四連体尊→経房も係助強意をかしシク終止。

現代語訳自分が大切に思っている人が他人からほめられるのは、たいそううれしいものだ。」などと、まじめな口ぶりでおっしゃるのもおもしろい。

まめまめし
まじめだ。
解説

「思ふ人」は経房が大切に思う人で、作者のこと。「人に」の「人」は作者をほめた頭の弁。

原文
「うれしきシク連体こと二つに断定連用て接助単純接続、か代名の格助体修ほめマ下二連用給ふ補・ハ四終止尊→頭の弁なる伝聞連体に格助添加、また接、思ふハ四連体人の格助体修うちに格助場所侍りラ変連用丁→経房ける過去連体を格助対象なむ係助強意。」と格助引用言へハ四已然ば接助順接確定、

現代語訳「うれしいことが二つありまして、あの方がほめてくださるそうなのに加えて、また、(あなたの)大切に思う人の中に(私が)おりましたことを(うれしく思います)。」と言うと、

解説

「うれしきこと二つ」は、①頭の弁が自分をほめてくれたこと、②経房が大切に思う人の中に自分が入っていたこと。

「ほめ給ふなる」の「なる」は伝聞の「なり」の連体形。経房から聞いた話なので伝聞になる。

「侍り」は丁寧語で、作者から経房への敬意。

原文
「それ代名、めづらしうシク連用・音、今の格助体修ことの格助体修やうに比況連用も係助強意喜びバ四連用給ふ補・ハ四連体尊→作者かな終助詠嘆。」など副助引用のたまふハ四終止尊→経房。

現代語訳「そのことを、珍しく、今初めて知ったことのようにお喜びになるのですね。」などとおっしゃる。

解説

「それ」は、作者が経房の大切に思う人であること。経房は、前からわかっているはずなのに、今初めて知ったことのように喜ぶのですね、とたわむれている。

『枕草子』のほかの章段:春はあけぼの / 木の花は / 二月つごもりごろに / 大納言殿参り給ひて / 九月ばかり / 雪のいと高う降りたるを / 宮に初めて参りたるころ① / 中納言参りたまひて

テスト予想問題

A 語句

  1. 次の語句の意味を、本文の文脈に合わせて答えよ。
    ①かひなき
    ②つゆ(〜ず)
    ③思ひぐまなく
    ④などて
    ⑤喜び
    ⑥一日
    ⑦まめまめしう

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    ①かいがない(効き目がない)
    ②少しも(〜ない)
    ③思いやりがない
    ④どうして
    ⑤お礼
    ⑥先日
    ⑦まじめに

B 文法

  1. 傍線部の助動詞について、意味と活用形をそれぞれ答えよ。
    ①殿上人みな見【て】しは
    ②これにこそ知ら【れ】ぬれ
    ③いかに心憂くつらから【まし】
    ④かのほめ給ふ【なる】に

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    ①完了・連用形
    ②自発・連用形
    ③反実仮想・終止形
    ④伝聞・連体形

  2. 次の傍線部の敬語の種類を答え、誰から誰への敬意かを答えよ。
    ①まことに【思し】けり
    ②人につゆ見せ【侍ら】ず
    ③まろが文を隠し【給ひ】ける
    ④さを頼み【聞こえ】む
    ⑤いみじうほめ【給ふ】とは知りたりや
    ⑥思ふ人のうちに【侍り】ける

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    ①尊敬語・作者から頭の弁
    ②丁寧語・作者から頭の弁
    ③尊敬語・頭の弁から作者
    ④謙譲語・頭の弁から作者
    ⑤尊敬語・経房の中将から頭の弁
    ⑥丁寧語・作者から経房の中将

C 内容

  1. 「まことに思しけりと、これにこそ知られぬれ」について、①誰が誰を「思し」ていたのか。②「これ」は何を指すか。

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    ①頭の弁が作者を(大切に思っていた)。
    ②作者からの手紙を、頭の弁が殿上人みなに見せたこと。

  2. 「めでたきこと」「見苦しきこと」は、それぞれ何を指すか。

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    めでたきこと=作者の(「夜をこめて」の歌を書いた)手紙。 見苦しきこと=頭の弁の(「逢坂は」の歌を書いた)手紙。

  3. 「御心ざしのほどを比ぶるに、等しくこそは」とあるが、何と何が等しいというのか。

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    作者のすばらしい手紙を殿上人に見せた、頭の弁の作者を思う気持ちと、頭の弁の見苦しい手紙を隠して人に見せない、作者の頭の弁を思う気持ち。

  4. 「かくものを思ひ知りて言ふが、なほ人には似ずおぼゆる」とあるが、頭の弁は作者のどのような点に感心したのか。

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    手紙を殿上人に見せたことを恨むどころか、自分を大切に思ってくれた表れだと受けとめて喜んでみせた、機知に富んだ点。

  5. 「今よりも、さを頼み聞こえむ」を、「さ」の内容を明らかにして現代語訳せよ。

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    これからも、(私の手紙を)隠してくださることを頼りにし申し上げましょう。

  6. 「うれしきこと二つ」とは何と何か。

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    頭の弁が自分をほめてくれたことと、経房の中将が大切に思う人の中に自分が入っていたこと。