『史記』完璧帰趙③「璧を趙に帰す」書き下し文・現代語訳・解説|テスト予想問題

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. テストで問われるポイント
  3. テスト予想問題

司馬遷『史記』廉頗藺相如列伝のうち、「完璧帰趙」の第三場面の書き下し文・現代語訳・解説です。

璧を砕くと迫られた秦王は、あわてて態度を変えます。しかし相如は、それもまた偽りだと見抜きました。ここから相如は、どのように璧を無事に趙へ帰したのでしょうか。

前の場面は完璧帰趙②、続きは完璧帰趙④です。

書き下し文・現代語訳・解説

本文(訓読文)

白文秦王恐其破璧、乃辞謝固請、召有司案図、指従此以往十五都予趙。

書き下し秦王其の璧を破(やぶ)らんことを恐れ、乃(すなは)ち辞謝(じしや)して固(かた)く請ひ、有司(いうし)を召して図を案(あん)じ、此(ここ)より以往(いわう)の十五都(じふごと)は趙に予へんと指す。

現代語訳秦王は相如が璧を砕いてしまうことを恐れ、そこで(無礼を)わびて、どうか璧を返してほしいと頼み、役人を呼んで地図を調べさせ、「ここから先の十五の都市は趙に与えよう」と指し示した。

辞謝(じしや)す
わびる。
有司(いうし)
役人。
案(あん)ず
調べる。
以往(いわう)
それから先。(ここでは地図上のある地点より先)

白文相如度秦王特以詐詳為予趙城、実不可得、乃謂秦王曰、「和氏璧、天下所共伝宝也。

書き下し相如、秦王の特(た)だ詐詳(さしやう)を以て趙に城を予ふるを為して、実は得べからざるを度(はか)り、乃ち秦王に謂ひて曰はく、「和氏の璧は、天下の共に伝へて宝とする所なり。

現代語訳相如は、秦王が城を与えると見せかけているだけで、本当は城など手に入らないと推察した。そこで秦王に言った、「和氏の璧は、天下の人々が皆で伝えて宝としているものです。

度(はか)る
推し量る。判断する。
特(ただ)だ
「ただ~だけ」の意。(限定)
詐詳(さしやう)
いつわり。「詳」は「佯(いつわる)」と同じ。
為(な)す
ふりをする。

白文趙王恐、不敢不献。趙王送璧時、斎戒五日。

書き下し趙王恐れ、敢(あ)へて献(けん)ぜずんばあらず。趙王璧を送る時、斎戒(さいかい)すること五日なり。

現代語訳趙王は秦をはばかって、献上しないわけにはまいりませんでした。璧を送り出すときには、五日間斎戒いたしました。

不敢不A
敢へてAせずんばあらず。Aしないわけにはいかない。(二重否定)

白文今大王亦宜斎戒五日、設九賓於廷、臣乃敢上璧。」

書き下し今大王亦た宜(よろ)しく斎戒すること五日、九賓(きうひん)を廷に設くべし。臣乃ち敢へて璧を上(たてまつ)らん。」と。

現代語訳今、大王も同じように五日間斎戒して、宮廷に九賓の礼(外国の使者を迎える最も丁重な儀式)を整えてください。そうしたら私は、思い切って璧を差し上げましょう。」と。

宜(よろ)しくAべし
Aするのがよい、Aすべきだ。
九賓(きうひん)
賓客を迎える最も丁重な儀式。九人の接待役を立てたという。
乃(すなは)ち
そこでやっと。
敢(あ)へて
思い切って。
上(たてまつ)る
差し上げる。献上する。

白文秦王度之、終不可彊奪、遂許斎五日、舎相如広成伝。

書き下し秦王之を度(はか)るに、終に彊奪(きやうだつ)すべからず。遂に斎すること五日なるを許し、相如を広成伝(くわうせいでん)に舎(しや)せしむ。

現代語訳秦王は思案した末、無理に奪い取ることはとうていできないとさとった。そこで五日間斎戒することを承知し、相如を広成伝という宿舎に泊まらせた。

彊奪(きやうだつ)
力ずくで奪う。
不可A
Aできない。Aしてはならない。
舎(しや)せしむ
宿泊させる。
広成伝(くわうせいでん)
宿舎の名。

白文相如度秦王雖斎、決負約不償城、乃使其従者衣褐、懐其璧、従径道亡、帰璧于趙。

書き下し相如、秦王斎すと雖(いへど)も、決(けつ)して約に負き城を償(つぐな)はざるを度(はか)り、乃ち其の従者(じゆうしや)をして褐(かつ)を衣(き)、其の璧を懐(いだ)き、径道(けいだう)より亡(に)げて、璧を趙に帰さしむ。

現代語訳相如は、秦王が斎戒をしても、きっと約束にそむいて城を渡さないだろうと推し量った。そこで自分の従者に粗末な服を着せ、その璧を懐に抱かせて、抜け道を通って逃がし、璧を趙に帰らせた。

雖(いへど)A
AといえどもAであっても。
負(そむ)く
約束を破る。
褐(かつ)
粗末な衣服。
懐(いだ)く
ふところに入れる。
径道(けいだう)
近道。抜け道。
于
於と同じ。「~に」。

テストで問われるポイント

  • 秦王が相如に璧を砕かれるのを恐れ、地図を指して十五都を趙に与えると言った。
  • 相如はそれが偽りだと見抜いた(「詐詳為予趙城、実不可得」)。
  • 相如は「五日間の斎戒」と「九賓の礼」を求めて時間を稼いだ。
  • 「不敢不献」=献上しないわけにはいかない。(二重否定)
  • 「終不可彊奪」=結局、力ずくで奪うことはできない。
  • 相如は従者に璧を持たせ、抜け道(径道)から趙へ帰した。

テスト予想問題

A 語句・読み

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    「辞謝」「詐詳」「径道」「懐く」

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    じしゃ・さしょう・けいどう・いだく

  2. 「度」「舎」「亡」のここでの意味を、それぞれ答えよ。

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    度=推し量る、判断する 舎=宿泊させる 亡=逃げる

B 書き下し文・現代語訳

  1. 「趙王恐、不敢不献」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:趙王恐れ、敢へて献ぜずんばあらず
    現代語訳:趙王は秦をはばかって、献上しないわけにはまいりませんでした。

  2. 「今大王亦宜斎戒五日、設九賓於廷、臣乃敢上璧」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:今大王亦た宜しく斎戒すること五日、九賓を廷に設くべし、臣乃ち敢へて璧を上らん
    現代語訳:今、大王も同じように五日間斎戒し、宮廷に九賓の礼を整えてください。そうしたら私は、思い切って璧を差し上げましょう。

  3. 「乃使其従者衣褐、懐其璧、従径道亡、帰璧于趙」を書き下し文にし、現代語訳せよ。

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    書き下し文:乃ち其の従者をして褐を衣、其の璧を懐き、径道より亡げて、璧を趙に帰さしむ
    現代語訳:そこで自分の従者に粗末な服を着せ、その璧を懐に抱かせて、抜け道を通って逃がし、璧を趙に帰らせた。

C 内容の読み取り

  1. 秦王が地図を指して「ここから先の十五都を趙に与える」と言ったのを、相如はどのように受け取ったか。

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    見せかけだけで、本当は城を渡すつもりはないと見抜いた。

  2. 相如が従者に粗末な服(褐)を着せ、抜け道(径道)から璧を持って逃がしたのは、なぜか。

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    趙の使者の従者だと気づかれないようにして、目立たず、ひそかに璧を趙へ持ち帰らせるため。

  3. 相如が秦王に「五日間の斎戒」と「九賓の礼」を求めたのは、何のためか。

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    璧を差し出す準備をするという口実で、時間を稼ぐため(その間に璧を趙に帰すため)。

  4. 秦王が相如の要求を承知したのは、なぜか。

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    力ずくで璧を奪うことはできないと判断したから。(璧を砕かれるのを恐れたから。)

  5. 相如が従者に璧を趙へ持ち帰らせたことは、相如の最初の言葉のどの部分を実行したことになるか。本文から抜き出して答えよ。

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    「臣請完璧帰趙」(臣請ふ璧を完うして趙に帰らん)